※この作品はR-18です。

堕ちた聖職者と絶望の正義   作:彼処舐ノ助嗅過

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Fate/Zeroのクロスオーバーです。

~今回のあらすじ~
・キャスターvsセイバー
・戦闘終了後

※シリーズ全体
以下の点にご注意ください。
・バッドエンド確定
・キャラ崩壊、設定ガバガバ
・介錯不一致の可能性
・ハードな展開や胸糞鬱描写あり
・後半までR-18描写無し


第10話「Dance of Death with Knights and Zombies 2」

「くっ! 新手の疑似サーヴァントか!? しかし、所詮はただの疑似サーヴァント。私の相手ではない!」

セイバーは剣を構えて警戒する。だが、そんな様子を気にも留めず、バンビと呼ばれた少女はキャスターの方を見る。

「……ジジ? ここは、どこなの? あれは、敵?」

彼女の問いに、彼女を抱きしめているキャスターも彼女の方に顔を向ける。

「ジジじゃなくて、ここではキャスターって呼んで欲しいんだけど……まぁいっか。どうせ愛称がわかったところで、この世界じゃボクの真名にたどり着くのはムリだと思うし……」

キャスターは人差し指を口に当てて考えるが、すぐにバンビの方に顔を戻す。

「バンビちゃん、今は聖杯戦争っていうのをやってて、ここは戦場なんだ~ッ! だからバンビちゃんが言うように、あそこにいる騎士王ちゃんは敵。やっつけちゃっていいよ~! でも、あそこの銀髪で白い肌のお姉さんには手を出さないでね~ッ!」

バンビと呼ばれた少女は、無表情でアイリスフィールを見る。

 

しかし、そんなキャスターの言葉にセイバーが怒りを見せる。

「何度も言わせるな、キャスター! 例えどんなことがあろうと、アイリスフィールには指一本触れさせないっ!」

そんなセイバーの方を見ながら、キャスターは不敵な笑みを浮かべていたのだった。

(……あの少女は一体? 警戒すべきだがバーサーカーほどの脅威ではないはずだ……いや、疑似サーヴァントがサーヴァントよりも強いということなどあるはずがない! なら、必要以上に恐れる必要はない……)

セイバーはそう心を落ち着け、アイリスフィールに自分から少し距離を取るようにお願いする。

「バンビちゃん、あそこにいるのが憎たらしいセイバーちゃんだよ! やっちゃって~ッ!」

そんなキャスターの言葉に反応し、バンビがセイバーの方を見る。

そして次の瞬間――。

 

「……うん、バンビ頑張る……」

彼女はセイバーに向かって手を向けたかと思うと、セイバーに向かって何かが飛来する。

とっさに剣を構えてそれを切り裂くセイバーだったが……。

その瞬間、青白い魔弾のようなものが一層強く光りを放つ。

直感で何かを感じ取ったセイバーは、咄嗟に飛び退くが完全に回避しきることはできずに、爆発によるダメージを受けてしまう。

「うああっ!」

「セイバー!!」

アイリスフィールが悲鳴にも近い声でセイバーの名を呼ぶ。

 

「な、なんだ今の攻撃は?」

セイバーも何が起きたのかわからず困惑する。

ただ、バンビと呼ばれていた少女の放った青白い光弾のようなものが爆発したことは確かだ。

「へぇ、よく躱したねぇ……さすがはセイバーちゃん。……バンビちゃん、どんどんやっちゃえ!!」

バンビは無表情のまま、キャスターの言葉を聞くと再び光弾をセイバーに向けて飛ばす。

咄嗟に剣で斬り裂いて無力化しようとするが、魔弾から強い光が放たれ、爆発する。

それにより、またしてもダメージを受けてしまうセイバー。

バンビはその光弾を連続で放つ。

 

セイバーは、あの光弾を無暗に剣で斬るのは危険かもしれない、と判断し回避に専念する。

「あっれぇ? バンビちゃんの攻撃、もう理解したんだ。ざ~んねん!」

セイバーが避けたことに残念そうなキャスターとは対照的に、無表情な少女・バンビは再び攻撃を繰り返すのだった。光弾が着弾する度に、その地点で大きな爆発が起きる。

(くっ……あの光弾をどう対処する……?)

