※この作品はR-18です。

魔力ゼロだからと追放されて死んだら、オレの中の魔王が目覚めて犯りたい放題しやがる(改題)   作:遊野優矢

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第四章(9)

「思い出しました……」

 

 ラーバがそう言うと、彼女の首が真横にぱっくりと裂け、血が流れ出した。

 ハイオルムが首に触れると、傷口が塞がっていく。

 

「話してみろ」

 

 ラーバは悲しげな顔で頷き、語り始める。

 

「私の両親は冒険者でした。当時12歳だった私は、両親に連れられて、各地を旅していました。

 

 ある日、この宿に泊まったんです。

 当時はまだ毎日お客さんが何組かいたようです。

 私達が泊まった日、事件が起きました。

 食事に毒キノコが混ざっていたらしく、私以外のお客さんが全員倒れたのです。

 私はキノコが食べられなかったので、助かりました。

 当時夫婦でやっていた宿の主人達もとても驚いていました。

 この時はまだ、わざとではなかったようです。

 そのまま両親を含めた全員が亡くなりました。

 でも、宿の主人達は役所に届けず、彼らを庭に埋めたのです」

 

「重罪だろう」

「はい。でも、墓を立て、戦いの傷で死んだことにしたようです。その時にはもう、私は地下室に閉じ込められ、客の相手をさせられていたので、聞いた話ですが……」

 

 客の相手とはつまり、強制的に売春をさせられていたということだろう。

 

「宿の主人達は味をしめたのか、たまに客に毒を盛り、金品をうばっていました。そんな人には当然報いが来ます。

 

 ある日、毒を盛られたことに気付いた傭兵がいました。

 その傭兵は自分が死ぬ前に、宿の主人であるお爺さんを殺しました。

 次にお婆さんに剣を突き立てようとしたところで、私が盾にされたのです」

 ラーバは先ほどハイオルムが治した首のあたりに触れた。

 

「そこで傭兵に毒がまわりきり、こときれました。

 

 残されたのはお婆さんだけでした。

 あれ以来、お婆さんは頭がおかしくなりました。毎晩地下室にため込んだ金品を数えているんです」

 ハイオルムが透視の魔術で地下を見ると、ちょうど老婆が硬貨を1枚1枚数えているところだった。

 老婆は口元に薄ら笑いを浮かべ、ろうそくの火に硬貨を1枚1枚かざしながら、箱から箱へと移していく。

 

「恨みはあるか?」

 

 ハイオルムはラーバに問う。

 

「もちろん」

「殺したいほどに?」

「私は殺されたんですよ? 同じ報いを受けさせたい。でも……」

 

 ラーバは悔しそうに唇を引き結ぶ。

 

「もう長くない老人が、どれほど自分の行いを悔いるか……」

 

 ハイオルムの経験からすると、ああいった老人ほど生にしがみつくものだ。

 

「なかなかに良い体を愉しませてくれた褒美をやろう」

 

 ハイオルムはいぶかしげな顔のラーバを連れ、地下室へと向かった。

 

 

 

「なんじゃ!? 鍵はかけておいたはず!」

 

 物理的な鍵など、ハイオルムにとってはないようなものだ。

 

「世話になった礼に若返らせてやろうと思ってな」

「なぁにを言うとるんじゃ! さっさと出ていかんか!」

 

 ハイオルムは口の中で呪文を唱えると、老婆の額を指でツンとつついた。

 すると、老婆の顔からシワが消え、曲がっていた腰はまっすぐになり、肌にはりが出ていく。

 

「な、なにこれ……」

 

 急速に若返っていく老婆を見て、ラーバが驚く。

 

「こ、腰が痛くない……これは……若いころのワシ……いや、あたし……」

 

 鏡を見た老婆が、自分の美しさに見とれ、くるりと回ってみせる。

 

「ゆ、夢か……?」

 

 老婆は自分の頬をつねるという古風な方法で、これが現実化確かめる。

 

「いたた……夢じゃない?」

「我にかかればこの程度造作もない」

「どなたか知らぬがありがとう! この若さと金があれば、もう一度人生を楽しめる!」

「楽しむ……」

 

 ラーバがギリリと奥歯を噛み締めた。

 

「喜ぶのはまだ早い。若さを保つには条件がある」

「なに? なんでもするよ?」

 

 すっかり話し方まで若くなっている老婆である。

 

「他人に奉仕をし続けることだ。財産は全て売り、寄付しろ。仕事で得る賃金は、最低限食っていけるだけにしろ。それを破れば、恐ろしいことがおきる。守れるか?」

「なあに、そんなこと 若さのためなら守るに決まってるじゃない!」

「これが私へのご褒美ですか……?」

 

 ラーバは不満げな顔をハイオルムに向ける。

 ハイオルムは魔術を使い、ラーバにだけ聞こえる声で言う。

 

『老婆にかけたのは、残った命を燃やし、一時的に若返らせる術だ。その代わり、残りの寿命を1000倍の速度で消費する。おそらく、数日のうちにもとの体に戻り、朽ちるだろう』

「なんでそんなまどろっこしいことを……」

『なあに、しばらく見ているがいいさ』

 

 そうして、レックスとパナデリアが宿を後にした。

 

 

 

 宿での出来事から3日後の夜。

 ハイオルムのもとにラーバがやってきた。

 その顔は穏やかながらも満足げだ。

 

「あの主人は死にました」

「その様子だと、我の言いつけは守らなかったようだな」

「ええ。彼女はすぐ、旅人から奪ったお金で贅沢三昧を始めました。でも、その体が老化を始めると、とたんに懺悔を始めました。心を入れ替えるから助けてくれと。最後は醜く腐っていきました……。あなたはこうなるとわかっていたのですね」

「希望を得てからの滅びは、さぞ苦しかったであろう。溜飲は下がったか?」

 

 ハイオルムは静かに微笑む。

 

「ありがとう。これで、私も逝ける……」

 

 ラーバは穏やかな微笑みとともに、光となって消えた。




本作は以上で完結になります。
ここまで読んでくださった皆様ありがとうございました!
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