ガチレ〇プからの調教でズタボロにされた恋人を鍛え上げた絶倫ボディで徹底上書きする話 作:かくろう
「君たちの辿ってきた五年間の軌跡は聞いている。その中で大変な悲劇に見舞われ、未来の希望を断たれてしまった。報告では現代医療での治療は困難だそうだな」
「そうです。ですが、俺も彼女も、諦めたくありません。お金が必要なら一生掛けても準備する覚悟はあります。だけど」
「皆まで言うな。篠宮家の誇る世界最先端の医療施設を紹介しよう。世界のエグゼクティブだけが利用できる非認可の細胞再生治療を受ければ必ず元に戻る」
「ほ、本当ですかっ。良かった……加奈ちゃん」
「うんっ」
「だが、私の見立てではそれでも君の子宮に子種を宿すことは困難だろう」
「えっ⁉ そんな、どうしてっ」
「肉体の傷は必ず完治させる事ができる。それは約束しよう」
「それなら、なんで……」
「理由は一つ。君の子宮にとても良くないものが宿っている。大きくて深い、闇のような淀みがね」
「闇……?」
「そうだ。例え肉体が完治しても、それがある限り子供を宿すことは不可能だろう。体外受精などの技術を使っても同じことだ」
「どういう事ですかッ⁉ 抽象的な説明ではなく、もっと具体的に教えてくださいッ」
「つまり、加奈子君が抱えている子宮の不調は、肉体の損傷以上に、心の中にある深い闇が理由なのだよ」
「だからそれはなんなんですかっ」
抽象的な表現しか使わない篠宮会長に段々苛立ってしまい、ついつい声を荒げてしまった。
加奈ちゃんの手がキュッと握られ、俺はヒートアップしていた精神を納める。
「君の中には、もう一人の人格が宿っているだろう?」
篠宮会長は加奈ちゃんに問いかける。
「はい。彼女は自分をルナと名乗っています」
「そう、ルナ君だね。今ここで話をすることはできるかな?」
「それは……、やってみます」
加奈ちゃんは静かに目を閉じて息を吐く。恐らく自分の意思で交代をするのは初めてではないだろうか。
それでもこの場においてはそれが出来るような気がしていた。不思議だ。
加奈ちゃんとルナちゃんが交代したのが分かった。まとってる空気が変わり、開かれた瞳に宿る目つきがルナちゃんのものになっている。
「初めましてだね。ルナ君。私もそう呼んで構わないかな?」
「はい。お初にお目にかかります篠宮会長。暗闇の鳥籠から私達を救い出していただき、ありがとうございました」
ルナちゃんは正座の姿勢からゆっくりと指を突き、丁寧に頭を垂れる。
「礼を言うのは私の方だ。あの組織を追いやることができたのは、ひとえに君たちの身を粉にした働きがあればこそだった。それはここにいる誰にも不可能な事なのだよ」
「畏れ多いことです。私は克明君に会いたかった。その一心だけで頑張って来られたんです」
「ああ。君たちのように苦しんでいる女性達を助ける事ができなかった期間は、本当に心苦しかった。私も自分の愛する者達が同じ目に遭ったらと思うと胸が張り裂けそうだったよ」
「誰もあんな目になんて遭わない方が良いに決まってます。でも、全ては終わった事です」
「達観した目をしている。どうやら、自分の立ち位置を理解しているようだな」
「はい。だから、もう思い残す事はありません」
「え……?」
ルナちゃんは何を言っているのだろうか。いきなりの話題に頭が理解を拒む。
「どうやら理解しているようだな」
「はい。加奈子が妊娠できないのは、私がいるからですよね」
「なんだってっ⁉ どういうことですかッ」
「聞いての通りだ。彼女の子宮は、男性そのものを憎んでいる。月宮加奈子が感じてきた深い深い絶望の感情が、心の奥底に消えない憎しみを刻んでしまっているのだ」
「憎しみ……」
俺はその先を聞きたくなかった。
前々から予感があったのだ。ルナちゃんが時折見せる寂しそうな表情がそれを物語っている事を。
つまり、ルナちゃんが自分は消えるべき存在だと思っている事を、言いあぐねていると。
「私は、加奈子の深い絶望と悲しみが産みだした存在です。それは何度も何度も心を折られ、男性という生き物そのものに対する消えない憎しみを抑え込むためなんです」
「その通りだ。その憎しみが消えない限り、君の卵子は受精を拒み続けるだろう」
「そ、それとルナちゃんとどういう関係が……」
