※この作品はR-18です。

ガチレ〇プからの調教でズタボロにされた恋人を鍛え上げた絶倫ボディで徹底上書きする話   作:かくろう

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◇心に訴える◇

「雪乃……さん」

「加奈子……。元気そうでよかった」

「本当に……雪乃さん、会いたかったです」

「うん。会いたかった。加奈子っ」

 

 それは黒髪の美人であった。色白で背が高く、加奈ちゃんよりも頭一つ大きい。

 ボロボロと涙する加奈ちゃんを抱きとめ、同じように泣きながら抱き締めていた。

 

「冴子さん、彼女はひょっとして」

「彼女は朝霧雪乃。私達と同じ鳥籠に囚われていた女性の一人です」

「朝霧……雪乃さん。やはり彼女が」

「はい。月宮さんを守り、組織から逃がした女性です」

 

 やはりそうか。その空気感だけで誰なのかすぐに分かった。

 

 二人の関係性は加奈ちゃんから聞いている。絶望の五年間の中で、主にお店時代から自分の心を支えてくれた姉のような存在だったらしい。

 

 当初加奈ちゃんは彼女のことを信用していなかった。長い時間の中で培った信頼関係が決定的なものになったのは組織から逃げ出す直前。

 

 雪乃と呼んだ女性が加奈ちゃんを守ってきたのは、死んだ妹さんによく似ていたから。

 加奈ちゃんがそれを本当だと信じることができたのは、崩壊していく組織の混乱の中で本気の思いを悟ったとのことだ。

 

 それまでは自分を利用するためにいい事を言っていたに過ぎないと疑っていた。

 途中までは本当にそうだったのだろう。だけど時間の経過と共にその思いは本気になっていった。

 

 身を削るような環境の中で培われた互いの思いは、最後の最後で結実した。

 

 加奈ちゃんは彼女にずっと会いたがっていたのだ。

 彼女を最後の最後になるまで信じ切ることができなかったことで、募った後悔をずっと抱えていた。

 

「会いたかった……もう会えないと思ってました。雪乃さん、雪乃さん……うわぁああんっ」

「私もよ……加奈子。会いたかった。本当に会いたかった」

 

 恐らく彼女も同じなのだろう。その雰囲気から優しい女性であることはよく分かる。

 しばらく抱き合っていた二人は止め処なく流れる涙を拭くこともせず、互いの衣服に染みこませていた。

 

 

◇◇◇

 

「志藤克明さんですね。初めまして。朝霧雪乃と申します」

「初めまして。加奈ちゃんからお名前は伺っておりました」

 

 枯れない涙を拭きながら、改めて朝霧さんとの邂逅を果たすことになる。

 彼女は冴子さんと似たタイプで、一見キツい印象を受けるが優しい目が特徴だ。

 

 体つきはスレンダー。しかし出るところは出てしっかりとした肉付きであるにもかかわらずくびれを強調するようなピッチリしたドレスを身にまとっている。

 

 不謹慎な言い方かもしれないが、途轍もない色気を放つ絶世の美女に思わず見とれてしまいそうになる。

 

 雪のように白い肌と切れ長の目。しかも化粧によってそう見せているであろう冴子さんと違い、彼女の目つきは射殺すかのように鋭い切れがある。

 

 だけどその奥には隠しきれない優しさが滲み出ているのがなんとなく分かるのだ。

 なんで分かるのかと聞かれても困るが、加奈ちゃんが彼女を見る目は信頼しきっている。

 

 頭のいい加奈ちゃんのことだから、最後の最後まで信じられなかったという彼女との時間が総合的にどういうものだったのかを理解してのことだ。

 

 二人の時間がどういうものだったのか、俺なんかには想像も付かないが彼女がいてくれなかったら今の加奈ちゃんはいなかった。それくらいに大きい存在なんだろう。

 

「朝霧さんは加奈ちゃんを組織から逃がしてくれたと聞きました。そのことで俺……私からお礼を言わせてください。本当にありがとうございました」

「いえ、お礼を言われるような事ではありません。私は、長年篠宮のスパイとして組織の情報を流していました。加奈子さんを逃がしたのも命令されてのことですから」

 

 何故だか彼女は歯切れが悪い。まるで加奈ちゃんを突き放そうとしているかのような。

 どうしてだか、彼女は本心を隠そうとしている気がしてならない。

 

「ちょっと雪乃っ。そんな素っ気ない言い方はないんじゃないの。あんなに月宮さんに会いたがっていたじゃないの」

「確かに会いたかった。でも私はそれで満足です。もう思い残すことはありませんので」

 

