※この作品はR-18です。

堕ちた聖職者と絶望の正義   作:彼処舐ノ助嗅過

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Fate/Zeroのクロスオーバーです。

~今回のあらすじ~
セイバー、ランサー、アサシンvsバーサーカー&バーサーカーもどき、使い魔の戦い

※シリーズ全体
以下の点にご注意ください。
・バッドエンド確定
・キャラ崩壊、設定ガバガバ
・介錯不一致の可能性
・ハードな展開や胸糞鬱描写あり
・後半までR-18描写無し


第6話「狂夫人と2人の娘」

切嗣と舞弥が銃火器の準備をしているなか、遠見の水晶玉で侵入者を発見したアイリスフィールとセイバー。

「ダニエラ! 来てあげたわよ? まったく貴女ったら、簡単に掴まっちゃうだなんてどこまでおバカなの? お母様が呆れるわよ?」

水晶玉に映っているのはどうやらバーサーカーではなく、釣り餌にしているバーサーカーもどきと同等の存在のようだ。顔立ちがよく似ている。

「カサンドラお姉様! ここよ!」

釣り餌の女性、ダニエラは姉であるカサンドラの声が聞こえたことで、大声で助けを求める。

侵入してきたカサンドラは、昨夜倒したバーサーカーもどきと同様に地面から無数の骸骨やミイラのような化け物を呼び出す。

その手にはやはり、細身のロングソードやハルパー、ハルバードを手にしている。

 

「くっ、やはりそうくるか……」

セイバーは苦虫を嚙み潰したような表情をする。あの時、ランサー、ライダーの3人で相手してなお、その数の前には宝具の使用を考えさせられたほどだった。今回はライダーとランサーではなく、アサシンのみで純粋な戦闘能力ではライダーやランサーに軍配が上がるであろうため、セイバーとアサシンの2人だけで相手できるのだろうか、とセイバーは考えてしまう。

「本物のバーサーカーが現れるまで様子見といきたいが、あの釣り餌まで解放されたら厄介だな」

切嗣の言葉を聞いたアイリスフィールはセイバーにうなずく。

「セイバー、あの敵を倒して!」

「はい!」

セイバーは力強くうなずくと、カサンドラ率いる化け物軍団の元へと向かう。

 

アサシンも途中で合流する。

「お1人では数が多いでしょうから、お手伝いしますね」

彼女は木々を跳ねるようにして、飛ぶように移動しながらセイバーに声をかける。

「アサシン、助かる! ……だが、もしも途中でバーサーカーが出現した場合は、作戦通り後方に下がってバーサーカーの観察を!」

「ええ、わかりました。一緒に頑張りましょうね」

アサシンはニッコリと笑う。その笑顔を見たセイバーも力強くうなずいた。

「ああ、共に戦おう!」

 

カサンドラに近づこうとすると、骸骨やミイラのような化け物が行く手を阻むが、セイバーはそれを容赦なく斬り伏せる。

この程度の敵ならば通常の英霊1人で十分対応できる……しかし、それも数が多くなってくると、やはりじわじわと体力と魔力を消耗させられてしまう。

セイバーに迫った敵の刃の1つから、アサシンが蹴り技でその敵を弾き飛ばして庇う。

「私の刀は、こういったすでに細胞まで死んでいる敵と戦うのには向いていませんが……」

そう言ってアサシンは腰に差した刀を抜き、セイバーの隣に並ぶ。それはかなり細く、敵を斬るというよりは突き刺すことに特化した形をしていた。

それでも化け物の喉元や頭部などの弱点を正確に突き刺して戦うアサシン。鈍重な化け物どもの中にあって、アサシンの身軽さは異彩を放っていた。

(なんと軽やかな動きだ……まるで蝶のようだ……)

セイバーは彼女を援護しながらも、その動きに目を奪われてしまう。

 

「セイバー!」

アサシンに見とれていたセイバーに向かって、急接近したカサンドラがハルパーを横薙ぎにする。それは辛うじてセイバーの鎧で防ぐことができたものの、その一撃でセイバーの動きは完全に止められた。

