ガチレ〇プからの調教でズタボロにされた恋人を鍛え上げた絶倫ボディで徹底上書きする話 作:かくろう
それは冴子が克明・加奈子と邂逅した日にまでさかのぼる。
レストランでの会食を終えた冴子は自宅マンションに戻ってその日の喜びをワインと共に噛み締めていた。
「ふぅ……。実際に会ってみて分かる。あの子は、夜の業界の革命児になれる……欲しいわ。是非私の右腕になって欲しい」
冴子の頭の中には二つの思いが交互に点滅するように切り替わって到来していた。
一つは、本当に純粋な、悪意に犯されるべきではなかった女の子であること。
過酷な環境に身を置きながら、あそこまで心を強く保てる人間はほとんど見たことがない。
側にいる志藤克明の存在が大きいのもそうだが、彼女の本人の資質がそうさせるのだろう。
だからこそ、光ある真っ当な世界で幸せを掴んで欲しいという、母親が抱くような想い。
二つ目は、自身の夢のため、風俗業界のクリーン化を目指す自身の目標のために是非欲しい人材であること。
どうしてもアンダーグラウンドなイメージがつきやすい夜の業界から闇の勢力を追い払い、もっとクリーンでとっつきやすいものにしたいという夢が、彼女にはある。
そのために、ヤクザの資金源になっている側面を撲滅したいと考えていた。
だが、自分は大きなグループを取り仕切っているが、個人としては一人の女に過ぎない。
篠宮と奉龍院という巨大な後ろ盾がなければ、今の地位に上り詰めることすらできなかっただろう。
「あの子は……私と同じだった。悪意に晒され、身も心も穢されたのに、強く生きようとしている……」
一つだけ違うとするなら、志藤克明のような心を通わせるパートナーとの出会いがなかったこと。
かつて、シルクこと瓦ノ丸冴子は、一人の女子学生に過ぎなかった。
加奈子にシンパシーを感じた冴子。
それは彼女も同じように、悪意に満ちた男の罠に嵌まった辛い過去があったからである。
彼女には一人で這い上がる強い精神力があった。
しかし、弟を除いて信頼できるパートナーは側におらず、自分を貶めた男達に対する強い復讐心だけで業界でのし上がってきた。
冴子を貶めた男達。それは闇風俗の女衒である。
人間としての尊厳を奪われ尽くされ、何もかもを失った彼女を支えるのは復讐の二文字だけ。
自分の身体一つで男を手玉に取り、経営を学びながらのし上がってきた。
その大願は長い年月をかけて成就させることができたが、彼女が次に思い至ったのは、業界のクリーン化である。
自分のような悲劇でこの業界に入ってくる女性がいなくなるようにと。
実情は大多数の、それこそ9割の女性は自らの意志でこの業界で働き、それぞれの思いを込めて真っ当に働いている。
だから全体を見渡せば冴子が言うようなアンダーグラウンドな業界ではないが、表の顔と裏の顔があるのは事実。
冴子はその裏の顔という側面によって悲劇に見舞われ、望まぬ業界入りをしている女性をなくしたいという想いに駆られていた。
冴子は、加奈子にいずれ自分の後を継いで業界を引っ張る先頭に立って欲しいと考えていた。
キャストとして表舞台に立ってもらえたら最高であるが、そこまでは望んでいないし、それは望むべきではないことも、同時に理解していた。
あの子は、純粋で、普通の世界で暮らすべき女の子だ。
不本意な形で恋人以外の男の身体を知るべきではなかった、本当に普通の世界で暮らしていくべき女の子なのだ。
もはや彼女は志藤克明以外の男に触れるべきではない。
ならば、経営側に回ってはどうか。
そう思い、冴子は加奈子をヘブンズヴァリキリーグループの幹部として勧誘するつもりでいて……やめた。
彼女の奉仕精神は、志藤克明にこそ向けられるべきであり、それを他の男で穢すことは今後絶対にあってはならない。
しかし……。
直接男に触れる事はなくとも、準備したスペースで後進の女の子達の育成に従事するのは……?
テクニックと、その裏に込めていた思いや奉仕の精神を伝えたり、悩み相談を受けるアドバイザーとしてならどうか?
男からは隔絶された女性だけの空間で講師として活躍する道ならば……?
