~今回のあらすじ~
セイバー、ランサー、アサシンvsバーサーカー~戦闘終了後のキャスターと言峰の会話
※シリーズ全体
以下の点にご注意ください。
・バッドエンド確定
・キャラ崩壊、設定ガバガバ
・介錯不一致の可能性
・ハードな展開や胸糞鬱描写あり
・後半までR-18描写無し
強力なキャスターの疑似サーヴァントたちが、バーサーカーに一斉攻撃を仕掛けるも、なぜか傷1つ付けられない。
「やはりおかしい……。いかに強力なスキルや宝具を持っていたとしても、傷1つ付けられないはずがない……」
セイバーはバーサーカーの攻撃を躱しながら、そう零す。
アサシンもまた、同じであった。彼女は冷静にバーサーカーの体の秘密について、考えるのだった。
母娘ということもあり、もしかすると、と思ったランサーはカサンドラに使用したとくぎである、"氷結らんげき"を放つ……が。
「こんなふざけた技で……。カサンドラ、さぞ寒かったでしょうね!」
爪を長くしたバーサーカーの一撃を、ランサーは躱しきれずに腹部から胸元にかけて浅くはない傷を負ってしまう。
「うっ! さすがに、そう単純じゃないわよね……」
ランサーは傷口から溢れる血を手で押さえながら、苦い表情を浮かべる。
アサシン同様、ランサーも動きやすさに重点を置いた防具であるため、その鋭い一撃を十分に防ぐことはできない。
バーサーカーは、爪から滴るランサーの血を啜る。
それは彼女個人の楽しみであると同時に、実際に魔力回復の効果もあるのだろう。
「あぁ……カサンドラ! あなたを殺したランサーの血、あなたにも飲ませてあげたかったわ……」
バーサーカーは、カサンドラへの想いを吐露しながら、アサシンに襲い掛かる。
「くっ!」
アサシンは咄嗟に飛びのくが……。
「逃がさないわ!」
バーサーカーの鋭い爪による攻撃が次々とアサシンを襲う。なんとか躱してはいるが、徐々に追い詰められている。
(まずい……いくら私でもこの近距離では何度も躱すのは……!)
「うんうん、みんな頑張ってるね~ッ! ボクの疑似サーヴァント肉団子軍団も苦戦してるけど、頑張ってるし! あ~あ、早く終わらせてアイリちゃんに会いに行きたいな~♪」
キャスターは、額に手を当て覗き込むようにしてアインツベルン城の方を見る。
「キャスター! バーサーカーはまだ健在だ。気を引き締めろ!」
セイバーがそう叫ぶと、彼女は「ほ~い……」と軽い調子で答える。
しかし……。
次の瞬間、キャスターの体は飛んできた大木によって弾き飛ばされていた。
「ぐはぇっ!?」
ものすごい勢いで、近くの木にぶつかるキャスター。
「あ痛たたた~ッ! 急に木が飛んでくるなんてビックリしたな~もうッ! って、え?」
目の前には彼女を冷酷に見下ろすバーサーカーの姿があった。
「ちょっ、ちょっと待ってよ~ッ! 恨みがあるのはボクじゃなくて、アサシンとランサーでしょ~?」
キャスターはさすがに慌てたように、目の前で手を振って後ずさりするが、背中には木がありそれ以上後ろに下がることができない。
油断しているキャスターを視認したバーサーカーが、アサシンを狙っているようにみせかけ、一瞬の隙を見計らい、その巨体ゆえの怪力で、折れた倒木をキャスターに向かって投げつけたのだった。
呆気にとられる面々は、キャスターの支援に入ることができなかった。
キャスターの首を掴み、彼女の体を持ち上げるバーサーカー。
彼女の後ろにある木に彼女の体を押し付ける。
