~今回のあらすじ~
アインツベルンの森付近におけるセイバー&アイリスフィールとキャスターの戦闘~戦闘後のアーチャー、言峰との会話。
※シリーズ全体
以下の点にご注意ください。
・バッドエンド確定
・キャラ崩壊、設定ガバガバ
・介錯不一致の可能性
・ハードな展開や胸糞鬱描写あり
・後半までR-18描写無し
山奥の車道。
アイリスフィールは、セイバーを助手席に乗せて車を爆走させていた。
「結構スピード出るもんでしょ~? これ!」
「お、思いのほか、達者な、運転ですね……」
ガコンと車が揺れる。だが、アイリスフィールは楽しそうにしている。
「でしょ~! こう見えても猛特訓したのよ! 切嗣が持ってきてくれたオモチャの中でも、これが一番のお気に入りなの!」
「オモチャですか……」
セイバーは若干引き気味だ。それからしばらく運転を楽しむアイリスフィールと、やはり少し焦るセイバーだったが……。
「!? 止まって!!」
セイバーが慌てて制御をかける。車は人影の前で止まる。
「アイリスフィール、車から降りて、私の傍を離れないでください。……この気配、サーヴァントです」
2人が車から降りると、そこには白い衣装に身を包んだ少女が立っていた。
この時間にこんな森の中に彼女のような少女がいるはずがない。間違いなく、サーヴァントだ。
彼女は両手でほっぺたを押さえ、目を輝かせる。
「うわぁ~! セイバーとアイリスフィールだよね――――ッ? 」
「アイリスフィール、下がってください。このサーヴァントにはある種の狂気を感じます……」
セイバーが警戒心を強める。
「狂気だなんてひどいな~。まるでバーサーカーみたいに」
「まさか、貴様が本物のバーサーカーか!」
少女はセイバーの問いかけに、口を尖らせる。
「だから違うって~。ボクはキャスターだよ――――ッ!」
その言葉に2人は言葉を失う。
なぜならキャスターは遠坂邸に侵入して、アーチャーの宝具で討たれたはずだったからだ。その映像も実際に切嗣の使い魔が撮った映像で見ている。あれは嘘だったのだろうか。
キャスターは2人が固まっているのを見て、思い出す。
「あ、やっば! ボク死んだことになってるから、表に出ちゃダメだったんだ! まぁいっか! ここでセイバーを倒して、アイリちゃんを連れ帰ったらそんなのチャラでしょ?」
キャスターの言葉にセイバーは鎧と剣を具現化し、睨みつける。
「先ほどの戦闘の後だからと、随分舐められたものだなキャスター。貴様が得意とする陣地でもない、加えて貴様1人……。たった1人で私に勝てると思われるとは、屈辱だ」
「……それはどうかなぁ~? それに~、たった1人って本当にそう思ってる――――ッ?」
キャスターが合図をすると、後ろから虚ろな目をした戦士が20体以上出現する。
「くっ、こいつもバーサーカーの化け物と同じか!?」
「ううん! この子たちは疑似サーヴァント肉団子5~28号! ボクがお店で売ってる牛とか豚、鶏のお肉から作った疑似サーヴァントだよ~! 半額品でお得だったんだ~ッ!」
キャスターのふざけた物言いに、セイバーは怒りを覚える。
「貴様ッ!」
「怒った表情いいねぇ~! もっと見たいなぁ!」
2人のサーヴァントと20体の疑似サーヴァントの戦いが始まった……。
数分後、疲労と数の差を物ともせずセイバーは疑似サーヴァントのほとんどを切り伏せていた。
「あは、あははは! さすがはセイバーちゃんってこと~?」
「……貴様の疑似サーヴァントは確かに厄介だ。だが、変則的な動きを見せるバーサーカーの化け物どもには及ばない。故に、対処は容易い」
セイバーが剣をキャスターに突きつける。その後ろにはアイリスフィールの姿も見える。
「観念しろ、キャスター」
そう言ってキャスターに斬りかかるセイバーだったが、背後に殺気を感じ、飛び退いて躱す。
倒したはずの疑似サーヴァントたちが起き上がって、セイバーに剣を構えているのだ。
「バーサーカーの化け物どもがどれくらいなのかは映像でしか見てないからしらないけどさ~。ボクの肉団子くんたちは不死身なんだよね――――ッ! だってぇ、スーパーのお肉で作ってるんだもん。元々死んでるんだし、当然だよね~」
キャスターは愉快そうに笑う。
「な、なんだと!?」
「こいつらの動きを止めたかったら~、動けないように四肢を斬り落とすか、肉片すら残らないように吹き飛ばすしかないんだよね――――ッ!」
キャスターの無邪気かつ、不気味な言葉はセイバーを焦らせるには十分だった。
そしてキャスターは不安そうにするアイリスフィールに視線を向けると、ニヤリと笑うのだった。
「セイバー! 危ない!!」
アイリスフィールの叫びが木霊する。疑似サーヴァントのうちの1体が、突如として人の形からただの肉塊へと姿を変えて、セイバーを飲み込もうとする。キャスターに目を向けると、彼女が指先を動かして肉塊を直接操っているようだ。
(見ているだけではなく、こうやって戦闘にも参加できるのか!? ——だが!)
