ガチレ〇プからの調教でズタボロにされた恋人を鍛え上げた絶倫ボディで徹底上書きする話 作:かくろう
「本題に入りましょうか」
神が現世に降臨したような、美しい目をした紗綾様が飲みかけの紅茶カップをテーブルに置き、不思議な笑顔で問いかけてくる。
一通りスイーツを楽しみ、少女の笑顔が厳かなものになる。
穏やかな微笑みを湛えながらも、その雰囲気は単に優しいだけのものではない。
身体の奥から緊張が走る。
それまでの空気が一変し、まるで猛獣を目の前にしているかのような、いやもっと尊大な存在を目の前にして再びひれ伏しそうになる。
まさしく菩薩の前に晒された凡夫だ。強すぎる神々しい光に恐怖心すら沸き起こってくる。
そういえば、死んだ魂が天の世界に入れないのは悪業の闇が強すぎて光に恐怖を感じて逃げてしまうからだとネット動画に出ていた坊さんが言っていた気がする。
まさしくそんな感じだ。
だがそこで怯んではいけないと思い、背筋を伸ばして耐え抜き、本題を切り出した。
「よろしくお願いします……。私は、自分の恋人が被った理不尽な暴力の後遺症を治してあげたい。普通ではない方法をご存じかもしれないという、会長のお力を拝借できませんか?」
「なるほど。一つ、質問があります」
「はい、なんでしょうか」
「あなたは、人から施しを受ける時には何が必要だと思いますか?」
「それは……対価を差し出せ、という……」
それを問いかけようとして、思いとどまる。
人の心を見るという篠宮会長の遣いの方。もっとちゃんと考えなくてはならない。
「対価、という答えでよろしいですか?」
奥方様の問いかけに頭を巡らせ、数秒考え込んだ後、出した答えを否定して首を横に振る。
「人から施しを受けるのに必要なのは……誠意ある態度、だと思います」
「ほう……誠意ある態度、ですか。良い答えですが、少し曖昧ですね。具体的にはどういうことでしょうか」
「……、もっと言うなら、日頃の行い。一つ一つの行為に対して、どれくらい真剣な想いが込められおり、その蓄積が相手の心を動かす人柄を作り出す。その完成された人柄によってもたらされる誠意ある態度は、力ある現象を動かし、施しを為す側の心を動かすものだと、思います……」
文章がまとまらず、考えがごっちゃりしたまま必死になって言葉を紡ぎ出す。
もう少し話を整理したかったが、すっかり狼狽えてしまい理路整然とした言葉が紡げていない。
「一言で言うなら『情けは人の為ならず』ということでしょうか」
「……」
「……」
沈黙が流れる。
「ふ……」
紗綾様の口元がつり上がり、笑いが漏れている。
そんなに愚かしい言葉だったのだろうか。
「志藤さん凄いです」
「一発合格……。流石だね」
「え?」
そんな狼狽する俺に笑いかけるのは隣でドーナツを頬張っている秘書のお二人だった。
意味深な言葉を口にする彼女達に俺の混乱はますます深まる。
「素晴らしいですよ、一発で正解を導き出すなんて」
「え、え?」
紗綾様の口元が満足そうに微笑む。
その笑顔はまるで年頃の少女のようで、思わず心臓が高鳴った。
イカンイカン。俺には加奈ちゃんがいるし、第一この人は人妻だぞ。
ときめいてどうするんだ。
「施しとは、何かを求めれば誰にでも与えられるものではありません。しかし、求めなければ得られないのも事実です」
「求めなければ得られない……」
少女のようでありながら、神聖で荘厳な笑みを浮かべた紗綾様は満足そうに頷く。
「そうです。では、得られる者と、得られない者。この違いはどこで生まれると思いますか?」
「得られる者と、得られない者の違い」
「そうです。願いを引き寄せる力は誰しもが持っているものです。しかし、それを行使できる人は一握り。それはたった一つの違いでしかありません。その答えは如何に……さあ、どうですか?」
たった一つでしかない。それは一体なんだ……?