「キャスター、お前が来なければ、カサンドラは死ななかったのよっ!」
まさに一瞬のことだった。
誰かが助けに入る間もなく、キャスターの腹部にバーサーカーの鋭い爪が突き立てられる。
「あがッ! うぐぁ……、おぇえ……」
腹部を貫かれたキャスターは、口から血と胃液の混ざった液体を吐き出す。
そしてバーサーカーは、彼女の腹部に突き立てていた爪を一度引き抜き、もう一度差し込む。
「がッ……! あああぁぁ!! や、やめて……。い、痛いっ! いたいよぉ……」
涙ながらに懇願するキャスターだが、バーサーカーは嗜虐的な笑みと怒りが混じった表情を浮かべるだけで手を止めない。今度は腹を突き破った爪をぐるぐると振り回し始める。まるで内臓をかき回すように……。
「うぎぃ! あぐぁ……あがぁぁぁ!」
キャスターの腹部から血が噴き出す。そしてバーサーカーが爪を勢いよく引き抜くと、キャスターの腹部にぽっかりと穴が開いていた。
「あ……ああ……」
キャスターは、何か言おうとしているようだが血を吐くばかりで言葉にならない。
「さようなら、お前の血など飲む気にもならないわっ!」
バーサーカーはその鋭い爪で彼女の首元を斬りつけると、彼女の頭は簡単に切り離されてしまった。
力なく地面に倒れるキャスター。その体はピクリとも動かない……。
一瞬の出来事に固まっていたセイバーたちだったが、キャスターが引き連れていた疑似サーヴァントたちが消えていったことで、我に返る。
「……キ、キャスターがやられた?」
ランサーが驚くように呟くと、セイバーはうなずいた。
「キャスターが作製した疑似サーヴァントたちも消滅していっている……」
(!? ……キャスター?)
そしてキャスターのマスターである言峰綺礼は、アインツベルン城へと続く森を進むなか、アイリスフィールと久宇舞弥が待ち構えるポイントへと差し掛かったタイミングでキャスターに異変が起きたことを感じ取るのだった。
だが途中で何かの気配を感じ取り、足を止める綺礼。
と、次の瞬間、森の奥から突如銃撃された綺礼。身をひるがえして躱すと、その方向に向けて黒鍵を投げる。するとすぐに銃撃は止んだ。……だが、またしても別の方向から銃撃を受ける。素早く反応して、黒鍵を飛ばすとすぐに銃撃は止んだ。
「幻術か?」
綺礼が呟いた次の瞬間、彼のいる場所が銃撃される。綺礼は膝を着き、その場に倒れた。木の影から彼を銃撃したのは舞弥だった。
動かなくなった綺礼の死を確認しに行こうと、銃を構えたまま舞弥が近付いていく。……が。
(舞弥さん、ダメ!)
アイリスフィールが心の中で思うと同時に、綺礼の投げた武器が右足を掠める。その隙を突いて、黒鍵を手に一気に距離を詰める綺礼。
舞弥も銃で応戦するも、綺礼は手をクロスさせた状態で突っ切って来る。
至近距離まで近づかれたところで、舞弥は銃を捨ててナイフを取り出し、綺礼の黒鍵に応戦する。
だが、黒鍵を捨てて素手で舞弥の右手を押さえると舞弥に凄まじい威力の体術を繰り出し、圧倒する綺礼。あっという間に舞弥の腹部を踏みつけて、勝利してしまった。
彼の目は、傍に佇むアイリスフィールに向けられる。
舞弥は綺礼の前に姿を現したアイリスフィールを見て、驚き狼狽し恐怖した。
身を隠し掩護に徹すると打ち合わせたはずの彼女が姿を現したことにである。
「マダム、いけない!」
綺礼はアイリスフィールに向き直ると告げた。
「女よ、意外に思うかもしれんが。私はお前を倒す目的でここにいるわけではない」