「くっ! いつの間に!? ……昨夜と同じ、霧のようになる能力か!?」

セイバーを弾き飛ばしたカサンドラは、再び霧化して捕らえられているダニエラの元へと向かう。そして、ハルパーで縄を斬りつけて彼女を解放した。

「ありがとうお姉様!」

解放されたダニエラが姉に抱きつくと、カサンドラも嬉しそうに妹を抱き返す。

しかし、すぐに2人はセイバーへと向き直るのだった。

 

「しまった! ヤツまで解放されては!」

セイバーが叫ぶと、恐れていたことが現実になった。

ダニエラも地面から無数の骸骨やミイラの化け物を召喚したのだ。カサンドラのものと合わせるとその数は尋常ではない。

もはや骸骨やミイラの軍勢は、森どころかアインツベルン城まで侵攻してきそうなほどの数だった。

「まったく……あれだけの軍勢をここまで用意できるとは……」

切嗣が苦虫を噛み潰したような表情で呟く。

 

 

城の中では……。

「くそっ……状況は最悪だな……。舞弥、アイリを連れて城から逃げてくれ。セイバーたちとは逆方向に」

状況を読んだ切嗣の指示を受け、舞弥は黙ってうなずく。

「ここにいては、ダメなの?」

アイリスフィールは不安そうに尋ねる。

「セイバーが離れた場所で戦っている以上、安全ではない。僕と同じことを考えている奴だって、いるだろうからね」

切嗣はそう言って再びパソコンの監視カメラ画面に目を落とす。舞弥はアイリスフィールに向かって、うなずいた。

「わかったわ……。はっ——!?」

ドクンとした感覚があり、胸にざわつきを感じるアイリスフィール。

「どうした? アイリ」

切嗣が尋ねると、彼に視線を向けてアイリスフィールは返す。

「どうやら、新手がやって来たみたい……」

 

 

セイバーとアサシンの2人だけでは、その軍勢に対処しきれず、徐々に後退していく。……だが、その時だった。

「やあぁぁっ!!」

勇ましい女性の声と共に、セイバーたちの前に迫っていた化け物たちが吹き飛ばされる。セイバーはその声を聞いて、それが誰なのか確信する。

「ランサー!」

セイバーが彼女の名を呼ぶと、彼女は振り返る。そして、美しくも雄々しき笑顔で応えた。

「マスターからの指示は、バーサーカーとその軍団の始末……。セイバー、アサシン、助太刀するわよ!」

「ランサー、助太刀感謝する!」

セイバーが感謝の意を告げると、ランサーは敵に向かって構えた。

3対100……いや、それ以上か? それでもセイバーたち3人は臆する様子は全くない。

ランサーの参戦によって、状況は再びどちらが優勢かわからない状態に戻るのだった。

 

 

「うんうん、やってるね~! ボクは疑似サーヴァントの視界を見て、アイリちゃんを探さないとね~」

アインツベルンの森から少し離れたところにも、サーヴァントたちの激しい戦闘の音が聞こえていた。キャスターは疑似サーヴァントの視点と、その戦闘音を聞き、サーヴァントたちはバーサーカーの軍団に釘付けになっていると確信する。

「昨日みたいに、肉団子くんを連れて行ったらアイリちゃん怖がっちゃうしなぁ~。う~ん、やっぱりボク1人で会いに行くべきかな~? でも怖がってるアイリちゃんも可愛いしぃ~。いやいやでもでも、今回はアイリちゃんをお迎えするんだから、ちゃんとしないとだよね――――ッ!」

彼女は頬に手を当てて、恥ずかしそうに身悶えする。

「……あーあ、この聖杯戦争ってやりにくいなー。能力が宝具っていうのに固定されちゃうし……。別にそれなりに楽しければいいんだけどさーッ」

 