次々と飛来してくる光弾に対し、セイバーは素早い身のこなしで回避してみせるが、一向にバンビの攻撃の手が休まる気配がない。

 

その時だった。

キャスターが口元を歪めて、バンビに指示を出す。

「バンビちゃん! そこの縄で縛ってる女、久宇舞弥ちゃんを爆破しちゃって~ッ!」

彼女が嬉々として指をさした方向には、彼女の疑似サーヴァントによって拘束されていた舞弥の姿があった。

「くっ……!!」

バンビに視線を向けられた舞弥は、身を捩って縄を抜け出そうとする。

「舞弥さんっ!! ダメっ!!」

アイリスフィールの悲鳴が響く。

それを受けて、セイバーは咄嗟に舞弥の前に立つ。

「舞弥!」

 

次の瞬間には、バンビの放った複数の光弾がセイバーにぶつかる。

と、同時にそれら全てが爆発を引き起こしセイバーに大きなダメージを与えるのだった。

「うああああああっ!!」

爆発の勢いで、セイバーはアイリスフィールの近くまで吹き飛ばされる。

「……ぐっ……あ……」

「セ、セイバーッ!」

魔力を編み込んだ鎧のおかげで致命傷こそ避けられているものの、直撃を複数発喰らっているため、これまでと違いダメージは尋常ではない。

 

「舞弥さんを攻撃するフリをして、セイバーを狙ったってわけね! 彼女なら身を挺してでも舞弥さんを守るから」

アイリスフィールはキャスターに、これまでで最も強い視線をぶつける。

「当ったり~! ……で? それが?」

「卑怯者!それでもサーヴァントなの!?」

キャスターの言葉に怒りを見せるアイリスフィール。キャスターは困ったように笑いながら、視線を逸らす。

「あはは! 衛宮切嗣よりはマシだと思うけどな~ッ!」

彼女がそう言い終わると同時に、体勢を戻したセイバーが彼女に斬りかかる……が、やはりバンビがその行く手を塞ぐ。

 

「アイリスフィール、切嗣ではなく私自身の魔力を主に使用することを条件に、宝具をもう一度使用させてください! ここで舞弥を失うわけにはいきませんが、このままでは状況の打開は困難です!」

「わかったわ! ……でも、その宝具はあなたの魔力を……」

セイバーの魔力消費を心配したアイリスフィールだったが、そんな彼女にセイバーは優しい笑みを浮かべる。

「この程度の魔力消費、どうという事はありません。」

そんな彼女の笑顔を見たアイリスフィールも覚悟を決める。

「セイバー! お願いっ!!」

彼女がそう叫ぶと、セイバーの剣に再び光が宿っていく。

 

「!? うん? また、宝具を使う気ッ!? 肉団子くんたち! バンビちゃんッ!!」

キャスターが命令すると、彼女を守るようにして疑似サーヴァント軍団とバンビがキャスターを庇うように前に出る。

「無駄だ! その程度で受けきれると思うな、キャスター! 使い魔ごと貴様を焼き払う!」

「この数を倒しきれると思う――――ッ!?」

そしてついにセイバーの剣から、巨大な光が一直線にキャスターたちに向かって放たれる。

「約束された勝利の剣(エクスカリバー)!!」

その一撃はアインツベルンの森の大地を抉り、木々を消し飛ばしながらキャスターたちに迫る。

キャスターは疑似サーヴァント軍団を分解しそれで巨大な肉壁を作り出すが、それも焼き尽くされて光が迫る。バンビはその体から青白い爆発の衝撃波を放ち、相殺を試みるのだった。

 

やがて光が晴れると、そこには疑似サーヴァントだったものの欠片が飛び散っているほかは、一直線にキャスターの場所まで道が開けていた。その先で両腕を失い、腹部に大きく穴の開いたバンビが呻きながら倒れるのだった。

