※この作品はR-18です。

堕ちた聖職者と絶望の正義   作:彼処舐ノ助嗅過

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Fate/Zeroのクロスオーバーです。
冒頭の綺礼の独白部分に関して、TYPE-MOON Wiki様を参考にさせていただきました。

※シリーズ全体
以下の点にご注意ください。
・バッドエンド確定
・キャラ崩壊、設定ガバガバ
・介錯不一致の可能性
・ハードな展開や胸糞鬱描写あり
・後半までR-18描写無し


第1話「おかしなキャスターと悩めるキレイキレイ」

「綺礼」

清く美しくあれと名付けられた私の名だ。

私は……他者の語る「美しさ」というものを終ぞ理解できなかった。

いや、それだけではない。

自らの許しがたい性質……つまり"悪"に気付いてしまった。

許せるものか……認めるものか……。

私はこれを正す為、あらゆる苦行・試練の中に身を置いた。……なれど、満たされることは無かった。

代行者となった私は、異端狩りを繰り返す毎日だった。

そんなある時、私は妻を娶った。

名はクラウディア。

それと共に神学校を退職し、私は神父への道を断った。

家庭を持つ。

それはつまり、「人並みの幸福」というものを手に入れられるのではないかと考えたのだ。

 

ああ、だが……。

彼女とは2年間連れ添い、そして……子をもうけた。

だが、私は……私自身の歪みを正す事は出来なかった。

私が愛そうとすればするほど彼女の苦しみだけが救いであり、彼女が癒そうとすればするほど、彼女の嘆きが見たいと思うだけだった。

そんな愛し方しか出来ないのならば……私は……。

私は、「私は間違って生まれた」「間違いは正さなければならない」と自殺を決意した。

私はその事を妻に告げる。

ああ、しかし。

彼女はそんな私の言葉を聞き、あろうことかその身を以って「綺礼が人を愛せる、生きる価値のある人」だと証明する為に自ら命を絶ってしまった。

愛する人の死。

絶望と悲しみを抱いた私だったが……。

その感情は「どうせ死ぬならば私の手で殺したかった」という死を愉しめなかった事に対するものであった。

この時、私は主の教えと決別し、自殺を思い留まった。

ああ、だが……なぜ……。

その後、私は第八秘蹟会に移る。

第四次聖杯戦争を3年後に控えた私に、令呪の兆しが現れる。

これを受けて魔術協会に派遣された私は、遠坂家の当主、時臣氏に弟子入りすることとなる。

この世には私が捧げるに足る理念や目的は無い。

「目的を見つけることこそ目的」

何故? 何故? こうも不完全なのか? 何故、自分という存在がこうも満ち足りないのか?

そんな思いを抱えたまま、第四次聖杯戦争の日は刻一刻と迫って行った。

「綺礼、君には期待しているよ」

時臣師が私にそう告げる。

「はい、もちろんです。我が師よ……」

私はその期待に応えるべく、この聖杯戦争を生き抜く為にあらゆる準備をした。

そしてついに召喚の日を迎える。

 

「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。

降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ

閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。

繰り返すつどに五度。

ただ、満たされる刻を破却する

――――告げる。

汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ

誓いを此処に。

我は常世総ての善と成る者、

我は常世総ての悪を敷く者。

汝三大の言霊を纏う七天、

抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

そして魔法陣が唸り、その中心に人影が現れた。

白いマントのようなものを身に纏った少女だ。

「あっれ~? ボクみたいなのが召喚されることってほんとにあるんだ~。キミがボクのマスター?」

 

「……これがサーヴァント……だと……?」

言峰綺礼は困惑していた。

事前に得た情報では、サーヴァントとは過去の英雄あるいは神霊そのものを身に宿すもの。

ゆえに強力な使い魔となるのは間違いないのだが、目の前のそれはどう見てもただの少女にしか見えなかったからだ。

「あれ? おーい、もしも~し?」

「……貴様が英霊だと?」

訝し気な表情で少女を見る綺礼。

「英霊かって聞かれるとよくわかんないけど、う~んサーヴァントではあるよ~。……それでそれで! キミがボクを呼び出したマスター?」

 

