魔力ゼロだからと追放されて死んだら、オレの中の魔王が目覚めて犯りたい放題しやがる(改題) 作:遊野優矢
「その姿はいったい……」
レックスの風貌が突然変わったことに、カイユンとエレナは驚きを隠せないでいる。
エレナも驚きのあまり泣き止んでいる。
「我のことはよい」
一方、ハイオルムは堂々としたものだ。
どかりとイスにもたれかかり、腕組みをしている。
「よくないでしょ」
彼に何を言っても無駄だとわかっているパナデリアは、小声のツッコミとともにハイオルムをジト目で睨むだけだ。
「やはり姿を偽るのは好かん」
パナデリアは「ああもぅ……」と内心頭を抱えるしかない。
「さて……気に入らんな」
ハイオルムは冷静な表情のまま、じろりとエレナを見た。
「なぜ我を騙し、仲間に引き入れた」
「そうよ、最初から言ってくれれば協力したのに」
パナデリアがハイオルムに同調する。
「あなた達が領主側の人間かもしれなかったから……ごめんなさい……」
エレナはすまなそうに頭を下げた。
「我をごろつきどもの露払いに使うとはな」
けっして怒りをにじませているわけではないのに、強烈なプレッシャーが場を支配する。
「我を騙したことは万死に値する。……が、我に抱かれながらも目的のために嘘をついたこと、評価しよう」
「抱かれた……?」
パナデリアの顔がピキキと引きつる。
それを感じたハイオルムの目元が一瞬ぴくりと動くが、何事もなかったかのように続ける。
「本来ならばこの場で引き裂いてやるところだ。しかし、『もう1人』がうるさいのでな。貴様らの復讐を我に捧げることで許してやろう」
「それってどういう……」
エレナが問いただすより早く、ハイオルムの体が黒い霧となって消えた。
「レックスさんていったい……」
カイユンとエレナは、ハイオルムが腰掛けていたイスを呆然と眺めるしかなかった。
「お二人共、行きましょう!」
パナデリアは壁に立てかけていた大剣を手に取った。
「行くってどこに……」
疑問の声を上げたエレナに、パナデリアが笑顔で答える。
「領主の屋敷です。私には彼が『来るなら来い』と言っているように見えましたよ」
父親のものであった大きなベッドに寝そべる領主の娘……いや、新たな領主となったクリムはワイングラスを片手に、ほくそ笑んでいた。
シルクのバスローブからは豊かな胸の谷間がこぼれている。
20代前半にしては強烈な色気を放っている。
その妖艶さは、男ならば誰もが生唾を飲むほどである。
「あなたの言った通りでしたわ」
クリムは壁にかけられた鏡に話しかける。
本来光を写すはずの鏡は、白い靄で覆われている。
いつもクリムに居丈高に指示をするその鏡に、息を呑む気配があった。
「どうなさいましたの?」
クリムの問いかけに鏡は応えず、白い靄は消える。
「貴様がクリムか」
声は部屋の中央から聞こえてきた。
生ぬるい夜風にクリムは体をぶるりと震わせる。
いつの間にか部屋の窓が少しだけ開いている。
よく目をこらすと、ろうそくの灯りに照らされた闇が部屋の中央にわだかまっている。
闇はやがて人の形となる。
「だぁれ?」
クリムの問いかけに、ハイオルムは魔力で生成した漆黒のマントをばさりと翻した。
「我はハイオルム。貴様の命と尊厳を刈り取る者だ」
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