ガチレ〇プからの調教でズタボロにされた恋人を鍛え上げた絶倫ボディで徹底上書きする話 作:かくろう
★自我を取り戻した女★
ここはとある病室の一角。
その女、朝霧 雪乃は朝から清涼な空気に満ちた空間にいるような清々し気分で目覚めた。
「雪乃……目が覚めたのね」
かかる声の方向に目を向けると、よく見知った銀色の髪をした女性が心配そうにこちらを見ている事に気が付く。
「冴子……さん」
「雪乃……」
涙を浮かべる冴子を視界に収めた朝霧雪乃は急速に自分の置かれた状況を理解し始めた。
「そっか……私、復讐した後に自我が壊れちゃったのね」
「そうみたいね。でも、"あの男"はちゃんと始末しておいたわ。もう日の光を浴びることは二度と無い」
「死んだの?」
「いいえ。月宮加奈子のために一応生かしてあるそうよ。用済みと判断されたらそのまま……でしょうね」
「そう……。良かった……のかな」
雪乃は篠宮が捕縛した組織のトップ、裏社会の帝王だった男に執着していた加奈子を寝取られる姿を延々と見せつけて精神崩壊させた。
そして最後のトドメとして逸物を切り落とし、全ての復讐を完了させて役目を終えたのである。
だがそれはずっと精神を張り詰めていた雪乃の緊張の糸を一気に切断させる事になり、今日の今日までその意識は淀んだ闇の中に囚われていた。
「冴子さん、さっきね、加奈子がいたの……。志藤克明と一緒に、幸せそうに歩いてた」
「ええ。里中社長からこの病院を紹介されてきたみたいね。さっき聞いたけど、診察の結果は芳しくなかったみたい」
「そう……アイツはもういないのに、アイツの刻んだ呪いは消えなかったのね。加奈子……可哀想に」
「あなただって……」
「私は、いいの。どうせ相手もいないもの。それに、当分男とは関わりたくないわ……」
「そうね。私もよ……。どうかしら。また、一緒に働かない?」
「いいわね。……私も、冴子さんと働きたい」
二人の出会いは幼き頃。冴子と雪乃は家が近所の幼馴染みであった。
五歳年下の雪乃は冴子を慕って幼少期を過ごし、二人は年の差ながら無二の親友となっていった。
「ヘブンズ・ヴァルキリーに月宮さんも誘ってるの。今はまだ無理だけど、いずれそうしたいって返事をもらってるわ」
「そう……また加奈子に会える……。楽しみね。でも、今の私にあの子に会う資格はあるのかしら」
「あら、どうして?」
「だって、私は加奈子をずっと利用してきたに過ぎないもの。あの男に気に入られる加奈子をケアして、自分にお鉢が回ってこないように立ち回っていただけの卑怯者よ……そんな私が今更……」
「そう……。でも、彼女はそう思ってないかもしれないわ。まあ、慌てなくても準備だけはしておきなさい。せっかく自由になったんだもの。過去の思惑がどうあれ、これからどうしていくか、どう生きたいかを考えれば良いじゃない」
「……。そう、かもしれないわ……。私、生きてるんだ」
雪乃はそこでようやく身を起こし、透き通った青に満たされた快晴の空を見上げる。
あまりにも眩しい太陽の光が過去の罪悪感を照らしているようで、そのまま熔け落ちてしまいそうな気さえしていた雪乃。
ベッドから降りて二本の足で立ち上がり、フラついたところを冴子に支えられた。
「少し、散歩しない?」
優しく微笑みかける冴子に照れ笑いを浮かべ、雪乃は静かに頷いた。
◇◇◇
瓦ノ丸冴子と朝霧雪乃は昔なじみである。
冴子にとっては五歳年下の妹のような存在であり、雪乃とは家族ぐるみでの付き合いがあった。
冴子は学生時代に闇風俗の女衒によって人生を破壊され、そのまま暗い闇の世界に囚われてしまった。
夜の世界に足を踏み入れたのは、卑劣な男達の罠にはまるという不本意な形からであった。
身も心も穢され、もう表の社会では生きていけない身体にされてしまった冴子は夜の世界に生き抜くことを決意し奮闘する。