1つため息をつき答える綺礼。

「……残念ながらそうだ、私がお前のマスターだ」

少女がグイッと綺礼の顔を覗き込む。

「え~、残念なの――――ッ?」

「まずはクラスを名乗れ、話はそれからだ」

少女の顔を押しのけながら綺礼が問う。

「だよね~。ボクはキャスター! よろしくね――――ッ、マスター?」

「……真名は明かせないという事か?」

綺礼の問いに少女……キャスターは、口元に人差し指を当てて思案する。

「う~ん、明かしてもいいけど、たぶん聞いてもわからないと思うけど? なんか、ここボクがいた世界と違うっぽいし」

はぁ、とため息をつく綺礼。

(聖杯の変異による異世界のサーヴァント召喚か……。第二次から、徐々にその傾向が強くなっていると言うが……。我が師、遠坂時臣師への影からの協力……それが此度の私の使命……。このような素性もわからなければ、大した能力もなさそうなキャスターを引き当ててしまうとは……。これならばまだ、バーサーカーのクラスを引いた方がマシだったかもしれん……)

 

「マスター? ねぇ、マスターの名前は――――ッ? あいたっ!」

綺礼は、再び顔を寄せてきたキャスターの額を押えながら言う。

「私の名前は言峰綺礼だ」

「ふーん、よろしくねキレイキレイ!」

「キレイキレイ……だと?」

「あ、ダメ? もしかして怒らせちゃった~?」

「……その呼び方はやめろ。それよりもさっそくお前にはやってもらう事がある」

キャスターの額を押えていた手を離し、綺礼が告げる。

「……欲を言えば、アサシンのサーヴァントがよかったのだが、それでもサーヴァントであれば霊体化して敵を探ることぐらいは訳あるまい……。遠坂邸に使い魔や監視の類がないか警戒するのだ」

 

綺礼の言葉に少女があからさまにめんどくさそうな表情を浮かべる。

「え~。監視とかずっと同じ場所にいるんだよね? ボク、退屈なんですけど~」

「それがサーヴァントの役目ではないのかね? ……拒むのならば令呪を使うが? 令呪はサーヴァントの行動を制限する事もできるのだからな」

綺礼の言葉に、キャスターが慌てて答える。

「うわああぁっ! わ、わかったって~。ちゃんとやるよ~!」

「……では、さっそく行って来たまえ。ほらこの場所だ。ここを見回るだけでいい」

綺礼の命令にキャスターはめんどくさそうにしながらも、素直に返事を返す。

「ほ~い……」

 

 

――冬木市・深山町 遠坂邸――

「ふぁ~あ! な~んか、楽しいことないかな~。もう半日近くこうして監視してるんですけど―。暇なんですけど――――ッ!」

キャスターは飛んでくるカラスや鳥、小動物に不審な点はないか、魔力を感じないかを気怠そうにしながらもちゃんと確認していた。

「相変わらず異常はないかね、キャスター?」

使い魔の報告を聞くためにやってきたのは、マスターの言峰綺礼である。

「あ、キレイキレイ」

「その呼び方はやめろと言った筈だが?」

キャスターの呼び方に顔を顰めながらも綺礼が尋ねる。

「それで? 異常はなかったのかね?」

「ん~……ないなぁ……暇すぎて困っちゃうんですけど」

キャスターの言葉に綺礼は、呆れたようにため息をつく。

 

「安心しろ、7騎のサーヴァントが出揃えば今とは比較にならんくらい忙しくなるのだからな」

「そうなの?」

「ああ、お前には今以上にしっかりと働いてもらう」

その綺礼の言葉に、キャスターが項垂れる。

「え~それって雑用が増えるってこと~?」

その様子に再びため息をつく綺礼。

(……全く……外れくじとはこのことか……。どうやら、期待など全くできんようだ……)

 