その時だった。

「キャスター。指示も無いのにアインツベルンの城へと向かっているな? ……いや、まぁそれはいい。衛宮切嗣は殺すな。奴に会って確かめたいことがある」

キャスターのマスター、言峰綺礼から彼女に対して連絡があった。

「もちろん! キレイキレイのメインディッシュを奪うような無粋な真似はしないよ――――ッ!」

彼女は明るくそう答えるのだった。

「えっへへ! アイリちゃん、ボクのモノになってね!」

そう呟く彼女の瞳は不気味な妖しさを宿していた。

 

 

アインツベルン城の前。

「……」

セイバー、ランサー、アサシンの3人。そしてカサンドラとダニエラが睨み合う。その周囲には無数の骸骨やミイラのような化け物たちが蠢いていた。

ランサーは槍を構えて言う。

「少し、本気でいかせてもらおうかしら……!」

その言葉と同時にランサーの雰囲気が変わった。

「"さみだれ突き"!!」

セイバーが使用された技であるさみだれ突きが敵に対して放たれる。その直後。

「"しんくうげり"!」

その一撃で敵陣が一歩後ろに下がった。

「セイバー、アサシン。少し下がっていなさい」

ランサーはそう言うと槍を掲げる。すると槍全体に黒い雷が纏う。彼女は槍をそのまま地面に突き刺した。

「"ジゴスパーク"!!」

すると凄まじい雷が数十体の化け物を一気に葬り去る。その一撃にセイバーもアサシンも驚きを隠せない。

 

「ランサー、今のは一体……?」

「とくぎってやつよ。だけど、敵はまだ残ってるわ……まだまだいくわよ! はぁ! "ばくれつきゃく"!!」

彼女は敵に向けて鋭い蹴りを何度も放つ。その蹴りで数体の化け物が倒れる。

「くらえ! 満月の舞!ハァアアッ!」

舞うような蹴り技を何度も放つランサー。

「セイバー! アサシン! 一気にあの2体を仕留めましょう!」

「承知した、ランサー!」

「はい、あなたに続きますね」

3人のサーヴァントは、ランサーの開いた道を一気に突き進み、術者であるカサンドラとダニエラを討ち取ろうとするが……。

 

「お母様! お母様!」

カサンドラが叫ぶ。しばらくすると辺りの雰囲気が一変する。

「待たせたわね」

冷たい女の声が聞こえ、セイバーたちが振り返るとそこには3m程はあろうかという大きな女性が彼女たちを見下ろしていた。大きな帽子と白いドレスは身分の高い貴婦人を思わせる。

「カサンドラ。ダニエラ。やられた分のモロアイカを呼び出しなさい。サンカもね。魔力のことは気にする必要はないわ。どうせあとでたっぷりと血を飲んで補給するのだから」

そう言って美しくも妖しい笑みを浮かべる女性。

3人のサーヴァントは彼女の迫力に一瞬、面食らってしまう。

 

「ええ、お母様」

カサンドラはそう答えると、再び地面から大量の化け物を呼び出した。

せっかく倒した化け物たちが再び現れ、ランサーの作ったチャンスは無かったことにされてしまう。

さらには、これまでとは別のタイプの化け物も出現する。

両腕がコウモリの羽のような形状に変異し、舌が異常に伸びる化け物が出現し、アインツベルンの森の上空を飛び始めたのだ。近接戦闘タイプの3人のサーヴァントとの相性は最悪だ。

「くっ! なんて数だ!」

セイバーが、眼前の化け物たちを睨みつけながら零す。

「これじゃあキリが無いわね。じわじわと消耗させられるだけだわ……」

「この数相手では2人にだけお任せして、バーサーカーの観察をする……というわけにもいきませんね……」

ランサーもアサシンも、この状況に歯嚙みする。

 

「貴様がバーサーカーか!?」

セイバーの問いに、カサンドラからお母様と呼ばれた大きな夫人はニヤリと笑って答える。

「ええ、そうよ。大切な娘たちを助けに来たのよ。……それから、もう1人の娘……昨夜アサシンに殺されたベイラの復讐をしに来たわ。覚悟なさい?」

その瞳は3人のサーヴァントを冷酷に睨みつけているのだった。

 

