魔力ゼロだからと追放されて死んだら、オレの中の魔王が目覚めて犯りたい放題しやがる(改題) 作:遊野優矢
城を出て6日目。
ここまでの旅路は、熊の集団に出くわしたり、パナデリアが盗賊にさらわれたりしたくらいで、概ね順調だった。
開けた草原の先に街が見えてきた。
すぐそばを大きな河が流れる、このあたりではそれなりの規模を誇る街である。
河を挟んだ向こう側は、広大な農地がひろがっている。
「あれがスカーレットリバータウンですね!」
パナデリアの足が少し速くなる。
「なんでそんなに嬉しそうなんだ」
「野宿は訓練で慣れていましたけど、やっぱり屋根のある宿屋はうれしいですよ!」
「宿屋には泊まれないぞ」
「えぇ?」
ぽかんと口を開けるパナデリア。
いつも騎士団員達の前ではキリリとしていた彼女の、かわいい一面である。
「なぜですか?」
「金がない」
「あ……」
レックスが持ち出すことを許された現金は、せいぜい数日分の食費だった。
パナデリアにいたっては、最後にレックスの顔をみるためだけに森に来ていたので、一文無しである。
「すみません……」
「パナデリアが謝ることじゃないだろ。これも旅の楽しみの一つさ」
「そう言っていただけると……」
恐縮しながら笑顔を作るパナデリアを見て、ハイオルムは自分の頭をポリポリとかいた。
金がないことに不安はあるが、何者にも縛られないことへのわくわくがあるのも本当だった。
転生後、魔力がないことに腐らず、訓練を続けた剣の腕があることも、そう考えられる余裕を生んでいるのかもしれない。ひ弱だった前世の体では得られなかった感覚だ。
ちなみに、途中で潰してきた盗賊団のアジトに金目のものはなかった。
別の所に隠していたのだろう。
全員殺してしまわずに宝のありかを聞き出せばよかったとハイオルムは言っていたが、それではどちらが盗賊かわからない。
さんざん斬り殺しておいて今更ではあるが。
「街についたらまずは仕事探しだな」
太陽はまだ真上。
サラリーマン時代の飛び込み営業を思い出し、少し胃が痛くなるレックスである。
とはいえ、あてがないわけじゃない。
「人がいればトラブルはおきる。オレ達の腕があれば、たいていのことはできるさ」
「そういうものでしょうか?」
パナデリアはもともと、宿屋の娘である。
騎士団以外の荒事で稼いだことなどないので当然の認識だ。
かくいうレックスも、そうだろうという予想だけで、経験などないのだが。
「もしだめなら大道芸でもして路銀の足しにするさ」
「そんな! レックスに大道芸なんてさせられません!」
大道芸人や吟遊詩人の扱いは、農民より低い。
なにせ根無し草なので税金は納めないし、食料を作ってくれるわけでもないのだ。
それでも、娯楽に乏しいこの世界では、喜ばれることも確かだ。
王都に腕のいい旅芸人が来たときは、広場に人だかりができていた。
「すごいショーってのは、客を笑顔にするもんだ」
「それはそうですけど……」
パナデリアの中ではまだ、レックスが王族だという意識が残っているようだ。
「じゃあちょっとやってみるか。宣伝にもなるしな」
「宣伝……?」
いたずらっぽく笑うレックスに、パナデリアは小首をかしげるのだった。
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