――それから少しあとの遠坂邸――

「用心というのならば綺礼、この屋敷に入るところは誰にも見られていないだろうね」

綺礼が今回の聖杯戦争において陰で協力関係を結ぶマスター、遠坂時臣が他のマスターたちについての会話を終えて尋ねる。

「ご心配なく……。可視不可視を問わず、この屋敷を探索している使い魔や魔動機の存在はありません。それは——」

「はいは~い! それはボクが保証しま~す! ず~っと見てるんだけど、今のところ問題はないで――――すッ!」

綺礼の言葉に重ねるように、キャスターが姿を現して2人に敬礼をして報告する。

「聖杯に招かれたサーヴァントが現界すれば、間違いなく父に伝わります。他の魔術師が行動を起こすのは、まだ先のことと思われます」

綺礼はキャスターを見ながら、時臣に説明する。

「キャスター、この場はもういい。引き続き外の警戒を」

綺麗にキャスターに命令する。

「は~い!」

キャスターはピースサインをして、その場から霧のように消えた。

 

「ふぅむ。綺礼、あのサーヴァントは大丈夫だろうか? 彼女は……なんというか……」

時臣がキャスターを気遣うように綺礼に尋ねる。

「ご心配なく、確かに能力は高くはないようですが、アレでも英霊と呼ばれたモノです。最低限の魔力行使は可能なはず……。何かしらの役には立つはずです」

「そうか。ならばいいのだが……さて、話を戻そうか……」

 

 

それから数日後、ついに各マスターたちが召喚の儀に取りかかる。

遠坂邸、間桐邸、アインツベルン城……各々の場所にて、魔法陣が輝きを上げる。

「勝ったぞ綺礼。この戦い、我々の勝利だ!」

金色の鎧を身に纏った英雄を召喚した時臣は勝利を確信する。

「ぬぅ……雁夜、貴様サーヴァントを狂化せんかったな? バーサーカーではなく、勝手にアサシンを召喚するとは……」

目の前のサーヴァントが予定していたものではないことに、苛立ちを募らせる間桐臓硯。

「……ふん、悪いが戦い方は俺自身で決めさせてもらう……。召喚するサーヴァントもアンタのお膳立ては必要ない……!」

現れたサーヴァントを見ながら、臓硯に告げる間桐雁夜。

そして、アインツベルン城では。

「こいつは——!?」

「問おう。貴方が私のマスターか?」

美しい騎士が自らを召喚したマスター、衛宮切嗣に問いかけているのだった。

 

「キレイキレイ、結構サーヴァント揃ったんでしょ? もう戦うの――――ッ?」

キャスターが綺麗に尋ねる。彼は煩わしそうにしながらも、答える。

「いや、まだだ。残る一騎の召喚が確認されるまで聖杯戦争は始まらない」

「じゃあ、それまではお預けか~。でも暇だから何か楽しいことしたいよねーーーーッ」

キャスターの言葉に舌打ちをしたのは綺礼ではなかった。

「おい、その下賤な口を閉じよキャスター。昼寝の邪魔だ」

「はい?」

突然現れたサーヴァントの言葉に、目を丸くするキャスター。

「あ、金ピカだ」

「……ふん、この我を王の中の王と知ってなおその不敬な態度とはな……。貴様を許してやっているのは、時臣が臣下の礼を尽くし、貴様のマスターが時臣に仕えているからだ。……だが、我への態度が目に余れば……いかに同盟を組んでいるとはいえ容赦はせぬ」

「あ、あはは。以後……気を付けますー」

キャスターが頷くのを確認してから、ギルガメッシュはフンと鼻を鳴らして霊体化した。

 

彼の気配が去ったのを確認すると、キャスターはふぅと息を吐き、綺礼を見る。

「……うへぇ、なんか怖いねー? 金ピカって……。怒らせないようにしよっと」

「ああ、そうしてくれ。英雄王と我が師、遠坂時臣師との同盟維持のためにも、くれぐれも不用意な発言で敵に回すような行為は避けてくれたまえ」

わかったというようにうなずくキャスターだったが、何かに気付いたように尋ねる。

 

