~今回のあらすじ~
・アイリスフィールに詰め寄るキャスター
・柳洞寺に潜入するセイバーと舞弥
・セイバーvsバンビエッタ
・セイバーを脅すキャスター
・セイバーを支配しようとするアーチャー
※シリーズ全体
以下の点にご注意ください。
・バッドエンド確定
・キャラ崩壊、設定ガバガバ
・介錯不一致の可能性
・ハードな展開や胸糞鬱描写あり
・後半までR-18描写無し
キャスターが工房に戻り、アイリスフィールの部屋に行くと、彼女はイスに座って思いつめたような表情をしていた。
「切嗣のこと考えてるのかな~ッ? アイリちゃん♪」
キャスターの声に、彼女はビクッと体を震わせ後ずさりする。
その瞳は恐怖を感じながらも、強い意志が宿っている。
「ボクのマスターから、アイリちゃんのことは好きにしていいって許可をもらっちゃったんだよね――――ッ!」
そう言いながら、キャスターはアイリスフィールに近付いていく。
「もう少ししたら切嗣が助けに来る……。彼のことだからこの場所ごと破壊しようとするでしょうね。そうなったらお前は終わりよ、キャスター」
「あははっ! そうだといいね~ッ!」
アイリスフィールの言葉など意にも介さず、キャスターは彼女を壁際まで追い詰めると、脅かすように壁に勢いよく手を着ける。
「切嗣……」
彼女は恐怖からか、無意識に助けを求める言葉を口にする。
キャスターはそんなアイリスフィールを愉快そうに見ながら言う。
「ん~? 誰かに助けを求めているのかな~?」
「……っ!」
気丈に振る舞おうとするものの、彼女の体は震えが止まらない。
「アイリちゃん可愛いッ!まるで怯える小動物みたいだね~ッ!」
「うぅっ……」
キャスターの言葉に、思わずゾッとするアイリスフィールだが、それを堪えるためか、彼女は目をギュッと瞑り口を強く閉じる。
「……えへへへ♪」
そんな彼女の姿を見て嗜虐心でも刺激されたのか、キャスターは目を細めながら嘲笑うのだった。
「舞弥、キャスターの拠点は柳洞寺で間違いないだろう。セイバーを陽動に、僕たちで破壊工作を行う。セイバーと共に山門へと向かってくれ。セイバーには疑似サーヴァントを惹きつけさせ、舞弥は潜入して中から手引きするんだ。僕が爆薬を仕掛けたら連絡する」
「わかりました。セイバーにも伝えます」
舞弥はそう言ってうなずいた。
(待っていてくれアイリ……。僕にはまだ君が必要なんだ……必ず助けてみせる)
切嗣は心のなかでそう誓うのだった。
そのすぐあと、セイバーと舞弥は柳洞寺の山門近くに到着する。セイバーが侵入すれば、魔力反応ですぐに発見されてしまう。
その前に最後の確認をするのだった。
「結界を破壊する? そんなことができるのですか? 爆発物で破壊できるとは思えませんが……」
セイバーの問いに、舞弥が答える。
「たしかにただの爆弾では破壊できないでしょう。ですが対魔術用の爆弾であれば話は別です」
そう言って取り出したのは、ひと際大きなサイズの爆弾だった。これを各所に設置して、爆破。
騒ぎが起き、敵がそちらに惹きつけられている間に、切嗣が本陣を爆破するという作戦だ。
だが、その時だった。
「こそこそ隠れて、な~にやってんだか」
現れたのはキャスターの疑似サーヴァント、バンビエッタだった。
先ほどのダメージを引きずったままのセイバーにとって、最も戦いたくない相手であった。
2人は最悪の相手に見つかったことに、思わず苦い表情を浮かべる。
「まったくジジのヤツ、こんな寒い夜にあたしに雑用押し付けてくれちゃってさ……。さっさと片付けて、お風呂に入らせてもらうんだから!」
そう言ってキャスターの疑似サーヴァントはセイバーと舞弥に向かって襲い掛かった。
「くっ! 舞弥、ここは私が引き受ける。あなたは作業の続きを!」
