ガチレ〇プからの調教でズタボロにされた恋人を鍛え上げた絶倫ボディで徹底上書きする話 作:かくろう
「牧野が病院に……?」
「一体、何があったんですか?」
宴会も終わりに近づいてきた頃、俺は加奈ちゃんと共に冴子さんに呼び出された先で受けた報告は、俺達の心に少なからず衝撃を与えた。
一瞬冴子さんが処刑を発動させたのかと思い、彼女の方を見やったが、すぐに目を伏せた。どうやら冴子さんも想定外のことみたいだ。
「報いを受けた……と言うべきでしょうね。監視は怠っていませんでしたが、一瞬目を離した隙に……」
◇◇◇
それは俺達が婚姻届を出したその日の出来事。本社を後にした牧野は家に帰る為に公園を突っ切ろうとしていた。
「クソッタレが……。酒がマジィ……。最悪だぜまったく」
途中でコンビニにより、安手のワインボトルを片手にくだを巻きながらラッパ飲みを始める。
ここら辺までは監視の人も見失っていなかったらしい。
変化が起こったのはその直ぐ後。
牧野が自宅マンションに差し掛かったところで、後ろから付いてきた黒いワゴンの扉が開く。
ガラッ!
「えっ? ムグッ⁉」
数人の男達が取り囲み、口を塞がれた牧野は車に押し込まれてしまう。そのまま走り去った車の行方が判明したのは数日後の朝だった。
そして……。
◇◇◇
「発見されたのは数日後。公園の草むらで衣服を全て剥ぎ取られた状態で打ち捨てられていたそうです。身体中に暴行された傷痕が残っており、何が起こったのかは想像に難くありません」
「そんな……」
「身体中に付着していた体液から警察で捜査が進んでいます。監視者が車のナンバーは控えていたので、犯人はそのうち……」
「そうですか。それで、牧野さんは……?」
「病院に搬送されて治療を受けています。命に別状はないそうですが、身体のアザは恐らく消えることはないくらい深いものになるそうです」
まさしく因果応報という事か。哀れみの感情は感じないが、加奈ちゃんの悲しそうな顔はいたたまれない。
加奈ちゃんは牧野に更生して欲しかったんだろう。
警察に突き出すこともできたのに、お金を稼いで被害に遭った人達に対する贖罪をしてもらう道を選んだ事からもそれは明らかだ。
「傷は深く、恐らく障害が残るレベルと思われます。ヘブンズ・ヴァルキリーで働くのは不可能ですね」
「牧野さんには、会えるでしょうか?」
「意識はハッキリしているそうですが、かなりの錯乱状態でどうなるか……」
「どこの病院か教えてください」
「加奈子さん、差し出がましいようですが、これ以上牧野に心を砕く必要はないと思います。あまり気に病まない方が……」
「分かっています。だけど……一度だけでいいんです。牧野さんとお話させてください」
「分かりました……。まだ数日は検査が必要であるようなので3日は開けた方がいいでしょう。面会が可能になったらお知らせいたします」
「我が儘を言って申し訳ありません」
「いえ、そのお心は立派だと思います。悪辣な女には過ぎた良心だと思いますけど」
「仰る通りです。甘すぎるのは承知しています」
「それ以上はどうか。あなたには心の向くままにする権利がありますから。準備が整ったらお知らせしますので、それまで時間をください」
そうして3日後には牧野との面会が可能となり、俺達は二人で彼女の指定した病院に赴くことになった。
◇◇◇
面会に訪れた俺達が見たのは、あまりにも凄惨な出来事があったであろう事を物語る牧野の姿だった。
病院の患者衣の袖から覗く腕には無数の火傷跡が丸形に付いており、顔は殴られたのか包帯で包まれている。口元は切れた痕があり、青く腫れ上がる色が痛々しかった。
火傷の痕はいわゆる根性焼きという奴だろう。タバコの火を押し付けられるとああいう形に火傷痕が付くらしい。
「あ……」
「牧野さん」
「何しに……来たんだよ?」
顔を逸らしながら肩を震わせた牧野に一瞬のためらいを見せるが、直ぐに一呼吸置いて来客用の丸椅子に加奈ちゃんが座った。
「お見舞いに……」
「ありえねぇだろ。笑いに来たのかよ……」
「いいえ」
冴子さんから聞いた話によれば、牧野は数人の若い男達に拉致され、山奥にある暗い場所で数日間に渡る暴行を受けたそうだ。
性的暴行は勿論のこと、殴る蹴るの直接攻撃。
想像するだけで胸クソが悪くなる悪逆非道の仕打ちを受けた。犯人は近くの大学に通う学生で、付着した体液から前科持ちの男がしょっ引かれた。