「わかっていますとも……。言峰綺礼……」
アイリスフィールは、強い眼差しを向けて答える。
「あなたの目的は知っている。だが叶わぬ相談です。あなたが衛宮切嗣にまでたどり着くことはない。……私たちが阻みます、ここで」
「マダム! この男は代行者! 魔術師狩りの達人です! ただの魔術でどうこうできる相手じゃないっ!」
舞弥はここでアイリスフィールを喪うことは、切嗣にとって絶対に避けなければならないと確信していた。……だが。
アイリスフィールは、貴金属の針金を取り出し操る。
「私が切嗣から教わったのは、車の運転ばかりじゃなくてよ! 生きること! そして、生き抜くこと!」
針金はアイリスフィールの魔力によって、姿かたちを変えていく。
「銀の針金鳥(シャーペ・イスト・レーベン)!」
針金が人間大の鳥のオブジェとなり、銃弾に匹敵する速度で飛翔する。
向かってきたそれを拳で打ち砕こうとする綺礼だったが、破壊することができない。もう片方の手で攻撃しようとした時だった。針金は形を変え、綺礼の両腕を縛る。
操っているのはアイリスフィールだ。綺礼は腕を封じられた状態でも、アイリスフィールに向かって駆け出す。
「マダムッ!!」
舞弥の叫びが響く。だが。
「甘いわよっ!」
アイリスフィールはそう叫ぶと、針金を操る。壁に綺礼を打ちつけ、最終的には両腕ごと木に縛り付けて拘束することに成功した。そのまま綺礼を抑え込むアイリスフィール。
「舞弥さん! お願い!」
彼女は自分が動きを封じている間に、舞弥に綺礼の止めを刺してもらうように頼む。すでにボロボロの舞弥だが、彼女の言葉を聞き、力強くうなずいた。
これで衛宮切嗣にとって、最大の脅威となる言峰綺礼を討ち取ることができた、かに思われた。
……が、想像もつかないようなことが起きる。
ドオンッという音と、木の軋む音が夜の森に響く。
「そんな……」
アイリスフィールは思わず、そう零す。
「スゥ……フゥ……」
呼吸を整え、綺礼は寸勁を打ち込んでいく。アイリスフィールのみならず、舞弥も驚愕し狼狽する。そしてついには、拘束された木を圧し折って脱出するという人間離れした技を披露した綺礼。
アイリスフィールは思わず膝から崩れ落ちる。綺礼は倒れている舞弥に近寄っていき、拳銃を取りだした彼女の顔を蹴り上げる。思わず目を逸らしてしまうアイリスフィール。綺礼は振り返ってアイリスフィールを見るのだった。
一方、その頃。
アサシンは、キャスターの胴体を踏みつけているバーサーカーを見ながら、セイバーとランサーに近付く。
「聞いてください。バーサーカーの皮膚片から、彼女に対する特効薬を作れそうです。苦しいとは思いますが、私が薬を調合している間、彼女の相手をお願いできますか? あのバーサーカーが相手では、調合しながら戦うとなると、かなり分が悪いですから」
アサシンの言葉に、希望の光を感じるセイバーとランサー。
「承知した。バーサーカーの相手は任せろ」
「私とセイバーで食い止めてみせるわ」
2人はアサシンの申し出にうなずくと、それぞれの武器を構えるのだった。
セイバーが剣を振るうも、バーサーカーは片手で簡単に受け止める。そしてもう片方の手で反撃してくるかと思いきや……彼女は拳に魔力を纏い、セイバーを殴り飛ばす。
「あぐぅ……!(なんという筋力だ……)」
セイバーは地面を転がりながら受け身をとる。
立ち上がり再び剣を構えた時、すでに彼女の目前にバーサーカーの姿があった。
(速いッ!?)