「……わかりました。お気をつけて」
2人は二手に分かれることにしたのだった。
「はぁ? あの子1人で行かせて大丈夫なの? この辺りはジジの作った疑似サーヴァントだらけだけど?」
セイバーを目の前にして、拍子抜けした様子のバンビエッタ。
「問題ない。私が今すぐに貴様を斬る。その後ですぐに追いつけばいいだけのことだ」
セイバーはバンビエッタの攻撃を躱しながら、彼女に告げる。
「随分とナメたこと言ってくれるわね。弱ったあんたなんか、あたしの爆撃でイチコロなんだけど」
バンビエッタがドヤ顔で返す。
「キャスターの魔力で造られた使い魔である疑似サーヴァントごときに、私は負けない!」
セイバーは力強く宣言するが、その一言はバンビエッタの逆鱗に触れたようだ。
「あたしがジジの使い魔……ですって?」
彼女は怒りで目を見開き、肩を震わせている。
「名乗ったはずよ。あたしは
激昂する彼女に、セイバーは冷静に告げる。
「それもキャスターに植え付けられた偽りの記憶ではないのか? 陛下とやらも貴様の妄想に過ぎない!」
「このっ! ジジの"
激昂した彼女は、セイバーに向かって光弾を連射する。着弾と同時に爆発が起き、辺りを吹き飛ばしていく。
驚異的な攻撃だが、これも作戦の1つだった。
舞弥を通した切嗣の指示で、セイバーはその敏捷値、魔力放出を活かして動き回り、バンビエッタの爆撃を工房破壊に利用することが目的だったのだ。
先ほどの戦闘で、彼女が直情的な性格だと判断したセイバーは、あえて彼女を刺激することで理性的な判断を下せないように仕向けたのだ。
「くっ! ちょこまかとッ!」
バンビエッタは苛立ち、セイバーの作戦にまんまと乗せられているように思えた。
爆撃を躱すセイバーに苛立ち、爆撃の数を増やしたり、規模を大きくしたりとセイバーを追い詰めようとする。
だが、セイバーをなかなか捉えることができない。
それがまた彼女を苛立たせるのだった。
「あたしはジジより強いのよっ! キャンディ、リル、ミニーの誰よりも!!」
「こちらが知らない名を出されては評価のしようがない」
セイバーはそう言いながら冷静に爆撃を躱し、バンビエッタの爆撃を誘導するのだった。
工房の外で大きな音が響き渡っている。
「あ~あ~あ~、バンビちゃんったら派手にやってくれてるなぁ~、もう」
アイリスフィールを抱きしめながら、困ったように天井を見上げるキャスター。その隙を突いて、彼女を押し退けて距離を取るアイリスフィール。
「セイバーが来てくれたみたいね。これは切嗣の作戦だわ……。あの人は一切容赦しない。セイバーが乗り込んだ時点で、お前の終わりよキャスター」
まだ恐怖を感じてはいるのだろうが、セイバーたちの到着が希望となり、アイリスフィールは再び毅然とした自分自身を取り戻す。
「この爆発音……。あの疑似サーヴァントは、切嗣の策に気付くことなく、周囲に一切気を配らずにセイバーを攻撃しているようね。自分の手駒に自分の工房を破壊されるなんて、皮肉なものだわ、キャスター」
アイリスフィールは挑発するように、キャスターにそう言って勝気な笑みを浮かべる。
「う~ん……いくらお馬鹿なバンビちゃんでも、今はボクの血をたくさん注いで脳の機能が回復してる状態だからなぁ~。生きてた頃と変わらない知能だと思うんだよね~ッ。さすがにそこまでお馬鹿かな~?」
キャスターは思案するように、人差し指を口元に当てて斜め上を見る。
「……生きてた頃? ……どういうこと? 彼女はあなたが造った疑似サーヴァントじゃ……」
アイリスフィールが訝しむと、彼女は落ち着いた口調のまま話し出した。
「ううん、たしかに肉体はボクが造ったんだけどね~。バンビちゃんはね~ッ!
