※この作品はR-18です。

魔力ゼロだからと追放されて死んだら、オレの中の魔王が目覚めて犯りたい放題しやがる(改題)   作:遊野優矢

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第三章(14)

 エレナの家の前では、エレナとカイユンがそわそわとレックス達の帰りを待っていた。

 

「無事だったか!」

「遅いからてっきり……」

 

 二人ともほっとした表情でレックス達を出迎える。

 

「領主の屋敷で殺されたとでも?」

 

 しかし、レックスの一言で、二人の表情がピシリと固まった。

 

「い……いや……」

「もうバレてるわ」

 

 エレナは家のドアを開け、レックス達を招き入れた。

 四人はテーブルに向かい合って座る。

 

 何から話そうかと顔を見合わせるエレナとカイユン。

 そんな二人を見たレックスが語りだす。

 

「広場の演説台には血が染み込んでいた。何度も血が流された跡だ。街から河に繋がる道にも、黒ずんだ跡があった」

「処刑された人間を河に捨てているんですね」

 

 パナデリアの言葉に、エレナ達は頷く。

 麦畑から見た赤く染まった河は、人の血によるものだったのだ。

 

「でも、広場で人が処刑されるなんて珍しくないんじゃ……」

 

 パナデリアの言う通り、処刑はこの世界で数少ない娯楽の一つである。

 

「犯罪者ではない一般人が殺られているんだな」

「カイユンの弟……わたしの婚約者も……」

 

 エレナはぎりりと歯を噛み締め、俯いた。

 なんのことはない。

 彼女達の方がいわゆるテロリストだったのだ。

 

「なぜ自警団などと嘘を?」

「それは嘘じゃない。街を護りたいのは本当なんだ」

「街を襲った連中は仲間じゃないと?」

 

 レックスはてっきり、混乱に乗じて領主の屋敷に忍び込みでもしたのかと考えていた。

 

「あんな連中と手を組むはずがない!」

 

 カイユンが強い調子で否定する。

 とても嘘をついているようには見えない。

 

「そうよ! あいつらのせいで、これまでどれだけ街の人達が迷惑してきたか……」

 

 カイユン達が荒くれ者達が街を襲いにくると知っていたのは、仲間だからだと考えていたが、どうやら定期的にやられているらしい。

 

「ならなおのこと、国に助けを……」

 

 レックスはそこまで言いかけて、口をつぐんだ。

 当然、そのあたりは試したのだろう。

 

 おそらく、国に告げ口をした者達は既にこの世にはなく、国側にも賄賂かなにかを渡しているのだ。

 この国の王家は、そういうところだ。

 

 カイユン達の表情が、レックスの予想が的中していることを物語っている。

 

「それで、どうだったんだ?」

 

 一瞬迷ったエレナが口を開く。

 

「領主は……殺したわ……」

「衛兵達の様子から、そうではないかと思ったが……よく逃げ出せたな」

「メイドとして潜入していた仲間がいたんだ。オレ達を逃がすために殺されたけど……それに……」

 

 カイユンは言葉を切る。

 

「それに?」

「なんの意味もなかったの……」

 

 エレナが震える声で続ける。

 

「復讐をしたところで気分は晴れたりしなかったと?」

「違う! 領主を殺しても何の意味もなかった! 領主じゃなかったの!」

 

 エレナは拳で机をダンッと叩いた。

 握りしめた手のひらに爪が食い込み、血がテーブルに流れる。

 

「この街でおきていることは全部あの女がやったことだった! 領主を盾にして裏で愉しんでいたのは、娘のクリムだった! わたしの婚約者を犯して殺して捨てたって! 良い男の血で入る風呂は最高だったわって……っ! 広場に吊るした男を窓から眺めるのは気分がいいって……。逃げるんじゃなかった! 刺し違えてでもあの女を殺してくるべきだった!」

 

 大きく息を吐いたエレナは、ぼろぼろと涙をこぼした。

 

「あの女は……邪魔な領主(父)を殺してくれてありがとう、とまで言いやがったのよ……」

 

 消え入りそうな声でそう言ったエレナは俯き、コップにぽたぽたと涙を流している。

 

 キッチンに静寂が流れる。

 窓から射していた夕日が闇へと変わる。

 

 ――我に抱かれながら、本心を隠していたとは大したものだ。

 

 レックスの頭にハイオルムの声が響き、体に変化が訪れる。

 

 銀の短髪は黒の長髪に、碧眼は黄金に。

 丸みのあった耳は、エルフのように鋭角に。

 固く引き結ばれた口元は、鋭い牙が覗く不遜な笑みに変わる。

 

「な、なんだその姿は……!」

「ちょちょっと! 変装の魔法は!? 隠すんじゃなかったの!?」

 

 小さな民家に、夜の魔王が降臨した。

 

 




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