振り下ろされた爪を間一髪躱すセイバーだが、頬に傷をつけられる。
間髪入れずに、バーサーカーの背後から槍を突き立てるランサーだが、槍を掴まれて投げ飛ばされてしまう。
「やっぱりステータスが上がっているわ!」
体勢を立て直したランサーが言うと、セイバーも同意する。
「同感だ! 私とランサー2人のステータスであっても、こうも手を焼くことになるとは……!」
セイバーはバーサーカーの追撃を躱しつつ、ランサーと連携して攻撃を続ける。
アサシンは、魔力を解放して薬の調合を始めるのだった。
ランサーは槍をしまうと、鉤ヅメを装備する。
「あの間合いに入るのは危険だけど……やるしかない!」
バーサーカーの懐に飛び込んだランサーは、鉤ヅメを振るう。
「へぇ、私の真似事かしら?」
バーサーカーは余裕たっぷりに笑う。
「"タイガークロ―"!!」
鋭い鉤ヅメの連撃がバーサーカーを襲う……が、やはり傷が付かない……いや、傷が付かないのではなく、傷を傷と視認する前に傷が回復してしまうのだ。
「"ウィングブロウ"!!」
踏み込んで、下から斬り上げるもビクともしないバーサーカーはその爪をランサーに振るう。
「くっ!! 食らえっ! "裂鋼拳"!!」
ランサーの装備している鉤ヅメが、魔力によってバーサーカーと同等まで大きくなり激しくぶつかる。これまでビクともしていなかったバーサーカーが少し後退し、体勢をよろめかせた。
その隙を見逃すランサーではない。
「"サイクロンアッパー"!!」
鉤ヅメに青白い魔力を宿し、空中宙返りと共に鋭い爪で切り裂く。
「左に避けろ、ランサー!」
直後、セイバーの声を聞いたランサーは素早く左側に飛び退く。
「ゆくぞ、バーサーカー! 風王鉄槌(ストライク・エア)!!」
セイバーは魔力を剣に宿し、纏わせた風を解放することで破壊力を伴った暴風として撃ち出す。その強力な一撃により、バーサーカーの体は大きくぐらつく。
「小賢しい真似を……。何をしたって無駄よ!」
しかし、彼女はまるで効いていないかのように立ち直ってしまう。
「嘘でしょ!? あの連撃とセイバーの一撃でも、ダメだなんて……」
ランサーは、歯を食いしばる。それはセイバーも同じだった。
「アサシンに何をコソコソやらせているのかは知らないけど、全てが無意味なのよ。大人しく私の糧になりなさい? セイバー、ランサー」
セイバーはもう一度バーサーカーに攻撃を仕掛けるが、やはり傷一つ付けることができない。それどころか……。
「そんな攻撃で、私を倒すことができるとでも? 甘いのよッ!!」
バーサーカーの爪による連撃が、セイバーを襲う。
「ぐああぁっ!!」
その鋭い一撃をまともに受けてしまうセイバー。そしてそのまま吹き飛ばされて木にぶつかる。
「止めよ、セイバー。その血をいただくとしましょう」
バーサーカーが爪を広げて、体勢を崩したセイバーに近付いていく。
その時だった。
「待ちなさい、バーサーカー! ……くぅっ……や、やるしかないわね!」
ランサーは鉤ヅメをしまって丸腰になったかと思うと、妖艶なポーズを取り、人差し指の先からピンクのハート型の光線を発射する。
「"セクシービーム"! バキュ~ン♡ な~んてね!」
ふざけているかのように思われたが、僅かな時間ではあるものの、バーサーカーはランサーを見て呆然となる。
その隙にセイバーは体勢を立て直して、飛び退く。
「ありがとうランサー! おかげで助かった。……しかし、さっきのはいったい……」
ランサーの隣に立ったセイバーは、ランサーに礼を言い、見たことのない先ほどの技について尋ねようとするが……。
「き、聞かないでセイバー! お願いだから、さっきの技については……」
顔を赤くして、両手で顔を覆いながら恥ずかしがるランサー。
