魔力ゼロだからと追放されて死んだら、オレの中の魔王が目覚めて犯りたい放題しやがる(改題) 作:遊野優矢
部屋の隅に浮かび上がった女は、男ならば誰もが抱きたくなるような体をしていた。
くびれは細く、胸は大きく、とびきりの美人だ。
ただし、床につきそうなほど長い金髪はふわふわと揺れ、うっすらと向こう側が透けている。
「幽霊か」
「私が見えるの?」
「無論だ」
「うれしい!」
女の幽霊がハイオルムに抱きついてくるが、するりと向こう側に通り抜けてしまう。
「やっぱり触れられはしないのね……」
幽霊はしょんぼりしながらベッドに腰掛けた。
よく見ると、座った姿勢を取っているだけで、ベッドに体重はかかっていない。
「この宿に客が入らないのはお前のせいだな?」
「え……そ、それは……そう……かな?」
幽霊はごまかし笑いを浮かべた。
なんとも明るい幽霊である。
「私はラーバ。あなたは?」
「ハイオルムだ」
ハイオルムもつい彼女のペースにのせられてしまう。
「良い名前ね。座ったら? せっかくだもの、お話ししましょ?」
ラーバは自分のとなりをぽんぽんと叩いた。
勢いあまって少し手がベッドにめり込んでいたりする。
こうまでニコニコの笑顔で誘われては、断る気にもならない。
ハイオルムはラーバのとなりに腰掛けた。
ラーバの声はおそらくハイオルムにしか聞こえていない。
でかい独り言だと思われないよう、部屋に防音の魔術をかけておく。
「私を怖がらないのね」
ラーバはぐいっとハイオルムに顔を近づける。
「我がこの世に恐れるものなど何一つない」
今にも唇が触れそうな距離でも、ハイオルムは表情一つ変えない。
「うふふ。面白い人。今まで私が見えたり取り憑いたりした人達は、みんな怯えていたのに」
「取り憑く……今までもそんなことをしていたのか」
「んー、お客さんが来た時は毎日チャレンジしてるわ!」
さも当然という顔だ。
「死んでどれくらいだ?」
「死ぬ前の記憶がないからわからないけど、覚えているのは2年くらいかなあ」
幽霊の出る宿屋……噂が広まるには十分な時間だ。
客がいないのはラーバのせいだろう。
「でも残念。せっかくこんなに良い男がいるのに、触れることができないなんて……」
ラーバがハイオルムの肩に頭を乗せる仕草をする。
「一緒にいた美人さんに取り憑こうとしたけど、なぜか弾かれちゃったのよね。こんなこと初めて」
ラーバが不満そうに唇を尖らせる。
「しょうがないから、女将さんに取り憑いてこようかな」
「まてまてまて」
「なあに?」
「女将さんというのはあの老婆か?」
「そうだけど?」
「今までもそんなことを?」
「男だけのお客さんの方が多いから」
「なんて恐ろしいことを……」
夜になると老婆が迫ってくる宿屋……そりゃあ客も途絶える。
「しわしわの体だけど、男に触れるならそれでいいかなって。じゃあちょっと行ってくるね」
「待てと言っている」
ふわりと立ち上がったラーバの手首をハイオルムが掴んだ。
「大丈夫よ。目を閉じててくれれば気持ちよくしてあげ……え? なんで私に触れるの?」
「貴様の形状にそって薄く魔力のコーティングを施した。これで擬似的に触れたような感覚になるだろう」
「す……すごーい!」
ラーバがハイオルムに抱きつく。
胸の弾力までしっかり再現できているのは、ハイオルムの技のなせるところである。
「他人の体を使わずにできるのなんて久しぶり……。お礼にたくさん逝かせてあげるわ」
「幽霊に言われると笑えんな。逝かせてやるのはこちらの方だ」
「ふふ……たのしみ……」
ラーバはぺろりと舌で唇を舐める仕草をした。
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