魔力ゼロだからと追放されて死んだら、オレの中の魔王が目覚めて犯りたい放題しやがる(改題) 作:遊野優矢
レックス17歳の誕生パーティーは、想像よりも盛大なものだった。
しかし、その主役はレックスではない。
パーティー会場のそこかしこで、王侯貴族達の腹の探り合いが行われている。
王位継承権2位の座がついに空く。
継承権1位の王子がたいそうボンクラなため、水面下でくすぶっていた跡目争いが表面化したのだ。
レックスは壁に背を預け、グラスの酒をちびちび口に運んでいた。
兄弟や親戚からは相変わらず蔑みの視線が飛んでくる。
魔力ゼロにこんな式典などもったいないと。
しばらくそうしていると――。
――カーン!
王の側近が床を杖で打った音がパーティー会場に響いた。
会場が一瞬にして静まり返る。
玉座に座る王が、レックスを目で呼ぶ。
「レックスよ。ただ今を持って、貴様はオキサーダ王国を追放される」
「はっ!」
王の前に跪くレックスがうやうやしく頭を垂れる。
「何か残す言葉はあるか?」
「いいえ、ございません。今までお世話になりました」
王国騎士団や国民達のことを頼みたかったレックスだが、自分がそんな願いをすれば逆に彼らに不利益なことが起きるかもしれない。
「王国の繁栄をこそ、祈っております」
「そうか、ならば旅立つがよい」
王は冷たい目をしたまま、鷹揚に頷いた。
息子と最後の別れをする父の姿だろうか。
母にいたっては姿を見せすらしない。
魔力ゼロは王家の恥であるからと……。
レックスは騎士団で使い慣れた剣と少しの食料と予備の服を持って城を出た。
鎧など支給されるはずもなく、平民が着るような平服だ。
闇に染まる夜、城の裏口からの出発。
まるで夜逃げだ。
壁にかけられた小さな松明の明かりを頼りに通用口の扉をくぐると、そこには100人を超える王国騎士団の仲間たちがずらりと整列していた。
道の左右に並んだ騎士たちが剣を掲げトンネルを作る。
受勲式典などで行われる儀礼的な行動だ。
レックスはゆっくりと剣のトンネルを通る。
「団長! お元気で!」
「なんで魔力がないだけでこんな……」
「団長がいなくなったら騎士団はどうなるんですか!」
「団長!」
団員達が口々にレックスに言葉をなげかける。
中にはぼろぼろと涙を流している者もいる。
「お前たち……」
レックスはうっすら目に涙を浮かべながら、この世界に来てからの17年間と、その前の人生を思い出していた。
レックスには前世の記憶がある。
こことは違う、科学で繁栄した世界。
そこで、40歳にして過労死した哀しい男の記憶だ。
思えば、どちらも家族に恵まれない人生だった。
前世ではどれほど身を粉にして働こうとも、妻には罵倒されてばかり。挙句の果ての過労死だ。
そして今は、魔力がゼロなばかりに、親戚全員から疎まれ、蔑まれ、追放されようとしている。
しかし、レックスは腐ることなく、王族の身でありながら騎士団で剣の腕を磨き、実力で団長まで上り詰めた。
前世で苦労した経験から王族なのに団員や平民にも優しく、必要があれば厳しい。その誠実さで人望を得ていた。
彼らとの生活は楽しく、2回の人生で最も充実した時間だった。
今こうして集まってくれている団員達は、後で処罰されるかもしれない。
心苦しいが、それでも嬉しさはあった。
ただ、副団長のパナデリアがいないのは少し残念だった。
最後に顔を見たかったが、彼女に迷惑がかかる以上、それを望むのは贅沢だろうと思い直す。
剣のトンネルをくぐり終わったレックスは、団員達に騎士団式の敬礼をし、背中を向ける。
向かう先は王都に隣接する深い森。
森を抜け、いくつかの街を通れば国境だ。
住み慣れた土地を離れるのは寂しくもあったが、新しい土地への興味もある。
この体は若く強靭だ。
しがらみがなくなった今、初めて自分の人生というものを楽しんでみるのも悪くないかもしれない。
夜の森は月明かりの届かない真の闇だ。
どこか夜を明かす場所を探さねばならない。
森を歩いていると、体にわずかなしびれを感じ始めた。
手足の先から徐々に感覚が鈍くなっていく。
これは……毒?
気づけば、周囲から虫の声が消えている。
「まだ歩けるとは、噂以上の頑丈さだな」
木々の奥からくぐもった男の声。
他にも気配がある。その数は5。
森の中、足音を立てずに近づいてきたのだ。
訓練された者達である。
パーティーの酒にでも痺れ毒をしこまれていたのだろう。
どうやら生きてこの国を出すつもりはもともとなかったらしい。
レックスが荷物を投げ捨て、剣を抜くと、黒ずくめの男女が囲むように現れた。
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