彼女のうしろにいるキャスターもまた、右わき腹を大きく抉られており、その場に膝を着く。

「う……くっ! バ、バンビちゃんッ!!」

キャスターは呻くように彼女の名を呼ぶ。

すると、ゆっくりと体を起こす少女・バンビ。彼女は無表情だった目から涙を流す。

「ジジ……痛いよ。……痛い……。バンビ、死んじゃう……。……ジジ、バンビを助けて……」

すると、そんなバンビを抱きかかえるキャスター。そして優しく諭すように語りかける。

「だ、大丈夫だよぉ~ッ! ま、まだボクたちは負けてない! ひぐっ……! あぐぅっ!」

そんなキャスターの傷口も大きく開き、血が噴き出すのだった。

「勝負あったな! 今の一撃は致命傷だったはずだ」

宝具を連続で使用したセイバーの消費もまた、相当なものであり、肩で息をしながらキャスターを睨む。

 

 

教会で映像を見ていた綺礼がつぶやく。

「セイバーの言うとおりだ。勝負あったな、彼女の勝ちで間違いないだろう」

だがアーチャーは、ジッと映像を見つめ、口を開いた。

「さて、それはどうであろうな。綺礼よ、愉悦そのものを罪と断じて来たお前と、キャスターのヤツとはまるで正反対だが……」

「……フン、これがその結末だ。愉悦などという堕落に身を任せた時点で、キャスターに勝ち目など無かったのだ。所詮は醜い欲望に塗れたサーヴァントよ。……そして、その欲望を叶える為には手段を選ばぬ外道でもある」

アーチャーはその言葉にただ耳を傾けていたが、綺礼の空いたグラスに再び酒を注ぐ。

 

「なぁ綺礼。もしも仮にキャスターが、この場でセイバーに勝ったとしたら、どのようなことが起こると思う?」

「間桐雁夜の時と同じくまたその質問か……それを考えることに意味などない、とお前は私に言ったはずだ」

グラスを受け取りながら、綺礼は返す。

「だが、それこそが娯楽……すなわち愉悦であるとも、貴様は気付いているはずだが?」

「…………」

そしてしばしの沈黙の後、綺礼は言葉を紡いだ。

「ふむ、そうだな……もしキャスターがセイバーに勝ったとしたら、彼女は当初の目的通りあのアインツベルンの女を誘拐するだろうな」

「ほぅ、それで? その次には何が起こる?」

アーチャーは興味深そうに笑みを浮かべながら、さらに問いかける。

「そうだな……妻を失ったセイバーのマスター、衛宮切嗣は……」

そこまで言いかけて綺礼は言葉を止める。彼自身気付いていなかったが、その口元にわずかではあるが歪んだ笑みが浮かんだことをアーチャーは見逃さなかった。それを見て、彼は満足げにワインを呷るのだった。

 

 

「……く……くぅ……! あ、あはは……。倒しきれなかったね、セイバーちゃんッ!!」

キャスターが笑い出しながら叫ぶと、彼女の肉体は再び再生する。

「そんな……嘘でしょ……」

アイリスフィールは、キャスターの肉体の再生を目の当たりにし言葉を失う。

「な……貴様!? 何故、その体でまだ生きているッ!?」

セイバーも驚きを隠しきれずに叫ぶ。

「あはははは! 驚いた? 驚くよね~! そんなキミたちが面白いから教えてあげようッと!」

そんなセイバーの様子を見たキャスターはひとしきり笑った後、衝撃的な事実を口にするのだった。

「ボクはね~、不死身なんだよね――――ッ!!」

 

さらに恐ろしいことに、キャスターは疑似サーヴァントの肉片を念力のように宙に浮かべてかき集めると、バンビの欠損した肉体を修復する。最後に、彼女の右腕を精製するとそれをバンビの腕に取り付ける。