彼女や自分のように、望まぬ形で業界入りする女性は、全体の比率から見れば多くはないが、風俗業界に入ってくる女性の絶対数から見れば、決して少ないと割り切れる数値でもない。
そして、不本意な形でそうせざるを得ない者達が後を絶たないのも事実。
事情はそれぞれにある。単に欲望を満たすための資金稼ぎだったり、将来の夢を叶えるために身体を張ったり……。
自分のように人生を潰され、そこでしか生きていけない身体にされてしまった女もいれば、借金などの理由で自ら入ってくる者もいる。
だが、最初は良くてもその日初めて会った男と身体を重ねる職業は、精神を疲弊させて病んでしまう。
どれだけタフな精神を持ち合わせていても、どこかしらに病巣が張り付いてまともでいられなくなる時がやってくる事が多い。
だから客の質が大切なのだ。
そして、客の質というのはキャストの質に引き寄せられて変わっていくものであると、月宮加奈子が証明してくれた。
彼女の狙いは、そういった女性達が少しでも早く業界から解放されること。
もう一つは、望まぬ形で入って来た女性でも、この世界で生き甲斐を見つけやすい、自分と同じような引っ張る側に立てる人間に育てること。
このどちらかの道に進む道しるべでありたいと願っている。
月宮加奈子が自分の片腕になってくれれば、そのシステムを確立する実現が10年は早まるだろう。
「志藤克明が一緒に業界入りしてくれれば」
ぼそりと呟く冴子の言葉に応える者がいた。
「お姉ちゃん、それはルール違反よ……」
「あらミルク。来てたのね」
冴子が物思いに耽っていると、扉の奥から大きな影が差す。
それは彼女の弟、【瓦ノ丸 源之助】。
屈強な体躯を持ちながら心は女であり、志藤克明と月宮加奈子の邂逅を果たした姉に事の顛末を聞きに部屋に来ていた。
というより、姉は今だに精神が闇の中を彷徨っており、ふとした瞬間にパニック障害を引き起こす油断ならない生活をしているため目が離せなかった。
「その様子じゃ二人は予想通り理想的な人物だったようね。強引な手段をとらないか心配してたのよ。杞憂だったみたいで安心したわ」
「少し強引な手段をとろうとも思ったけど、本人を見てそういう気も失せたわ……」
「……何をする気だったの?」
「志藤克明の方を誘惑してみようってね。ウブな男の子だし、いくらでもやりようはある」
「それはしなくて正解よ。大方お店の女の子をあてがってハーレムでもやらせようとしてたんでしょうけど、それをしたら二人の信用を失うことになる」
「分かってるわよ。望まぬ性経験は私がもっとも嫌いな行為だもの。いやね。年を取ると手段を選ばないことに躊躇がなくなりそうで……」
「お姉ちゃんが月宮加奈子にシンパシーを感じてる以上、その手段をとらないことは分かってるけど、ちょっとヒヤヒヤするわよ。彼女はお姉ちゃんとは違うわ。志藤克明がいなかったら、とっくに壊れてた、とても弱い子よ」
「あったこともないのによく分かるわね……。だからこそ、守ってあげたくなる……」
「雪乃の資料で見た限りじゃ昔のお姉ちゃんにそっくりだわあの子。だからこそ、お姉ちゃんみたいなスレた大人にはなってほしくないわね」
「あら、言うじゃない。心配しなくても彼がいる限り大丈夫でしょうよ」
クスクスと笑いながら言い合いをする姉弟は、非常に仲睦まじく笑い合う。
「【彼女】も……目を覚ましたら月宮加奈子に会わせてあげたいわね。きっと元気を取り戻せると思うわ」
「そう、ね……。その時のために、環境だけは整えておきましょうか。不思議なものね。昔の私なら手段を選ばず月宮加奈子を取り込みに掛かったでしょうに」
「それで失ったものも多かったからじゃない。【彼女】を失ったことが、お姉ちゃんの一番の後悔だったはずよ」
「そのとおりよ。だから、私は何が何でも二人に報いらないといけない」
「そんなことをしなくても月宮加奈子は勝手に幸せになると思うけど、【彼女】の方はそうもいかないでしょうね」
「ええ。だから、あの子がしっかりと自分を取り戻すためには、月宮加奈子の力が必要なの。そのために彼女とは信頼関係を築いておきたいのよ」
ミルクは物憂げな瞳で溜息をつく姉を見て少し心配になる。
基本的に真面目過ぎる気質があり、思い詰めるタイプなのは昔から変わっていないからだ。
「一つの恩返しをするのにも謀(はかりごと)みたいに画策しないといけないなんて……本当に年は取りたくないものね」
「あの子たちは純粋だから、悪意とは受け取らない筈よ。もっと素直に伝えたらいいじゃない」
源之助は冴子のワイングラスに酒を注ぎ、差し出しながら優しく言葉を掛ける。
「利益の可能性を捨てきれないからよ。あの子が業界入りを果たしてくれたら、私に取って最高だもの。最後の最後に最高の結果を引き寄せておきたいっていう、汚い大人の策略なのよ」
「どっちにしても、無理に事を進めないことね」
「分かってるわ。第一番目には恩返し。私の思惑は最後の最後よ。その線引きだけは違えるつもりはないわ」
純粋に恩を返したい。でも利益の可能性は捨てきれない。
「同じ男に人生を破壊された者同士、彼女には感謝しているわ。あの男の暴力を終わらせるきっかけを作ってくれた、志藤克明にもね」
「そのとおりね。お姉ちゃんの尊厳を破壊し続けた憎い男が、神の眼に止まった男の恋人に手を出した。それがきっかけで復讐を果たすことができたのだもの……」
冴子の目にうっすらと涙が浮かぶ。
因果が巡り巡って神を動かし、冴子の大願であった男への復讐と、鳥籠に囚われた大切な人を解放するきっかけを作ってくれた。
「志藤克明か……。私にも、そんな風に思えるパートナーがいてくれれば、ね」
そのことに対する限り無い感謝を心の中で何度も反芻し、これから行う恩返しの質をどのように上げていくか、考えを巡らせ続ける冴子であった。
それから二ヶ月ほどが経って、冴子は【彼女】……つまり【朝霧雪乃】を加奈子と引き合わせる準備を始めた。