「情けは人の為ならず。これは明確に正解の答えです。では、行為を確実にするためのたった一つのファクター。それはなんでしょうか……」
願いを叶える力なんて不可思議要素を確実にすることなんてできるのか。
そんなことができるなら世の中の誰もが思い通りの人生を歩むことができる筈じゃないか。
じゃあそれができてないのは、一体どんな要素だというのか。
俺は考え、その意味するところを導く思考を模索する。
今までの俺の行動。恐らくその中に答えがある。
そんな気がするのだ。
俺は考えに考え抜き、その答えを紡ぎ出す。
「答えは、……【見返りを求めず、一心に施すこと】です」
ニッコリと笑う紗綾様の表情に、正解を叩き出すことができたことを確信した。
◇◇◇
【side加奈子】
「得られる者と得られない者の違い、ですか……それっていったいどういうことでしょうか」
玲緒奈さんを家に招き入れ、紅茶とお菓子を楽しみながら談笑していた。
玲緒奈さんは昔会った時と同じように、とても気さくで華やかで太陽みたいに明るい人だった。
私達はあっという間に打ち解け、ミルちゃんと共に楽しい時間を過ごしていく。
そんな中、ふとしたことで玲緒奈さんの顔付きが変わる。
そして不思議な問いかけをされることになった。
『人から施しを受ける為には何が必要だと思う?』
そのような事を聞かれ、私は頭に疑問符が浮かぶ。
施しを受けるために必要なのは、誠実な対応。
普段の心構えであり、普段の行動に籠もる真剣さであり、心である。
私が風俗で働いて導き出した答えの一つ。
どんなに身勝手で理不尽な客でも、誠実に対応し続ければいつか分かってくれる。
それは、一つ一つの行為に込められた想いの真剣さが、相手にも伝わって、回り回って自分に返ってくる。
情けは人の為ならず。
そのように答えた。
玲緒奈さんは満足そうな笑顔で続けて質問を言葉にした。
「得られる者と得られない者の違い……」
その問いは、何故か真剣に考えないといけない気がした。
私は談笑の途中にも拘らず黙り込んで問いかけの答えを考えた。
「答えは、【見返りを求めず、ただ一心に施すこと】です」
「正解だよ加奈子ちゃんッ! それが宇宙の真理なの!」
玲緒奈さんの問いかけに、私は答えた。
満面の笑顔で手を握ってはしゃぐ彼女の様子に、正解を出すことができたことに嬉しくなる。
宇宙の真理、なんて突拍子もない事を言われても、何故だか彼女が本気でそれを言っているのが分かる。
それが嘘じゃないことも、彼女が強い確信のもとにそれを言っていることも。
そして、それが単なる迷信や思い込みじゃなくて、何度も自分で経験しているから来る確信だということも。
「でも、そんな単純なことで、本当に良いのでしょうか」
「そうね。言葉で言うのは簡単。でも、できる? どんな状況でも、一切の見返りを求めずに他人に施すことが」
それを言われてハッとなる。
確かにそれは言うほど簡単ではない。
私は風俗の中で、報酬もなく、帰ることができる見込みもなく、ただひたすら男の人に奉仕してきた。
見返りを期待することができない環境で、ひたすらに。
でもそれは自分のためだ。他人を思いやってのことじゃなかった。
「他者を思いやる心。見返りを求めず、ひたすらに与えること。それが与えられる者の条件なんだよ」
「でも、私は自分のために……」
「それでも、あなたは絶望的な状況下で諦めなかった。腐ることなく、誠実であり続けた」
私は、なぜだか彼女が私の事情を把握していることを確信していた。
知っている。玲緒奈さんは全てを知った上で私に問いかけたんだ。
ミルちゃんから聞いたのか。それとも、別の事情なのか。
分からない。
分からないけど、ちっとも嫌な気持ちはしなかった。
むしろとても嬉しい。
「貴女の為してきた苦労は報われるべきです。加奈子ちゃんはもう十分に試練に耐えた。その見返りは、返って然るべきでしょう」
それまでお友達のように優しい目つきだった玲緒奈さんが、まるで母のような、仏様のように慈悲深く、暖かい空気が辺りを包み込んで微笑んだ。
私の頬から、熱い涙が溢れてくる……。
なんでなんだろう。こんなにも熱い気持ちになったのは何故なのか。
分からないのに、心地良かった。
「あなたを篠宮家に招待します。そこで全てをお話ししましょう」
「え……?」
私を守ってくれていたのは、克明君だけじゃなかった。
それを理解する日が、間もなく来る。
そして、奇しくも同じ問いかけをされている克明君が同時期に同じ答えを出している事に、運命的な何かを感じることになる。