ガチレ〇プからの調教でズタボロにされた恋人を鍛え上げた絶倫ボディで徹底上書きする話 作:かくろう
「ルナさんを、諦めてください」
「な、なんだッてっ⁉」
信じられない言葉であると同時に、パズルのピースが填まっていくように俺の脳裏に散らばった様々な記憶が、一つの答えを導き出した。
「ま、まさかっ……」
まさか……、あの時の会長とのやり取り。
それは、あの日の会長との邂逅でルナちゃんと彼がしていた会話が、その答えであった。
――【達観した目をしている。どうやら、自分の立ち位置を理解しているようだな】
――『はい。だから、もう思い残す事はありません』
――【どうやら理解しているようだな】
――『はい。加奈子が妊娠できないのは、私がいるからですよね』
――【彼女の子宮は、男性そのものを憎んでいる】
――【心の奥底に消えない憎しみを刻んで】
――『会長なら、私を消すことができる筈です』
――『そうすれば二人の子供はこの身体に宿るんですよね?』
――『大丈夫。私は消えるべき存在だから』
――【私ならルナを消滅させて加奈子君の子宮を元に――】
「まさか会長はっ、いや、副社長と桜子様で、会長の替わりにルナちゃんを消滅させようとしているのかッ⁉」
「その通りです。夫は、残された生命力でルナさんの憎しみだけを連れていくつもりなのです。そうすれば、ルナさんは消滅することなく、加奈子さんが子種を受精することができる。しかし……それをすれば、隆行さんは確実に死んでしまう」
この人達には、普通の人間にはできないことができる。それはなんとなく分かっていた。
あの日の会話からも、それは示唆されていたのだ。
「だからその前に、あなた達でルナちゃんを消し去ろうと? 夫の命を長らえる為に……ルナちゃんに犠牲を強いるんですか? どうしてっ! 憎しみは、愛を育んで消していくんじゃなかったんですかッ⁉」
「間に合わないのです。ルナさんの憎しみは、とめどなく溢れ出している。その間ずっと、隆行さんは憎しみを受け止め続けている。もう彼の生命は風前の灯火なのです」
「あなた達には、普通の人間にはない力がある。それはもう察しています。どういう事か、具体的に教えてください。何か方法がある筈だ」
「ないんです。もう間に合わない。隆行さんは、もう決めてしまわれた。だから時間がないんです。次に目を覚ましたら、彼は確実に実行してしまいます」
愛沢副社長の口から説明された不可思議な出来事の答え合わせ。
篠宮会長を始めとした、篠宮・奉龍院に連なる人達には、大なり小なり不可思議な能力を持っており、会長はその中で特に強い能力を有している。
都市伝説のような話であったが、実際にそれらしき現象を目の当たりにした俺には疑う余地はなかった。
「俺にも、そういうのがあるってことなんですね」
「そうです。加奈子さんとルナさんの違いが分かる。人の気持ちを本能的に察する。精神的なものだけではありません。無尽蔵にも近い精力。成長期を終えた肉体の劇的な変化。全て我々と同じ力です。隆行さんがあなたを後継者に推すのは、そういった才能を有しているからに他なりません」
ある程度納得のいく話ではあった。俺は自分をそれほど優秀な人間だとは思っていない。
しかし、目的の為に努力できる胆力は持ち合わせているという自負はある。
加奈ちゃんの為ならどのような苦しみにも耐える自信がある。
「確かに……。このところの不可思議な現象にはそういう理由があったんですね」
自分が人間離れしている予感はあった。いくらなんでもあれだけのセックスを一晩こなす人間がそう多いとは思えない。
過去の自分と照らし合わせても、"体を鍛えたから"だけでは説明の付かないことだ。
「憎しみを受け止めるっていうのは、一体どういうことですか?」
「あの方は他人の苦しみを背負うことができるのです。大部分はあなたが浄化していますが、それでも抑えきれない分を隆行さんが引き受けています。しかしそれには大幅に体力を消耗します。いえ、正確に言えば、苦しみを背負うことは死を近づけるのと同義なのです。ルナさんのことがなければ、また元気になれる見込みはあるんですっ」
それもまた、不可思議で怪しい話に聞こえる。だが、この人達の言っていることだ。嘘ではないのだろう。
組織の壊滅に心を砕いたというのも、人の苦しみを大量に背負い込んだせいだという。
苦しみとは、人の業、悲しみ、死の運命。様々な人の苦しみの感情を背負い、吸収することで人の成長を促す事ができる。
おとぎ話のような話だ。あの人は本当に神か仏みたいな存在なのだろうか。
普通に考えれば信じられる話ではないし、オカルトも良い所だ。
しかし、これまでの現象がそれを真実であると物語っており、事実として会長は現在死の淵に居る。
次に目を覚ました時、彼は自分の命と引き換えにルナちゃんの憎しみの感情を全て背負って逝くことを決意したという。
人道に反したことを言う自覚はあるが、俺にとってはその方が都合が良い……と考えるのは、俺に人の心がないからだろうか?
