魔力ゼロだからと追放されて死んだら、オレの中の魔王が目覚めて犯りたい放題しやがる(改題) 作:遊野優矢
エレナの家の前では、エレナとカイユンがそわそわとレックス達の帰りを待っていた。
「無事だったか!」
「遅いからてっきり……」
二人ともほっとした表情でレックス達を出迎える。
「領主の屋敷で殺されたとでも?」
しかし、レックスの一言で、二人の表情がピシリと固まった。
「い……いや……」
「もうバレてるわ」
エレナは家のドアを開け、レックス達を招き入れた。
四人はテーブルに向かい合って座る。
何から話そうかと顔を見合わせるエレナとカイユン。
そんな二人を見たレックスが語りだす。
「広場の演説台には血が染み込んでいた。何度も血が流された跡だ。街から河に繋がる道にも、黒ずんだ跡があった」
「処刑された人間を河に捨てているんですね」
パナデリアの言葉に、エレナ達は頷く。
麦畑から見た赤く染まった河は、人の血によるものだったのだ。
「でも、広場で人が処刑されるなんて珍しくないんじゃ……」
パナデリアの言う通り、処刑はこの世界で数少ない娯楽の一つである。
「犯罪者ではない一般人が殺られているんだな」
「カイユンの弟……わたしの婚約者も……」
エレナはぎりりと歯を噛み締め、俯いた。
なんのことはない。
彼女達の方がいわゆるテロリストだったのだ。
「なぜ自警団などと嘘を?」
「それは嘘じゃない。街を護りたいのは本当なんだ」
「街を襲った連中は仲間じゃないと?」
レックスはてっきり、混乱に乗じて領主の屋敷に忍び込みでもしたのかと考えていた。
「あんな連中と手を組むはずがない!」
カイユンが強い調子で否定する。
とても嘘をついているようには見えない。
「そうよ! あいつらのせいで、これまでどれだけ街の人達が迷惑してきたか……」
カイユン達が荒くれ者達が街を襲いにくると知っていたのは、仲間だからだと考えていたが、どうやら定期的にやられているらしい。
「ならなおのこと、国に助けを……」
レックスはそこまで言いかけて、口をつぐんだ。
当然、そのあたりは試したのだろう。
おそらく、国に告げ口をした者達は既にこの世にはなく、国側にも賄賂かなにかを渡しているのだ。
この国の王家は、そういうところだ。
カイユン達の表情が、レックスの予想が的中していることを物語っている。
「それで、どうだったんだ?」
一瞬迷ったエレナが口を開く。
「領主は……殺したわ……」
「衛兵達の様子から、そうではないかと思ったが……よく逃げ出せたな」
「メイドとして潜入していた仲間がいたんだ。オレ達を逃がすために殺されたけど……それに……」
カイユンは言葉を切る。
「それに?」
「なんの意味もなかったの……」
エレナが震える声で続ける。
「復讐をしたところで気分は晴れたりしなかったと?」
「違う! 領主を殺しても何の意味もなかった! 領主じゃなかったの!」
エレナは拳で机をダンッと叩いた。
握りしめた手のひらに爪が食い込み、血がテーブルに流れる。
「この街でおきていることは全部あの女がやったことだった! 領主を盾にして裏で愉しんでいたのは、娘のクリムだった! わたしの婚約者を犯して殺して捨てたって! 良い男の血で入る風呂は最高だったわって……っ! 広場に吊るした男を窓から眺めるのは気分がいいって……。逃げるんじゃなかった! 刺し違えてでもあの女を殺してくるべきだった!」
大きく息を吐いたエレナは、ぼろぼろと涙をこぼした。
「あの女は……邪魔な領主(父)を殺してくれてありがとう、とまで言いやがったのよ……」
消え入りそうな声でそう言ったエレナは俯き、コップにぽたぽたと涙を流している。
キッチンに静寂が流れる。
窓から射していた夕日が闇へと変わる。
――我に抱かれながら、本心を隠していたとは大したものだ。
レックスの頭にハイオルムの声が響き、体に変化が訪れる。
銀の短髪は黒の長髪に、碧眼は黄金に。
丸みのあった耳は、エルフのように鋭角に。
固く引き結ばれた口元は、鋭い牙が覗く不遜な笑みに変わる。
「な、なんだその姿は……!」
「ちょちょっと! 変装の魔法は!? 隠すんじゃなかったの!?」
小さな民家に、夜の魔王が降臨した。
ぜひ★での高評価をお願いします!
今後の励みになります!
こんなシチュがみたいなどの感想もいただけると嬉しいです!