「はい、バンビちゃん! これ着けてね――――ッ♪」

肉体が完全に再生した2人は再び立ち上がる。

「そんな……不死身だなんて……」

そんなアイリスフィールの呟きに、キャスターは笑いながら答える。

「あはは! アイリちゃん、もうすぐアイリちゃんはボクのモノだよ~ッ!」

「そ、そんな……」

そんな挑発に言葉を失うセイバーとアイリスフィールだったが、すぐにセイバーは気を取り直す。

 

「だが、貴様の魔力も無尽蔵ではないはずだ!」

彼女は剣を構えて叫ぶ。しかし、キャスターは目を細める。

「はぁ? まだそんな寝ぼけたこと言ってるの? 魔力が足りなくなってきてるのはセイバーちゃん、あんたでしょ? あんなランクの対城宝具、燃費がいいわけないもんね? そんなのをこの短時間に2発……もう疲れてきたでしょ?」

そんなキャスターの言葉に歯ぎしりするセイバー。

 

その時だった。

「ジジ、体は治ったけど……足りないよ……。このままじゃ死んじゃう……。お願い、ジジ……もっと、もっとちょうだい……。ジジの……欲しいよッ!」

バンビは口からだらしなく涎を垂らし、懇願するようにキャスターに頼む。土下座までする始末だ。

「あはは! バンビちゃん、もうちょっと待ってね~? あそこにいるセイバーちゃんが死んだら、またたくさん分けてあげるからッ!」

そんなキャスターの言葉を聞いてか聞かずか、涎を垂れ流して虚ろな目でセイバーを見つめるバンビ。

キャスターはセイバーに向き直る。そして彼女はニヤリと笑うのだった。

「さて、そろそろ遊びも終わりにしようか? セイバーちゃん」

セイバーの方を向いているジジの服の裾を掴み、バンビはなおも懇願する。

「ジジ、早くしないと……死んじゃうよ……ジジ……」

と、次の瞬間。

 

「チッ! うるさいなぁ、バンビちゃん!」

ジジの手を払うと同時に、バンビの頬を平手打ちし弾き飛ばすキャスター。突然のことにセイバーもアイリスフィールも言葉が出ない。

「本ッ当にしつこくて、欲しがってばかりなんだからバンビちゃんはッ!」

「うぐっ!」

バンビの頬を掴んで顔を引き寄せるキャスター。

「いい? これは聖杯戦争で、バンビちゃんはもうとっくに死んでるんだって。わかった!?」

彼女が恐ろしいのかバンビは、震える声で涙を流しながら謝る。

「は、はい……。これは聖杯戦争。バンビは死んでる。ジジ、わがまま言って、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」

「うん♪ バンビちゃんは物分かりがいいね~! 可愛いよ――――ッ!」

キャスターは謝るバンビを興奮したように抱きしめると、頬ずりをする。

そんな2人の異様なやり取りにアイリスフィールは恐怖で体を震わせ、セイバーは怒りを露わにする。

 

 

一方、キャスターの豹変ぶりに、映像を見ていたアーチャーは思わず感嘆の声を漏らしていた。

「ほぅ……。よいではないか。実によい表情だぞ、キャスターのヤツめ」

綺礼は戸惑っていた。映像を通して見せられる、キャスターの強い愉悦の形。以前であればただただ嫌悪していたが、今は何故か、それが心躍るような感覚すら覚えるのだ。

「キャスターが勝利し、あの狂気が……もしもあのアインツベルンの女に向けば……衛宮切嗣は……」

そう呟くと、綺礼はワインを呷り、グラスをテーブルに置くのだった。そして呟いた。

「酒が……美味い……。……私は一体、何を迷っている……?」

そして再びグラスにワインを注ぎながら、彼は思うのだった。

「衛宮切嗣の絶望を見たい」と。

 

 

「キャスター!! ……味方であるその少女に対する非道な扱い、断じて許せない!!」

そして剣を構えてキャスターに向かって駆け出す。

しかし、それを阻むように立ちふさがる、再生した疑似サーヴァント軍団。

「はぁ? 何、まだやるの?」

セイバーはそんな2人を斬り伏せながら突き進む。

「当然だっ! 貴様のような卑劣な輩は、必ずここで斬る!」

「うーわ、うっさ。あんたの勝手な騎士道なんか押し付けてくれちゃってさ~ッ。ムカついたから、バンビちゃんちょっと強くしちゃお~ッと!」

セイバーが疑似サーヴァントと戦っている間に、キャスターはバンビが望む物を差し出す。

「はい、バンビちゃん! お望みのモノだよ~、あーんしてね~♪」

彼女の口に自らの血を飲ませるキャスターと、無我夢中でそれを啜るバンビ。

 

