ガチレ〇プからの調教でズタボロにされた恋人を鍛え上げた絶倫ボディで徹底上書きする話 作:かくろう
社長室のドアをノックし、静かに開く。
金属製のノブを回すだけで緊張が高まり、汗が噴き出てきた。
取って食われる訳でもないだろうに、やはり社長のような頂上にいる人と面会するというだけで倒れそうになるくらい緊張してしまう。
体は強くなっても小心者の陰キャはこういうところで変わってないから嫌になるな。
「失礼いたします。志藤克明、入ります」
「お~、よく来たな。そう硬くならなくても良いぞ。入ってくれ」
「は、はい。失礼します」
入室一番飲み屋みたいなノリで声を掛けてくる社長に気が抜けそうになる。
地上200メートル。超高層ビルの最上階。
日本経済のトップに立つ男が、そこにいた。
「どうした。遠慮しなくていいぞ」
「は、はい」
立派な社長机から立ち上がる社長は迫力のある体躯をしており、間近で見ると本当にデカかった。
身長は2メートル近くあるらしい。しかも格闘の超達人だって話だ。
「いま茶を入れるからな。おーい友梨佳くーんっ、お茶煎れてくれ~、あ、それともビールの方がいいかな?」
「い、いえ、お茶でお願いします」
「そうか。おーい友梨佳くーん。お茶ちょっぱやで頼むよー」
『社長~、来客があったらお茶を出すのは秘書の常識なんだからいちいち大声出さないでくださいっ!』
いきなり素っ頓狂なコントを始める社長達に気が抜けてしまう。
どうやら社長は俺の緊張をほぐそうとしているようだった。
日本経済のトップに立つ男が秘書官一人に怒られている姿を見て、すっかり気が抜けて緊張はどこかにいってしまった。
「あはは。噂通り奥様達と仲がよろしいんですね」
「おう、友梨佳も瑠璃も可愛いんだぞ。今3人目の妻が出産したばかりでな。家ではてんやわんやだよ」
「え、奥さん三人もいらっしゃるので?」
「ああ。色々と経緯は複雑なんだがな」
秘書のお二人は有名だが、まさか3人目もいるとは。
社長は気さくな人だが非常に真面目で仕事に対する姿勢は真摯そのものだと聞いたことがある。
そんな人が奥さんを三人も作るなんて。それもこんなに仲よさそうにしている家族なのだ。凄いの一言だな。
「そうですか。羨ましい家族ですね。子だくさんであったかそうで」
「……そうか。月宮加奈子は体を……すまない。デリカシーのない話題を振ってしまった」
「いえ、どうかお気になさらず」
「さて、それでは話を始めようじゃないか。瓦ノ丸さんについての話だろう?」
「は、はい。よろしくお願いします」
大きなテーブルを囲んだソファに促され、腰を下ろす。
質の高いソファの柔らかさは体に残った緊張を解きほぐしてくれた。
「社長、この度は瓦ノ丸さんをご紹介くださりありがとうございました。正直なところまだ信じ切れていない所もありますが、私達の抱えている問題解決に大きく前進できた気がします」
「それは何よりだ。他ならぬ井上部長の頼みだったからな。君の事はよく聞いていた」
「そ、そうでしたか。光栄です」
「紹介したのは君の行動が私の心を動かした結果に過ぎない。今の状況は自分自身の力で勝ち取ったものだ」
「はい……まだ実感はありませんが、そう思えるように自信を付けて行きたいとは思います」
「そうするといい。祐太朗からも君の頑張りはよく酒の席で聞いている。今後とも期待しているぞ」
「ありがとうございます。ところで」
「ん? なにかな?」
「里中社長と冴子さんはどのようなお知り合いなんですか?」
「ああ、それはな……」
「失礼致します……。お茶をお持ちしました」
冴子さんとの関係を聞いてみようと質問した所で秘書官の女性がお茶を持ってきてくれた。
すると社長の歯切れが急激に悪くなったような気がした。
「あ~、えっとな。それは~その……」
「あら、何のお話ですか?」
「あ、はい。社長に紹介していただいた女性とどういうお知り合いなのか」
「あ~~~、あ~、あ~~、それより友梨佳君。せっかくだからお茶菓子も頼むよ。ほら、この間会長にもらったヤツがあったろう?」
何故だか社長が慌て始める。そこで俺は冴子さんが風俗……SMを仕事としている事を思い出した。
ひょっとして社長……、冴子さんのお客だったなんて話じゃ……。
だとしたら、しまったなぁ……話を振るタイミングが完全にマズかった。
経営者同士だし、てっきりそっち方面の繋がりだと思っていたのに。
奥さんの前で風俗の女性とどういう関係なんですか、なんて聞かれたのと同義になってしまった。
しかし、社長ほどの人がこんなに慌てるなんてな。もしかして奥さんには嘘がつけない性格なのだろうか。
そう考えるとちょっと親しみが湧いてくる。
「社長~。何やら楽しそうな話題ですねぇ。男性同士のお話ですので私は奥に控えていますね~」
「あ~、えっとなぁ……」
「詳しい訳は仕事の後でたっぷりとお伺いしますねぇ。あ、志藤様、どうぞごゆっくりなさってくださいね。後でお茶菓子も追加しますので」
「あ、はい。ありがとうございます……」
秘書の友梨佳さんという女性は非常に怖い笑顔をしたまま出て行ってしまった。
「あの……すみません、気が回らず」