だが彼女の不幸はそこで終わることはなく、やがて後に加奈子の飼い主となる男に見初められ、耐えがたい屈辱の日々を過ごすことになった。
時は流れ……。
冴子が経営を任されていた店舗に新人として入店したのが雪乃であった。
思いがけない再会で心躍る冴子であったが、夜の世界に飛び込んだ彼女の事情は並々ならぬものであり、素直に喜ぶことはできなかった。
親と死別した雪乃は妹を養うために風俗で働くことを決意し、その事情を聞いた冴子は積極的に支援することになる。
その後、冴子は雪乃を特に可愛がり自らの後継者にすると考え、雪乃もそれを受け入れていた。
だが、闇社会への復讐を掲げていた冴子のいきすぎた情熱が、徐々に雪乃との間に深い溝を作ってしまう。
不幸だったのは、そのすぐ後に雪乃が行方不明になってしまったことだった。
後悔した時には遅かったのである。
自分が失ったものの大きさに遣り切れない心の傷を負った冴子は、それ以降望まない形で業界入りした女性を力強くサポートする運営形態に切り替えていくことになる。
皮肉なことに、そのことが冴子のヘブンズ・ヴァルキリーグループの運営方針を、働く女性を徹底して守るスタンスに切り替えさせ、そのことが支持されて組織を業界のトップに押し上げていくことになった。
しばらく動向を観察していた飼い主も、何年後かには次の玩具を見つめて冴子に関心を向けることはなくなった。
そして更に皮肉なことに、その新しい玩具こそが朝霧雪乃とその妹だったのである。
数年の後に、かつて自分の人格をグチャグチャにしたあの男に飼われていることが発覚し、彼女を取り戻す為に奮闘し始める。
篠宮が彼女に接触してきたのはその途上であった。
時は流れ現在……。
克明が篠宮隆行の目にとまったことで、事態は急速に動き出し、あらゆる悪の要素は完璧に排除された。
その裏では篠宮と奉龍院が暗躍し、二人はその工作員としての役割を担っていたのである。
「私がもう少しあなたに気が付いていればって、今でも思うわ」
中庭を散歩しながら過去の記憶を回想する二人。
冴子は過去の罪を懺悔するように雪乃へと寄り添う。
「それこそ今更よ……。私は冴子さんを恨んでなんかいない。きっと一緒になって酷い目に遭ってたに違いないし、大切な冴子さんが目の前でそんな目に遭ったら、私はもっと早く壊れてたかもしれない」
冴子の頬に熱い滴が流れ落ちる。
伝えたい言葉が沢山あった。でもそれができなかった。
元気になった彼女を目の前にして、何一つ上手い言葉が出てこない。
人を操るための語彙は無限にあった筈なのに。
たった一人の大切な人にかける言葉が、今の彼女には見つからなかったのだ。
「私は……わたし……雪乃、ごめんね……ごめん」
「何も言わないで……。私達には、これからがあるって、言ってくれたじゃない」
「そう……そうね。ありがとう雪乃……」
加奈子を組織から逃がした後、組織に残った雪乃は男達の争いに巻き込まれて精神に重大なダメージを負っていた。
陵辱の日々から解放され、加奈子を守るという精神の支柱が無くなってしまったために心の均衡を保てなくなった。
組織から解放された直後の雪乃は、冴子が誰なのかも分からなくなるほど酷い状態だった。
それが無くなった組織解放後にはそのバランスが崩壊し、彼女は見る影も無くボロボロになってしまっていたのだ。
雪乃が加奈子と一緒に行けなかったのはそう言った理由もあった。
雪乃の精神に残っていたのは、自らの人生を破壊し、妹を死に追いやった男への果てしない復讐心と、それが叶うことのないジレンマだけだった。
拘束をしておかないと暴れ周り、自制心の欠片もないほど発狂する始末。
それから数週間、正常な思考ができなくなって久しかった雪乃が加奈子の姿を遠目に見て自我を取り戻したのが数日前である。
彼女達の再会まで、あと少し。