 そう言って彼女が直ぐに立ち上がって帰ろうとするのを慌てて冴子さんが止めに入っていた。

 先ほどまでの表情とは打って変わり、彼女の顔色は優れない。

 どうしてだか朝霧さんの態度は加奈ちゃん達を拒絶し始めているのだ。

 

「朝霧さん、待ってください。もう少しだけ時間を頂けませんか。俺はあなたに恩を返したいと思っています」

「いえ、私には志藤さんに返してもらう恩なんてありませんから」

「あなたにはなくとも俺にはあります。このまま帰すことなんてできませんよ」

 

 少々無理やりだったが思い留まってもらい、話の続きをするように促した。

 というのは建前で、泣きそうな顔で固まっている加奈ちゃんの代わりに止めたに過ぎない。

 朝霧さんの表情は迷惑とかそういうのではなく、悲しみに満ちているように見える。

 

 悲しみと申し訳なさ。そして本音を言いたくても言えないもどかしさ。

 きっとそんな所だろうか。

 

「朝霧さん、ひょっとしてあなたは加奈ちゃんに対して罪悪感を持っていませんか?」

「え」

「予想でしかありませんが、加奈ちゃんを組織の人間から守ってくれたという彼女の認識と、あなた自身の思惑は別の所にあったのではないでしょうか」

 

「そ、それは……」

 

「雪乃さん、私はあなたの思惑がどうであっても感謝している気持ちは変わりません。教えてください。あれからどうしていたのか。本当はどう思っていたのか」

 

 加奈ちゃんの訴えるような瞳が雪乃さんの心を動かしたらしい。

 諦めたような、観念したような、寂しげな微笑みを浮かべて。

 

「わかりました。お話ししましょう……」

 

 朝霧さんが話し始めたのは、彼女が地獄の鍋底に閉じ込められた経緯からだった。

 

「私は……自分から風俗業界に足を踏み入れました。妹を養うお金が必要だったからです。その時に雇ってもらったのが、幼馴染みである冴子さんのお店でした」

 

「その頃の私はあの男の手駒でしたが、ある程度自由な裁量で経営することを許されていたので雪乃と共に女性にとって働きやすいお店作りに従事していたのです」

 

 冴子さんが目指していたのは業界のクリーン化だ。かごの鳥でいながらも自立のために動き続けていたのだ。

 どうやら冴子さんと朝霧さんは家が近所の幼馴染みだったらしい。後で知ったが小学生の頃に家庭教師をしていたのが冴子さんだったので、風俗業界に入って再会したのはまさしく奇妙な縁と言わざるを得ない。

 

「ですが、私は経営方針の価値観の違いから冴子さんの元から去りました。その直後に組織に捕われて鳥籠の女になったのです」

 

 それは朝霧さんが辿ってきた地獄の時間。

 まさしく加奈ちゃんと同じく、理不尽な性暴力に晒され続けてきた軌跡そのものだった。

 

 語る口調には悲痛が混じって辛そうだ。それは加奈ちゃんの姿と重なるものがある。

 思わず言わせてしまったことを後悔しそうになったものの、以前の加奈ちゃんを思えば吐き出させてしまった方が良いように思う。

 

 考えれば加奈ちゃんを突き放そうとする理由を話すのに彼女の過去話を始めからする必要は無い。

 恐らく本人も無意識なのだろう。冴子さんと加奈ちゃんもそれを分かってて話を聞き入っている。

 

「毎日の陵辱に、私の意識は耐えられなかった。加奈子を庇ったのは……そうすれば私の番が回ってくるのが少なくなるから……だから、その罪悪感が加奈子を守るという行動に」

「そうだったんですね」

 

「だから私は、加奈子に恨まれこそすれ、感謝されるような謂れはないんです。今日は自分が無事であることを報告する為に来ただけで、もう会うつもりは……」

「そんなっ! やっと再会できたのに……そんなの私は恨んでなんかいません。雪乃さんがいてくれたから私は自分を保っていられた」

「だけど私はあなたの為になんて考えたことはなかった。あなたがあの男の部屋に呼びつけられるたびにホッとしていたの。そんな最低の人間なのよ」

「あの地獄では誰もがそう考えておかしくありませんでした。自分だけが特別だなんて思っていません。だから気にしないでください。もう組織もあの男もいないんです。だから未来を見ましょう。私達はもう解放されたんです」

 

 加奈ちゃんは必死になって雪乃さんを説得した。ネガティブな発言を繰り返す朝霧さんは加奈ちゃんと冴子さんの訴えをひたすら躱そうとしていた。

 

