~今回のあらすじ~
埠頭の初戦闘~イスカンダルの招集による英雄王登場一歩手前
※シリーズ全体
以下の点にご注意ください。
・バッドエンド確定
・キャラ崩壊、設定ガバガバ
・介錯不一致の可能性
・ハードな展開や胸糞鬱描写あり
・後半までR-18描写無し
続々と冬木市に集ったマスターたち。その夜、埠頭にて聖杯戦争の火蓋が本格的に切られる。
セイバーとアイリスフィール・フォン・アインツベルンは、夜の海を見ていたところ、サーヴァントの気配を感じ取る。セイバーは、アイリスフィールの左腕を掴む。
「敵のサーヴァント?」
「はい、どうやらこちらの様子を窺っているようです。相手の出方を見るか……こちらから赴くか……」
「どうやらあなたに会いたいみたいだし、こちらから顔を出してあげる?」
そう言って、アイリスフィールはセイバーに微笑む。セイバーもまた、彼女に微笑み返す。
「望むところです」
こうしてセイバーとアイリスフィールは、サーヴァントの待つ場所へと歩み寄る。
「……こんばんは。まさかそちらから出て来てくれるなんて、私から奇襲をかけるような真似をしなくて済んだのは幸運ね」
セイバーとアイリスフィールに向かって話しかける声。それは美しい女性のものだった。
姿を探っていると、長い髪を一本に結った美しい女性が月夜に照らされて現れる。その手には一本の槍が握られている。
「……ランサーのサーヴァントに相違ないな?」
セイバーの問いかけに女性は答える。
「ええ、そうよ……。そういうあなたは騎士の矜持のようなものを感じさせる……セイバーで合っているかしら?」
女性の言葉にセイバーは頷く。ランサーはふぅと一息吐くと武器を構える。
「騎士なら勝負の前に名乗り合うところなんでしょうけど、聖杯戦争ではそうもいかないみたいね。……それじゃ始めましょうか」
ランサーはそう言うと、セイバーが武器を構えるのを待つ。
「ええ、異論はありません。そちらがその気なら……。アイリスフィール、ランサーはお任せを。ただ、敵のマスターが姿を見せないのが気がかりです。妙な策を弄するかもしれない。注意しておいてください。アイリスフィール、私の背中はあなたにお任せします」
セイバーもランサーに答えて剣を構え、ついに戦いが幕を開けるのだった。
激しい剣と槍のぶつかり合い。それを見つめるアイリスフィール、そしてランサーのマスター、ケイネス・エルメロイ・アーチボルト。
(ランサーの槍は相当鍛錬されているのはわかる。……だが、なぜこの剣の間合いに対応できる……?)
セイバーはランサーと打ち合いながら、思案する。
(私の剣を知っている……いや、私の知っている人物に彼女のような者はいなかったはずだ……まさか……まさか幻覚耐性かなにかを持っているのか?)
そんなセイバーの一瞬の心の隙を、ランサーは見逃さなかった。
「"さみだれ突き!"」
ランサーが叫ぶと同時に前方に鋭い突きを素早く繰り出す。
「クッ!!」
セイバーはなんとかその攻撃に反応するが、体勢を崩してしまう。
「ふふ、もう一度いくわよ! "さみだれ突き"!」
ランサーは再度突きの連撃を放つ。セイバーは咄嗟に身をひるがえして後方に退くが、着地と同時に踏み込んで魔力放出と共に剣を振るう。
だが、やはりランサーはセイバーの剣の間合いを見切っているかのように完璧に防いでくる。
「……やはりなランサー、あなたにはこの剣の間合いが見えているようだ」
「ふふ……。ええ、完璧な形は見えないけど、輪郭がはっきりと見えるわ」
それを聞いたセイバーは再び剣を構える。
「ならばそれを踏まえたうえで全力で斬らせてもらうだけだ。私の方も、あなたの槍のリーチと動きを把握した。隙を見せれば、その首をいただく」
セイバーの放つ魔力がさらに鋭くなる。同時に剣にも魔力が満ちていくのがわかる。
(この圧力は……。まずいわね、下手をすれば一撃でやられかねないわ)
ランサーは槍を構えて防御態勢を取るが、その口元には笑みを浮かべていた。
「ゆくぞ! ランサー!」
「ええ、望むところよ!」
セイバーの剣とランサーの槍が交錯する。その瞬間、周囲に激しい爆風が巻き起こるのだった。
ランサーとの戦いを少し離れた場所で見守るケイネスは、セイバーの能力の高さに舌を巻きながらも次の手を考える。
(ランサーのやつ、セイバー相手によく戦っているが……さて、他のサーヴァント共はいつ姿を見せる、か)
