魔力ゼロだからと追放されて死んだら、オレの中の魔王が目覚めて犯りたい放題しやがる(改題) 作:遊野優矢
国を追放され、夜の森を行くレックスは、黒ずくめの男女に囲まれていた。
全員が布で顔を隠している。
ショートソードを持った男が4人。
胸元がへそまであいた露出度の高い女がやや後方に一人。女は魔術師だろう。
レックスが少し前に出ると、5人はぴったり同じ距離を保つ。
それだけでわかる、かなりの腕だ。
「なあリーダー、薬は効いてるんだろ? もしこのまま回復されたらやっかいだ。やっちまいましょう」
「よし……」
5人の殺気が膨らむ。
「父上の差し金か、それとも後顧の憂いを断ちたい親戚の誰かか……?」
「気の毒ではあるが、答える必要はない」
レックスの問いかけへの答えは、鋭い刺突だった。
並の剣士ならばこの一撃で胸を貫かれていたであろうその一撃を、レックスは踏み込みながら避け、掌底で男の顎に一撃。
脳震盪をおこした男の背後に回り込み、男を盾にする。
囲まれていた状況からこれで、5人を正面に捉えることができた。
できればこのまま男を盾にして逃げたいところだが、そんな甘い相手ではなかった。
もう2人のショートソードが盾にした男の腹を貫いて、レックスに迫る。
レックスはすぐに男を突き放し、後ろに跳ぶ。
容赦も迷いもない。
プロだ。
黒ずくめ3人の剣が、レックスに迫る。
数度の打ち合いの後、黒ずくめのショートソードが1本、刃の半ばから斬り飛ばされた。
「はっ?」
間抜けな声をあげた男の首が、闇夜に舞う。
これで残り3人。
「おいおい、あの打ち合いの中で、剣を斬りやがったぞ」
「とんでもない腕だな。だが……」
レックスの手からぽろりと剣が落ちる。
「派手に動いたのは失敗だったな。薬の回りがよくなるぜ」
「くっ……」
レックスがふらりとたたらを踏む。
ショートソードを持った男二人がジリジリとレックスに近づいていく。
剣を拾おうとするレックスだが、膝を曲げたまま尻もちをついてしまう。
痺れはいつのまにか、全身に広がりつつあった。
黒ずくめの剣がゆっくりレックスの喉元に迫る。
「待ちなさい!」
闇夜を切り裂く女性の鋭い声が響いたと同時に、黒ずくめのショートソードが投げナイフに弾かれる。
走り込んできたのは軽装鎧に見を包んだ細身で長身の女騎士だった。
鎧の下から主張する大きな胸と腰まであるブロンドのポニーテールは、昼であればさぞ人目を集めただろう。
しかし今、何より目を引くのは、身長を超える巨大で太い剣だ。
運ぶだけでも大人が2人は必要なそれを、彼女だけが軽々と扱える。
「はあっ!」
女騎士が巨大な剣を黒ずくめに向かって叩きつけた。
――どがぁっ!
およそ剣をたたきつけたとは思えない爆音とともに、地面が弾けた。
黒ずくめ達が慌てて飛び退く。
「団長! ご無事ですか!?」
女騎士は倒れて動けないレックスをかばうように大剣を構える。
「パナデリア……なぜ……こ……」
もはや口すらまともに動かない。
「大剣使いの女騎士……王国騎士団副団長のパナデリアか!
「なんでこんなところにいやがる!?」
黒ずくめ達の慌てる声が響く。
それはそうだろう。
単純に剣術の腕ならばレックスが王国随一である。
副団長のパナデリアであっても、100回戦って1度も勝てないほどの差がある。
しかし、大剣を持ったパナデリアはまさに一騎当千。
「とても強い」程度の腕前では、あの大剣に全てを薙ぎ払われる。
「事情はわかりませんが、団長に仇なす者ならば、この剣のサビにします!」
大剣を背負ったパナデリアが黒ずくめ2人に突っ込んでいく。
ショートソードからするとはるか間合いの外。
無造作に横薙ぎにされた大剣は、ナイフよりも速く、黒ずくめ1人の胴を真っ二つにした。
一人はかろうじて上に跳んでいる。
それで避けられたと思うなら甘い。
男が着地するよりも前に、切り返された大剣によって、2人目の胴も真っ二つになった。
「団長!」
パナデリアがレックスに駆け寄る。
「パナ……まじゅ……」
魔術師の姿が見当たらない。
そう注意しようとしても、レックスの口はもはやまともに動かなかった。
「衝撃拡散波(ショックディフュージョン)!」
気配を消し、茂みに隠れていた魔術師が魔術を解き放つ。
広範囲に衝撃波を撒き散らす術だ。
短射程な上に人間を気絶させる程度の威力しかないが、剣士が感知してから避けるのは不可能なほど高速で広範囲に効果がある。
パナデリアは吹き飛ばされ、背後の木に叩きつけられた。
「うっ……」
そのまま気絶し、動かなくなる。
「まったく、4人も殺ってくれちゃって……」
女魔術師がレックスに歩み寄る。
その手にはスティックタイプの杖が握られている。
女魔術師が口の中で呪文を唱えると、杖の先に小さな炎が灯った。
「火葬円陣(クリメイションサークル)」
杖から放たれた小さな炎が倒れているレックスの胸に触れると、そこを中心として天高く炎の柱が吹き上がった。
肉の焼ける臭いが森の風に流されていく。
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