ガチレ〇プからの調教でズタボロにされた恋人を鍛え上げた絶倫ボディで徹底上書きする話 作:かくろう
「ひょっとして冴子さんは……私と同じ立場だった方、なのでしょうか?」
冴子さんの肩がビクリと震え、その問いかけが的を射ている事を示していた。
加奈ちゃんが疑問を投げかける先。冴子さんの過去の立場とはどういうことか。
一瞬疑問が湧いて、直ぐに答えに辿り着く。
寂しそうでいて、嬉しそうな、それでいて過去を愁(うれ)いているかのような寂しげな瞳。
「そうです……。これを……」
「え、ちょ、ちょっと」
冴子さんは何を思ったのかいきなりドレスの胸元を大きく引き下げて肌を露わにする。
俺は思わず目を覆ったが、僅かに垣間見えた見覚えのある模様を見て視線を戻す。
「それは……私と同じ……」
それは加奈ちゃんの子宮に刻まれていた淫紋と同じ模様をしたタトゥーだった。
胸の内側に刻まれたそれは、小さくはあるがハッキリとそこにある。
「志藤さん、遠慮はいりません。見てください」
「は、はい……」
「月宮さん、あなたにも同じものがありますよね?」
「は、はい…あります。子宮の上に」
「子宮の1箇所だけ、ですか?」
「はい…」
「そうですか。では、あの男は月宮さんがよほど恐ろしかったのですね」
「え、どういうことですか?」
「私はここだけではありません。子宮と、胸の内側、つまり心臓に近い部分。背中にも同じ模様。ももの内側。他に何カ所も……。あの男は、私の全てを支配しているという意味を込めて、この淫紋をいくつも刻みました。しかし、あの男は月宮さんに淫紋を刻む事を最後までためらっていたと聞きます」
「え、どうして……」
「アレは執着が強い女ほど自分の手で屈服させる事にこだわっていました。逆にもてあそびたいだけの女は平気で切り刻むんです。私は後者でした。その淫紋を刻まれたのは、恐らくかなり最近なのではありませんか?」
加奈ちゃんの視線がチラリと俺の方を向く。だが問題無い。俺は加奈ちゃんの全てを受け止めると決めているから、今更そんな話を聞いたくらいで日和ったりしない。
俺は頷いて話の続きを促す。
「そうです。ピアスは今年の初め頃。子宮に淫紋を刻んだのは解放される1ヶ月と少し前。あの男が、私を本気で堕としに掛かる直前くらいです」
「やはり……そうですか。ならば月宮さん。あなたは勝ったのです。あの悪鬼に」
「え……」
「あなたはあの男を逆に屈服させたのです。何年にも渡って傷一つ付けなかった体に思わず穴を空けてしまうほどあなたを恐れた」
「そんな……そんなの」
「申し訳ありません。あなたにとっては名誉でもなんでもない事なのは分かっています。ですが、月宮さんの気高い魂に裏社会の帝王が屈した。これは私達鳥籠の女だった者にとって希望なんです」
「やめてください。そんなの嬉しくありません。ましてや克明君の前でなんて」
「加奈ちゃん……」
「そうですね。本当に申し訳ありません。つい興奮してしまい……」
「冴子さん、話を元に戻しませんか」
「はい、そうですね。すみません」
「先ほどあなたは俺達二人を追っ手から守ってくださるとおっしゃいましたね。それは具体的にどのように?」
「裏社会というのは表のイメージ以上に立場というものが重要となります。一人の女性としてはか弱くても、立場を持てばおいそれと手出しができなくなる」
「それはつまり、やはり加奈ちゃんをヘブンズ・ヴァルキリーグループにスカウトするということでしょうか」
「そうです。あくまで形だけになりますので実際に風俗産業に関わるような事は致しません。これでもそれなりの規模の組織になっていますので、あの男を中心とした者達が粛正された今、私の息が掛かっている人間にわざわざちょっかいを出そうとする者はいなくなるでしょう」
それが本当なら願ってもない話だ。それで組織規模で加奈ちゃんを狙う者は少なくする事ができるだろう。
だが先日のようにチンピラ連中が今後も狙いにくる事もある。完全に安心はできない。
「本来ならば危険とは無縁の真っ当な世界に戻っていただくのが一番です。しかし、裏社会の帝王を籠絡した月宮加奈子という女性を欲する男はまだまだ数多く潜んでいます。これから台頭してくる小物も、成り上がるために確保しようと動き出さないとも限りません」
「……」
「……」
それは想定していたパターンの一つにも入っていた。
裏社会の人間に司法の力は通用しない。無法な奴らを止めるためには、同じく暴力を生業とした組織の後ろ盾が必要となる。
「すみません、一度二人で相談させていただけませんか」
「分かりました。本日はこれでお暇(いとま)します。組織もしばらく大規模な動きはしないでしょう。……そうだ。これを月宮さんに」
冴子さんはバックの中から一本の小瓶を取り出した。
「これは?」
「我が社で開発した縄跡や鞭傷の治療に効果的なローションです。放置すると絞め痕は残ってしまいますので、これで治療してください。2ヶ月も塗り続ければ大抵のSM傷は完治します」
「冴子さん……」
「私もあなたと同じ道を辿ってきました。なのでどのような仕打ちを受けたかは分かるつもりです。知ってますか? あの男が調教した女は数知れず、でも縄と鞭の技術はお粗末なほど下手くそなのです。傷痕を残してしまうなどSM調教においては愚の骨頂です」
「そう、そうですか……。どうしてそれほどの事が分かるのですか」