そこから芋づる式に犯人が割り出され、無事に全員逮捕されている。
自業自得の事とはいえ、流石にそれだけの暴力を受けた牧野が哀れでならなかった。
同情する気は微塵もないが、加奈ちゃんの悲しそうな顔を見ているとザマアミロと感じる気分にもなれない。
「私はあなたを笑ったりしません。あんな気持ちになってほしいなんて、思っていませんから」
「ッ……。どこまでもお人好しだな、お前……」
悪態を突くかと思われた牧野は、自分の手を握って涙する加奈ちゃんに心底バツの悪そうな顔をした。
だけど、それまでの態度からは一変し、彼女の口からポツポツと初めての言葉が紡がれた。
「悪かったよ……。罠に嵌めて……お前の人生、壊しちゃって、ごめん……」
「牧野さん……」
「あんなに……辛かったんだな……痛くて、苦しくて、怖くて……。笑いながら犯される時の、自分が人間じゃなくなっていく感覚が、こんなに惨めで怖いなんて知らなかった……」
「はい……」
「人格を否定されて、自分の中にある大切なものが破壊されていくんだ……。どれだけ泣き叫んでも下衆な男の笑い声しか響かない。絶望して、自分がドンドン壊れていく……」
すすり泣く牧野の包帯が灰色に変わっていく。ガタガタと震える身体をかき抱いて三日三晩の慟哭を告白していた。
「自分を、可哀想だなんて思わねぇ。それだけのこと、したんだもんな……初めて分かったよ。犯されるってことが、どれだけ辛いか」
「はい……」
「お前もあんな気持ちだったんだよな……。私より純粋な分だけずっとずっと辛かったに違いねぇよな……。蹂躙される恐怖と、逃げられない絶望と、冷たくなってく心が、辛い……。あんなこと、私は何人もの女に強いてきたんだ……。報いを受けて当然だ……」
あれだけ傍若無人だった牧野をここまでしおらしくしてしまうとは。
この数日間でどれだけの事があったのか想像するのも恐ろしい。
それでもこいつの罪はこんな事では許されない。だが、痛みを知った以上、これから先の人生で誰かに迷惑を掛けることはないだろう。
牧野はリハビリを終えて退院したら、警察に出頭すると誓った。そして何年かかっても人生を壊してしまった人達に侘びるという。
慰謝料として求められる金額は半端な額ではなくなる。それでも、誰にも許されなくても、自分の犯してしまった罪を清算したいと、ベッドのシーツを濡らしながら告白した。
「頑張ってください。応援に来ますから……」
「やめろ。来なくていい。いや、来たら駄目だろ。もうアタシなんかに構わず彼氏と仲良くやれよ」
「牧野さん……」
「もう二度と会うこともないだろうよ。お前の人生に、アタシは必要ないだろ?」
「分かりました。さようなら牧野さん、どうかお元気で」
「ああ……」
加奈ちゃんは立ち上がり、そのまま病室を出ようと歩き出した。
その背中に向かって、牧野が掠れた喉を懸命に絞って大きな声を掛ける。
「月宮、さん」
「え?」
初めて、牧野が加奈ちゃんをちゃんと名前で呼んだ。そこには本気の思いが込められている瞳が垣間見える。
そしてそれは本当である事が、その後の言葉に込められた本気のトーンでよく分かった。
「…………本当に、ごめんなさい……心から、お詫びします」
最後に一礼。震える声で涙を流しながら謝罪を口にする牧野の姿は、人生で初めて心からの言葉を尽くしたのが伝わってくる。
「私は、あなたを許します。全ての人に許されるまで、どうか諦めないで」
加奈ちゃんはそれだけ言ってドアを開けた。
そして二人はそれ以上言葉を交わすことなく、振り返らずに病室を後にする。
こうして牧野との最後の決着は付いた。
俺達がその後の人生で二度と会う事はなかったのである。
◇◇◇
「ザマアミロって、言ってやろうと思ってたんだけどね……」
帰り道、加奈ちゃんは自嘲するようにそう言った。
どうやら今の加奈ちゃんは完全に加奈ちゃん100%の状態らしい。ルナちゃんは眠っている。
「だけど、多分、私もあんな顔してた筈だから……そう思ったら、もうこれ以上酷い思いはして欲しくなかった」
「立派だと思う。加奈ちゃん、君は強くなった。過去を乗り越えて強くなったんだ」
「うん。これで、ちゃんと前を向けると思う。心の中で、牧野さんを応援しても、いいかな?」
「ああ。俺は加奈ちゃんが誇らしいよ」
「ありがとう、克明君」
複雑な色を含んではいたが、それまでにないスッキリした表情をしている加奈ちゃんを見て、本当の意味で決着が付いた事を悟るのだった。