魔力ゼロだからと追放されて死んだら、オレの中の魔王が目覚めて犯りたい放題しやがる(改題) 作:遊野優矢
レックスとパナデリアがエレナの家に近づくと、血相を変えて走ってくるカイユンにばったり会った。
「助けてくれ! エレナが捕まった! このままじゃ領主の屋敷に連れて行かれちまう!」
「落ち着けカイユン。なぜエレナが捕まるんだ。何かの間違いじゃないのか?」
自警団なのだから、捕まえる側だ。
レックスの問いにカイユンは一瞬戸惑う。
「そ、それは……ごろつき達に間違われて! 頼む! まだ間に合う! あの屋敷に連れて行かれたらもう……っ!」
屋敷に牢でもあるのだろう。
貴族に平民が捕まれば、その名目の真偽はどうあれ、ただではすまない。
「どっちだ!?」
「ついてきてくれ!」
駆け出すカイユンの後を、頷きあったレックスとパナデリアが追う。
「ええい暴れるな!」
領主の館へと続く道の途中、二人の衛兵がエレナを抱えようとしていた。
館の方からは、さらに5人の衛兵が走ってきている。
「離せ! わたしは何も知らない!」
「これ以上暴れると足を切り落とすぞ!」
衛兵がすらりと剣を抜く。
「レックスあれ!」
「間に合った!」
パナデリアとレックスは、息も絶え絶えなカイユンを置き去りにし、一気に加速。
レックスの斬撃が衛兵の剣を斬り飛ばす。
そのまま二人の剣が、衛兵たちの首筋につきつけられる。
エレナに逃げるよう目で合図を送った後、レックスは衛兵に殺気を飛ばす。
「何をしてるんだ」
レックスの静かな迫力に衛兵はガタガタと震えだす。
「こいつがりょ――」
「おい!」
衛兵の片方が何かを言いかけ、もう片方がそれを止める。
「なんだ! 言え!」
レックスの冷たい刃が衛兵の首に赤い筋をつける。
それでも衛兵達は黙ったままだ。
「なるほどな。よくわかった」
レックスは剣を収める。
「こんなことをしてただですむと思うなよ……」
「あなたたちこそ、街を護った英雄を捕らえようなんて、恥を知りなさい」
パナデリアの冷たい声に何か言いたげな衛兵達だったが、増援を連れ立って領主の屋敷へと戻って行った。
「逃がしてよかったんですか?」
パナデリアが衛兵たちの背中を睨む。
「ひとまず訳アリだとわかっただけでも十分だ。あっちにも、こっちにもな……」
レックスはエレナが逃げて行った方を複雑な表情で眺めるのだった。
「エレナ達と合流する前に調べることがある」
そう言ったレックスは、街のあちこちに寄った。
「早く戻ってあげた方がいいんじゃないでしょうか?」
パナデリアは落ち着かない様子だ。
エレナ達を心配しているのだろう。
「襲撃は収まったが、奴らがやってきた動機がわからないんだ。賃金外だが、情報はあった方が彼らも安心するだろ」
「そうか……そうですね。レックスのそういうところ、す……す……すばらしいです」
パナデリアはぽっと頬を染める。
まずは最初に向かったのは大道芸を披露した広場だ。
レックスはそこにあった演説台を調べる。
次に、街と河が接する道だ。
レックスは地面を見ながら歩く。
いずれも、エレナに農地や街を案内してもらった際、なんだかんだど避けられていた場所だ。
最後に街の人たちへの聞き込みである。
「領主様は……まあ……」
杖をつき、片手を壁について歩く老人の歯切れは悪い。
「オレの妹も、婚約者を領主に……」
レックスは声を震わせながら、老人の手を取る。
「そうか……あんたもか……」
その一言だけで、証言としては十分だった。
老人に干し肉を一切れ渡し、二人はエレナの家へと向かう。
「レックス……これって……」
早足で進みながら、パナデリアが顔をしかめる。
「ああ、どうやらオレ達はまんまと利用されたらしい」
エレナの家に着く頃、街は夕暮れにそまりはじめていた。
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