魔力ゼロだからと追放されて死んだら、オレの中の魔王が目覚めて犯りたい放題しやがる(改題) 作:遊野優矢
レックスとパナデリアに、周囲からゴブリンの矢が浴びせられる。
森の中から放たれた全方向から飛んでくる10本近い矢を、二人は簡単に薙ぎ払った。
「ギギゥッ!?」
驚くゴブリン達に肉薄した二人は、次々にそれらを斬り飛ばしていく。
簡単そうに見えるが、普通の人間からするとゴブリンは十分に脅威だ。
知能はそれほど高くないとはいえ、人間の大人以上の敏捷さを持つ集団が殺意全開で襲いかかってくるのだ。
戦場慣れしていなければ、まずそのプレッシャーに耐えられない。
それも、百戦錬磨のレックス達からすれば物の数ではない。
二人は常に背中合わせでカバーしあう。
といっても、背中を密着させているわけではない。
数メートル離れていても、道の中心を挟み、二人が対角線になるように動くのだ。
こうすることで互いに背後から狙われることはなくしつつ、自由に動くことができる。
たった二人でこれをこなせるのはレックス達の腕前あってのことだ。
パナデリアは大剣の一薙ぎでゴブリン2匹を真っ二つにし、ショートソードで切りかかってきたもう一匹を振り下ろした大剣で叩き潰す。
大剣を地面に叩きつけた際に飛び散った土砂が、ゴブリン達の目を潰す。
すかさず追撃し、目をこするゴブリン達を切り捨てる。
一方のハイオルムは、ゴブリン達の首を1匹ずつ迅速に落としていた。
飛んでくる矢を最小限の動きでかわし、背後にパナデリアがいるときだけ剣で払う。
払った動作がそのままゴブリンの首を落とす剣筋へと滑らかにつながる。
ゴブリン達の数が見る間に減っていく。
「ギャギャギャギャ!」
リーダーらしきゴブリンが撤退指示を出した時には、すでに彼らの残りは2匹になっていた。
レックスはリーダーの方を斬り殺す。
「ギ……ギギ……」
最後の一匹となったゴブリンは、じりじりと数歩後ずさる。
レックスが懐から取り出したナイフを投げると、それがゴブリンの腕に突き刺さった。
たまらずゴブリンは背中を向け、森の中へと逃げ出した。
レックスとパナデリアは逃げるゴブリン達を追う。
獣道を走るゴブリンの足は速い。
しかし、レックス達は気配を消し、彼らを追う。
そうしてゴブリンと一定の距離をとって走ること2時間以上。
崖の下にある洞窟の入口に到着した。
ゴブリンは洞窟の中へと逃げ込んでいく。
ここから先は十中八九、罠が待っている。
わざわざそんなところへ飛び込んでいく必要はない。
レックスは近くにあった燃やせそうな木や草を集める。
狙うのはできるだけ、火をつけたときに煙が出そうなものだ。
そうして火を起こし、煙を立たせる。
「パナデリア、頼む」
「はい」
パナデリアは大剣をうちわのようにして扇ぎ、煙を洞窟の中へと送り込む。
騎士団時代に何度もやってきたことだ。
ゴブリンは人間の女性をさらい、子どもを産ませる性質がある。
この洞窟にも捕まっている女性がいるかもしれないが、煙たい思いをするのは我慢してもらおう。
死ぬほどの量ではない。
「ギャホッ! ギャホッ!」
やがて洞窟の中から激しい咳をしながらゴブリン達が出てきた。
それをレックス達は木の陰から見ている。
出てくるわ出てくるわ。
その数300匹以上。
かなりの大所帯だ。
入口からはわからないが、洞窟も相応に広いのだろう。
「ギャギャギャ! ギャギャ!」
ゴブリン達は焚き火の跡を見て、何やら騒いでいる。
つかみ合いの喧嘩をしている者もいて、どうやら責任をなすりつけ合っているようだ。
「ギャギャイ!」
そんな中、司祭のような格好をしたゴブリンが声を上げた。
騒がしかったゴブリン達が一斉に静まる。
あれがゴブリンメイジだろう。
多くの群れがそうであるように、族長的なものも兼ねているようだ。
ゴブリンメイジは焚き火を調べた後、周囲を見回した。
やがて呪文を唱え始める。
この状況で使うとすれば探知魔法だ。
隠れていても見つかるなら出るしかない。
しかし、問題があった。
どれだけ数がいようと、負けることはない。
しかし、取り逃す可能性は十分にあった。
逃げたゴブリンを全て追うなど不可能である。
ならばどうするか?
二度とこの地に近づきたくなくなるほど徹底的にやるのみである。
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