「なんですって……」
驚愕の事実に、アイリスフィールは言葉を失う。
あの疑似サーヴァントは、本当に元は1人の人間であり、驚異的な爆破能力を有していたということ。つまり別の聖杯戦争では、彼女本人がサーヴァントとして召喚される可能性すらあるのだ。
キャスターは言うなれば、サーヴァントがサーヴァントを従えていることになる。
「ついでに言うとね~、ボクも星十字騎士団の1人で、滅却師だったんだよねーッ!」
キャスターは、言葉を失っているアイリスフィールに続ける。
「そうだ、アイリちゃんだけに教えてあげるね、ボクの真名。ボクの名前は、ジゼル・ジュエル。 陛下から授かった聖文字は"Z"だよ――――ッ!」
「ジゼル・ジュエル……。聖文字は"Z"……」
アイリスフィールが確かめるように呟くと、キャスターは嬉しそうに語りだした。
「そうそう、陛下にボクたち星十字騎士団が力を認められた時に授かった聖文字なんだよね~ッ! 真名は名乗るなってキレイキレイが言ってたけど、名乗ったところでボクの情報なんて調べようが無いからさぁ。不利にはならないんだよね~。そんなことよりもアイリちゃんにもボクのこと、名前で呼んでほしいもん!」
彼女はあっけらかんとして語るのだった。
「……ねぇ、アイリちゃん。ボクの宝具はね~。人間の死体を使って肉体を用意することで、生きてた頃に一度でもゾンビ化させたことがある人の魂を呼び出して、疑似サーヴァントとして利用することができるんだけどね~。たっくさんいる人の中から、なんで真っ先にバンビちゃんを呼び出したと思う~?」
アイリスフィールは答える前に、その問いの意味を理解する。
「そう。バンビちゃんが単純に強いからなんだよね――――ッ!」
キャスターはニヤリと笑って答えるのだった。
一方、その頃。
バンビエッタの爆撃を躱し、工房にダメージを与えようと画策していたセイバーだったが……。開けた場所に着いた途端、一斉に疑似サーヴァントたちが襲い掛かる。
「なにッ!? キャスターの疑似サーヴァントか!? だがっ!」
セイバーは襲い来るサーヴァントをも躱そうとするが、疑似サーヴァントたちは彼女に攻撃するのではなく、押さえ込もうとするような動きをする。
「……まさか!?」
セイバーが気付いた時には、たくさんの疑似サーヴァントが彼女の周りに群がる。
「くっ……離せっ!」
魔力放出で弾き飛ばしても、次から次へとやって来る疑似サーヴァントによって、ついに捕らえられるセイバー。もがき逃れようとするが、多勢に無勢で押さえ込まれてしまう。そして彼女はそのまま地面に組み伏せられてしまった。
「捕まえたわッ! このあたしを馬鹿にするからこうなるのよ」
バンビエッタが勝ち誇ったように叫ぶ。どうやら最初からこの場所に誘導し、疑似サーヴァントにセイバーの動きを封じさせる作戦だったらしい。
攻撃を利用するために誘導しているつもりが、彼女によって誘導されていたのだ。
「くっ……、貴様! 私をどうする気だ!?」
セイバーは組み伏せられながらも、バンビエッタを睨みつける。
「そんなの決まってるじゃない。あんたをあたしの爆撃で吹き飛ばすのよッ!」
「なん……だと……?」
セイバーは驚愕する。
わかっていたことだが、この絶望的な状況では、死刑宣告のように聞こえた。
「さ、あんたたち! セイバーをしっかり押さえておきなさい?」
バンビエッタの命令を受け、セイバーを立たせて周囲をがっちりと押さえ込む疑似サーヴァントたち。
そして、さらに絶望的なことが起きた。
「……そう、ご苦労様。セイバー、お仲間の女も捕まえたわよ?」
バンビエッタが顎で方向を示した先には、傷だらけになり、気を失っている舞弥の姿があった。
「舞弥! おのれ、これでは……」
叫ぶセイバーを見て、バンビエッタが勝ち誇ったように笑う。