「いやぁ、まあ君のせいではないよ。冴子さんとドコで知り合ったかという話だったな。男同士だから白状するが、お察しの通りだ。昔お風呂屋さんに勤めていた彼女には何度かお世話になっていてね。私もその頃はバツイチの真っ最中で寂しかった」
あ、やっぱりか。ただならぬ関係なのかとも邪推しそうになったが、そういう話ではなかったらしい。
ん? でも風俗の女性とプライベートでも連絡を取り合う仲にはなれるものなのだろうか。
行ったことがないから分からないけど、キャバクラなんかと違ってそういう事をするイメージはないな。
「生々しい話だが私は男性器に特有の悩みがあってな。どこのお店でも中々相手にしてもらえなかったんだよ。その中で冴子さんだけは懸命なサービスをしてくれた。私にとっては特別な存在だったんだよ。変な意味ではなくてね」
なるほど。多くは語らないが二人には特有の絆があるのかもしれない。
しかし男性器に特有の悩みとはどういう事なんだろうか。
まあこれ以上は話が逸れすぎるので追求しても意味はないだろう。
「そうでしたか。完全に失敗のタイミングでした。申し訳ないです」
「まあ気にするな。今のは俺が悪かった。どうも彼女の前で嘘や隠し事をするのは苦手でな」
「社長ほどの方が奥さんの尻に敷かれているのですか?」
「友梨佳は昔からしっかりした子でな。俺なんか彼女がいなかったらもっと自堕落な生活をしていたよ。出世もできなかったろうな、はははは」
なんだか男同士の会話をしたこともあってか社長の態度がフランクになってきた。
言い方からすると友梨佳さんとはずっと昔から一緒に住んでいたと言うことか。
内縁の妻が二人いるというのは知っているが、その関係性はよく知らない。
それに、恐らく社長はわざとやっているように思う。
なんぼなんでもわざわざあのタイミングで慌てる必要はないだろうから、俺との距離を縮めようとしてくれたのかもしれない。
「これは身内に近い者にしか公表していないんだが、あの子ともう一人の妻である瑠璃は元々義理の娘でな。戸籍上家族だから結婚できないのさ。だから内縁の妻なんだよ」
「そ、そうだったんですか。噂では聞いてましたけど本当にそうだったんですね」
「まあ随分世間でも叩かれたよ。天下の水無月の社長が娘を手籠めにするとは何事か、とな。しかし、先代の社長がアレなだけにすぐに沈静化したよ」
「社長の大躍進劇は伝説になってます」
「がむしゃらだっただけさ。娘達を不幸にはしたくなかったからな」
「私も見習いたいです。ところで、冴子さんから伺いましたが水無月がヘブンズ・ヴァルキリーグループと提携するというのは本当なのですか」
「ああ、本当だ。まだ秘匿事項だがね。だが月宮さんという君の恋人を守る為には、組織という大きな森に構えた砦の中での方が安全だと私は思う」
「では冴子さんは本当に信用できる方なんですね」
「ああ。彼女の苦労は社長になってからも密かに情報を集めて知っていた。例の組織に囚われている彼女をなんとか救い出したいと苦心したものだよ」
「そうだったんですね」
「だが組織というのは厄介でな。たった一人を救い出すのにも様々な障害が存在する。しかも彼女は夜の蝶。それも業界のトップに立つ組織の重鎮でもあった」
社長の表情には何か普通ではない感情が交じっているように見えた。
もしかして、やはり冴子さんの事を憎からず思っていた時期があったのではないだろうか……なんて考えもしたが、それを追求しても意味はないだろう。
ともかく、社長の話からも冴子さんをちゃんと信じても良いという結論を出すことができた。
「志藤。君には礼を言いたい。もう聞いていると思うが例の組織を粛正したのは先代である篠宮会長だ。粛正開始の決め手になったのは月宮加奈子が組織のトップを骨抜きにして隙ができたからだが……。直接の原因は君自身にある」
「それは一体……」
冴子さんも言っていたが、それほどに篠宮会長は俺を見ていてくださったのだろうか。
「その決め手になったのは君の5年間の努力を認めてくださった事にある。会長は恐らく君の事情も知っていたのだろう。月宮加奈子が囚われていた事も、君が彼女の恋人であることも……それら全ての縁が努力によって繋がった結果なのだよ」
「社長……私は篠宮会長に直接お目に掛かったことはありません。一体どうして……」
「不思議に思うことも多いだろう。だがその明確な理由は会長本人から直接聞いた方が良い。しかるべき時が来たら、いずれお声掛かりがあると思う」
「ご、ご本人からですか……しかし私のような平社員では」
「あの方は人の心を見る。そこに肩書きは関係ないんだよ。俺もあの方に目を掛けてもらったのはうだつの上がらない平社員の頃だしな」
「は、はあ……」
「ちなみに篠宮会長は水無月に所属する社員の名前は派遣やアルバイト含めて全員覚えているそうだ」
「ぜ、全員ですかっ!? 万単位ですよっ!」
「そうだ。その一人一人の持っている事情も全てだ。私も驚かされてばかりだよ。30年以上の付き合いなのにいまだに驚かされる」
そんな化け物じみた記憶力してるのか会長は。
一体どんな人外なのだろうか。本当に人間なのか?