「キャスター覚悟してもらうぞ!」

魔力放出を使って一気に距離を詰めてきたセイバー……だったが、起き上がったバンビが放った爆風によって弾き飛ばされてしまう。

「ぐっ! ……この力、なんだ!? はじける魔力が今までの比ではないッ!!」

そんなセイバーとバンビを見てキャスターが笑う。

「いいね~、強いよバンビちゃん♪」

キャスターが嬉しそうに言うと、先ほどまで虚ろな目をしていたバンビの目に光が宿り、振り返った。

腕を組んでキャスターを見るとめんどくさそうに言う。

「当たり前でしょ、ジジ。あたしがあんな死にかけにやられると思ってんの? 久しぶりに動いて気分いいからさ、この辺全部ぶっ飛ばしちゃっていいよね!」

活き活きとした表情で口調や性格なども先ほどと大違いのバンビに、セイバーもアイリスフィールも驚愕する。

 

「な、なんだ……。この疑似サーヴァントは……?」

セイバーの質問に得意げな表情を浮かべ、真の力を解放するバンビ。

彼女は、頭に赤い魔力の円盤、背中に赤い色の魔力の翼が現れ、まさに「天使」を彷彿とさせる外見へと変化する。

「うっわ……。血与えすぎて、昔のバンビちゃんに戻っちゃったなぁ~。勝手に翼まで出しちゃって……。こりゃあこの辺り更地になっちゃうかもね~……」

キャスターは活き活きとしているバンビを見て、少し困った顔で言うのだった。

「な、なんなのあの子……」

アイリスフィールは恐怖し声を漏らす。

「あたしは星十字騎士団(シュテルンリッター)の1人、バンビエッタ・バスターバイン! ジジ、よくわかんないけど、あいつやっちゃっていいのよね?」

「そうだね~……。バンビちゃんのことだしちょっと派手にやり過ぎちゃうかもだけど、いいよ~ッ。だけど、そこのアイリちゃんは殺さないでね――――ッ!」

 

バンビエッタは翼を羽ばたかせて上空へと舞い上がると、セイバーに向かってその翼から無数の赤い光弾を撃ち出す。その量は先ほどまでの比ではない。凄まじい爆音と共に、アインツベルンの森は瞬く間に焼き払われていく。

なんとか躱しながら、大きな岩陰に身を隠したセイバー。だがそこにバンビエッタの光弾が着弾すると、大きな岩そのものが光を放つ。

「!? まさかっ——!?」

セイバーは急いで飛び退くが、爆風に巻き込まれて手から血を流してしまう。それを上空から嬉しそうに見下ろすバンビエッタ。

「そ──あたしの爆撃は防げないのよ。魔力の爆弾を撃ち込んでんじゃないのよ? あたしの魔力を撃ち込んだものが全部爆弾になるの。だから一瞬の合間で薙ぎ払おうとしても、剣で斬ろうとしても無駄ってこと」

「なるほど……。確かにその様だな」

セイバーは悔しげにバンビエッタを睨みつける。

 