「分からんか? ルナは、加奈子が抱える男性への憎しみそのものといっていい存在なのだ」
「憎しみ……悲しみじゃなく、憎しみ……」
「そうだ。彼女はとても心優しい精神を持っている。ハッキリ言ってしまえば聖人レベルだ。しかし、だからこそ男性から受けた卑劣な仕打ちに対する感情を、憎悪という形で心の奥底に押し込んだ。それが男性そのものを拒むほど肉体に影響を及ぼしている」
「そんなっ……」
「彼女達はそれでも男性を憎みたくなかった。憎しみを分離した筈のルナという存在も、本質は加奈子君と同じ人格を有している。故に、彼女もまた自分を誤魔化した。心の奥に男性への憎しみを隠して。だがそれ故に、彼女の子宮は君さえも拒んでしまっているのだ」
「加奈ちゃんの俺への愛は本物の筈です。少なくとも俺はそう感じています。それも、俺の自惚れなのでしょうか」
「そんな事はない。二人の志藤に対する愛の感情は本物だ。そこに否定の要素は存在しない。私が言っているのは、五年間という蓄積で増大し続けた男性という存在そのものへの憎しみの事だ」
訳が分からない。言っていることは理解できるのに、やはり納得が出来るものではなかった。
だけど、俺がやるべきはここでわめき散らす事じゃない。
俺は言ってやりたかった。だったらどうしてそうなる前に止めてくれなかったのだと。
この人は随分前から加奈ちゃんの存在を知っていた。そしてその身に降りかかっている悲劇も把握していた。
なのに助けてくれなかった。
きっとそれはしたくても出来ない事情があったに違いない。それは頭で理解できていても、感情がそれを拒む。
だけど、だけどそうじゃない。俺が言葉にするべきは、過ぎ去った過去を嘆くことではないのだ。
「教えてください。一体どうすれば」
「それは彼女自身が答えを知っている筈だ」
「その通りです。会長なら、私を消すことができる筈です」
「ああ。既に覚悟ができているということだな」
「はい。そうすれば二人の子供はこの身体に宿るんですよね?」
「そう。君は二人の将来のために存在するべきではないと、君自身がずっとそう思ってきたのだろう?」
「ふざけるなっ!」
気が付けば俺は怒鳴っていた。
「克明君、大丈夫。私は消えるべき存在だから」
「ルナちゃん」
「隠しててごめんなさい。今まで幸せだったから、もういいの。二人のことは……」
「違うッ、そうじゃないっ!」
「か、克明君……」
「どうした志藤克明。私ならルナを消滅させて加奈子君の子宮を元に戻すことができる」
なんでそんなことが可能なのかとか、不可思議な出来事に対する疑問も今はどうでもよかった。
俺はこのまま二人の会話を看過することは出来ない。
ルナちゃんの決意を後押しすることも、見守ることも、受け入れて待つこともできない。
「俺が望んでいるのはルナちゃんの犠牲じゃない。俺と、加奈ちゃんとルナちゃん。三人一緒じゃなきゃ意味が無いんだ」
「言ったはずだ。子供を宿せない理由は、ルナの存在そのものである以上、両者の共存はなしえない」
「何か方法がある筈だッ。あんたほどの人がそれを知らないなんて言わせねぇぞ」
俺は立ち上がり、会長が天上人である事も忘れて怒鳴り散らす。まるでルナちゃんが消えた方が良いみたいな言い方が心底気に食わなかった。
「ルナちゃんが憎しみそのもの? 絶対に違うッ! 俺は知ってる。彼女がどれだけ優しい人なのかッ。どれだけ自分を犠牲にできる人なのか。そりゃあ憎しみもあるだろうよっ。そんなの無い方がおかしいっ。だけど、それでルナちゃんが消えなくちゃならないなんて有り得ないッ!」
「それは表向きの感情だ。彼女はそれを悟られたくないから、君への愛を示していたに過ぎない」
「あんたにルナちゃんの何が分かるッ!? 今日初めて会った彼女がどれだけ優しい人か知らないくせにッ!」
「志藤さん、それ以上の無礼な発言は看過できませんよ」
気が付けば愛沢副社長も桜子様も、もの凄い形相で俺を睨んでいる。
仏が夜叉へと変わってしまったのかと思うほどの形相に
「天上人なら何を言ってもいいのかッ⁉ お二人は黙ってていただきたいッ!」
「よい、二人とも。志藤克明、君も理解している筈だ。ルナの存在が君たちの子供の未来に直結していることを」
「いいや違うッ。あんたはまだ本当のことを言ってない」