そんな人が味方に付いてくれるなんて頼もしいを通り越して身震いすらしてくるな。
だがこうも思った。事情を知っていたのなら、何故もっと早く助け出してくれなかったのか。
見も知らない篠宮会長にこんな感情を抱く事自体、間違っているのは分かっている。
でもどうしても思わずにはいられなかった。
それだけの事ができる人で、加奈ちゃんが被っている悲劇を知っていながら……何故もっと早く、加奈ちゃんの傷が深くなる前に助けてくれなかったのか……。
里中社長はそんな俺の心を見透かしたように、優しく声を掛けてくれた。
「君が抱いている感情は理解できる。だがそこにもちゃんとした理由があるのだ」
「理由……ですか」
「そうだ。それはいずれ分かる。会長本人の口から聞くと良い。しかるべき時が来たら、必ず会長の方から君たちに接触してくるはずだ」
分かっている。人を助けるのにも手順というものが必要だ。
助け出せる段階になるまで手を出す事ができなかった。
大局を見据えた結果を出すために、しかるべきタイミングになるまで手を出すことは適わない。
加奈ちゃんを救ってくれなかったというのは、俺個人の事情だからそう思うだけなんだ。
「……」
「志藤、君の行動には魂が籠もっている。だからこそ5年間も耐えてこられたはずだ。その心を忘れるな。会長が目を掛けてくださったのはそこなんだからな」
「は、はい」
「人間一人を人生を賭けて愛し抜く事は簡単ではない。まして君は姿の見えない恋人を5年間も諦めずに探し続けた。他の道を選ぶ機会は幾らでもあったにもかかわらずだ。そこから勝ち取ったのが今の結果なんだよ。そのことを誇れよ志藤」
胸にこみ上げてくる熱いものに耐え、拳に力が籠もる。
まさか社長のみならず、会ったことすらない会長が俺のことを認めてくださるなんて……。
加奈ちゃんの事も含めて努力を認められた事が、本当に嬉しかった。
「ありがとうございます……。俺は……俺は……」
「人にはそれぞれ役割というものがある。月宮加奈子は確かに大きな悪を粛正するきっかけを作ってくれた。しかしそのために受けた心の傷は生半可なものではないだろう」
その通りだ。そんな辛い目に遭わなきゃいけない理由が加奈ちゃんにあるとは到底思えない。
「俺も自分の妻達が同じ目に遭ったらと思うと胸が張り裂けそうになる。これは立派だなんだと安易に褒め言葉を浴びせる事すら
「加奈ちゃんも、同じ事を言っていました……自分は、ただ必死だったのだと」
それぞれの役割。井上先輩も同じ事を言っていた。その意味は……その真意は。
「月宮加奈子の傷を癒すことができるのは君しかいない。それは冴子さんにも祐太朗にも、篠宮会長にすら不可能なのだ。この世界でただ一人、志藤克明だけができることだ」
「はいっ、ありがとうございますっ……ありがとう、ございます……っ!」
「必要なバックアップは全てしてやる。冴子さんの言葉に嘘がない事は俺が保証しよう。俺も、祐太朗も、篠宮会長も、ずっとずっとお前の頑張りを応援してきた。それがようやく報われる段階まで来たんだ。こんなに嬉しい事はない」
「社長……嬉しいです。ありがとうございます……っ!」
心の奥から溢れてくる歓喜で涙が止まらなかった。
社長は俺が泣き止むまでずっと微笑み掛けてくれて、残った昼休みの時間を食事に誘ってくれた。
奥さんである秘書官お二人ともテーブルを囲み、一緒になって持参したお弁当を堪能した。
加奈ちゃんの料理は女性陣にも大好評であり、今度社長の家に招待してもらう事になった。
最後には社長が友梨佳さんに先ほどの誤魔化しの件を問い詰められてアタフタしているのを見て和む場面があったのである。
井上先輩の盟友だけあって、本当に温かい人達。温かい家族だった。
俺は、こんな明るくて温かい家庭を作りたいと、強く願うようになった。