ガチレ〇プからの調教でズタボロにされた恋人を鍛え上げた絶倫ボディで徹底上書きする話 作:かくろう
「よし、とりあえず変装はこんなものかな」
夜。
仕事を終えて帰宅した俺は早速瓦ノ丸さんとの約束の場所に向かうことにした。
しっかりと変装をして現地に向かい、先に席に着いて相手の到着を待った。
緊張した面持ちの加奈ちゃんは落ち着きなく指を動かして不安気に呼吸を乱している。
「加奈ちゃん、大丈夫?」
「うん。やっぱり緊張しちゃって……」
「だよね。俺もだよ。でも」
「うん……前に進むためだもんね。私もいつまでも怯えてばかりじゃいられない」
再会してまだ数日。ここまで劇的に事態が動くとは思ってなかった。
加奈ちゃんだってまだまだトラウマが深く、乗り越えたい課題が山積みのはず。
それでも前に進もうとしている。なんて強いのだろうか。
「俺は加奈ちゃんを尊敬する。何があっても守るからね」
「ありがとう。頼りにしてるね」
「お連れ様がお見えになりました」
部屋の中に緊張が満ちる。俺達は互いに目を合わせ、深く深く呼吸する。
「はい、通してください」
ウェイターに頼み、
敵かどうかは分からない。だが初めから敵と決めつけて眉間に皺を寄せても仕方ないだろう。
開き戸がスライドし、ウェイターの後ろに髪の長い女性が見える。
あれが瓦ノ丸冴子さんか……。
「お待たせして申し訳ございません。瓦ノ丸冴子です」
銀色の髪。抜群のプロポーション。長くスラリとした足が覗くスリットドレスは落ち着いたシルバー。
安心感を与えるような柔らかい印象と、男の心をザワつかせるような完成された女の色気が完璧に融合している。
「あ、初めまして」
「どうかそのままで」
「え?」
慌てて挨拶を返そうと立ち上がろうとする俺達を制止する彼女。
「今回は私の我が儘でお二人にご足労いただきました。なのでそのようにへりくだる必要はありませんわ。本来なら私の方でお二人をご招待するべき所です。どうぞ客人のつもりで接してください」
若手ビジネスマンのクセで立ち上がって挨拶を返そうとする俺達を彼女の言葉が遮る。
落ち着いた大人の女性を体現しているかのような瓦ノ丸さんの柔らかい空気に、緊張が高まりそうになる心が静まり返る。
席に着く姿も可憐な動きで一つ一つが洗練されている。
優しそうな顔つきは悪意というものを感じられない。
色濃いアイシャドーとマスカラが塗られた目は一見キツそうな印象を受けるものの、瞳の奥には愁いがあり、少しハスキー掛かった静かなボイスは警戒心が薄くなりそうな優しい印象を受ける。
「改めまして、ヘブンズ・ヴァルキリーの代表を務めております瓦ノ丸冴子と申します。本日は食事にお招きいただきありがとうございます」
「初めまして。既にご存じかと思いますが、志藤克明です」
「月宮加奈子です」
「ご丁寧にありがとうございます。瓦ノ丸というのは仰々しくて呼びにくいかと思いますので、どうか冴子とお呼びください」
「ありがとうございます。では冴子さん、単刀直入に伺います。あなたの目的を教えて頂けますか」
俺はヒネった考えをせずに真っ直ぐに本題を切り出した。
すると彼女はおもむろに立ち上がり、ゆっくりと腰を直角に曲げていく。
一体何が起こっているのか分からず二人して慌ててしまう。
冴子さんと呼ぶことを望む彼女の瞼が閉じられ、その頭が静かに下げられる。
予想していなかった行動に俺達は顔を見合わせて口を開いたままになる。
「あ、あの」
「その前に、まずは発言をお許しくださいますか?」
「え、は、はい」
「一体これは」
「私は、あなた方お二人に是非ともお礼を言いたくて」
「お、お礼ですか?」
「唐突なのは理解しております。どうか、経緯を説明させてください」
とにかく、冴子さんと呼ぶことにした彼女の頭を下げる理由が分からなかった。
敵か味方か判断しようと思っていた彼女の真意は、俺達が予想していなかった驚きに満ちていた。
◇◇◇
「月宮さん、まずはあなたにお伝えしたい」
「私、ですか……? それは一体……」
冴子さんが語るお礼を言いたい理由。
それは俺達にとって福音となるだろうか。それとも罠か。