「……あれ? そういえばキレイキレイが聖杯にかける望みは?」

「……それは秘密だ。お前が私に真名を秘密にするように、私にもまた秘密はあるのだ……。さて、無駄話はこれくらいでいいだろう。そろそろ工房作成に戻れ」

納得いっていない様子だったが、こうなっては何を言っても任務を優先しろと言われるのがわかってきたため、キャスターは素直に返事をする。

「は~い」

キャスターが去ったあと、綺礼は1人呟く。

 

一方その頃、間桐邸では……。

「あんたみたいな細くて小さい女が、本当に他のサーヴァントと戦えるのか?」

間桐雁夜は自らが呼び出したアサシンのサーヴァントに尋ねる。

「ええ、それは約束しますよ。こう見えても私、ある部隊の隊長をしていましたから。実は偉い人なんですよ?」

アサシンのサーヴァントは、微笑みながらそう答える。

「ふっ、臓硯の命令通りバーサーカーを召喚しとけばよかった、なんてことにならないでくれよ?」

雁夜は召喚の際に、臓硯から狂化の一文を挟み、バーサーカーとして召喚するように言われていたが、その命令を無視して召喚したのだった。彼が用意したという聖遺物も、召喚には用いなかった。

なんとなくだが、臓硯がただでさえ苦しい自分に対する嫌がらせをしようとしているように感じられたからだ。

それに聖杯戦争や魔術についてあまり詳しくない雁夜は、サーヴァントと意思疎通した方がよいと判断し、バーサーカー以外のクラスでの召喚を決めたのだった。

臓硯も最初は、自らの進言を無視した雁夜に腹を立てたが、これはこれで見ごたえがあるかもしれん、と不気味に笑いながら雁夜の召喚を認めたのだった。

「ええ、ご心配なく。……マスターの桜ちゃんを救うという願い、必ずや私が叶えてみせます」

「ああ……頼む。俺には残された時間は……あと少しだからな」

雁夜は桜を救えるのならば、自らの命が尽きるのも厭わないと覚悟を決めていた。

 

 

「なぁなぁ、夫人! 男、女、子供だとどの血が一番美味いのか、教えてくれよ!」

連続殺人犯でありながら奇しくもマスターに選ばれてしまった男、雨生龍之介は先日召喚したバーサーカーに尋ねる。3m近くはあろうかという大きな女性の姿に、召喚してすぐに腰を抜かした龍之介は、生贄として用意していた子供を慌てて彼女に差し出した。彼女は鋭い爪で少年の首を軽く切ると、血を飲み始めた。

「新鮮だけど、少し量が足りないわね……」

どうみてもこの世ならざる存在である大女が、小さな子供の血を吸っている姿に芸術的な感銘を受けた龍之介は、彼女にそのことを伝えた。バーサーカーは何やら考えているようだったが、「いいわ。協力しましょう。お互いが聖杯にかける望みを叶えるために」と、彼との契約を正式に結ぶのだった。

そして現在。

「それは個体によって差があるわ……。けど、鮮度がいいのは子供か、若い女であることが多いわ」

「へー、やっぱりそうか!」

龍之介は大げさな手振り身振りを交えて話す。

「やっぱそうなんだよな~。いや、俺も子供や若い女の血を見るのは好きでさ!」

「そう……」

バーサーカーはあまり興味がなさそうに相槌を打つ。だが、すぐに龍之介に視線を移して提案する。

「ならばもっと効率よく集めて保管できる場所に移らないといけないわね。ここは私にはあまりにも窮屈だわ」

バーサーカーの提案に龍之介は、うんうんとうなずく。

「たしかに。そろそろここもバレちゃうしなぁ~。つっても、どこがいいんだろ?」

腕を組む龍之介を見て、バーサーカーが不気味に微笑む。

「心配しなくていい。今、私の娘たちに探らせているわ……。ついでに新しい血もね」

「へぇ! さすが夫人、頼りになる~!」

龍之介はバーサーカーにほんの僅かな恐怖を感じながらも、圧倒的なその存在感と血を飲み干す邪悪な女神のような姿に魅了されているのだった。

 