すると、キャスターもバンビエッタの元にやってくる。

「セイバーちゃん悔しそう~。ってあれ? どうしたのバンビちゃん、そんな怖い顔して?」

「……ジジ! さっきはよくもやってくれたわね!? あとで仕返しにぶっ飛ばしてやるんだから!」

どうやら先ほどの頬を叩いたことを怒っているらしいバンビエッタに、キャスターはケラケラと笑う。

「え~、いつもの愛情表現じゃん! 本気で怒っちゃったのぉ? 可愛いなぁもう――――ッ♪」

「うるさいうるさいうるさ~い! とにかくあのセイバーをぶっ飛ばしたあとで、ジジにはもっとたくさんご褒美の血をもらうんだからね!」

やはり他人には理解できない異様なやり取りを続ける2人に、アイリスフィールは不安そうに視線を向ける。

するとそれに気付いたキャスターがアイリスフィールの方を見て、手を振る。

「アイリちゃん♪ さっきの見て、もしかして怖くなっちゃった~? でも大丈夫だよ~ッ! アイリちゃんには優しくするって、ボク約束するからさぁ~」

「…………」

キャスターに声をかけられて思わず身構えるアイリスフィール。その額には汗が浮かんでいる。そんな彼女を見ながらキャスターはニヤリと笑うのだった。

 

そして再びセイバーの方を見ると、キャスターが声をかける。

「さ~てセイバーちゃん? そんな岩陰に隠れてないで出ておいで~! じゃないとアイリちゃんが危ないよ~?」

「くッ……!」

挑発に乗るのは危険と分かっていながらも、セイバーは岩陰から出ようとする。

「ま、どこに隠れてようと全部ぶっ飛ばせばいいんだから、関係ないんだけど、ねっ!!」

バンビエッタは翼から光弾を連射して、全方位の絨毯爆撃を行う。まるで戦闘機のように辺り一帯を焼き払っていくバンビエッタ。

「うわぁ~、やっぱりあの子馬鹿だなぁ~ッ」

キャスターは聞こえないように小さい声で呟きつつ、その圧倒的な攻撃力に感心しているようだった。

 

「あ、あれ……? セイバーは……?」

アイリが不思議そうな表情を浮かべる。しかしそれもそのはず。先程まであった岩陰はおろか、森や山も綺麗に一掃されており、更地になっていたのだ。

アイリスフィールはその変わり果てた風景を見て言葉を失うが、そんな様子にキャスターが笑うのだった。

「あははッ! バンビちゃんってば容赦ないなぁ~!」

更地の中央に、傷だらけで膝を着くセイバーの姿があった。

(宝具を使おうにも魔力の消費が……。舞弥が動けず、切嗣との連絡も付かない……。アイリスフィールと舞弥の2人を守りながら、あのバンビエッタという少女、そしてキャスターの同時相手は、厳しいか……)

セイバーは絶望的な状況だった。

 

そんな様子の彼女を嘲り笑うバンビエッタとキャスターだったが、アイリスフィールが2人の注意を引こうと大声をあげる。

「キ、キャスター……。あなたの狙いは私でしょう。私があなたについていくことを条件に、セイバーと舞弥さんに危害を加えないと約束するのなら、私はあなたの言うことを聞きます」

アイリスフィールの宣言に、セイバーと舞弥は愕然とする。

「アイリスフィール、ダメだ!」

「マダム、いけません!」

しかし、アイリスフィールは2人の方を見て悲しそうな笑みを浮かべる。

「ここでセイバーを失っては、切嗣の聖杯戦争はそこで終わってしまう。それに、舞弥さんがいないと切嗣はこの戦いに勝利できない……」

「ですが……」

アイリスフィールの言葉にも、納得できない様子のセイバーと舞弥。

「お願い、わかってちょうだい。私は聖杯の器。恐らく敵のマスターとて、器の完成前に命を奪うようなことはしないはず……。そうでないと聖杯戦争はその時点で終了してしまうのだから……。だから、私なら大丈夫。セイバーと舞弥さんはこの聖杯戦争を最後まで戦って……。お願いよ……切嗣を……あの人を勝たせてあげて!」

アイリスフィールの決意は固いようだった。

 

「うん、アイリちゃんがボクのモノになるって言うなら、セイバーを見逃してあげてもいいよ~ッ! あはは! セイバーってば、守る騎士のくせに逆に守られちゃったね~ッ!」

「貴様ぁ……!」

キャスターの最大級の侮辱に怒りを露わにするセイバー。

だが、セイバーにはすでに戦える余力が残っていないようだった。

 