「はぁっ!!」
セイバーは剣を覆う風の魔力を解放し、その肉片を一瞬にして薙ぎ払う。
先ほど、キャスター自身が言っていたように、肉片すら残さず消し飛ばすことで、倒すこと自体は可能なようだ。
「ありゃあ~! 肉団子11号くんが死んじゃった~!! うわぁぁんっ!」
キャスターは疑似サーヴァントを倒されて、驚いたような表情を浮かべる。だが……。
「……あれ? 10号だっけ? ま、いいや~!やっちゃえ、肉団子くんたちッ! セイバーちゃんを泣かせちゃお~!」
すぐに笑みを浮かべながら拳を突き上げるキャスターだった。
その後も、セイバーは疑似サーヴァントを斬り捨てていく。
だが、先ほどの埠頭での戦闘による消耗と、宝具を勝手に使うわけにはいかないという制約で、セイバーは状況を打開することができない。
倒した疑似サーヴァントとは別の疑似サーヴァントと交戦しているうちに、先ほど斬り捨てた疑似サーヴァントがすぐに戦線に復帰してしまう……。これではキリがない。
セイバーは苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべる。アイリスフィールもセイバーが状況を打開できないことに、焦りを感じ始める。
「アイリちゃ~ん! 不安なのかな――――ッ!?」
キャスターが不意にアイリスフィールに話しかける。
「えっ!? ……わ、私たちは決して負けない。負けるわけにはいかないの!」
アイリスフィールの言葉を聞いたキャスターは……。
「へぇ……。怯えてるアイリちゃんも可愛いね!」
「な、なんですって!?」
敵サーヴァントから予想もできないような言葉をかけられ、アイリスフィールは絶句する。
目の前の少女の姿をしたサーヴァントに恐怖を感じるアイリスフィール。
セイバーは彼女を庇うように前に出る。
「アイリスフィール、安心してください。あなたは必ず守り抜きます」
「そ~んなこと言っちゃってさ~。本当は戦闘で消耗してキツイでしょ――――ッ? 無理しない方がいいんじゃな~い?」
肩で息をするセイバーに対して、次々と疑似サーヴァントを差し向けるキャスター。
(……これ以上こいつらの相手をしていても、無駄に消耗するだけだ……。ならば、魔力放出による一点集中で、術者のキャスターを討つ!)
セイバーは戦いの方針を決めるのだった……が、その時。
「令呪をもって命ずる。キャスターよ、戦闘行為を中止し、私の元へと戻るのだ」
キャスターのマスターである言峰綺礼が令呪を使用したようだ。
「ちょっ! キレイキレイ! どういうこと~ッ?」
「宣言したはずだ。令呪をもって命ずる。キャスターよ、マスターたる私の元へと戻れ」
「あ~! もう! わかったって~!」
言峰綺礼の令呪に強制されたキャスターは、不満そうにセイバーたちのもとから消える。疑似サーヴァントたちもまた、キャスターと共に姿を消すのだった。
「アイリスフィール、お怪我は?」
「い、いいえ……セイバー、あなたこそ大丈夫?」
セイバーはうなずく。
なんとか凌ぎきったものの、あれだけしぶとい敵は脅威になる、とセイバーは感じるのだった。
「さて、綺礼のサーヴァント、キャスターよ。各陣営がキャスターは死んだものと思わせる策を打っておきながら、こんなにも早々に自らセイバーたちの前に姿を晒したのだ。何か申し開きはあるか?」
戻ったキャスターに対して怒りを浴びせているのは、マスターの言峰綺礼ではなく、同盟相手でアーチャーのマスターである遠坂時臣だった。
彼は、キャスターが死んだ設定であった方が諜報活動がしやすいと思っていたにもかかわらず、自ら生きている姿を晒したため、不機嫌になっていたのだった。
「ご、ごめんってぇ~! え、え~っと。ボクもちょっとお外に出たかったというか……。弱ったセイバーからマスターを誘拐できるかな~って思ったというか……」
キャスターは明後日の方向を見ながら、頬を掻く。
「ふざけるのはよせ……。君の軽率な行動は我々の同盟を危険に晒すかもしれないのだぞ?」
時臣は冷ややかな目でキャスターを睨む。
綺礼もまた、冷たい視線をキャスターに向ける。
先ほどのように謝るものだった思っていた2人……だが。
「……は? 別に全然ふざけてないんですけど? ボクはボクなりに考えて動いてるんだからさぁ。令呪まで使って邪魔してくれちゃって」
いつものふざけた調子は一切なく、その声は静かだが冷たく鋭いものだった。