 

「Fervor,mei,sanguis」

ランサーのマスター、ケイネスはそう呟き、試験管から水銀を垂らした。そして……。

アインツベルン城の重い扉を変化したその水銀で容易く切り飛ばし、侵入した。

「アーチボルト家9代目当主、ケイネス・エルメロイがここに仕る。アインツベルンの魔術師よ。求める聖杯に命と誇りを賭して、いざ尋常に立ち会うがいい」

彼は堂々と名乗りを上げる。しかし、返答はない。ケイネスは自らを監視しているであろうカメラに気付く。

数歩進んだ瞬間に、トラップが作動し、数千発ものクレイモア地雷がケイネスを襲う。……が、変化した水銀によってケイネスは無傷だった。

「からくり仕掛けダミーとは……。ここまで堕ちたかアインツベルン。よろしい! ならば、これは決闘ではなく、誅罰だ!」

切嗣はケイネスを迎えつために部屋を出ようとする。

こうして、サーヴァント同士だけでなく、マスター同士の戦いも幕を開けるのだった。

 

 

「カサンドラ、ダニエラ。あなたたちは後方で次々とこの子たちを呼び出しなさい。ベイラをやったアサシンは私が殺すわ」

バーサーカーは、2人の娘に指示を飛ばす。

「奴は……本当にバーサーカーなのか!?」

セイバーたちは驚きを隠せない。

狂化しているはずのバーサーカーが、自我を保ち、作戦まで立案しているからだ。

「さて、どのサーヴァントも美しく若い娘の姿をしているわね……。さぞ美味しい血を流すことでしょう。バラバラに切り裂いて、その血を浴びるとしましょう」

バーサーカーはそう言いながら、セイバーたちに近づいて来る。

 

「喰らいなさいッ! "さみだれ突き"!!」

ランサーは先手を打たれまいと、その敏捷値を活かしてとくぎを発動する。が、彼女の槍は全くといっていいほど刺さらない。

「そんな……!?」

ランサーは驚きを隠せない。

これまでも様々な化け物やサーヴァントと戦った経験があるが、彼女の攻撃が全く効かないということはなかったからだ。

ランサーの背後から跳び上がったセイバーがバーサーカーを斬りつける……が、やはり彼女の体は斬れず、血も出ない。

「……なぜだ! なぜ私の剣が効かない!」

セイバーは叫ぶ。するとバーサーカーは言った。

「あっはっはっは!……その声。若くて美しいわね……」

彼女は高らかに笑う。そして、ゆっくりとセイバーの頰に触れた。

「セイバー、あなたとっても綺麗な目をしているわね……。その目、くり抜いて持って帰ろうかしら?」

彼女の目は狂気を孕んでいるが、それでもなお美しさを失っていない。

アサシンはカサンドラたちが召喚した化け物たちを倒しながら、バーサーカーの様子を観察していた。未だ攻撃行動もとっていない彼女を警戒する。

 

「……黙れ! 貴様になど屈しない!」

セイバーがバーサーカーの手を振り払って叫んだ時だった。

バーサーカーの爪が一瞬で伸び、まるで五本の鋭い鉤ヅメのように変化したかと思うとセイバーに斬りかかる。

セイバーはバーサーカーの攻撃を躱しきれず、傷を負ってしまう。魔力で編んだ鎧を着ていたセイバーだったが、それでも少量ではあるものの血を流すほどの切れ味を誇った。

「くっ! この鎧に傷をつけるとは……。まともに一撃を受けるわけにはいかない……」

セイバーは傷口を押さえながら、バーサーカーを睨みつける。

バーサーカーは爪に着いたセイバーの血をペロリと舐め、満足げな表情を浮かべる。

「ふぅん、これがセイバーの血……。良いわぁ、癖になりそう」

バーサーカーは舌なめずりをするのだった。

 

「セイバー! 大丈夫?」

ランサーが叫ぶ。するとセイバーは立ち上がり、再び剣を構える。

「ええ、問題ありません!」

アサシンはカサンドラたちの呼び出した化け物たちを相手にしつつ、バーサーカーの様子を観察を続けていた。

(爪が一瞬で……。それに一切の傷を負わない肉体……。代謝スピードが尋常じゃないくらい早い? そもそも本当に傷を負っていない? それとも物凄いスピードで傷が完治している?)