「い、いや、そうか。すまない」
2人とも呼吸を整えつつ、バーサーカーを見据えるのだった。
「幻覚か、何かの類かしら……。一瞬、頭が回らなかったわ。妙な攻撃ができるようね……」
バーサーカーは再び、爪を伸ばし戦闘態勢をとる。するとそこへアサシンが戻って来た。
「先ほどの技、とても魅力的でしたねランサー。さて、お2人が頑張っている間に、私の方も準備ができました。これでバーサーカーを弱体化させることができるはずですよ」
アサシンは、そう言って自らの刀を抜く。
「ふん、その細身の刀でまた何かしようっていうのね……。ベイラを殺した時のように!」
バーサーカーは鬼の形相でアサシンを睨みつける。
「あなたの皮膚片からあなたの肉体について、調査、解析しました。すでに霊体であるサーヴァントのため詳細までは調べようがありませんが、生前は恐らく寄生虫か何かの実験で、その巨体になったんじゃないでしょうか? 強靭な再生能力もその影響でしょう」
バーサーカーは驚愕したような表情を浮かべるが、すぐに不敵な笑みを浮かべる。
「それが解ったからなんだと言うの? すでに霊体である私を解析したところで、どうしようもないでしょうに」
アサシンは人差し指を立てる。
「娘さんの件をお忘れですか? 私は、相手の弱点に合わせた薬を調合できるんです。そしてその薬は、セイバーとランサーが頑張ってくれたおかげで先ほど完成しました。……さて、試してみます?」
アサシンの言葉に、我慢の限界といったように爪を振るうバーサーカー。
その攻撃をひらひらと蝶のように躱すアサシン。
「くっ、ちょこまかと! 何をしようが、お前に勝ち目なんてないのよ!」
バーサーカーは何度も腕を振り回す。
しかしアサシンには1発も当たることはない。それどころか掠りもしない……。
アサシンは空高く跳躍し、蝶が舞う様に滑空めいた身軽な動きで翻弄した後、視認できない程の速度で敵の身体を複数回突き刺す。
「宝具。"蟲の呼吸 蝶ノ舞 戯れ(ちょうのまい たわむれ)"」
技を決めたアサシンは、セイバーとランサーの方に歩いていく。
「あっはっはっはっはっは! 何をしたかと思えば、その程度の宝具、なんともないわね! これならまだセイバーとランサーの攻撃の方がマシだったわよ!」
バーサーカーは何ともない様子で、爪を構える。
「ダメか!?」
セイバーが武器を構えようとした時だった。
「死になさ……なっ……くぅっ……な、なんなの!? ……息が苦しい……体が言うことを……アサシン、お前何をしたと言うの!」
バーサーカーが苦しみだす。
「あなたに効く毒を調合しました」
「毒ですって!?」
毒に何か嫌な思い出があるのか、バーサーカーは珍しく取り乱す。
「こ、これでバーサーカーは消滅するのか?」
セイバーがアサシンに尋ねる。
「いいえ、さすがに情報と材料が少なすぎるのと、戦闘中に急いで調合したのでこのまま毒で倒しきることはできないでしょう……でも、これまでのような超人的な再生能力には大きな支障が出るでしょうね!」
「な、なんですって! こ、この子娘がぁっ!!」
バーサーカーは爪で襲い掛かろうとするも、爪の調節がうまくいかないらしく、伸びたり縮んだりを繰り返している。
「戦闘も思うようにできないでしょう。もはやセイバーやランサーの敵ではありません」
アサシンはそう言ってニッコリと笑う。
「ありがとう、アサシン。ここからは再び私たちの出番というわけだ」
「あとは私とセイバーに任せてちょうだい! さぁ、バーサーカー覚悟しなさい!」
セイバーとランサーはバーサーカーに武器を向ける。
「こんなことがっ! こんなことが、許されるものかっ!! 龍之介! 令呪を使って私を連れ戻すのよ!!」