「ふん、サーヴァントなど所詮使い魔にすぎん……。せいぜい利用させてもらうぞ……」

 

 

 

そしてついにバーサーカーの召喚が確認され、全てのサーヴァントが出揃った。

「それで、それがお前の用意したサーヴァントもどき、というわけか……。……しかし、こんなもので本当にごまかせるというのか? あまり乗り気になれんのだが……」

綺礼がキャスターに尋ねる。目の前には、魔術師のローブを着たような存在が1体立っている。しかしその瞳は虚ろで、とてもではないがこれから実行に移そうとしている策を遂行するために用意したものとは、到底思えない。

「もっちろん。一応ボクが工房で作った疑似サーヴァント? みたいなものだから、見た目に反して頑張ってくれると思うよ~。ね――――ッ、零号くん♡」

キャスターは乗り気でない綺礼の問いに答えたあと、ローブを来た疑似サーヴァントの肩に手を置く。

「はい、頑張ります。自分をキャスターだと思い、魔術師らしい所作を心がければいいんですよね……? そして、遠坂邸に侵入して、遠坂時臣を抹殺する……」

抑揚のない声でキャスターに指示の確認をする。

「そういうこと! それじゃ、頼んだよ~? うまくやれて、生き延びたらご褒美あげるね――――ッ」

キャスターは満足そうに頷きながら、疑似サーヴァントに任務を言い渡した。

 

(……遠坂邸に侵入して……遠坂時臣を……抹殺する)

キャスターの疑似サーヴァントとして作られた存在は、ただ淡々とその命令を実行するために行動を開始するのだった。

遠坂邸に侵入した疑似サーヴァントは備わっている透明化を使い、さらには仕掛けられたトラップを魔術で破壊していく。

「……案外、簡単だった……」

……が、次の瞬間にはキャスターの左手を武器が貫通する。

「地を這う虫けら風情が。誰の赦しを得て面を上げる?」

疑似サーヴァントが上を見上げると、そこには無数の光を背に立つ金色のサーヴァント、アーチャーだった。

「……あ……あ……ああ……そんな……」

疑似サーヴァントが絶望したすぐあと、疑似サーヴァントはアーチャーの宝具によって鮮血を飛び散らせて命を落としたのだった。

アーチャーによって、疑似サーヴァントがやられたところを見たキャスターは、両手を挙げて歓喜の声を上げる。

「うわあ~っ! 零号くん、ナイスやられっぷり~!」

アーチャー陣営との協力で他の陣営をごまかすための策とはいえ、自ら作成した疑似サーヴァントがあっさりとやられたというのにキャスターは嬉しそうにしていた。

そんな自らのサーヴァントを冷ややかな目で見る綺礼。

このキャスターによる遠坂邸襲撃と、アーチャーの宝具によるキャスターの死は、遠坂邸を監視していたマスターたちにも映像として知れ渡った。

 

「ねぇ、キレイキレイ! これで、ボクはもう脱落扱いだから工房に引き籠ってていいってことだよね――――ッ?」

「ああ、そうだな。お前は工房に籠り、疑似サーヴァントの量産、およびそれら疑似サーヴァントによる他のマスターやサーヴァントの監視を行ってもらう。……まぁ、アサシンでも無い以上、お前にあまり期待はしていないが……」

綺礼の言葉にキャスターが不満の声を上げる。

「え~、ひっどいなぁ! ボクだってやる時はやるのに~」

と、そこで何かを思い出したように綺麗の方を振り返るキャスター。

「あ、そうだ! キレイキレイ、この国だと火葬が基本なんだよね~?」

キャスターの質問の意図が掴めないものの、そうだと返す綺礼。

「だよね~。どこかに人間の死体とか落ちてないかな―――――ッ?」

「……? 何故そんな物を探す?」

突然そんなことを言い出したキャスターに対して、綺礼が鋭い視線を向ける。

「ボクが一から捏ね捏ねして作るよりも、人間の死体を使った方が手っ取り早いんだよね――――ッ」

と、いうキャスター。

 