「私が嘘をついていると?」
「嘘は言ってないんだろうさ。だけどまだ言っていないことがある筈だ。他に方法があるんだろ⁉ ルナちゃんも消えず、俺達が子供を授かる方法がっ!」
「どうしてそんなことが分かるのかな?」
「分かるんだよっ! あんたは何かを隠してる。あんたが俺達のことを言葉にしなくても理解しているのと同じ理由で分かるんだッ! まだ何か、俺達に言っていない方法がある筈なんだっ」
「そうか……本当に予想以上だな君は。それが困難な道だとしても、君はそれを選ぶのか?」
「当たり前です。俺の使命は加奈ちゃんとルナちゃん両方を幸せにすることだ。例え子供を授かる方法があろうと、それがルナちゃんの消滅を意味するならそれを選ぶ理由はない」
「ならば子供は諦めるか?」
「諦めないッ! 必ず何か方法があるはずだっ! あんたはそれを知っている。知ってて言ってない。まだ俺達を試しているのかっ! だったら言ってくれっ! 例えどんな方法だろうと、ルナちゃんが消えないなら絶対にやり遂げてみせるからっ!」
「そんな方法があるというなら、私が聞きたいくらいだ。一体どのようにするつもりだ?」
無礼千万。まさしくそういう態度だったのだろう。
射殺すような鋭い視線を突き刺してくる愛沢副社長と桜子様の殺気が身体を硬直させ、言いたいことを言い切った俺の僅かに冷静な思考の隙間に恐怖が差し込んだ。
だけど俺はそれをも振り切る。
「例え憎しみから生まれた存在であろうと、ルナちゃんはルナちゃんという感情を持った一人の人間だ。だったら、ルナちゃん自身がその憎しみを乗り越えて、精神的に成長すれば消滅しなくていい筈だ。原因が憎しみなら、それが鍵になっている。加奈ちゃんとルナちゃんの二人が憎しみを乗り越えれば問題は解決する。違いますか?」
静寂が流れる。その場にいる誰もが言葉を忘れたかのように静まりかえり、鳥のさえずりさえ消滅していた。
「え……?」
やがてそれは一人、また一人と波及していき、気が付けば俺とルナちゃん以外の全員が大きく拍手を打ち鳴らしている。
先ほどまで鬼の形相で俺を睨み付けていた愛沢副社長と桜子様さえ同様だった。
そこには怒りの感情はどこにもなく、惜しみない称賛と喜びの感情に溢れていた。
「まったく、あっぱれな男だ君は。私の想像を遙かに超える器に驚きを隠せない」
「どういう……ことですか?」
まだ理解が追いついていない。俺はルナちゃんと顔を見合わせてどういうことか分からず混乱してしまう。
驚くのも感嘆するのもいいが、もったい付けるのはやめて欲しかった。
「御簾を上げてくれ」
「えっ⁉」
するとそれまでずっとその場に鎮座していた篠宮会長が、御簾の向こう側でゴソリと動いたのが分かった。
会長の出した指示に愛沢副社長と桜子様が驚いた表情を見せる。その奥で同じように声を上げたのは、恐らく紗彩様だろう。
「い、いけません隆行さん。立って歩くのもやっとなのに」
「いいのだ。私は彼に無礼を働いた。それは伏して侘びねばならん。そこに人の手を借りる訳にはいかない」
ドタンッ
「ッ⁉」
御簾の向こう側で派手に転ぶ音に冷や汗が流れた。先ほどまであんなに強烈だった存在感が、今はとても弱々しい。
死にかけの老人がそこにいるかのように、か細くて小さな気配に変わって居るではないか。
「篠宮会長……」
「気にしないでくれ。ちょっとフラついただけさ。最近身体に力が入らなくてね。さあ御簾を上げてくれ」
「お待ちください」
思わず止めた。このまま彼の素顔を晒させて謝罪させてしまうのは、何かが違う気がしたのだ。
「無礼を働いたのは俺です。感情にまかせて失礼な言葉を吐いてしまい申し訳ありません」
「気にしないでほしい。君の言うとおりだ。私は試した。私の期待する答えを、君の口から言葉にしてほしかった」
「俺はあなたに頭を下げさせる訳にはいきません。多大な感謝をするべきお人なのに」
「それは違う。私は君を成長させたかった。私自身のエゴによってそうさせたのだ」
「一体どうして……?」
流石に放っておけなくなった周りの女性達に介助され、再び椅子に座った会長は、これまでの経緯をぽつぽつと語り始めたのだった。
「恐らく、このままいけば私はもう長くない」
「⁉」
会長から出てきた突然の言葉に驚きを隠せなかった。