「大丈夫。約束するわ、セイバー、舞弥さん」

セイバー、舞弥に優しく微笑みかけるアイリスフィール。

しかし、次の瞬間にはキャスターが眼前に迫っていた。

「それじゃアイリちゃん♪ 約束通りボクと一緒に行こうね~ッ!」

「きゃああっ!?」

キャスターはアイリスフィールの首を絞め上げるように捕まえて、そのまま空に舞い上がる。

「あ……! ああ……」

(ごめんなさい……切嗣……イリヤ……)

薄れゆく意識の中で、愛する夫と娘への謝罪の言葉を思い浮かべながら、アイリスフィールは気を失った。

「アイリスフィール!!」

セイバーが叫んだ時にはすでに遅かった。キャスターに連れ去られるアイリスフィールを、ただ見ていることしかできなかったのだ。

そして、そんな様子を縛られながら見ていた舞弥も、絶望するしかなかった。

(マダム……申し訳ありません……!)

「はっ! 命拾いしたわね、あんた」

バンビエッタはそう言い残すと、キャスターの後に続くのだった。

 

 

「フハハハハ! 見たか、綺礼よ。これがキャスターめの執念というヤツだ。あのセイバーも哀れなものよなぁ……。我の寵愛を得るに値するほどの価値は無かったということか……」

アーチャーは笑いながら、綺礼に言う。

綺礼はしばらくモニターを見ていたが、スッと立ち上がった。

「どこへ行く気だ綺礼。もう少し余韻に浸ってもよかろう。格下であるお前のサーヴァントが、世に名高い騎士王に勝ったのだぞ? マスターとしてもっと喜んでやってもよいのではないのか?」

アーチャーが挑発するように言うと、綺礼は振り返る。

 

その目はこれまでとは異なるものだった。

「無論、喜ばしいとも。なればこそキャスターの工房に赴き、直接会って労ってやらねばなるまい?」

その瞳を見たアーチャーはついに彼の変貌を目の当たりにし、満足げに笑う。

そして酒瓶を1つ宝物庫から取り出して、綺礼に投げ渡す。

「存分に祝えよ。キャスターのヤツ、そして綺礼、お前自身の新たな門出をな」

「ああ……。感謝する、アーチャー」

それを受け取って歩き出した綺礼に、もう一度アーチャーが声を掛ける。

「ところで綺礼、あの女はどうするつもりだ?」

その言葉に立ち止まり再び振り返る綺礼。

「あのアインツベルンの女には、衛宮切嗣についていくつか問わねばならんことがある……。それを問いただした後は……愉しませてもらうとも」

そう言ってこれまで見せたことのない、愉し気な笑みを浮かべる綺礼だった。

 

 

一方、セイバーが宝具を使用したこと、舞弥と連絡が付かなかったことから、衛宮切嗣はアインツベルンの森に向かっていた。

そしてその途中で二度目の宝具の使用を確認した。

だが、到着したときには傷付いたセイバーと、縄で縛られた舞弥の姿しかなく、アイリスフィールの姿はどこにも無かった。

「舞弥、アイリは?」

切嗣に問いかけられ、舞弥は首を横に振り、答える。

「も、申し訳……ありません。マダムは……」

「そうか……。アイリはキャスターの手に……」

切嗣は拳を強く握りしめるが、すぐに冷静になり思考を巡らせた。

(落ち着け。焦っても何もいいことはない。まず第一に考えるべきなのは、敵が聖杯の器であるアイリの命を簡単には奪わないだろうという事。となればアイリをどこかへ誘拐し、それを人質にセイバーと僕に降伏を迫る可能性も考えられる……)

切嗣は冷静さを取り戻すと、まずは舞弥の縄を解き、状況を整理した。

 

「舞弥、アイリが戻るまではこれからは僕とセイバーとの橋渡し役を頼みたい」

「わかりました……」

切嗣の言葉に頷く舞弥。セイバーも複雑な心境ではあったものの、アイリスフィール救出のために、2人の意志を尊重することにしたのだった。

(アイリ、必ず助ける! ……無事でいてくれ……!)

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