「なに……? つまり、お前は……ッ!」

綺礼は怒りを隠せない。

「サーヴァントいう英霊の具現でありながら、他者の亡骸を素材に新たな疑似サーヴァントを作ろうというのかッ!?」

「だって、しょうがなくない? ボクはそういう戦い方しかできないんだからさ――――ッ」

開き直ったかのように言うキャスター。

「黙れ! もういいから、さっさと工房に戻れ、不愉快だ!」

綺礼はそう叫ぶと、自らにも苛立ちをぶつけるかのように部屋を後にした。

(なんなんだ、あのサーヴァントは……!)

その場を離れ、廊下を歩きながらも綺礼の怒りは収まらない。

彼の脳裏に浮かぶのは先ほどのキャスターの言葉だ。

(人の亡骸を素材にするだと……? そのような冒涜的な行為……)

聖職者でもある綺礼にとって、先ほどのキャスターの発言は容認しかねるものだった。

 

一方その頃、間桐邸では……。

「あんたみたいな細くて小さい女が、本当に他のサーヴァントと戦えるのか?」

間桐雁夜は自らが呼び出したアサシンのサーヴァントに尋ねる。

「ええ、それは約束しますよ。こう見えても私、ある部隊の隊長をしていましたから。実は偉い人なんですよ?」

アサシンのサーヴァントは、微笑みながらそう答える。

「ふっ、臓硯の指示通りバーサーカーを召喚しとけばよかった、なんてことにならないでくれよ?」

雁夜は召喚の際に、臓硯から狂化の一文を挟み、バーサーカーとして召喚するように言われていたが、その命令を無視して召喚したのだった。彼が用意したという聖遺物も、召喚には用いなかった。

なんとなくだが、臓硯がただでさえ苦しい自分に対する嫌がらせをしようとしているように感じられたからだ。

それに聖杯戦争や魔術についてあまり詳しくない雁夜は、サーヴァントと意思疎通した方がよいと判断し、バーサーカー以外のクラスでの召喚を決めたのだった。

臓硯も最初は、自らの進言を無視した雁夜に腹を立てたが、これはこれで見ごたえがあるかもしれん、と不気味に笑いながら雁夜の召喚を認めたのだった。

「ええ、ご心配なく。……マスターの桜ちゃんを救うという願い、必ずや私が叶えてみせます」

「ああ……頼む。俺には残された時間は……あと少しだからな」

雁夜は桜を救えるのならば、自らの命が尽きるのも厭わないと覚悟を決めていた。

 

「なぁなぁ、夫人! 男、女、子供だとどの血が一番美味いのか、教えてくれよ!」

連続殺人犯でありながら奇しくもマスターに選ばれてしまった男、雨生龍之介は先日召喚したバーサーカーに尋ねる。

3m近くはあろうかという大きな女性の姿に、召喚してすぐに腰を抜かした龍之介は、生贄として用意していた子供を慌てて彼女に差し出した。彼女は鋭い爪で少年の首を軽く切ると、血を飲み始めた。

「新鮮だけど、少し量が足りないわね……」

どうみてもこの世ならざる存在である大女が、小さな子供の血を吸っている姿に芸術的な感銘を受けた龍之介は、彼女にそのことを伝えた。バーサーカーは何やら考えているようだったが、「いいわ。協力しましょう。お互いが聖杯にかける望みを叶えるために」と、彼との契約を正式に結ぶのだった。

 