考えているとアサシンとバーサーカーの目が合った。

 

「お前よ! アサシン! 私の可愛いベイラを殺した!」

アサシンは落ち着き払って答える。

「これは聖杯戦争ですよ? 敵勢力は倒して当たり前じゃないですか?」

いつものように笑顔で答えるアサシンだったが、彼女自身、まだ突破口を見つけていない段階で自分に狙いを定められることには焦りを感じていた。

「黙れッ! ベイラが味わった苦しみを、お前の体にも味わわせてあげるわ! 細切れにして、血を一滴残らず絞り出してやる!」

バーサーカーは叫び、アサシンに攻撃を仕掛ける。アサシンは華麗に跳び回りながら避けていく。

(あの爪、一体どれほどのスピードで伸縮するんでしょう……。私の毒が通用するかどうか……。あの爪の一撃をもらったら致命傷になり得る……)

アサシンはバーサーカーの爪を躱しながら考えるが、周囲の化け物たちにも気を配らなければならない。

身軽だが、その分耐久力に難がある。バーサーカーの鋭い一撃をもらってしまえば、一撃で致命傷になってしまうだろう。

 

セイバー、ランサーたちは四方から襲ってくる化け物たちをなぎ払いつつ、カサンドラとダニエラへの突破口を探していた。

「このままでは……」

切嗣からの指示は無いものの、宝具の使用を本気で考えていた。

地上の化け物たちだけに気を付けていると、今度は上空からの奇襲に苦しめられる。

「ぐぅっ!? は、離しなさいっ!」

上空から舌を伸ばしてランサーの首を絞めつける化け物。別の1体はセイバーの足元に舌を伸ばして逆さづりにして、上空へと引き上げようとする。

「ランサー! セイバー!」

アサシンは2人を心配したが、バーサーカーの攻撃を躱すので精一杯だ。

その時だった。

森の奥から光の矢のような物が2発放たれ、ランサーとセイバーの動きを封じていた2体の化け物が消滅する。

 

「セイバーちゃ~ん! 助けてほしい――――ッ?」

森の奥から月明かりに照らされて姿を現したのはキャスターだった。その手には光る霊弓を携えている。

「キャスター! くっ、こんな時に!」

彼女の姿を見たセイバーは、歯噛みする。

「ちょ、ちょっと待ってよ~! 助けてあげたじゃん! 最初から敵って決めつけないでほしいな~」

キャスターは目の前で両手を振ってあたふたする。

「昨晩、私とアイリスフィールを襲撃しておきながら、よくもそのようなことが言える!」

セイバーはキャスターに剣を向けたまま微動だにしない。

 

ランサーは、キャスターがすでに消滅していたと思っていたためか、目を見開いて驚く。

キャスターは遠坂邸を襲撃してアーチャーによって消滅させられたことになっているが、それはキャスター作の疑似サーヴァントを使用した偽装工作だったのだ。そのことに気付いていたのは、実際に本物のキャスターに昨夜襲撃されたセイバー陣営と、透明化と気配遮断で調査中に疑似サーヴァントが複数動いていることに気が付いたアサシン陣営だけであった。

「キャスターはアーチャーに敗れたはずじゃ……?」

ランサーがそう呟くと、キャスターは彼女に向かって手を振った。

 

「ボクが本物のキャスターだよ~。ランサーちゃんも助けてほしい?」

キャスターはそう言いながらセイバーたちの方へ近づいてくる。

彼女の背後には、彼女が従える疑似サーヴァントの姿がある。

昨夜セイバーと戦った時よりもさらにその数は多く、50体ほどはいるだろうか。カサンドラとダニエラの化け物たちと合わせると、大規模な戦場になる。

 