「月宮さんは、私達があの男から解放されるきっかけを作ってくれた恩人なのです」
これは加奈ちゃんの予想が当たっている事になるのか。
「それはどういうことですか?」
「ヘブンズ・ヴァルキリーは私が作り上げた会社ですが、弱みに付け込まれて支配されていました。組織の崩壊をきっかけにようやく取り戻す事ができたのです」
弱みに付け込まれたとは穏やかではない。悪辣な男の悪の所業は聞けば聞くほど胸クソ悪かった。
「組織の幹部には定期的にキャストを献上しなければなりませんでした。報酬は破格でしたが、中には特殊過ぎる性癖に心を病んでしまった子も沢山いたのです。逆らえば会社は接収。非人道的な地下風俗……。法外な上納金。数え上げれば切りがありません」
本来は一方向からの情報は鵜呑みにするべきではない。
この人が俺達を利用するためにお涙頂戴話をしている可能性だってあるのだ。
しかし、この人の真に迫る物言いは演技には見えなかった。
それでも俺は客観的な立場を崩さないようにしないと。
「なぜ組織の崩壊が加奈ちゃんのおかげなんですか?」
「志藤さんにとっては不愉快な話だと思います。しかし、組織のトップたる男が夢中になった月宮さんという存在はとても大きかったのです。組織運営に支障をきたすほど女に執心したために隙ができ、当局が強制捜査をすることができました」
加奈ちゃん一人の存在がそこまでの影響を与えていたと言うことか。
「そのおかげで組織の名だたる幹部のほとんどは逮捕・拘束され、残っているのは雑魚ばかり。予断を許さぬ状況ではありますが、以前の勢いは見る影もなく、私でも十分な対応が可能となりました」
やはりこの人も組織にいただけあって裏社会にも精通しているのだろうな。
「加奈ちゃんが逃げ出せたのは組織間の抗争による混乱ではなかったのですか?」
「それは表向きの話です。実際は"とある超法規的機関"による断罪でした」
超法規的機関とか断罪とか……。
まるでバイオレンスとかサスペンスの漫画に出てくる設定みたいだ。
現実味がまるでないが、実際に経験してきた二人がいるのだから真実なのだろう。
「奉龍院……それに、篠宮。この名前に聞き覚えはありませんか?」
「あります。あの男が時々口にしていました。忌々しい男だとブツブツ言って。まるで恐れてるみたいでした」
「そうです。世界を裏から支配していると言われる日本の真なるトップ。それが奉龍院という家柄です。そして篠宮というのは、その奉龍院を実質的に支配している御方の名前なのです」
篠宮……。俺にはその名前に聞き覚えがあった。
俺が勤めている水無月コーポレーションの先代社長の名前と同じだからだ。
まさかとは思うけど……。
「奉龍院が断罪のメスを入れる事ができたのは月宮さんがあの男を骨抜きにしてくれたおかげなんです」
「そんな、私は必死だっただけです」
「いいのです。結果的にそうなったのです。そのおかげで私はグループを取り戻す事ができました」
「そう、ですか……」
「そこで、今のあなた方が抱えているであろう問題。組織の追っ手から、私の方でお二人を守らせて頂けないかと……そう考えて旧知の仲である里中さんに志藤さんの紹介をお願いしたのです」
「どうして里中社長から俺……私の事を?」
「それは、お話しするとかなり複雑な経緯となります。まず私は組織の人間として以前から月宮さんを存じておりました。その交際相手である志藤さんの事も、独自に調べて知っていたのです」
「な、なるほど。それで?」
「はい。志藤さんがお勤めになっているのが水無月コーポレーションだと知りましたので、知り合いの里中社長に事情を説明して紹介をお願いした次第です」
なるほどな。そういう経緯だったのか。しかし、加奈ちゃんを守るとは一体どのようにするのだろう。
「実はまだ表には出ていない情報なのですが、水無月コーポレーションは近いうちに夜の産業に乗り出す為の子会社を設立する予定なのです。ヘブンズ・ヴァルキリーと提携して、我が社からは業界のノウハウの共有を。水無月からはコネクションと莫大な資金を提供していただき、業界で盤石の地位を築く手筈になっています」
「そ、それはまた凄いですね……。しかし、それと加奈ちゃんを守る事と、どう関係が?」