「セイバー。あたしの魔力を撃ち込んだものは全て爆弾になる。つまりどういうことかわかるわよね? そう、あなたの周りは、爆弾だらけってこと」
バンビエッタは嬉しそうに語る。
セイバーは彼女の言葉の意味を理解し、逃れようとするが無駄な抵抗だった。彼女は疑似サーヴァントを爆弾にして、セイバーに致命傷を負わせる気なのだ。
「あんたを爆弾で吹き飛ばすわッ! でもね、楽には殺さないわ。恐怖と苦痛でのたうち回りなさい?」
彼女はそう言うと、両手をセイバーに向け、そして魔力を集中させていく。
「さぁて……覚悟はいいかしら?」
「くっ……、離せっ!」
セイバーは必死に抵抗するが、度重なる戦闘による消耗により空しく押さえ込まれてしまう。
バンビエッタが光弾を放ち、疑似サーヴァントにぶつかる。
と、その瞬間にセイバーを押さえていた疑似サーヴァントたちが彼女の至近距離で爆発した。いかに、彼女の強力な魔力で編み込んだ防具といえども凄まじい威力の爆発を至近距離で受けては、大ダメージは免れなかった。
「ぐあああっ!!」
「あははははっ! いい声ッ! もっと聞かせてちょうだいッ!」
バンビエッタは笑いながら次々と疑似サーヴァントに魔力を送り込み、爆発させる。セイバーの体が傷付き、血が飛び散る。まるで彼女をなぶるように、彼女の周囲で爆発が起き続けた。そして連鎖的に爆発した擬似サーヴァントたちの爆発が止んだ時、彼女はすでに虫の息になっていた。
しかしそれでも、まだまだ数多くの疑似サーヴァントたちが残されている。再び疑似サーヴァントを爆弾にする攻撃を用いることができるバンビエッタに対する対抗策は、すでに残されていなかった。
傷だらけで鎧もボロボロになりながらもなんとか立ち上がろうとするセイバーだが、すでに余力は残されていないのか、顔を上げる力さえ残っていない。
「あっはっはっはっは! いい気味ねぇ~!!」
バンビエッタが勝ち誇ったように笑うと、そこにキャスターも駆けつける。彼女はバンビエッタの勝利を見て、歓喜の声を上げる。
「さっすがバンビちゃん♪ ありがとーッ! セイバーちゃ~ん、息してる~? 今、どんな気持ち――――ッ?」
彼女は笑いながらセイバーを挑発する。
「……ぐっ……ううっ」
セイバーは悔しげに呻くことしかできない。
「あははっ! もう虫の息って感じ? でも、まだ殺しはしないわ。でもそうね、抵抗できないように痛めつけておかないとね」
バンビエッタはそう言うと、セイバーを拘束している疑似サーヴァントたちに命令する。
「死なない程度に可愛がってあげなさい!」
命令を受けた疑似サーヴァントたちは、セイバーの傷付いた体を掴み、いたぶる。
「……っ!……うああっ……」
彼女の腕や脚を掴み、鎧を脱がそうと手をかける者。腹を殴り、蹴り上げるもの。脚を掴んで逆さに吊し上げ、体重をかけて踏みつけるもの。
様々な方法で、セイバーを痛めつける疑似サーヴァントたち。彼女は鎧を脱がされながらも必死に抵抗するが、負傷した今の状態では力が入らずにされるがままになっていた。そしてついに鎧を剥ぎ取られ、防御力が格段に落ちてしまった彼女に、疑似サーヴァントたちは一斉に攻撃を加える。
「あはっ! ここまでやればもう十分でしょ。ジジ、あとはあんたの好きにしなさい。あたしは帰ってお風呂に入るわ」
バンビエッタはセイバーを見下ろしながらキャスターにそう言う。
「うん、ありがとーバンビちゃん! 帰ったらご褒美たくさんあげるからね――――ッ!」
キャスターがそう言うと、バンビエッタは工房の方に飛び去って行くのだった。
「あ……ま、待てっ! くっ……ううっ……」
セイバーはバンビエッタを呼び止めようとするが、もうそんな力も残っていないようだった。
