魔力ゼロだからと追放されて死んだら、オレの中の魔王が目覚めて犯りたい放題しやがる(改題) 作:遊野優矢
少しだけ懐のあたたまったレックス達は、街をぶらついていた。
道行く人の表情は暗く、ピリついているが、露天にある農作物は噂通り豊富だった。
「はふはふ。おいしいれす」
ふかしイモを串に刺しただけの質素な昼食だが、パナデリアは満足そうだ。
「でも、こんなことをしていていいのでしょうか」
追われる身で金もない。
そんな状況を心配しているのだろう。
「大丈夫だ」
レックス達が人通りの少ない路地に足を踏み入れてから少し。
「ほらきた」
「え?」
目深にフードを被った怪しげな男が、路地の先からじっとレックス達を見ている。
男はレックス達が気付いたのを確認すると、ゆっくり近づいてくる。
「広場での腕前は見せてもらった。仕事を頼みたい」
「なるほど。宣伝ってそういう……」
パナデリアは納得したようだ。
「悪いが他をあたってくれ」
「「え?」」
男とパナデリアの声がハモる。
「報酬ははずむ」
「屋根の上から狙ってる弓をよけたら、話くらいは聞いてやってもいい」
レックスは親指で背後を指さした。
「さすがだな。やはりただの大道芸人ではあるまい」
「故郷を失ったただの旅人さ」
フードの男が片手を上げると、屋根の上で弓を構えていた男が引っ込んだ。
「頼みたいのはある人の護衛だ。報酬は1日銀貨5枚」
「ご……っ!?」
パナデリアが驚くのも無理はない。
よほど危険な状態だったとしても、相場の倍以上だ。
男はちらりとパナデリアを見た。
「1人あたり銀貨5枚出そう」
「随分と太っ腹じゃないか」
「それだけ腕を見込んだってことだ」
逆に言うと、腕前が必要だということだ。
普通の護衛なら、そこそこの腕で安い護衛を数多く雇った方がよっぽどいい。
「悪いが力になれそうにないな」
「……後悔することになるぞ」
「いやあ、オレに分不相応な大金だと思ってね」
すっとぼけてみせるレックスを、男はフードの下からじっと睨んだ後、背を向け、路地に消えた。
「よかったんですか?」
男の気配がなくなると、パナデリアがレックスの顔を覗き込んだ。
「金は良くてもありゃあダメだ」
「高いお金を出すということは困っているのだと思いますが……」
「おそらく、暗殺か何かを警戒してるんだろうな。それも具体的に心当たりがあるヤツだ」
「自業自得だから、ということですか?」
「それはわからん。だが、まだ貴族と関わるのはちょっとな。できれば雇い主は商人がいい」
「なぜ貴族だと?」
「裏で雇おうとする相手への接触方法が貴族のソレなんだよ」
レックスは嫌なことを思い出すように言った。
「すみません。貴族の相手はお嫌ですよね……」
パナデリアはしゅんとなる。
家を追い出され、殺されそうになったレックスを気遣ったのだ。
「ん? いやいや、そういうことじゃない。ここは王都からまだ近いからな。貴族にはオレの顔を知っているヤツがいるかもしれない。バレたら色々面倒だろう?」
写真などはない世界なので、たとえ国王だろうとその顔を知っている者は、平民の中には多くない。
魔力ゼロで一族の恥とされ、公務に出ることのなかったレックスともなればなおさらだ。
とはいえ、騎士団長として地方遠征もあったため、あまり一つの街に長居するのは得策ではない。
王都から離れるほど、それを気にする必要も薄れていくだろう。
「早く王都を離れてのんびりしたいですね」
「違いない。それに、街を出ていく時に口封じをされるような仕事は受けたくないからな」
「レックスが言うと笑えませんよ……」
そう言いつつも、のんびりと笑い合う二人。
「いや! やめてぇ!」
そこに、路地の奥から女性の悲鳴が聞こえてきた。
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