魔力ゼロだからと追放されて死んだら、オレの中の魔王が目覚めて犯りたい放題しやがる(改題) 作:遊野優矢
朝早くから、レックスとパナデリアは、空き地で自警団長のカイユンとエレナに剣術を教えていた。
二人とも多少の心得はあるものの、全くなっていない。そもそも農民なのだから当然と言えば当然だ。
パナデリアはエレナの木の棒による打ち込みを受けている。
「もっと当てるつもりで大丈夫ですよ」
「はぁ、はぁ、やってます……よ!」
不意をついたつもりのエレナの一撃を、パナデリアは木の棒でカーンと軽くいなす。
「反応が速すぎます!」
「いやだなあ、見てからなんて、間に合うわけないじゃないですか」
からからと笑うパナデリアだが、エレナにとってはなおのこと意味がわからない。
「はぁ……はぁ……じゃあなんで一発も当たらないの……」
エレナは息も絶え絶えである。
「さっきのだと、上から来る気がするじゃないですか。なので、それに合わせて、下から弾いてこう! という感じです」
パナデリアは木の棒を下からヒュンと振り上げて見せる。
普段は専用の大剣を扱う彼女だが、普通の剣もしっかり扱える。
「気がするじゃないですかと言われても……」
「視線や筋肉の動きから予測してるってことだ」
レックスが捕捉する。
「そんなことができるんですか!?」
「訓練と才能が必要だから、すぐできるわけじゃないけどな」
「パナデリアさんってすごいんですね……」
「彼女の才能と努力は本物だよ」
「そ、そんなことありませんよ……えへへ……」
パナデリアはレックスの言葉に照れながら、棒をエレナに向かって的確に繰り出す。
「ちょ、ちょっとパナデリアさん! あたる! 危ない!」
全力で下がるエレナである。
「オレと打ち合いながらあっちのアドバイスまでできるアンタこそナニモンだよ……」
「今エレナさん達に言ったことを、視界の端でとらえながらやってるだけさ」
レックスはそんな会話をしつつも、彼はカイユンの打ち込みを軽く捌いていた。
「す、すげえな……人間技じゃねえ……」
「物心ついた時から厳しい訓練を毎日続けて、才能がある程度あればこれくらいはできるようになる」
「簡単に言ってくれるよ……」
「とはいえ、短い期間でオレが教えてやれることと言ったら……」
レックスはうーんと唸る。
彼らに稽古をつけるのは、雇われて暇にしているのも申し訳なからというサービスなので、真面目にやる必要もない。
だからといって、手を抜けないのがレックスである。
「戦闘で最も大事な心構えの一つを教えておこうか」
「お、なんだいそりゃ?」
カイユンは興味津々である。
「殺られる前に殺れ、だ」
「…………それだけ?」
「ある意味極意だぞ」
「できりゃあ苦労しないだろうけどさぁ。それをどうやるか聞きたいもんだ」
「まず、相手より速く動く」
「えぇ……」
カイユンは「当たり前だろ」と言いたげだ。
「腕がないなら一撃にかけるってのは、理にかなってるんだぞ」
「そういうもんか?」
「最初の一撃の技だけを磨くんだ。それで倒し切る。死んだ相手とはもう出会わないから、技を見切られることもない」
「言われてみれば……」
「一流の初撃を身につけるのも、それはそれで鍛錬がいるんだけどな。とりあえず実戦での付け焼き刃としては有効だ」
「やられる前にやれ……か。たしかにそれができてりゃ今頃……」
カイユンは何を思い出したのか、ふと哀しそうな顔をした。
「カイユン! 来たぞ! 街の中に出やがった! ごろつき達だ!」
空き地にかけこんで来たのは、土だらけの靴を履いた男だった。
農夫なのだろうが、このタイミングということは、自警団もしくはその協力者だろう。
「情報より早い!」
慌てるエレナ。
「いきなり街にだと!? ……くっ!」
カイユンはレックス達を振り返る。
「仕事だ! 頼んだぞ!」
レックスとパナデリアは真剣な顔で頷いた。
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