ガチレ〇プからの調教でズタボロにされた恋人を鍛え上げた絶倫ボディで徹底上書きする話 作:かくろう
篠宮会長は俺を試した。自らの望む言葉を聞きたかったという願いのもとに。
それがなんなのか、俺はまだ分かっていない。
納める場所を見失った怒りの矛先が空中を浮遊して感情が迷子になってしまった。
だけど篠宮会長の言葉で新しい使命感が湧き上がって怒りの感情は霧散していく。
「恐らく、今のままでは私は長くない」
「えっ」
「た、隆行さんっ」
「何を仰いますのっ!」
彼の年齢がどのくらいか分からないが、病気か何かなのだろうか。
「今のままでは、とはどういうことですか?」
「そのままの意味だ。あの組織を壊滅させる為に色々と骨を折ってな。私の身体はもうボロボロなのだよ。回復させるにはこの先の人生を養生に費やすしかないのだ。だから自分の後継者候補を探していたのだ。一人でも多くな」
「こ、後継者って……でもそれは」
「ああ。里中源治、そこにいる井上祐太朗。彼らもその候補なのだが、君の事を知った時からもう一人加えたくなってしまったのだよ」
「それが、俺ってことですか?」
「そうだ。だから予定を早めてあの組織を壊滅させ、月宮加奈子を一刻も早く解放する必要が出てきた」
「エッ⁉ ど、どういうことですかッ⁉」
「本来ならあの組織を潰すためには、あと数年は下準備が必要だった。だがそれでは君たち二人の方が持たなかっただろう。だから予定を数年前倒しにするために、かなりの無茶をしてね。そのために色々と力を使い過ぎて弱ってしまった。おかげで免疫が落ち、病魔に蝕まれてこのざまだ」
「力を使い過ぎたって……お怪我でもされたのですか?」
「怪我とは違うが、まあそこは重要じゃないから気にしないでくれ給え。君の成長のためには彼女との再会が必須だった。だからこそ無茶をしてでも組織の壊滅を急がなければならなかったのだ」
「そう、だったんですか……」
「そして君の成長のために、トラウマを抱えた月宮加奈子に寄り添い、一緒に試練を乗り越えてもらう必要があったのだ。だからこそ、私は君たち二人にもっとちゃんとした謝罪しなければならない」
「え?」
「本来ならトラウマの克服は何年も掛けてゆっくりと行なうべきことだ。私は目的の為に本来長い時間をかけて乗り越える苦しみを一気に与える環境を作った。普通の人間には耐えられない過酷な環境だ。特に加奈子君の被った精神的被害は計り知れないだろう」
「誤解しないでいただきたいのは、隆行さん……篠宮会長はそれらを準備してけしかけたわけではありません。あくまで加奈子さんと因縁がある相手と遭遇しやすい環境を整えただけです」
愛沢副社長の弁解にはあまり意味が無い気がする。それを分かっているのか会長はすぐにそれを撤回した。
「いや、結局は同じ事だ。遅かれ早かれ遭遇することを想定した環境を作り出したのだからな。牧野千咲然り、富山武彦然りだ」
「え、そ、それじゃあ」
「ああ。本来なら冴子君に命じて処分する予定だったが、私が止めていた。過去に因縁のあるこの二人と関わることで、加奈子君は劇的に成長できる可能性がある。しかしそれには志藤克明の支えが必須だった」
「そのために加奈ちゃんが苦しむ環境を仕組んだということですか」
「その通りだ。月宮加奈子の成長は著しく、冴子君の掲げる業界のクリーン化に大きく貢献できる人物へと成長している。そして志藤、君は私の想像を遙かに超え、この私すら目的の為に利用する胆力を見せつけてくれた。それは源治にも祐太朗にもない豪胆な気質だ」
「……」
「全ては私が仕組んだも同然だ。君たちには再会し、普通の幸せを享受する権利があった。だが私のエゴでそれを阻んだのだ」
確かにそういう言い方もできるかもしれない。
だけど……。
「私は、そうは思いません」
「ルナちゃん……いや、加奈ちゃんか?」
今は二人が混じっている状態だ。と言うことは、今の言葉は二人の総意ということになる。
