朝鮮半島は統一され日本に再併合を要請…渋々併合するも支那の反感を買い世界は日英豪印朝と支那共産党の対立が著しく顕著になった。
これを機に陸海空自衛隊は国防軍へ改名し朝鮮半島の鎮海区にて警備府を設置した。
警備府に配属された神苑冥は生まれ持った希死念慮を抱きながら軍務に従事する。
神苑 冥・・・日本国防海軍の機関少尉。血筋上生まれつき女子の顔つきで生まれた男。
その容姿からか皆から虐められた過去を持つ。
何度も自殺未遂を繰り返していたがその過去を隠し入隊した。
序幕・・・経歴
私・・・神苑 冥は去年の四月に国防海軍として舞鶴※海機へ入校した。
※海軍機関学校の略称。
そこで半年間の教育を受けその後広島県呉市にある潜水艦訓練学校に入校。
四か月間ひたすら座学と試験に追われる日々で休日も休む暇がなかった。
海機とは打って変わって友人も多少なりともできた。
ここは馬鹿な連中がいなくて精神的に楽だった・・・
しかし関係を深くすればするほど卒業時の別れが辛くなる・・・
特に仲が良かった斎苑と宮嶋の二人は私に良くしてくれた。しかし配属は呉軍港であり私は鎮海軍港へ赴任することになった。
赴任の前日に3人集まって杯を交わしいつかまた会おうと固く誓った。
壱話…鎮海軍港
本国から出る船に揺られ朝鮮半島の鎮海へ向かう。
私は部屋で珈琲を嗜み窓から見える海面と海鳥たちを見つめていた。
綺麗な光景に目を奪われると同時に硝子に映る己の顔を見て顔を顰めた。
そこには顔立ちこそ整っているものの女顔で黒髪短髪の顔が恨めしそうにこちらを見つめていた。
何故こんな顔で産まれたのか…
その想いが頭を駆け巡る。
すぐさま顔を背け珈琲カップを見つめる。
思えば昔から虐められてばかりだ…親からも虐待されずっと1人だった…
潜訓で初めて気が置けない友人ができて良かったのにこれならはまた1人…
次々と出る憂いに頭を悩ませ珈琲を飲み干す。
静寂な部屋で聞こえてくる波の音とラジオから流れる雑音混じりの音声、軋む扉これらが私の心を犯し貪って来るのだ。
遂に耐えかねた私は雑嚢に忍ばせたウヰスキーの小瓶をそのまま口に着け飲み干す。
甘くも燻された香りが鼻を通り抜けると共に燃えるような熱さが喉を刺激した。
片目を瞑り苦悶の表情を浮かべベッドに横になる。
掛け布団を被った刹那睡魔に襲われつつもスマートフォンを弄りながら短い動画を何本か見始める。
そんな中ある1本の動画に酷く惹かれた。
内容としては死後の世界の考察だった…
神道、仏教、キリスト、イスラム、ユダヤ、ヒンズーそして無宗教別の説明が淡々とされていた。
専ら神道な私としては死んだら黄泉の国に行くのだと固く信じて他の宗派など眼中に無かった。
この動画を皮切りに今度は自殺関連の動画を見漁った。
先程での睡魔が吹き飛び夢中になる。
といっても最近は規制が厳しくあまり過激な自殺関係の動画は少なかった。
自殺したら残された人が苦しむ等陳腐なものしか残ってない…それを確認してスマホの画面を消し眠りにつく。
「俺が死んだら誰が悲しむのか…斎苑か宮嶋か…どちらにせよ居ないに等しい…はぁ」
そう呟くうちにしばらく押し殺していた自殺欲求が再び目覚める。
翌日鎮海港へ到着した。
朝鮮半島の伝統的な建物の中に和風建造物があり再び併合された事実それを身をもって知った。
重い足取りで軍港へ向かう。
日朝折衷の街路を行き正門に到着した。
喧騒にまみれる中警衛隊の人間は微動だにせず立直していた。
私は胸ポケットから軍隊手帳を見せて基地内に入る。
正門こそ立派だったが庁舎や隊員宿舎はオンボロでいかにも金がないのが伺えた。
私は自分の部隊…黒鯨の艦長へ着任の挨拶をしに行った。
オンボロ庁舎の入口から艦長室に向かう。
踏み込む事にキシキシとなる階段に若干の恐怖を覚えつつ扉の前に立つ。
「失礼します」
私はノックすると食い気味で「どうぞ」と返された。
ギーと音を立てながら扉を開ける。
アンティーク調の部屋の真ん中に机を構え机上にはパーソナルコンピュータと睨み合いをしている女性がいた。
「君か神苑 冥くんは…私が第3潜水隊群第12潜水隊所属、黒鯨の艦長だ長旅ご苦労…とりあえず今日は休んでくれ」
彼女は顔を上げ立ち上がる。
