私はただの戦闘エロとか敗北後イベントが多いゲームのゲーマーです 作:夢現図書館
スレイの服装はと言えばこのファンタジーゲームの世界観では似付かわしくない近未来的な白と黄色を基調としたテックウェアをその身に纏い、レッグベルトのホルスターにはコレまたこの世界観には似合わない武器種である『拳銃』が納められていた。
彼女の
剣や斧は近接系統の職業が得意武器として設定され、弓と言った遠距離武器は遠距離主体か身のこなしが軽い職業が得意武器に設定される。杖や魔導書などは魔法職。そして、番外枠として存在するのが銃火器やオーパーツの扱いに長けた『メカニック』と言う職業である。
この手の近接、遠隔と言った職業が存在するゲームでは接近戦を旨とする職業は攻撃や防御が高い傾向にあるが、遠距離や魔法が得意な職業は防御や体力が低く打たれ弱い傾向にあるが、この『スレイヴ・オンライン』でも凡そはその傾向にある。ならばメカニックの場合はどうなるかと言うとHP値は平均、攻撃も魔力も高いが代わりに防御や魔法防御は低いと言う、物理職と魔法職の良い所と悪い所を合わせた形となっている。まぁ、客観的に見れば打たれ弱くなりがちな生存性に難があるピーキーな職業と言える。
「……ギルドにイベントクエストとか張られて居ないかな?」
スレイは城下町の大通りを横断し中央区にある大型の噴水がある広場が望める場所に構える冒険者ギルド本部へと入る。中には多数のプレイヤー達が屯していた。パーティを組んでいたり或いは情報交換か雑談に興じている。
ギルド内にも消耗品を取り扱うショップの支店が開かれており、1箇所にプレイヤーが集中し過密化を予防する事に成功している。
別にクエストを受注するのにわざわざギルドに赴かずともメニューウィンドウを開けば良いのだがスレイはこう言う『手間』もゲームの醍醐味と捉えている。だから足を運ぶのだ。スレイと同じ様に考えるプレイヤーは思いの外多い。
かく言うスレイはソロで行動するプレイヤーだ。別にパーティプレイも嫌いでは無いのだが、性的なイベントを他人に見られると言うのは何処と無く恥ずかしい感情が浮かぶ。故にソロプレイヤーとして行動している。
「……うーん。ゴールド2倍討伐クエスト……他にもマナ2倍討伐クエスト、か」
ゴールドはこの『スレイヴ・オンライン』でのゲーム内通過であり、ゲーム内の雑貨屋等で使用される。ゲーム内での用語に当て嵌めるならばスレイブ大陸で流通する貨幣である。
マナはモンスターを倒す事で得られる魔力の残滓であり主に装備品の強化に必要となる。
この『スレイヴ・オンライン』はレベル制では無く強い武器や装備を装備して強くなるシステムだ。後は純粋なプレイヤースキルに依存する。如何にベテランプレイヤーでも装備を初期装備に戻せば能力値はそれ相応に戻る。
従来でありがちなレベル制にしなかった理由は運営レターの溢れ話で明かされており
『敗北イベントの中には特定の箇所でしか発生しないモノがあり、レベル制にすると故意に発生させるには時間が掛かり回りくどく感じてしまいストレスになる』
と言う意見が上がりレベル制は採択しなかったそうである。一応、降伏システムがあるのだが高レベルプレイヤーが低レベルモンスターに降伏と言うのは違和感があると言う反論もあったらしい。かなり拘りがある運営と言えた。
「……久し振りにログインしたし、新しい武器とか他にも色々なアイテムの購入や強化は必要。ゴールド2倍のクエストを受注しよう」
ゲーム内でもゴールドは入り用だ。あるのと無いのでは出来る事も変わってくる。ギルドの受付に立つ男性NPCに件のクエストの受注を申告する。
ゴールド2倍討伐クエストは、指定されたモンスターを討伐する周期的に開催されるイベントクエスト。該当するモンスターを討伐した瞬間に、報酬が加算される仕様となっており報告する必要は無い。クエスト成功後、また別のターゲットを指定した同名のクエストが出現し、イベント期間内であれば繰り返し受注可能。
また初心者応援クエストでもある為、指定されるモンスターはかなり弱い種類に限定されている。またベテランプレイヤーでも手軽な金策として良く利用している。
時間制限は特に無いが現実時間で午前6時を迎えると自動的に破棄される。その為、基本的にログアウトする前に達成すれば問題無い。
受注済の状態にした後、スレイはギルドを後にして城下町内を歩いて行く次に向かう先は大通りから逸れた裏通り。陽光が当たらず日陰の通りであり如何にも余り人が寄り付かない場所である。
「……結構、頻繁に品揃えが変わったりするんだよね」