ケイネスはランサーとセイバーの戦いを見守りながら、他のサーヴァントが現れるのを待っていた。
そして戦いは加速していく……。
『キャスターの疑似サーヴァントを通した目からも、サーヴァントのステータスは読み取れるか?』
キャスターの疑似サーヴァントを通して、戦況を観察していた言峰綺礼に遠坂時臣が尋ねる。
「問題なく。セイバー、ランサー共に、能力値に恵まれています」
「なるほどな。さすがは、三騎士のサーヴァントと言ったところか……。が、話を聞く限りはランサーよりセイバーの方が厄介そうだな」
綺礼と時臣は戦況を見極めながら策を立てていくのだった。
セイバーとランサーの戦いは熾烈を極めていた。セイバーの魔力放出によって加速した剣撃を、ランサーは華麗に捌ききる。だが、セイバーはランサーが先ほどのさみだれ突きという技、もしくは大ぶりな突き技に出るタイミングを見計らっていた。
そしてその時は訪れる。セイバーの片足が一瞬、着地の体制を誤った僅かな隙を突き、ランサーが技を放つ……が、それはセイバーも狙っていたタイミングだった。
「もらったわよ、セイバー! "さみだれ突き"! ——!?」
ランサーのさみだれ突きの三突き目がセイバーの剣を弾き、最後の一突きがセイバーに命中しようという瞬間、セイバーは魔力を放出して一気に加速するとランサーの一突きを弾いてランサーに斬りかかった。ランサーの敏捷値がセイバーと互角だったため、咄嗟に飛び退くが胸元から腹部にかけて深くは無いものの傷を負ってしまう。幸いにも致命傷とまでは至らなかったようだ。
(やられたわ……! まさか私の技を利用するなんて!)
そんなランサーに一気に畳みかけんとばかりにセイバーが猛追する。
「もらったぞ! ランサー!!」
鍔迫り合いになったセイバーとランサー。傷を負っているランサーの方が不利に思われたが……
「甘いわよ! "ムーンサルト"!」
ランサーは叫ぶと、武器を捨て一度後方へと飛び退き、振り下ろしたセイバーの剣が戻る前にセイバーの顔を下から蹴り上げる。
「ぐふっ! ま、まだ!」
セイバーが蹴り上げられながらもランサーに斬りかかろうとするも……。
「"しんくうげり"! ハァッ!!」
ランサーが回転しながら横一線に蹴りを放つと、ただの蹴り技のはずが、まるで突風が吹いたようにセイバーの体は吹き飛ばされる。恐らくセイバーほどの耐久ステータスがなければ、この一撃でもかなりのダメージを受けていたことだろう。
セイバーののけぞりを見逃さず、その隙に槍を拾ったランサーは跳躍すると空中から連続でさみだれ突きを放つ。体勢を崩していたセイバーはその攻撃に対応できなかった。
「くぅっ!……しまった……!」
セイバーはなんとかしのぎ切るが、体勢を戻すまでにはいかない。
「とどめよセイバー! "雷光一閃突き"!!」
上空から凄まじい勢いで槍を突き立てるランサー。セイバーは間一髪のところで、その一撃を躱す。凄まじい勢いにも関わらず、槍は何故か地面を少しも抉らない。
「あ、あら? ミス?」
ランサーは驚きつつ、少し恥ずかしそうな顔をしている。
「セ、セイバー! 今回復するわ!」
アイリスフィールがセイバーの傷を回復する。
「治癒が効いています。ありがとう、アイリスフィール」
一方のランサーの方の傷もマスターであるケイネスの治癒によって回復していく。
「ああ……ありがとうございます、マスター」
攻防が一旦落ち着き、2体のサーヴァントは視線を交わす。
「……戦いの最中に相手をほめるなんて余裕のつもりかと思われそうだけど……。まさか、あの技の連撃を凌ぎきられるなんてね。素直に驚いたわ」
ランサーは軽く微笑み、素直にセイバーを賞賛する。
「いいえランサー。その賞賛、素直に受け取ろう。あなたの方こそ、ランサーと呼ぶには随分と格闘術も得意としている優れた戦士のようだ」
セイバーもまた、ランサーに賞賛を贈る。
だが、2人の讃え合いを破る者があった。
「アララララララライ!!」
チャリオットの手綱を握り、轟音と共に空からマスターを引き連れ駆け付けたのはライダーだった。
「双方剣を納めよ。王の前であるぞ。我が名は征服王イスカンダル。此度の聖杯戦争においては、ライダーのクラスを得て現界した」