「こちらが私の本業ですので。お困りの際はどうぞご連絡ください」
冴子さんは名刺を取り出して加奈ちゃんに渡す。そこにはメンバーズクラブと書かれたシンプルなデザインの名前が書かれている。
端っこの方に小さく『SMクラブ ルタル・アムルド』と書いてある。
「心の傷は新しい思い出で上書きを。素敵なパートナーがいることは幸せですわ。でも持っていない知識と経験が必要になることもあるかと思います。お二人の時間に先達の知識が必要な時は力になりますので、どうぞご遠慮なく頼ってください」
今の俺達にとってある意味でもっとも必要なものかもしれない。
ちょうどおもちゃを買ってきたり、ロープとかの拘束プレイを取り入れて行こうかと話し合っていた所だったのだ。
「……っ」
「加奈ちゃんっ」
俺が思案していると加奈ちゃんの頬に透明の滴が零れ落ちる事に気が付く。しゃくり上げた肩が震え、おもむろに冴子さんの持つローションを手に取って握り絞めた。
いや、これは冴子さんの手そのものを握ったんだろう。
「克明君……私、冴子さんを信じたい。こんな、こんなに良くしてくれる人を疑いたくないの」
それまで話を聞くだけだった加奈ちゃんが突然彼女を信じたいという。
一体何が彼女をそこまで動かすのか、ちゃんと理由を聞いておきたかった。
「理由を聞かせてくれるかい?」
「冴子さんはさっき言いましたよね。素敵なパートナーがいることは幸せだと……。あなたは、いなかったんですね。だから自分が強くなるしかなかった……」
冴子さんは無言で微笑んだ。その口元が彼女の本音を表しているように思える。
「あなたは優しい人です。私を会社に誘ったのも、そうすることで同じ境遇の人を救いたいと思っているからですよね……」
「はい。あなたをスカウトしたいと言ったのは、実は本音の部分でもあるんです。月宮さんには、私の片腕として力を貸して欲しい……。でも今は何も言いません。ただ、守らせて欲しいのです」
加奈ちゃんが訴えるのは同じ道を辿ってきたという人へのシンパシーか。この人がそれを利用して加奈ちゃんを懐柔しようとしている可能性も否定できない。
本筋でいうなら俺は疑うべきだ。加奈ちゃんがそうしたいとしても、可能性がある以上は慎重に判断しないといけない。
だけど……。
「克明君、お願い……信じさせて。この人は私と同じなの」
「分かった。俺は加奈ちゃんが一番そうしたいと思う道を尊重するよ。冴子さん。正直なところ俺はまだ疑心暗鬼が拭えません。それに勧誘に関しても今は止めたい」
「分かってます。本音ではあっても元々必要のない条件ですから、どうか気になさらないでください」
「分かりました。俺は加奈ちゃんの涙を信じたいと思います。俺達の力になってくれますか」
そこで冴子さんも同じように大粒の涙をこぼし始めた。その表情には人を騙そうとかそういう色は見えない。純粋な感動に見える。
ここまで来たら野暮な事をいうのはかっこ悪いよな。俺も加奈ちゃんを信じよう。
「ありがとうございます……。お二人の力になれるように精一杯のことをさせていただきますね」
こうして俺達は彼女の提案を受け入れた。疑ってばかりではしょうがないし、せっかくのご厚意を無にはしたくない。
「冴子さん、そういえば克明君にもお礼を言いたいとおっしゃっていませんでしたか」
しばらくの時が経ち、加奈ちゃんも徐々に泣き止んで中断していた話の続きを促す。
「はい、志藤さんが月宮さんの受け皿になってくれた事で、水無月コーポレーションとの縁を繋ぐ事ができました」
加奈ちゃんの受け皿になった事で水無月との縁を繋ぐ……それはつまり。
「ということは、やはり篠宮というのは」
「はい。水無月コーポレーション先代の社長でいらっしゃいます、篠宮隆行様です」
思いがけない偶然がここにあった。俺が水無月に勤めていた事で、間接的に冴子さんを救ったというのか。
「志藤さんが月宮さんを諦めずに探し続けてくれた事。それが組織粛正に動かれた最大の理由なのです。篠宮が粛正に動き出さなければ、私達はずっと鳥籠に囚われたままでした……」
「それじゃあ……克明君のおかげで、私達は助かったということですか?」
「そうです。篠宮様は心で相手を見ると聞いています。そうとは知らずとも、一人の人を想い続けて心を砕き続ける事がどれだけ大変か。その信念が会長の心を動かしたのだと……。そう聞いています」
なんと言うことだ。俺の行動が、そんな風に影響を与えていたなんて。
つまり、俺が頑張ったから加奈ちゃんを救う事ができた。そういう言い方もできるのか。
自分のやってきた5年間が直接報われたような気がして嬉しくなる。
まだ人伝に聞いた話でしかないのに、心が躍り出しそうに嬉しかった。
「まだお伝えしたい事は山ほどあります。でも、今日はこのくらいにしましょう。今後お二人に組織の手が伸びることはありません」
「ほ、本当に……?」
「はい。組織傘下の店舗はすべてヘブンズ・ヴァルキリーが接収していますので、あの男の傘下にあった店舗には徹底周知させておきます。それとライバル企業が月宮さん略取に動かないように徹底して睨みを効かせておきます」
こうして加奈ちゃんの危険の大部分の憂いがなくなった事を冴子さんは示してくれた。
まだ簡単に安心はできないものの、これまでの緊迫した日々からは解放される可能性が高い事に緊張は解けていくのだった。