裏通りを抜けた先にあるアングラな雰囲気が漂う城下町の暗黒街……。この暗黒街では表通りでは販売される事が無いアイテムを売っている露店がランダムで現れる事があり、他にも『奴隷』の出品や購入が出来るオークション会場がある。来たタイミングで露店が開店しているかどうかは時の運と言える。開いている場所もバラバラである為、探す必要がある。この点は人の目を避けて違法品を売り捌く暗黒街の演出の一環と言えるだろう。
「……露店、露店」
要件があるのは露店である。オークション会場には今は要件は無い。……場合によってはオークション会場に連れて行かれる場合もあるが。
暗黒街を歩き回る。露店と言うのは見つけ難い場所に開いている事もあり、乾いた川の石橋の下や、路地裏の奥と言った良く探さないと見つからない場所で開いている事もあれば暗黒街の広場にポツンと開いている時もある。
ただ暗黒街の露店商に声を掛ける時には注意しなければならない。
「……やっと見つけた。今回は特に見つけ難かった……」
水が枯渇した小さな川に掛かる橋の下に入り更に奥へ進んだ先の町下の入り組んだ下水道の側面通路の奥にある一角に今回の露店が開かれていた。今回は特に奥まった場所に開かれていた。近くに松明を置きボロ布を敷き近くに袋を置いた老人が腰掛けていた。見た目だけで言えばホームレスに見えなくも無い。
「……嬢ちゃん。良く来たね、何が欲しい?」
露店商を営む嗄れた声の老人NPCがそう声を掛けてきた。
「何を売ってるの?」
「その前に、もっと近くに寄ってくれ、良く聞こえんのだ」
スレイは老人NPCの指示に従い、冷たい石床に膝を付けてしゃがみ老人の顔を覗く様に近付く。近付いたその時、カチリと言う音が響く。
「……冷やかしは失礼じゃからのぅ。すまんが我慢しとくれ」
「……んっ」
気付けば自分の首に黒い首輪が取り付けられていた。そして首輪には鎖が伸びておりその鎖は老人NPCが握っていた。城下町と言った安全地帯では武器を振るうと言った行為は初めから出来ない様にされている。その為、目の前の老人NPCを殺害して逃亡する事は出来ない。
「さて、両手も出してくれぬかの? じゃないと怖くての」
更に露店商の老人NPCは両手を見せる様に言われた。スレイは大人しく両手を老人NPCの前に差し出すとその手首へ鎖で連結された黒い鉄製の枷が嵌められた。
試しに鎖の長さいっぱいにまで伸ばすもカシャンカシャンと言う音が響くだけで当然ながら自力で外す事が出来ない。
「さて、コレで安心じゃの。それじゃあ何が欲しいのかの?お嬢ちゃん」
暗黒街の露店商は疑い深く簡単にはブツを売ってはくれない。取引して貰うには首輪と手枷での拘束を受け入れる必要がある。
因みに手枷は任意ではあるが手枷を拒否すると販売品の値段が吊り上がる罠が仕組まれている。
そして肝心の取引ではあるのだが何も買わないと冷やかしと判断し怒った露店商によって『奴隷』としてオークション会場に売り飛ばされてしまう。
ちゃんと1品でも購入すればちゃんと首輪と手枷は外して解放してくれる。
因みに最初に話しかけた時、離れたり断れば何も起きないがその日は露店で買物は出来なくなる。
「んー……」
スレイの目の前に販売リストが表示されたシステムウィンドウが表示される。手枷が嵌められた腕を動かしてウィンドウに指を添えて滑らせて販売されている商品を吟味する。
手枷や、足枷、他にもアナルプラグ、ボールギャグと言った明らかに拘束を目的とした道具が項目として並んでいた。他にも特殊な効果を含んだ拘束具と言ったその手のプレイ用のアイテムが並んである。
どうやらこの露天商が売っているのは拘束系のアイテムを取り扱っている様だった。残念ながらスレイが求めているアイテムは並んでいない様であった。
露天商の品揃えもまたランダム性が強く求めているモノを取り扱っているとは限らない。かと言って何かしら買わないと自分が奴隷としてオークション会場に売り飛ばされてしまうのだ。暫く考えた後、買うものを決めた。
「うん。この『自縛用捕縛縄』を1つ下さい」
「あいよ、まいどあり」
使う機会があるかどうかは兎も角として最も単価の安かった『自縛用捕縛縄』を1つ購入した。この捕縛縄は魔力が籠っており使えば瞬く間に持ち主を縛り上げてしまうアイテムである。どう考えても被虐思考のプレイヤー向けのアイテムであった。
売り物の1つを購入した事によりスレイは首輪と手枷を外してもらい開放された。残念ながら今日はお目当ての商品は売って居なかった様だ。
「……買ったは良いけど、
メニューウィンドウを開いてインベントリの中身を確認する。露天商巡りをしていると如何しても必要の無いアイテムを買わざるを得ない。かと言って捨てるのも勿体無い(購入金額的に)。
「まぁ、使う機会があるかも知れないし、今は置いておこう」
気を取り直し一先ず先程、受注したゴールド2倍クエストをこなす為に城下町から近くのフィールドへと向けて出発した。