雷を放ちながら、堂々と自らの真名を明かすライダー。その大胆さはもちろんだが、その堂々たる王威にセイバー、ランサー、アイリスフィール、その場にいた全ての者が息を呑み、彼を見つめる。
「……何を考えてやがりますかっ!? このバカはぁっ! っ!!」
ライダーのマスターであるウェイバー・ベルベットは、セイバーとランサーが死闘を繰り広げている最前線に急に飛び込んだことや、声高らかに自らの真名を明かしたことを非難するが、ライダーのデコピンで黙らせられてしまう。
「うぬらとは聖杯を求めて矛を交える巡り合わせだが、まずは問うておくことがある」
ライダーは周囲を見回しつつ、言葉を続ける。
「ひとつ我が軍門に降り、聖杯を余に譲る気はないか? さすれば余は貴様らを朋友として遇し、世界を征する快悦を共に分かち合う所存でおるが?」
あまりにも突然の勧誘に周囲の者たちは啞然とするしかなかった。特にウェイバーは口をパクパクさせて、自らのサーヴァントの無茶苦茶ぶりに混乱している。
「ふっ、ふふふっ!」
沈黙を破ったのはランサーだった。堪えきれないといったように笑い出すランサー。
その笑いはライダーに対する嘲りのようなものではなく、彼の言葉を面白いと感じて、本心から思わず出た笑いのようだった。
「あなた面白いわね。……だけど、これは聖杯戦争。私は必ずマスターに聖杯を捧げる。残念だけどその提案には乗れないわ」
ランサーは冷静に、かつ強い意志を持ってライダーに答える。セイバーも続く。
「そもそも……。そんな戯言を述べ立てるために、貴様は、私とランサーの勝負を邪魔建てしたというのか? 騎士として許し難い侮辱だ!」
ライダーはう~ん、と唸るとさらに提案する。
「待遇は応相談だが?」
「くどい!」
ライダーの交渉は決裂に終わったようだ。
「重ねて言うなら、私も一人の王として、ブリテン国を預かる身だ。いかな大王と言えど、臣下に下るわけにはいかぬ!」
「はぁ、こりゃあ交渉決裂か……。もったいないなぁ、残念だなぁ……」
交渉が決裂に終わったことが心底残念、といった具合に頭を掻くライダー。
「ライダーァ!!」
そんなサーヴァントの横暴ぶりに、彼のマスターであるウェイバーの嘆きが夜空に響き渡るのだった。
衛宮切嗣、久宇舞弥は狙撃ポイントに到着し、この状況を確認していた。
ウェイバーが尚もライダーに小言を言おうとした時だった。
「そうか。よりによって貴様か。一体何を血迷って私の聖遺物を盗み出したのかと思ってみれば……。君自らが聖杯戦争にするはらだったとはね、ウェイバー・ベルベットくん。君については、私が特別に課外授業を受け持ってあげようではないか。魔術師同士が殺し合うという、本当の意味。その恐怖と苦痛とを余すところなく教えてあげるよ。光栄に思いたまえ」
突如辺り一帯に声が響き渡る。
その声はウェイバーにとって、最も恐怖の対象であるケイネス・エルメロイ・アーチボルトのものだった。彼の言葉に怯えるウェイバー。
そのウェイバーの背中に手を置き、安心させるようにうなずくとライダーは、声の主であるケイネスを糾弾する。
姿も見せない臆病者では、仮に予定通り自分を呼び出していても役者不足であったと。
「おいこら! 他にもおるだろうが! 闇に紛れて覗き見している連中が!」
ライダーは大声で辺りに呼びかける。
「どういうことだ、ライダー」
セイバーが尋ねるとライダーはセイバーに向けて親指を立て、言う。
「セイバー、それにランサーよ。うぬらの真向きっての競い合い、誠に見事であった。あれほど清澄な剣戟を響かせては、惹かれて出て来た英霊がよもや余1人ということはあるまいて」
ライダーは手を掲げ、握る。
「聖杯に招かれし英霊は、今ここに集うがいい! 尚も顔見せを怖じるような臆病者は、征服王イスカンダルの侮蔑を免れぬものと知れ!」
ライダーの声が夜空に轟く。
遠坂邸で状況を見ていた時臣、そして疑似サーヴァントを通して状況を観察していた綺礼はその一言に顔をしかめる。
「これは……」
「はい……」
「まずいな……」
「まずいですね……」
2人の言葉が重みを帯びる。
工房にてせっせと疑似サーヴァント作製をしていたキャスターも、戦場に送り込んだ疑似サーヴァントを通して状況を見ていた。
「うわぁ、このライダー強そうだな~。……だけど、こんなこと言われたんじゃあ本物の王サマが黙ってないよね~」
キャスターは、そんなことを呟きながら肉を捏ねつつ映像を見続けるのだった。