「あの地獄から解放してくださったのは、紛れもない事実。私がきっかけだったとしても、実行してくださったのは会長です。それに、ミルちゃんや、冴子さんに雪乃さん。克明君には咲良ちゃん、井上さん、香澄さん、綾菜さん。心を支えてくれる強い味方を側に置いてくれたのも会長ですよね?」
そうだ。今の環境も、恐らく全て会長の配慮によって準備されたもの。
加奈ちゃんが解放されたのは、間違いなく彼の力があればこそだ。
怒りにかまけてそれを忘れるところだった。加奈ちゃんのおかげで思い出すことが出来た。
「全ては君たち自身の努力が招いた結果だよ。きっかけはあくまできっかけだ。それを活かすも殺すも自分達の心の在り方が重要なのだ。どうか私の謝罪を受け入れてほしい」
「ありがとうございます……。私は、会長のお心に感謝いたします」
「俺も、俺も同じです」
「話を本題に戻そうじゃないか。ルナ君が消えることなく、加奈子君が女性の機能を取り戻す方法。それは先ほど志藤が言った通りだ」
つまり、ルナちゃんが憎しみを克服し、過去を乗り越えて一つの人格として成長すること。
それが鍵になっていると思われる。
「ルナちゃんが精神的に成長すること……。そのためには」
「ルナ君、君は志藤に多くの女性を癒やして欲しいと考えているね。それは何故かな?」
「それは……彼なら私と同じように傷ついた女性達を救う力があると……。彼女達の中にある男性への恐怖を取り除いてくれるからです」
「そう、それが鍵だ。そしてそれは今関わっている全ての女性が望んでいること。違うかね?」
「その通りです。冴子さん、雪乃さん、咲良ちゃん。皆男性に絶望してきました。だけど、克明君になら心許すことができる。だから……」
「そうか……。志藤加奈子。君に一つ問うても良いかな?」
「は、はい、なんでしょうか」
「君は辛い環境の中で志藤克明を思い続けた。だが君を辛い環境から解き放とうと本気になった男もいたはずだ。あの金持ち達の集まり。確かにロクデナシの性癖破綻者が多かったが、それでも人格に優れ、君を救い出そうとした男も一人や二人ではなかったのではないかな?」
「はい……。でも、あの男は私に異常な執着を見せていました。私を助けようとした人……酷い目に遭わせて」
加奈ちゃんの口から吐露されたのは、非合法な組織から彼女を救い出そうとした男の話だった。
加奈ちゃんに本気で惚れ込み、飼い主の男から解放させようとした男達がいた。
だが、加奈ちゃんに異常な執着を見せていた飼い主は、彼らを見せしめとして公開処刑にしたという。
裏の社交界トップに君臨していたその男が感情的になり、徹底した処刑を行うことで加奈ちゃんを奪い取ろうとする男はいなくなった。
それは同じ地位にあるライバル達への牽制の意味も含まれていたのかもしれない。
これまで聞いたことのなかったエピソードだが、言いたくない気持ちも理解できる。
ここに来て初めて聞く他の男の話。だが今更こんな話で心が揺らぐことなどなかった。
「あの、どうかその話は克明君の前では」
「憚られるかね? それらは全て過去の出来事だろう」
「それでもっ! 私が愛しているのは克明君だけです。過去の出来事でも……、彼以外の人との話なんて聞かせたくありません」
「君はどうかね志藤克明」
その問いかけに対する答えなど決まっている。これまで何度も問われてきて、今更日和る理由などありはしないのだ。
それでも加奈ちゃんにとっては気持ちのいい話題ではない。ましてやこれだけ大勢の前では躊躇して当然だろう。
「構いません。彼女が過去にどの男に愛されようと、加奈ちゃんの心が傾いていようと。取り戻すだけです。今の彼女は俺を愛してくれている。その事実があれば十分です。彼女自身が、俺にハッキリとそう言ってくれました。俺以外の人間に心を向けたことなどないと」
「言葉という曖昧な概念で表された表現にどれほどの信頼があるのだ。事実は違ったかもしれないだろう?」
「関係ありません。俺にとって真実は加奈ちゃんの口から発せられた言葉です。例えそれが本当ではなかったとしても、二人でそれを真実にすれば良い。俺達は人間です。迷うのは当然です。俺だって諦めかけたことは何度もあった。それでも、いや、だからこそ未来で紡いでいく二人の感情は、過去を乗り越えないといけないと思います」