キャスターのことは信用できないセイバーだが、かといってキャスターとその疑似サーヴァント軍団まで敵に回ってしまえば、ますます状況は不利になる……いや、それよりも深刻だ。

セイバー、ランサー、アサシンにとって今最も脅威なのはバーサーカーなのだ。

カサンドラとダニエラの化け物たちをキャスターとその疑似サーヴァント軍団が抑えてくれるのであれば、カサンドラたちを狙うこともでき、状況を打開できるかもしれない。

「……わかった。協力しよう」

「状況が状況だものね」

「確かにそれしか選択肢は無さそうですね……」

ここでキャスターと手を結ぶのが、最善の策だと考えた3人はそう答えるのだった。

 

「決まりだね~ッ! それいけ、ボクの疑似サーヴァント肉団子5~60号くんたち!!」

キャスターが号令をかけると、彼女の背後に控えた疑似サーヴァントたちは各々の武器を手に、カサンドラとダニエラの化け物に襲い掛かる。

数では化け物たちが勝るものの、疑似サーヴァントたちは1体1体が思考しているような動きで戦い、戦士としての格は圧倒的にキャスターの疑似サーヴァントの方が上手だった。

(昨夜戦った時よりも動きが洗練されている……!?)

セイバーは、昨夜自分が戦った時よりも戦闘能力が向上している疑似サーヴァントたちに、少なからず不安を抱く。

今は味方だが、これが敵になるとすれば、その脅威は計り知れない……。

 

「突然出て来て、娘たちの邪魔をするつもりキャスター?」

バーサーカーは爪を構えて、キャスターを睨みつける。

「うわぁ~、おばさん、でっかいね~ッ! 触ってみたいな~! アイリちゃんのところに真っすぐ行かないで寄り道して正解かもね~」

キャスターはバーサーカーを見て目を輝かせる。

3mはあるであろう身長を見ての発言ではなく、彼女はバーサーカーの豊満すぎるバストを見てそう言ったのだった。

だが反応したのは、バーサーカー当人ではなく娘のカサンドラだった。

「おばさん!? あなたみたいな小娘が、お母様のことを侮辱したのかしら? 許せない……!」

キャスターは笑顔で誤魔化そうとするが、カサンドラの怒りは収まらない。

「許さないわ! あなたから血祭りに上げてあげる!!」

 

「血祭りに上げるって……誰が血祭りに上げるの――――ッ!?」

キャスターの発言に、カサンドラとダニエラが周りを見るとあれほどたくさんいた化け物たちの数がかなり減っていた

地上の化け物たちは、キャスターの疑似サーヴァント軍団によってその数を減らされていた。

そして上空から迫る下の長い化け物たちだったが、キャスターはまるでアーチャーかと勘違いするほど正確に矢を放って、化け物たちの頭部を撃ち抜いていた。

「やった~! 当たった当たった~♪」

まるで射的のゲームでもしているかのように、楽しみながら次々と怪物を撃ち抜くキャスター。

 

「もう許さないっ!! お母様を侮辱し、お母様の前でこの私に恥をかかせるなんてっ!」

カサンドラは霧のように移動しながら、キャスターに近付き、手にしたハルパーで斬りかかろうとする。

「カサンドラ、前に出過ぎよ! 下がりなさい!」

バーサーカーが叫ぶも、逆上したカサンドラにはその声が届かない。

「殺してやる! 殺して剥製にして飾ってあげるわ!」

すでに召喚した化け物の多くが消滅し、再召喚が間に合っていないなか、キャスターに突っ込んでいくカサンドラ。それは自殺行為だったが、彼女は周りが見えていなかった。

「セイバーちゃ~ん、ランサーちゃ~ん、アサシンちゃ~ん! 誰でもいいから、この子の相手してあげて~!」

キャスターが呼びかけるように声を上げる。その時やっと自分の状況を理解したカサンドラだったが、時すでに遅しであった。

 