バーサーカーが苦しそうにしながらも叫ぶ。
「させるかっ!」
「逃がさないわよっ!」
セイバーとランサーが攻撃をしかけるが、あと一歩というところでバーサーカーの姿は消えてしまった。
バーサーカーは、あらかじめ万が一を予想してマスターである雨生龍之介に令呪の使い方を教えていてたらしい。
「あと一歩というところで!」
セイバーとランサーは悔しそうにするが、アサシンはまだチャンスはあると告げる。
「あの毒は簡単には取り除けませんし、専門の知識が無いと治癒も難しいでしょう。いずれ魔力の確保が難しくなって、表に出てくるはずです。それにああなってしまっては、人を襲っての魔力確保もままなりません」
2人はそれでも悔しそうな表情を浮かべつつも、突破口が見えたことに安堵するのだった。
その時だった。
「——はっ! マスター!!」
ランサーが突然、大きな声を出した。
「ランサー、どうかしたのか?」
ランサーは少し俯いて言う。
「私のマスターが、あなたのマスターがいる城に乗り込んだみたいね……。どうやら命の危機のようだわ」
セイバーは少し考えてから口を開いた。
「ランサー、急ぐがいい。己が主の救援に向かえ」
その提案に驚きを隠せないランサー、そしてアサシン。
「で、でも……」
「いや、いい。私はお前とは全力で戦って倒したい。こんなところで敗退されてはそれも叶わないからな」
ランサーはなおも面食らっている様子だったが、このままでは本当にマスターの命が尽きると感じ、礼を言うとマスターの元へと向かうのだった。
「あらあらいいんですか、行かせてしまって。 ただでさえマスターに口を利いてもらえないのに、ますます嫌われちゃいますよ?」
アサシンはセイバーを揶揄うように言うが、それに動じることもなく答える。
「構わない。ランサーにはまたの機会に決着をつけてもらう」
「ふふふ、あなたらしいですね。では私もそろそろ行きますね」
そう言ってアサシンは立ち去ろうとするが、それをセイバーが呼び止める。
「待ってください! ……その……ありがとう。あなたのおかげでバーサーカーを追い詰めることができた」
アサシンは少し驚きつつも、すぐにいつもの笑顔に戻る。
「いいえ、私はただ自分のできることをしたまでです。あなたも、ランサーも、キャスターもできることをした。そうして得た勝利です」
その言葉にセイバーも少し微笑んで返した。
「あ、そうだ。約定によりあなたのマスターに私の真名を伝えなければいけないと思うのですが……。まだ、バーサーカーの討伐までは終わっていないので、それが終わってから、とお伝えください」
アサシンはそう言って軽やかに飛び上がると、今度こそ立ち去るのだった。
衛宮切嗣とケイネス・エルメロイ・アーチボルトとの戦いは衛宮切嗣の勝利に終わった。
魔術工房ごと爆破され、持ち込んだ礼装のほぼ全てを失いながらも、ここに乗り込んだケイネスは月霊髄液(ヴォールメン・ハイドラグラム)1つで、切嗣を追い込んで見せた。
だが、全ては切嗣の策だった。
最後には、切嗣の切り札である"起源弾"を魔術の行使中に被弾してしまう。
相手が魔術を使っている時に魔術に当てることで、魔術回路をショートさせ自滅させるのである。
敵が行使している魔術にこの魔弾をぶつけると、術を通して敵の魔術回路に起源の効果が届き、敵の魔術回路を「切断」して「結合」する。
つまり、魔術式と魔力が走っている最中の魔術回路をメチャクチャに書き換えてしまう。
結果、回路上を走っていた魔力が短絡と過負荷を引き起こし、魔術回路を焼き切ってしまうのだ。
魔術回路は体内の臓器などと密接な関係にあるため、大規模な魔術を使って全身の魔術回路を励起させた状態でこれを食らうと、魔術回路が駄目になる上に暴走した魔力によって全身の臓器などに深刻なダメージを負う。