重要なのはそこだ。風俗業界は詳しくないが、水無月コーポレーションのような企業と提携するなんて普通はありえるのだろうか、などの疑問は正直どうでもいい。
問題は冴子さんのいう守る方法とそれがどういう関係にあるのかだ。
考えようによっては水無月コーポレーションという一大企業の後ろ盾を得られるに等しい。そうなったら非常に心強いのは間違いないのだが。
「はい。蛇の道は蛇、ともいいます。裏社会の魔手から一人を守るには、同じく裏社会の力が必要になります。ヘブンズ・ヴァルキリーは夜の世界のクリーン化を経営理念に掲げていますが、それには裏社会にも対抗できる環境を持っていなければなりません」
「つまり、加奈ちゃんを守るために、敢えて裏社会に精通する冴子さんの庇護下に入れということでしょうか」
「そうです。私も綺麗事ばかりの人間ではありません。それなりに手も汚してきました。邪魔な人間を始末したり、時には体を使って罠を仕掛けたりもしています」
生々しい話に眉をしかめそうになる。
「……具体的にどのような見返りを要求されるおつもりですか」
「月宮さんの風俗嬢としての経験をヘブンズ・ヴァルキリーで活かしていただきたいと考えています」
ガタンッ!
「あ、志藤さんっ」
そこで俺はすぐに席を立ち上がって加奈ちゃんの手を取る。
想定していた最悪のパターンだ。搦め手でくるにしてもこうもストレートにスカウトしにくるなんて思わないじゃないか。
「加奈ちゃん、帰ろう。話にならない」
最悪なのはこの人の仲間が店の外で待ち構えていたパターンだ。
そうなったら俺一人で彼女一人を守るのは難しくなってしまう。
裏社会で幅を利かせるような女性の連れてくるヤツが素人であるはずがない。
「か、克明君」
「あ、ま、待ってくださいっ! 誤解ですっ。月宮さんにお客を取れと言いたいわけではありません」
「ではなんだと?」
話を聞く価値はないと思うが、流石に頭に血が上り過ぎたかもしれない。
冴子さんの表情と、何より加奈ちゃんのすがりつくような瞳が俺を留まらせた。
「言葉足らずで申し訳ありません。具体的には月宮さんの経験を裏方として活かして欲しいのです」
「どういう事ですか?」
「今我が社では組織の混乱から逃れた鳥籠の女性達を保護するために動いています。中にはもう普通の世界で生きられない人もいます。月宮さんには、そんな人達に寄り添うための導き手になっていただきたいと思っています」
「それは無茶でしょう。加奈ちゃんはまだ自分自身の傷すら満足に癒えていないのに」
「分かってます。でも、組織のせいで人生を破壊された女性は他にも数多くいます。そのせいで望まぬ形で業界入りを果たす女性は後を絶ちません。私は彼女達の独り立ちを手伝いたいのです。そのために月宮さんのような女性が必要なんです」
「だとしてもそれは今の俺達には見返りとして重すぎます」
「すみません、正直に申し上げますと庇護下などと偉ぶるつもりはありませんでした。文字通り守らせていただきたいのです。ヘブンズ・ヴァルキリーの代表としてではなく、瓦ノ丸冴子という個人としてです」
なんだろう。大企業の社長さんというくらいだからクレバーな人かと思っていたが、何をこんなに必死になっているのだろうか。
「個人でというのはどういう事なんですか?」
「はい、本来は見返りなどいらないのです。私は個人としてお二人に恩返しがしたい。でも、得体の知れない女の言うことを無条件に信じられる訳はありません。ましてや私はあの男の配下だった女です」
「だから交換条件を?」
「そうです。何の見返りもなしに信じるのは難しいだろうと思いましたので……。申し訳ありません」
「だとしたら、どうして無条件でそこまでしてくださるのですか」
「それは…」
「あの……」
俺が冴子さんに問い続けていると、それまで沈黙して話を聞いていた加奈ちゃんの口が開く。
「ひょっとして冴子さんは……私と同じ立場だった方、なのでしょうか?」
それは加奈ちゃんも予想している事であった。
彼女の予想では冴子さんは同じ鳥籠の女性。果たして彼女も同じなのか。同じだったのか。
肩がビクリと震え、その問いかけが的を射ている事を示していた。