「セイバー、アサシン。彼女は私が倒すわ。昨夜のアサシンの戦いを見て、閃いたのよ」

2人にそう言って、ランサーは駆け出す。

そしてカサンドラに槍を突き刺すランサーだったが、霧のようにすり抜けてしまう。

「はっ! 何を閃いたというのよ!」

嘲笑するように叫んだカサンドラだったが……。

「あなたは蟲の集合体ね? つまり著しい低温になれば、1匹1匹の活動量が低下し、霧のように散開することができない」

ランサーの言葉に目を見開くカサンドラ、そしてバーサーカー。

アサシンはバーサーカーの攻撃を躱して着地すると、ランサーに拍手を送る。

「そこまでわかったなんて、素晴らしいですね」

ランサーはアサシンの称賛を背に受けながら、カサンドラに向かって槍を構えた。

 

「頭を冷やしなさい! "氷結らんげき"!」

ランサーの槍先が氷の刃になり、舞うように槍を振るう。カサンドラのハルパーとぶつかると、氷がほとばしる。最後の一撃で氷が割れると、カサンドラはやはり霧散することができなくなっていた。

「カサンドラ!」

「お姉様!」

バーサーカーと、ダニエラが助けに入ろうとするが、キャスターの疑似サーヴァント軍団がそれを阻む。

「楽しい狩りが台無しよ! よくもやってくれたわね! お前ごときが!」

カサンドラはハルパーを振るうが、動きが鈍くなった彼女の攻撃ではランサーを捉えることすらできない。そして徐々に彼女の肉体は、先ほどの冷気によって固まっていく。

「止めよ! "雷光一閃突き"!!」

上空から凄まじい勢いで槍を突き立てるランサー。

先の戦いでセイバーに放った時とは違い、鋭い一撃が凍結されたカサンドラの体を打ち砕くのだった。

 

カサンドラの死を目の当たりにしたバーサーカーは怒りの咆哮を上げる。

「おのれっ!! ダニエラ! 今すぐ、撤退して! ここは私1人に任せなさい!!」

「で、でもお母様っ! お母様1人では……!」

「いいから行きなさい!! あなたまで失うわけにはいかないわ!」

バーサーカーはダニエラを怒鳴りつけると、ダニエラは霧状……もとい蟲の状態になると素早くその場から飛び去るのだった。

「よくも! 私の可愛いカサンドラをよくもっ!! お前たちにも私と同じ苦しみを与えてやるッ!」

怒りによるものなのか、スキルによるものなのか、バーサーカーのステータスが強化されたように感じられた。

 

 

その頃、城を出たアイリスフィールと久宇舞弥。

アイリスフィールは舞弥と共に、森を脱出しようとしていたが、新手の気配を察知する。

そしてそれは衛宮切嗣を狙う言峰綺礼だった。

「舞弥さん。あなたが切嗣から受けた命令は、私の安全を確保することよね?」

「はい。……でも」

「でもなに? あの男だけは、絶対に切嗣のところへ行かせる訳にはいかない……そう思うわけ?」

そう言ってアイリスフィールは舞弥に微笑む。

「マダム……あなたは……」

「偶然ね。全く持って同意見なのよ、私も。言峰綺礼、恐らくは切嗣にとって最大の脅威になるであろう男……。ここで私たち2人が食い止める。いいわね、舞弥さん」

アイリスフィールの提案に舞弥は少し考えて答えを出す。

「申し訳ありません。が、お覚悟を願います、マダム」

彼女はアイリスフィールと共に、言峰綺礼を迎え撃つことを決めたのだった。

 

「ええ、私の心配はしなくていい。あなたはあなたの務めを果たして。切嗣からの命令ではなく、あなた自身が必要だと思っていることを」

「はい」

舞弥は短く返事をして、武器の確認をする。

「ふふっ」

突然笑い出すアイリスフィール。

「なにか?」

「ううん。人間の心って、不思議よね」

そう言ってアイリスフィールは微笑むのだった。

その頃、衛宮切嗣とケイネス・エルメロイ・アーチボルトの戦いも続いているのだった。

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