黒髪にお団子ヘアーと女性軍人特有の風貌しかしそれ以上にシワだらけの制服に目が行く。
「あの…明日はどこに出勤したら…良いでしょう」
「とりあえずTバースに行ってくれ時刻はそうだなぁ…10:00だな」
そう言うとまた座りパソコンに向かう。
「失礼します」
うん…力無く返答され部屋を出る。
私は与えられた宿舎に向かう。
コツコツと鳴る足音を聞きながら仄暗い白熱電球に照らされている廊下を歩く。
パッパッと点滅すると昼でも時折暗くなり人ならざぬ者に遭遇するのではないかと思った。
廊下の突き当たりに私の部屋があり扉を開けようとするが建付けが悪いのか激しい音を立てながら開く。
内装としてはベッドと事務机とソファがある若干豪華なものであったが所々ホコリを被っていた。
「はぁまずは掃除か…」
荷解きをすると雑巾でホコリをサッと拭いとった。
衛生面はマシになったが…電球が切れて終始薄暗い。
交換しようか…そう考えるが若干面倒臭いと思い至りそのままベッドに潜る。
翌日重い瞼を開け暖かい布団から這い出る。
身体中に鉛が付いているかのように重く全てが億劫だった。
現在時刻08:00あと2時間後にTバースにて黒鯨乗員の総員集合が掛かる。
クローゼットから制服を出し着替える。
そして重い足を動かし岸壁に向かった。
隊舎から出ると心地よい陽光が頭に被っているベレー帽越しに伝わる。
数百メートル先の岸壁に着く頃には時刻は0930を指していた。
「冥…少し早いが総員集合を掛けるからな」
岸壁に並ぶ総員50名の軍人が私の私ごときの為だけに整列していた。
「総員集合…」
当直士官が当直先任に下令そしてまた当直員へ下令する
「そーいんしゅごっ!」
海軍特有の発音法で当直員が下令する。
「短間隔右へーならえ!…直れ!」
「よろし!」
整列完了を先任にそして士官に届けた。
「本日着任した実習士官を紹介する…0901期幹部専修科潜水艦過程を修業された神苑 冥少尉です」
一通りの紹介をして私が話す番になる。
緊張しぎこちない足取りで前に出る。
皆が私に注目し目を見開くものも居れば興味が無い者…そもそも新人に対しよく思わない目をする者と色んな目線が心に突き刺さる。
震える口を開く。
「あ…神苑少尉…で…です…よろしくお願いします」
噛みまくり吃りまくりの言葉に苦笑する者がいてそそくさと元の位置に戻った。
「各分隊事かかれ!」
頭が真っ白になっているなか当直士官は皆を別れさせた。
数分立ち尽くしていると艦長が話しかけて来た。
「緊張するのも…しょうがないよな…まぁ困ったらすぐ私に言ってくれ…」
目のクマを擦り反対の手で髪をガサガサと掻く。
私はおぼつかない反応で頭を下げる。
そして逃げるように岸壁から上甲板に向かった。
中部ハッチからラッタルを降り艦内に入る。
1面カーペットが敷かれており普段響く足音が聞こえず…なんともいえぬ違和感を覚えた。
士官室寝室に向かい此処で使う物を一通り仕舞う。
「馬鹿実習員!発令所に居座るな邪魔くさい」
隣の区画から怒号が飛び交う・・・足蹴にされ士官室に転がり入ってくる。
「大丈夫?」
私はとっさに駆け寄るがすぐ行ってしまった。
令和にもなるのにこのパワハラ・・・日本はもう守れないな・・・
二章・・・邂逅
私がここに来てもう一週間が経つ。
今日は休日で重い体を起こし部屋を出る。
扉を開け廊下に出る。
「あ・・・」
この前パワハラを受けていた実習員と鉢合わせる。
酷く虚ろな目で軍人としては若干長い黒髪で体型も少し小太りであった、しかしどことなく上品な雰囲気を漂わせ顔つきも可愛いらしかった。
それを私自身に置き換えたのか面倒を見なければという心が湧く。
「あの・・・そのこの前はありがとう・・・ございました・・・・・・あの自分は・・・佐上 友といいます一応1等水兵です」
私以上に舌足らずであった。
「あの時の…大丈夫?と言っても辛いか…あ…私は神苑 冥少尉だ同じ実習員同士頑張ろうな…どう暇ならご飯にでも行く?」
「…是非」
力無く答えた顔はとても可愛らしい笑顔で希死念慮に打ち負けそうな私を殺しそれが庇護欲求そして依存に移り変わるまでそう時間は掛からなかった。
私は彼の手を引き営門を通過する。
営内の淀んだ空気を打ち消す外の空気…来てまも無いはずの鎮海の街並みがやけに懐かしく感じた。