「私も同じです。私は克明君のことを忘れたことなんてなかった。諦めそうになったときも、いつだって克明君の顔が浮かんできて、絶望する私を励ましてくれた。いま私は彼との時間を取り戻せた。これからの未来、絶対に揺らがない為に、私はどんな辛いことでも一緒に乗り越えたいんです」
俺達はいつの間にか手を握り合っていた。
過去にどんな感情を持ったことがあったとしても、大事なのは今だ。
過ちは誰にでもある。二人で乗り越えれば良い。
それに、そんなものは過ちですらないのだ。
「人の心は無常です。移ろいゆくものであるなら、俺達自身が、二人で手を取り合って、全ての感情を乗り越えますッ」
静寂が流れる。会長は御簾の向こう側でどんな顔をしているのだろうか。
やがて沈黙の空気が重くのし掛かり、顎から冷や汗が流れ落ちる頃、音一つ無い空間に拍手が鳴る。
パチパチパチパチパチ……
小さな拍手が再びいくつも鳴り響いた。
顔が熱くなるほど恥ずかしい台詞を言っている自覚はあったが、全部真剣に言った言葉であり、一切の偽りはない。
桜子様も、愛沢副社長も、いつの間にか御簾の向こう側にいる紗綾様らしき影も、そして会長自身も……。
顔は見えないのに、何故だか惜しみない拍手を送ってくれているのが分かった。
「素晴らしい答えだ。加奈子君、君の見解とは少し異なるが、事実を伝えよう。君を救い出そうとした男達。それらは全員突き詰めれば君を飼っていた男と同じ種類の男達だ。仮に救い出されたとしても、その先に待っているのは環境が変わるだけで同じ地獄だった」
「そ、それは……いったい」
「つまり、君が強い意志を持って志藤克明を想い続けた思念は正解だったという訳だ。もしも君が心折れて他の男に身を任せていたら、今のような結果はもたらされなかった」
「……」
「志藤克明」
「は、はいっ」
「愛とは、かくも尊い感情だとは思わぬかね。愛とは人を強くし、また弱くもする。だが、最後の最後で人を支えるのは、見返りを求めない無償の愛だ」
「会長……」
「かく言う私も一人では脆弱な人間に過ぎない。私を愛してくれる多くの人達に支えられて今の立場にいる。私は確かに普通の人にはできない事ができる。それでも支えてくれる愛する者達がいなければ無力に等しい」
普通の人にはできない事。それは権力的な意味だけではなく、恐らく超常的な力の事を言っているのだろう。
「志藤克明、そしてその妻加奈子。どうか頼む。私の後継者になれとは言わぬ故、その思想を支えてくれる源治や祐太朗の力になってあげて欲しい」
「そ、それはもちろん」
「感謝する。最後にもう一度、本当にありがとう。私の全責任を持って君たちの害となる組織、個人に至るまで脅威となる者達を排除すると約束しよう。今後君たちに火の粉が降りかかることはない」
「と言うことは……」
「ああ。安心して暮らすがいい。君たちの安全は私が責任を持って保証する」
「私……もう怯えなくていいの……ですか?」
求めていた、あれほど求めていた平穏への約束。
日本の、いや世界を裏から牛耳っていると言っても過言ではない男の口からは、俺達が最も求めていた言葉が紡がれる。
「私ッ、普通の生活に戻れるんですかッ⁉」
「そのとおり。君を脅かす存在は全て淘汰された」
「お出かけ、できますか……? 克明君と、一緒に……、顔、隠さなくても……」
「そうだ。既にほとんどの脅威は排除済みだったが、君たちへの試練の為に敢えて残していた。それも既に終わった。もうどこに出かけてもヤクザもレイプ犯も追ってくることはない。大手を振って外に出かけるといい」
「本当……本当に……」
「そうだ。君の脅威となる動画データは篠宮家が所有する超大型ネットサーバーを通じて徹底して調査してある。これは一般に流通しているものとは違い、ありとあらゆるデータに干渉できる。言ってしまえばネットに繋いでさえいれば、個人の端末に保管されたデータにすら干渉できる。5年に遡ってあらゆる角度から調査しておいた。幸いにしてネットにアップされたものは存在せず、個人で所有する可能性のある人物は既に排除されて警察に証拠物として保管されている。だがそれらも既に犯人を全員処分した為に不要となった。だから私の口利きで全て削除を命じた」