そして、その場に残ったキャスターは、ゆっくりとセイバーの方に歩み寄るのだった。
「……ボロボロだね~ッ、セイバーちゃん♪ 苦しい? 痛い? 助けてほしい~?」
彼女は何も言わずに、強い眼差しでキャスターを睨みつける。その瞬間、キャスターは満足げな表情を浮かべる。
「へぇ~……ま~だそんな表情できるんだ~ッ……いいねぇ~」
そしてセイバーの髪を掴んで、顔を近づけるキャスター。彼女はそのままセイバーに言う。
「アイリちゃんだけじゃなくて、セイバーちゃんもいろいろと楽しめそうだなぁ――――ッ」
そう言って笑うキャスターの表情に、セイバーは背筋が凍るような恐怖を感じた。
「この子たちに命じて、セイバーちゃんのこと、穴という穴から犯してもらうのも面白そう。きっと素敵な顔が見れるよ~ッ!」
「くっ……、貴様ァッ!!」
セイバーは怒りに震えながら叫ぶが、今の彼女には何もできない。その様子を見て、キャスターはほくそ笑むのだった。
だが次の瞬間! セイバーの剣が聖剣エクスカリバーとして実体化し、まばゆい光と共にキャスターを斬りつけた。
「えっ——!?」
キャスターの肩から腹部にかけてバッサリと斬られ、鮮血が飛び散る。
何が起きたのかわからないといった感じのキャスター。それほど一瞬のことだった。
最後に残っていた魔力を放出し、宝具を解き放って斬りつけたのだ。
すでに巨大な光として発射するだけの魔力は残されていなかったが、剣の威力を上げることは可能だったセイバーは、キャスターが接近してくる機会に全てを掛けたのである。
「はぁ……はぁ……油断……したな……キャスター! 術者である……貴様さえ消滅すれば……!」
セイバーは懸命に気丈に振舞い、キャスターを睨みつける。すでに生命力の大半を失いながらも、彼女は最後の力を振り絞り、勝利への執念を燃やしたのだった。
しかし……。
「……あ~あ、浴びちゃった♪ ボクの血」
バッサリと斬られた傷口から大量の血を流しながらも、キャスターは平然としている。
「なっ!?」
驚くセイバーに彼女は続ける。
「ボクの血を浴びるとね~、ボクの言うことしか聞けない死体になっちゃうんだよね――――ッ」
その言葉にさらなる絶望を感じるセイバー。
しかし、先ほどの一撃に全てを掛けていたセイバーは力なく崩れ落ちる。それでもまだ、目だけはキャスターを睨みつけていた。そうしている間にも、せっかく付けた傷が見る見るうちに塞がっていくキャスター。
「血を……浴び……ると? ……ま、まさか! バーサーカーは……」
「あったり~! バーサーカーのおばさんはボクの血を浴びちゃったんだよね~。なんか特殊な異常な体質だったっぽくて、血が回るまでに時間が掛かっちゃったけど~」
そう言うと自ら指を噛み、血を出すとセイバーの目の前で垂らして見せる。
「セイバーちゃんも対魔力のランクが高いから、すぐにはゾンビ化しないだろうだけど、どれくらい耐えられるかな――――ッ? ね、セイバーちゃん♪」
血を浴び続ければ、キャスターの命令通りに動く
その姿もまた、キャスターにとっては煽情的に感じられた。
「あはッ! いいね~、その反応♪ でもさ、もう逃げられないよ?」
「……やめ……ろ……やめろ……やめろぉぉっ!うあぁぁぁぁっ!!」
セイバーは必死に抵抗するが、キャスターに組み伏せられる。
が、キャスターはそこで思いとどまる。
「あ~、一回ギルくんに見せた方がいいかなぁ……。ギルくん、セイバーちゃんに興味あるみたいだったし……」
彼女がそう呟いた時だった。
「いや、お前の好きにするがいい、キャスターよ。先の戦いと今の戦いを見て、興が冷めたわ。その騎士王とやらは、我の寵愛を得るに値せぬ」
いつの間にか、アーチャーがそこに居たのだった。
「あ……っ! ギルくん!」