鎮海警備府の正門から続く小高い丘をのぼり繁華街に向かう。
どうも海軍の街といえば繁華街なのはここも同じらしく飲食店、呑み屋、夜の店とが入っていた。
看板や広告は日本語とハングルが混ざっていて酷く奇々怪々な風景がまた私たちの心に酷く刺さる。
そんな和朝折衷とした街をひたすら目をキョロつかせて歩いた。
暫くすると(実際はかなりの時間が流れていたが)飲食店の換気扇から漂う美味しそうな匂いにお腹を空かせる。
内手首に付けた時計を見るともう1150を指しており昼時だった。
人々の雑踏の中道端で止まり私は友に話し掛ける。
「回るのに夢中で朝ごはん食べれなかったね…昼時だしなんか食べたいものでもある?」
ぎこちない笑みを浮かべる私…
「あなたに任せますよ…私には自分で決めるのは難しいですから」
そういうと袖を握る。
さながら猫のように私を見上げた。
「そーか…ラーメンでもいい?」
「えぇ」
適当に歓楽街を歩き良さげな町中華に入り支那そばを頼む。
支那そばを目の前にして友は目を輝かす。
湯気で顔が霞む中その瞳に引き込まれた。
箸で麺を掴み1口…昔懐かしの醤油スープが心を癒す。
「故郷の町中華を思い出します…」
レンゲに麺を入れ口に運びそんなことを言う。
「私…元々は警備員だったんですよ…3種警備でね…そこでパワハラにあって今度はここに…」
初めて身の上噺をしてそれに聞き入った。
パワハラか…逃げと言ったら申し訳ないが…軍隊に希望を見出してまたされるとそりゃ病むな…
ふと彼の目を見ると目尻には涙が滲んでおり光沢を帯びていた。
「行こうか…」
会計を済まして店を後にする。
気が乗らないがすることも無いので軍港に戻った。
「冥さん…また明日…」
そう言って別れ自室に戻る。
寝巻きに着替え寝台に飛び乗る。
こんなに外に出たのは久しぶりだ…眠い。
一瞬にして記憶が無くなり眠りについた。
翌朝扉が叩かれる音で目がさめる。
「冥さん…遅刻ですよぉ」
友か…そんな思い時計を見ると9時を指していた。
遅刻してる…
慌てて制服に着替え部屋を飛び出す。
「行きますよ…少尉殿」
昨日と変わらない友はそういうと手を引いて速足で歩き始める。
「少尉さんを起こしてこいと言われましてねぇ…」
「ありがとな…」
「いえ…仕事が出来ない分雑用をするしかないのでね」
自嘲気味に笑いあっという間に岸壁に着く。
「ありがとね」
「待ってください…ベレー帽とドルフィンマークが傾いてますよ…」
背伸びして直してくれた。
「では私は食堂の方で雑用をしに行くんで」
私も彼の後を追うように艦内に入る。
「おいデブ!…なんでテキパキ動けないんだ!」
「す、すみません…」
「何ニヤけてるんだお前は微笑みデブなのか?」
食堂から罵声が聞こえる。
士官室に行く前に覗いた、そこには友が調理室で若い伍長に怒鳴られていた。
「シャリ番もろくに出来んのか…たく…潜水艦乗りの覚悟がないならさっさとやめろ!」
そんな中彼と目があった気がして士官室に逃げ込んでしまった。
それからは集中出来ずに課業が終わった。
上陸する前に艦長室に入る。
「冥じゃないか…どうした?」
「あの、1等水兵の友についてですが」
「あぁ…かなり精神的に参っているな…1回※輜重部隊に転属させようと上申中だ」
※軍需品の補給輸送を行う後方支援部隊。
「輜重部隊って友はそんなに無能なんかじゃ…」
「分かってる…」
苛立ちを隠しつつ艦長の話を聞く。
「ここではこうするしかない」
その言葉を皮切りに部屋を出てしまう。
岸壁に上がると1人喫煙所でタバコを吸ってる友が居た。
「冥さん…どうしたんです?そんな浮かない顔して」
そんな笑顔を空元気に振舞ってる彼を見て嗚咽感に襲われる。
「大丈夫ですか?」
そんな心配する彼を置いて隊舎のトイレに駆け込み嘔吐する…吐瀉物のツンとした臭いが鼻を刺す。
「何も出来なかった」
この1件から私は友と距離を置いた。
そして数日数ヶ月と過ぎていった。
ある日艦長が私と友を呼び庁舎の艦長室に招く。
「冥と友2人を黒鯨付として第1海兵班への勤務を命ずる」
突拍子もない話でどう反応するか困惑する。
「急になんで…」
「近いうちに出航する…お前たち2人は無理だろう…」