「つまり、加奈ちゃんの動画はもう存在しない、と?」
「その通りだ。部下が完璧に削除したことを確認している。君のトラウマとなる証拠映像は完全にこの世から消滅した」
「あ……ああ……ぁあっ……っ、ありがとう、御座います……ありがとう……ありがとうっ……うえぇ、ぇえ、うわぁあああああああんん」
全ての感情が溢れ出し、加奈ちゃんの涙腺は崩れていく。
「加奈ちゃん」
「克明君……かつあきくぅんっ!」
「良かった……良かったね……加奈ちゃん」
加奈ちゃんは泣き続けた。
溜まりに溜まった膿を出し切るように……。
「さて、事の経緯は先ほど説明した通りだ。結果として君たちを利用する形となった事を侘びよう」
篠宮会長の説明によれば、全ては組織壊滅のために引き起こされた副産物。
加奈ちゃんを苦しめた過去の呪縛が全て解かれたということは間違いない事実である。
「今は全てを理解する必要は無い。大事なのは、加奈子君が抱える問題の大半は解消され、なんの憂いもなく日常を取り戻せる環境が整ったということだ。風俗店の店長業務に支障が無いように新しい大型店舗を準備しよう。風営法が厄介だったが無理やり捩じ込んだよ」
「そんな事まで……ありがとうございます、会長……」
「だが気を付けたまえ。君が風俗店に勤めていた事実は消える事はない。これからも君を知っている過去の客が店を訪れるだろう。今までのような優しい客ばかりではない。数が重なればいずれトラブルを招く客も現われる。それが店の中だけで起こるとは限らない。そしてそれは、これから生まれる可能性も十分ある」
「はい、分かってます……。でも大丈夫です。私には守ってくれる人が沢山いる」
「その通りだ。今後もできる限り篠宮家でサポートすることを約束しよう」
全ての問題は解決された。
求めてやまなかった結果がもたらされている事実に、俺達は涙を禁じ得なかった。
「改めて言おう。これまでの数々の非礼を侘びさせてほしい。今後は篠宮家が全力で君たちをサポートする。志藤克明、君がこれからやるべきことを伝えよう」
「はい」
「君はこれから、多くの女性を救いなさい。それを加奈子君と手を取り合って成し遂げるのだ。心の奥底に根付いた憎しみを消滅させるのは簡単ではない。だが、目の前で救われていく多くの女性の喜びを目にすることで徐々に浄化されていく筈だ」
そうか。加奈ちゃんが傷付いた女性達でハーレムを作ろうとしていたのは、それを本能的に理解していたからなのか。
「分かりました」
「まずはそこにいる篠崎君、冴子君、雪乃君に……もう一人」
「もう一人?」
「いや、これは後で伝えるとしようか。とにかく君を必要としてくれる女性は沢山いる。これは私にも源治にも、祐太朗にも不可能なこと。痛みを知る加奈子君を救った君にしかできない事なのだ」
「はい。改めて決意を固めました。篠宮会長、改めて本当にありがとうございました。必ず成し遂げます」
「是非頑張って欲しい……私も、応援……っぅう……」
「隆行さんっ」
ドサッという音と共に、奥にいると思われる紗彩様の悲鳴が聞こえる。
それと同時に左右に分かれて御簾の前に陣取る愛沢副社長と桜子様の表情も青ざめ、思わず御簾をあげようとして奥の紗彩様に止められていた。
「すまない。そろそろ体力が限界のようだ。家族以外の人間とこれだけ喋るのは久しぶりでね。少々はしゃいでしまったらしい。心ばかりだが、君たち二人に贈り物を用意した。私の期待を超えてくれたお礼と、今までのお詫びを兼ねている。深雪、桜子、後を頼む」
「かしこまりました」
「旦那様はお早く寝室へ」
「ああ、それでは二人とも、また会おう。君たちの幸せを陰ながら見守らせてくれ」
「ありがとうございます……会長」
「ありがとうございました」
顔は見えないのに、何故だか彼が満足気に笑ったのが分かった。
そうして会長との面会は終わり、愛沢副社長の話が始まった。