キャスターは嬉しそうに言うが、アーチャーの目の奥には怒りの色が見えた。彼はセイバーを睨むように見ている。
「……え? なに? なんで怒ってるの――――ッ?」
キョトンとしたような表情で言うキャスターの言葉に、アーチャーは答えることなくセイバーから視線を外さずに続ける。
「あのような戦いを見せられて怒りを覚えぬ王などおらぬわ。 セイバーよ、あれほどの聖剣を手にしながら2度もキャスターに敗北し、そのような無様な醜態を晒すとは王の風上にも置けん奴よな。貴様には我が寵愛を受ける資格などない。ここで消えて失せよ」
アーチャーの怒りは、セイバーがキャスターに負けたことそのものではない。一度は自分の興味を引いておきながら、騎士王と名乗るにはあまりに情けない姿を見せられたことが怒りの理由だった。
そして彼はそのまま去ろうとするが……。
「え? ちょっと待ってよギルくん!ボクと一緒に、この子を飼わない?」
辺りに一瞬の静寂が訪れる。
その提案を聞いたアーチャーは少し黙った後、愉快そうに噴き出して笑う。
「キャスターよ! お前は、本当におもしろいヤツよな!」
そして彼はキャスターの目を見てうなずく。
「よかろう……、その案、気に入ったぞ。この騎士王めを飼いならすとするか」
「やったー! さっすがギルくん♪」
二人はそう言って笑い合うのだった。
そしてアーチャーはセイバーの方に向き直る。
「さて……セイバーよ。貴様には選択肢を与えよう。このまま大人しく死を待つか、それとも我が慰み者となり生を謳歌するか」
恐ろしいまでの冷酷な眼差しで見つめるアーチャーに対し、セイバーは力なく彼を睨みつける。
「くっ……誰が貴様の慰み者になど……」
そう言った瞬間、アーチャーはセイバーの髪を掴んで引き寄せる。そしてそのまま彼女の口を塞いだ。
「……っ!!」
セイバーは必死に抵抗するが、体中に力が入らない状態のため全く抵抗できない。
顔を振って逃れようとするが、それも許されなかった。
「わぁお! ギルくんったらいきなり大胆だねぇ~ッ!」
キャスターは目の前で行われているアーチャーによるセイバーに対する支配を、楽しそうに眺めていた。
「ん……んんっ!」
セイバーはなんとか逃れようともがくが、アーチャーの拘束からは逃れられない。
やがて口を離したアーチャーに、キャスターが尋ねる。
「セイバーはギルくんに任せてもいい? ボクはキレイキレイと一緒に、アイリちゃんと舞弥ちゃんのお世話をしないとだからさぁ~」
彼女の問いに、視線だけ向けてアーチャーは返事をする。
「構わん。近くにいられては、セイバー……いや、この小娘も恥じらうだろうからな」
そう言ってニヤリと笑いながら、セイバーに視線を戻す。彼女の瞳は強い意志を持ちながらも、揺れていた。
「はいは~いッ! お風呂とか、お部屋を使いたかったらボクの工房に来てね~ッ♪ じゃ、ごゆっくり――――ッ!」
キャスターはそれだけ言うと、工房へと戻って行った。
そして、その場にはアーチャーとセイバーが残された。セイバーは怒りの籠った眼差しをアーチャーに向ける。
「誰が貴様のような下衆にっ!」
だが、アーチャーはそんな視線など意に介さず続ける。
「ふん、その威勢がどこまで続くかな?」
彼はそう言うと、蛇のような視線でセイバーを見下ろすのだった。
「くそっ……アイリに続いてセイバー、舞弥までも……! 一体どうすれば……」
セイバーのマスターである衛宮切嗣は、頭を抱えて苦悩していた。
(セイバー無しでキャスターの工房に乗り込むのは、死にに行くようなものだ……加えてキャスターのマスターはあの言峰綺礼……まさに……絶体絶命だ……)
切嗣は思考を巡らせているが、これ以上の打開策は出て来ない。八方塞がりだった。
「アイリ……」
愛する妻の名を、無意識のうちに呼ぶのだった。