これにはさすがの時臣と綺礼も肝を冷やすのだった。
「綺礼……あのサーヴァントが我々にとって危険と判断したら、すぐに令呪を持って始末するのだ……」
「は、はい……我が師よ」
時臣の言葉に返事をする綺礼だが、先ほどのキャスターの豹変ぶりに驚きを隠せない様子だった。
「おい、雑種。少し話がある。我と来るがいい」
アーチャーことギルガメッシュが、時臣の部屋から出て来たキャスターに話しかける。
「なに? ボク忙しいんだけど?」
彼女の瞳は青く光り、アーチャーを冷たく見つめる。アーチャーを怖がるようなそぶりを見せていた、これまでのキャスターとは大違いだ。
「フ、フフハハハ! それが貴様の本性か!? 悪くない、悪くないぞ雑種。この同盟において楽しみは綺礼のみだと思っていたが……。なかなかどうして、貴様も見応えがありそうではないか! まぁ座れ!」
「……」
アーチャー……こと、ギルガメッシュに促され、酒を飲む彼の前に座るキャスター。
彼の上機嫌そうな表情に、キャスターも先ほどまでの憤りが覚めていく……。
「はぁ……。王サマがボクに何の用? ボクなんかに興味なんてないでしょ――――」
「そう腐るな、雑種よ。我は貴様に興味が湧いたぞ」
ギルガメッシュの言葉にキャスターは目を丸くする。
「……ふ~ん? ボクのどこがそんなにキミの琴線に触れたの?」
「初めはつまらん道化だと思っていたのだが……。先のセイバーとの戦い、時臣への隠すことのない苛立ち、なかなかによかったぞ。……まぁよい。それよりも貴様、あのホムンクルスの人形に興味を持ったようだが?」
ギルガメッシュの言葉を受けて、キャスターの表情に笑顔が戻る。
「うん! そうなんだよね――――ッ! あの子はさ、きっと特別なんだよ。だからこそ壊したいんだよね~。誰かにとってかもしれないし、その他のマスターにとっても、なのかもしれないあの子をさ……」
嬉々として語るキャスターの表情を見ながら、ギルガメッシュは美味しそうにグラスを呷る。
その表情はさぞ満足げだ。
「ふぅん、なるほどなるほど。度し難い程に醜悪だが、それでいて自らの欲望に忠実。悪くないぞ雑種よ……」
「そうかなぁ~。いや~、でもキレイキレイなんかの方が実はいい感じなんじゃない?」
酒をさらに呷ろうとしていた手を止めてギルガメッシュはキャスターに視線を向ける。
「……ほぅ、わかるのか? 奴の歪みが?」
「うん? う~ん、なんとなくだけどね~」
その言葉を聞いた瞬間、ギルガメッシュはこれまでで一番愉快そうに笑いながら、酒を飲む。
「キャスターよ、直観でそこまで見抜くとはな。お前は面白い奴よ……。よい、多少の無礼を許そう。これからも我が目に留めるに相応しいか問われることになろうが……此度のつまらぬ戦いにおいて、良い暇つぶしにはなろうよ」
「えへへっ! よろしくね~、王サマ」
2人はグラスを交わすのだった。
キャスターはギルガメッシュとの会話を終えて上機嫌で遠坂邸を後にしていた。
「キャスター、随分上機嫌だな……」
工房の前で綺礼が待っていたようだ。
「まぁね~。どこかの誰かさんと違って、王サマが楽しそうだったからさぁ! そんなことよりさ、キレイキレイ!」
キャスターはいつもの笑顔に戻って、綺礼に語りかける。
「キレイキレイはさぁ、聖杯に何を求めるの? 何を願うの?」
「なんだ? 突然」
キャスターの質問に、綺礼は訝しがる。
「別に~。まだ教えてくれないのかなって思って」
キャスターの言葉に、綺礼は眉をひそめる。
「ボクとしてはさ、キレイキレイとは仲良くしておきたいんだよね~。だってキミって面白いもん!」
「……私はお前のような存在を嫌悪する」
「ほぇ? なんで~?」
「自分の欲望に忠実で、それでいてそれを隠そうともしない……。見ていて反吐が出る……」
「……ひっど! でも、別にそれはキミも同じじゃないかな~?」
「……なに?」
キャスターは綺礼にさらに近づくと、彼の頬に手を添える。
「キレイキレイだって同じでしょ?」
手を払い除け、否定しようとするもなぜか言葉が出て来なかった。
そんな綺礼を見てフッと笑うと、キャスターはその場を立ち去るのだった。
「私が……貴様と同じだと……? サーヴァント風情が知ったような口を……! なぜ奴に言われるとこうも腹が立つのか……」
綺礼は思考を巡らせるが答えは出ない。
もやもやとしたようなすっきりしない気持ちのまま、ある目的のために歩き出すのだった。