 どうやらこの人の罪悪感は途方もないところまで行っているらしい。俺にはその心中を推し量ることはできないが、加奈ちゃんの悲しそうな顔を晴らすためには彼女との関係を拗らせる訳にはいかないな。

 

「朝霧さん。全ての結論を出すのは一度保留にしませんか」

「え?」

「無神経なことを言ってしまうかもしれませんが、組織から解放されてまだ2ヶ月しか経っていません。朝霧さんが今日までどのように過ごしてきたか分かりませんので下手なことは言えません。ですが、あなたにも幸せになる権利はあると思います。きっと加奈ちゃんはあなたに恩返しがしたいと考えている筈。しかしあなたにはそれを受け取る準備ができていないようだ」

 

 朝霧さんが加奈ちゃんを拒むのは、自身の感謝と罪悪感のバランスが取れていないからだろう。

 心の問題は目に見えないから予測して対処するしかない。

 多分だけど、この人は加奈ちゃんと同じだ。自分で苦しみを飲み込んで他人の為に犠牲になれる強い人だ。

 

 しかし、同じ分だけ、いやそれ以上に傷ついている人でもある。加奈ちゃんと同じように。

 

「それは……」

「すぐにそうしろとは言いませんし、無理強いすることはできない。でも加奈ちゃんにとってあなたはこれからも一緒にいたいと思える大切な人であると思うんです。恩を返されることに抵抗があるなら、これからは対等なパートナーとして道を歩むというのはどうでしょうか」

 

「対等な……パートナー」

「そうです。加奈ちゃんはこれから冴子さんと共にヘブンズ・ヴァルキリーグループで働こうとしています。きっとこれから色々な苦労があると思います。その時に同じ境遇で困難を乗り越えてきた朝霧さんがいてくれたら、これほど心強いことはありません」

 

「私は……」

「差し出がましいことを申しますが、組織から解放されてまだ2ヶ月しか経っていない状態で大きな判断をする必要はないと思うんです。俺は加奈ちゃんが信頼しているあなたを失いたくないと考えています。だから今の段階で加奈ちゃんに対する罪悪感だけで全てを判断しないでほしい」

 

「……」

 

「いや、包み隠さずにいうなら、加奈ちゃんが悲しむ選択をしないでほしい。恐らく、その選択はあなた自身も幸せにしないように思います」

 

「あなたに……何が分かるというのですか」

「ちょっと雪乃」

「あの地獄を経験していない、ましてや男のあなたに何がっ!」

「いい加減にしなさい雪乃。篠宮様が動いてくださったのが誰のおかげだとっ」

「いいんです冴子さん。今日初めて会った俺にこんなことを言われる筋合いはありませんから。朝霧さんがお怒りになるのも無理はありません」

「志藤さん……」

 

「朝霧さん、少なくとも、俺には加奈ちゃんが辿ってきた地獄の記憶を上書きして癒やしたいと考えている。そして、あなたも同じ癒しが必要なんじゃないでしょうか」

 

「そんな……私には」

「朝霧さんが何を思って加奈ちゃんから離れようとしているのか、それは分からない。でも、俺には今日ここで袂を分かつことがベストの選択とはどうしても思えません」

 

「ですが、私には……」

 

「所詮男の俺には皆さんの苦しみを理解することは不可能です。だったら俺にできることは下から支えることだけです。偉そうなことは言えませんがそれだけはできる。俺には加奈ちゃんを支えてくれたあなたに返さなきゃならない恩が沢山あります。だから加奈ちゃんの側から離れないであげてもらえませんか」

 

「……」

 

 無茶を言っているのは分かっているが、ここで朝霧さんを帰してしまったら二度とあえなくなってしまうような気がしてならない。

 

 そうなったら加奈ちゃんは悲しむだろう。彼女にとって俺は見知らぬ馬の骨に過ぎないが、地獄の中で加奈ちゃんを支えてくれた大恩人には違いないのだ。

 

「あなたはさっき、加奈ちゃんと抱き締め合って涙しましたよね。俺にはあれがあなたの本心であると確信しています。どうかお願いします」

 

「……」

 

「雪乃さんっ!」

 

「加奈子……」

「一緒にいてください。もう離れたくないです。お願いです……あんな悲しい別れは二度としたくないっ。お願いします雪乃さん……」

 

「……」

「雪乃……。応えてあげなさいよ。月宮さんを大切に思ってた気持ちは本当でしょ?」

 

 スカートの裾を掴んでうつむく朝霧さんは、何かが抜けたように息を吐いて加奈ちゃんの手を取った。

 

「……加奈子……分かった。私の負けよ」

 

 眉間に寄っていた大きなシワが取れ、元の優しげな表情は心なしか柔らかさが増しているように思えた。

 

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