だけど、俺には加奈ちゃん以上に優先すべきことなどない。例え大恩ある篠宮会長のためとはいえ、ルナちゃんを諦めるなんて選択はできる筈もなかった。
「私とまぐわえば、あなたのルナさんの記憶を消すことができます。あなたは力がとても強い。ですから体内から」
「だから俺を誘惑しようとしたんですね」
「はい。失敗しましたが……」
「それで良かったと思います。俺は、きっとあなたを愛せないし、あなたは一生悲しみに暮れることになる」
「そうかもしれません。でも、あなたはきっと、私をも愛してくださるでしょう。そういう所は隆行さんにそっくりですよ」
俺は苦笑するしかなかった。愛沢副社長は落ち着きを取り戻し、衣服を只してこれまでのことを謝罪してくれた。
だが、何故だか奥歯に物が挟まるような不快感というか、何か重要なことを見落としているような気がしてならなかった。
そう、なにか重要な事を見落としているような、それを考える事をどこかでブロックされているような不快感を感じる。
「愛沢副社長……」
「はい、なんでしょうか?」
「いま、俺に何かしていますか?」
「……」
彼女は目を逸らしたまま答えない。彼女の表情には、先ほどまでとは何か違う感情が宿っているような……申し訳なさと、安堵?
何か変だ。何か重要な事に辿り着きそうになると思考が鈍る。副社長の狙いがルナちゃんなら……俺はここにいつまでも居るべきではない……ッ、そうかっ!
思考を巡らせているうちにとんでもない事実に気が付いた。
副社長の安堵した表情は、それを裏付けている。
「桜子様……桜子様はどこですかっ! 会わせてくださいっ!」
「……」
全身から血の気が引いていった。愛沢副社長の悟りきった表情が、その答えを示している。
「既に、あなたのマンションに到着している頃です」
「じ、時間稼ぎだったのかっ!」
「申し訳ありません。あなたがここに到着して、加奈子さんがいないと分かったと同時に向かわせました」
「クソッタレッ! 蓮井さんを下がらせたのはそのためかっ!」
すぐに踵を返し、加奈ちゃんの番号をコールする。頭の中が痺れ、灼熱の焦りが身を焦がしている。
内蔵全部が焼け落ちそうな焦燥感が全身を支配し、走る足を鈍らせた。
「クソッ、出ろッ、出てくれッ!」
廊下を全速力で走りながらスマホの向こうにいる筈のルナちゃんに思いを馳せる。
ルナちゃんは、きっと受け入れてしまうだろう。彼女は元々悟っていた。
篠宮家の人に強く説得されたら、消滅を受け入れて俺達の子供の礎になることにためらうことはない気がする。
嫌な予感が止まらない。だだっ広い敷地は出口が見えてこない。車で移動するのを前提に作られた広さなのだから当然である。
出口が遠い。全速力で走っても中々辿り着かない。
その間もずっと加奈ちゃんの番号をコールし続けているが、一向に出る気配が無い。
「ルナちゃんッ⁉」
その時、コール音に交じってメールの受信音が鳴っていることに気が付く。
慌ててメール画面を開くと加奈ちゃんだった。
俺はその文章を見て、その場に崩れ落ちることになった。
【ありがとう 幸せでした さようなら ~ルナ~】