そして現在。

「それは個体によって差があるわ……。けど、鮮度がいいのは子供か、若い女であることが多いわ」

「へー、やっぱりそうか!」

龍之介は大げさな手振り身振りを交えて話す。

「やっぱそうなんだよな~。いや、俺も子供や若い女の血を見るのは好きでさ!」

「そう……」

バーサーカーはあまり興味がなさそうに相槌を打つ。だが、すぐに龍之介に視線を移して提案する。

「ならばもっと効率よく集めて保管できる場所に移らないといけないわね。ここは私にはあまりにも窮屈だわ」

バーサーカーの提案に龍之介は、うんうんとうなずく。

「たしかに。そろそろここもバレちゃうしなぁ~。あ~、つっても、どこがいいんだろ?」

腕を組む龍之介を見て、バーサーカーが不気味に微笑む。

「心配しなくていい。今、私の娘たちに探らせているわ……。ついでに新しい血もね」

「へぇ! さすが夫人、頼りになる~!」

龍之介はバーサーカーにほんの僅かな恐怖を感じながらも、圧倒的なその存在感と血を飲み干す邪悪な女神のような姿に魅了されているのだった。

 

キャスターの工房。

その部屋は魔力が部屋中に満たされている。そして……。

「……それ! ……よいしょ! ……えいや! ……はぁ……しんど……」

その部屋ではキャスターが購入してきた牛や豚、鳥の肉を使って疑似的な肉体を作っていた。

しかし、一旦キャスターの能力で肉を分解して、その肉を人間の形に練り合わせる必要があるようで、魔力を使いながらその作業を繰り返しているキャスターは心底めんどくさそうに呟く。実際の人間の死体を使うことは、マスターの綺礼に固く禁じられていた。

「ボク、肉団子屋じゃないんですけど~」

そう文句を垂れながらも、なんとか肉と肉を練り合わせて人のような形を作り上げたキャスターは、その肉体に自らの血をかけ、魔力を流し込む。すると、疑似的な人間の肉体がゆっくりと動き出す。

「ふぅ……。これでよしっと。さて、キミは疑似サーヴァント肉団子15号だね――――ッ!」

キャスターが話しかけると、疑似サーヴァントは彼女を見て叫んだ。

「モー! ブヒィィィィイ! コケコッコー!!」

「うわあああっ!! 怖っ!」

牛と豚と鶏が合わさったような鳴き声に、キャスターは思わず腰を抜かす。疑似サーヴァントは四足歩行で工房内を走り回る。

「うへぇ~、また失敗かー。慣れてないし3体に1体は失敗するな~」

相も変わらず狂ったように走る肉団子15号を見ながら、ぼやくキャスター。すると15号が工房の扉に突進し、出て行ってしまう。

 

「あ! こら、どこ行くの――――ッ!」

慌てて追いかけようとするキャスターだったが、扉の先にいたのはアーチャーだった。

グシャッという音と共に15号の断末魔が響き渡る。

「我の前に立つな、汚物め」

アーチャーの見えない一撃を受けて、15号は血と肉の塊に戻ってしまった。そんな15号を冷ややかに見つめながら、彼はキャスターに言う。

「まったく仕事ぶりを見に来てやれば、なんというザマだ。自らの駒さえ満足に従えられんとは、腑抜けた雑種よ。さて、その汚物を潰したことで我の宝具が1つ穢れたわけだが……どう責任を取るつもりだ? 雑種」

アーチャーの威圧にキャスターは思わず後ずさりする。しかし、すぐに首を左右に振り、気持ちを切り替えたようだ。

「あ、あれ~、この子ちょっと知能足りてないみたいだね――――ッ! け、けど安心して? これからどんどん強い子を作り出して、王サマを楽しませてあげるからさ!」

笑顔で答えるキャスターだったが、その表情には焦りが感じられるのだった。そんなキャスターを冷たく見ていたアーチャーだったが、フンと鼻を鳴らしその場から去るのだった。

アーチャーの気配が消えたことを確認すると、一安心したキャスターは深呼吸をする。

「ふぅ……まったく王サマの威圧感には困っちゃうよ~。……あーあ15号作るの、時間掛かったのになー」

と、嘆くキャスター。

そうぼやきながらも彼女は、再び疑似サーヴァント生成作業のために工房に戻るのだった。

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