ケイネスも同じだった。
月霊髄液を維持できなくなり、鼻や口から大量の血を吐き、全身の苦痛に耐えきれずにその場に倒れ伏し、意識を失った。
止めを刺そうと近寄る切嗣だったが、ランサーによる妨害を受ける。
切嗣は彼女に銃を向けるが、焦りを隠せない。いざ戦闘となれば、サーヴァントである彼女に勝つことは不可能だからだ。
「セイバーのマスター。バーサーカーは致命傷を負い、撤退しました。……申し訳ありませんが、この場での決着はお預けとさせてください」
ランサーが言うと、切嗣はセイバーが私情のために、ランサーを見逃したのだろうと察して呟いた。
「なるほど、そういうことか……」
ランサーはそれ以上何も言わずに、ケイネスを抱えて窓から脱出するのだった。
「女よ、1つ問う。お前たち2人は、衛宮切嗣を守るために私に挑みかかってきたようだが……。それは誰の意思だ……?」
アイリスフィールの首を片手で絞めながら、その体を持ち上げ、綺礼は問う。
「令呪が無い以上、お前はアインツベルンのマスターではない。恐らくは器の守り手の役を負ったホムンクルス。そのようなものが、戦いの前線に出るという愚行を犯すはずがない……」
さらに首を強く絞め、尋問する綺礼。
「重ねて問うぞ女。お前たちは、誰の意思で戦った?」
その問いの終わりに、綺礼の足を掴む者がいた。
すでに肉体の限界を超えているはずの舞弥だった。彼女は気力だけで、綺礼に掴みかかっているのだ。アイリスフィールに視線を戻すと、彼女は彼を睨みつけた。
その態度に驚きを隠せない綺礼。
その時だった。
「綺礼様……。バーサーカー、それからランサーとそのマスターが揃ってこの森から敗走し、アサシンも撤退しました。間もなくここにセイバーが駆け付けるでしょう。ここは危険です。どうか撤退を」
この森を監視していたキャスターの疑似サーヴァントが、綺礼に報告に来た。
報告を受けた綺礼は、舞弥の手を振りほどき足で背中を踏みつけた。そしてアイリスフィールの口を押え、声を響きにくくした状態で、黒鍵で彼女の腹部を突き刺した。
アイリスフィールは苦痛に満ちた悲鳴を上げる。
「なるほど……ちゃんと赤いのか」
アイリスフィールが噴き出した血を見て、そう呟く綺礼。力が抜けてぐったりした彼女を投げ捨てると、実体化した疑似サーヴァントと共にその場を去る。
だが一度振り返り、地面に倒れている2人を見る。
(まさか……この女たちは誰の指示を受けたわけでもなく、独断で戦いを挑んできたのか? ありえない。衛宮切嗣は私と同じ……。誰にも理解されず肯定もされない、虚無なる男のはず。そうでなくてはならない)
そう考えながら森から離脱するために、走り出すのだった。
「あ~あ~、キレイキレイってばアイリちゃんにこ~んな怪我させちゃって。まぁおかげでアイリちゃんの興奮する悲鳴が聞けたし、それはそれでラッキーだったけどね~ッ」
綺礼たちが去った後にその場で実体化したのは、先ほどの戦闘でバーサーカーの鋭い爪で何度も腹部を刺され、抉られ、最後には首と胴体を切り離されて死亡したはずのキャスターだった。
だが彼女はまるで何事もなかったかのように、首もつながっており、五体満足でピンピンしている。
「アイリちゃんをゲットするついでに、こっちの舞弥ちゃんって子もゲットしたら楽しいかな~? あ~、でも勝手にそんなことしたらキレイキレイに怒られちゃうよね~ッ」
そんなことを言いながらうつぶせに倒れているアイリスフィールの体を起こすキャスター。
「うわぁッ♪ 人間と同じ体の柔らかさなんだ~! 気を失ってるアイリちゃんも可愛いな~ッ! このまま連れ帰ってボクのモノにするのは簡単だけど……」
