魔力ゼロだからと追放されて死んだら、オレの中の魔王が目覚めて犯りたい放題しやがる(改題) 作:遊野優矢
レックスは燃え残った荷物から予備の服を取り出し、身につけた。
道端の岩にパナデリアと向かい合って腰掛け、干し肉をかじる。
「帰れ」
レックスは開口一番そう言い放つ。
「お断りします」
パナデリアは迷いなく首を横に振る。
「もともとは、最後のご挨拶をするつもりで待っていたんです」
その言葉に内心喜んでしまうレックスだが、表情には出さない。
「団長がいつまでもいらっしゃらないと思ったら、襲われてるじゃないですか。しかも、盗賊ではなく、プロの暗殺者に」
「念のためというやつだろう」
王族の身分は剥奪されているが、どこぞの誰かが神輿にでも使いたがるかもしれない。
「私はその考えに至らなかった自分を恥じました。大切な団長の身に危険が及ぶだなんて……」
「それを言ったら、オレだってまんまと毒を飲まされたわけだし」
完全にしてやられた。
「私が王都を抜け出したことは、団長の暗殺の失敗と共に知られているでしょう」
つまり、パナデリアは王都に戻っても、厳しい処罰か待っている。最悪、レックスの討伐を言い渡されるかもしれない。
「すまない……」
「団長は何も悪くありません! 悪いのは団長の価値もわからない王侯貴族達です!」
「騎士団員の言葉とは思えないな」
興奮するパナデリアに、レックスは苦笑いで返すしかない。
前世の記憶があるレックス自身、王族への忠誠心など持ち合わせてはいないのだ。
もちろん、そんなことは絶対に表に出さなかったが。
「私の剣は王ではなく、団長に捧げたのです。平民の女だというのに、剣の腕を認め、副団長にまでとりたててくれた貴男に!」
この女騎士はレックスに「何が何でも一緒に連れて行け」と言っているのだ。
彼女に帰る場所がないのなら、もう断る理由を見つけることはできなかった。
何より、一緒に行けることを喜んでしまっている自分がいる。
「もう団長ではない。レックスでいい」
パナデリアの顔がぱあっと明るくなった。
「はい! レックス……様……」
「王族でもないんだ。様もいらない」
「レ……レックス……」
パナデリアの頬がぽっと紅くなる。
影では国一番とまで言われている若く美しい女性にそんな顔をされれば、いくら前世からの人生経験のあるレックスであっても、つい視線を外してしまうほどには照れてしまう。
しばしの沈黙の後、2人の視線が交わる。
「も、目的地はあるのですか?」
先に沈黙に耐えきれなくなったのはパナデリアだった。
「森を抜け、このまま街道沿いに歩いてみようと思う。当てのない旅なんて初めてだ」
「ふふ……私もです。少しわくわくしますね」
「行くか」
「はい! どこまでもお供します!」
こうしてレックスとパナデリアは旅立った。
だが2人の旅にはもう1人の道連れがいる。
――魔王ハイオルム。
レックスと肉体を共有するその存在が、2人……いや、3人の運命を巨大な渦へと巻き込んでいくのだ。
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