彼女は興奮気味に語りながら、アイリスフィールの髪を撫でる。
「いや~、でもここで連れ帰らなかったら、ボクがバーサーカーにやられて死んだフリをしたのが無駄になっちゃうしな~。悩んでるうちにセイバーが来ちゃいそうだしな~……。——!」
アイリスフィールの頬に手を当てて、ニッコリと笑うキャスターだったが突如何かを閃いたような表情を浮かべる。
それは先ほどの綺礼の
「なるほど……ちゃんと赤いのか」
という言葉と、アイリスフィールの血を吹き出す姿である。
「えへへ、いいこと考えちゃった~ッ! アイリちゃん、次こそは本当の本当に迎えに来るからね――――ッ!」
彼女はそう言うと再び霊体化し、その場から立ち去るのだった。
その後すぐにセイバーが駆け付け、アイリスフィールも舞弥も無事に救助されるのだった。
アイリスフィールの中に、セイバーの宝具であるアヴァロンがあったため、セイバーが触れているだけでアイリスフィールの傷は回復していくのだった。
舞弥の傷を治すアイリスフィールは、先ほどの綺礼との戦いを振り返っていた。
(言峰綺礼……あの代行者は危険だわ。想像通り……ううん、それ以上に。今日は運がよかったけれど、次はどうなるかわからない。ハッキリしてるのは、彼を切嗣に会わせてはダメということだけ。……でも、切嗣を守るのは私だけじゃない……。そうよね? 舞弥さん。次こそはきっと勝とう? 2人で、切嗣を守り抜こうね)
アイリスフィールはそう心の中で舞弥に語りかけるのだった。
教会に戻って来たキャスターに、綺礼が声をかける。
「……やはり、生きていたか。あの森で一瞬、お前の反応が消えたゆえ、他のサーヴァントに討ち取られたのかと思ったが……」
「あ~、あれね。あれはアイリちゃんを捕まえるために、戦線から離脱する必要があったから、バーサーカーに殺されたフリしたんだよね~ッ。ちょうどいい感じに首まで切ってくれたから、他のサーヴァントたちのもボクが今度こそ死んだって思ってるんじゃないかな?」
キャスターはソファに腰掛けてそう口にする。
このサーヴァントは、ただ死んだように見せただけではない。
普通のサーヴァントであればその時点で死んでいる攻撃を実際に受けたというのに、そんな様子は見受けられないほどピンピンしている。
どうやらかなり生命力の強いサーヴァントらしい、と綺礼は思う。
「……そうか。ようやくおかしなサーヴァントと離れられると思ったのだが……」
「え~、ひっど! ボク傷ついちゃうな~ッ」
綺礼の言葉にキャスターが不満を述べる。だが、彼女はすぐに別のことを尋ねる。
「 キレイキレイはどうだった? アイリちゃんと……舞弥ちゃんだっけ? との戦いの感想は?」
その言葉に書類を見ていた手を止めてキャスターを見る綺礼。
「感想だと? そんなのものはない。私はただ、衛宮切嗣を追っていただけだ。そうしたらあの女たちが邪魔立てしてきたというだけのこと……」
「ふ~ん、ほんとかな~ッ?」
キャスターはソファに寝そべりながら、楽しそうな様子を見せる。
「本当だとも。思うところがあるとすれば、衛宮切嗣に会う前に撤退を余儀なくされたことを、少々惜しいことをしたと感じたくらいだ。しかし、それも特段取るに足らない感情だ……」
(しかし……なぜあの女たちはああも必死に……。いや、そんなはずはない。やはり……衛宮切嗣に直接会って問わねば……)
チラッとマスターの方を見て、彼が自分の本心と葛藤している姿を見て、キャスターは満足そうにするとソファから起き上がった。
「じゃあ、キレイキレイ。ボク工房に行って来るね――――ッ。あんまり夜更かししちゃダメだよ~?」
「ふん、余計な世話だ」
彼女は鼻歌を歌いながら工房へと向かうのだった。