きつい口調で返される。
「ですが」
「これは命令だ!出航して潜航したらSQでずっと支那付近を警戒する…そうしたら友が耐えられるか?」
興奮と怒りのあまり机を叩いた。
ガタン・・・と黒鯨の部隊旗が倒れる。
「それは分かりますが…」
私の言葉は突如起こった爆音により掻き消された。
私も友も艦長ですらこの状況が分からなかった。
我に返ると空襲警報と対空戦闘喇叭が響き渡る。
「私は船を見に行く2人は防空壕へ!」
そんな命令聞けるはずもなく制止する艦長を無視し黒鯨が停泊する岸壁に向かう。
外に出ると火炎と火薬特有の臭いそして煙が私たちを襲う。
何とか岸壁に着くと黒鯨は跡形もなかった…木端微塵書いて字の通り辺りにはなんの部品かも分からないものが漂っていた。
無意識に海へ飛び込もうとしたわたしを艦長は止める。
「無理だ…ここから離れるぞ」
強制的に連れられ向かったのは警備府だった。
重苦しい司令室にて艦長は毅然と被害報告をした。
「司令…被害報告ですが…潜水艦黒鯨撃沈生存者は私含めこの3人です」
「そうか…もうよい…ひとまず迎撃は残ってる艦艇で対処する君らは安全なところで待機だ」
司令は虚空を見つめ力無く椅子にへたりこんだ。
「行くぞ…」
艦長に連れられ防空壕へ移動する私たち。
混凝土の入口から入ると室内は冷たい金属の区画が無数にあり黒鯨艦長室と書かれた部屋に入る。
「艦長…」
「なんだ?仲間の救出を拒んだ恨み節か?…あの状況で生存は絶望的だ…お前ら2人を生かす選択をした…ただそれだけの事だ…」
苛立たしく足を震わせタバコに火を付け始めた。
「これからはどうすれば?」
私の後ろに立っていた友が口を開く。
「さぁな…私は海兵に転属して仇を撃つ…警備府からチラッと聞いたが平壌から発射された巡航ミサイルで攻撃されたようだ…陸軍もここに向かってるらしい…国境警備隊は38度線跡地で駐屯するそうだ…全く…併合した結果がこれか?」
煙を吐きため息をつく。
狭い部屋にはタバコの煙と重苦しい空気が漂い私の呼吸を困難にした。
3章…第二次朝鮮戦争
黒鯨が撃沈されて数日が達私たちは海兵隊へ転属した。
戦況は38度線にいた部隊は玉砕鎮海警備府が前線となる。
警備府は有らん限りの駆逐艦で民間人を日本本国へ護送した。
疎開が完了すると国連軍が到着し始めた。
1番最初に駆けつけたのが米軍ではなくトルコ軍だった。
先の朝鮮戦争でもいち早く国連軍の呼び掛けに応じ今回も我先にと軍を派遣してくれた。
現戦力として日本、米国、土耳其、朝鮮、英吉利軍の5カ国連合軍が鎮海警備府に集結した。
およそ5個師団が展開され明日一斉に攻勢に出て38度線まで戦線を押し進めるようだ。
艦長…今は班長だが…彼女と私と友の、3人は海兵隊斥候班として前線に向かうことになった。
彼女としては仇討ちのためファーストキルを取るつもりだろう。
私はそんな考えと並行して戦死してしまうのではと縁起でもない考えも湧いた。
「冥さん…」
そんな俯いてる私に友はオドオドと話し掛ける。
「友…かなりやせ…いやなんでもない」
私は途中で言葉を切った…無論彼は酷く痩せていたしかしそれは職場でのパワハラやいじめでのストレスだと瞬時に思ったからで瞬間的に彼から目を逸らしまた向き直した。
「痩せましたよ…そんな冥さん気を遣わなくても…気を遣って私の事避けてたんですか?」
そんな事を言われ顔には出さないが酷く動揺した。
気を遣う…そんな綺麗なことならどれほど楽だったか…私にはあの時若干の面倒臭さそして忌避感に支配されていたのだ。
「そんなんじゃ…」
「知ってますよ…言わなくても…面倒臭い…そんなの当たり前ですよ…」
彼は笑いながら近づき狂気的な瞳をして私を見上げる。
「ご…ごめん…」
呟くと今度はヘラヘラと笑いながらどこかに行ってしまった。
一瞬私はこれが現実なのか妄想なのか区別がつかなくなった。
そこからはもう記憶がなく気が付けば翌日の朝出撃前になっていた。
私たちは瓦礫とかした街を歩き山岳地帯に入った。
そして敵と接触した。
木々の間から聞こえる足音…それをいち早く察知した艦長はその場で屈み20式小銃に銃剣を付けた。
そして銃口を敵に向ける。
「艦長…あくまで偵察ですからむやみやたらに…」
パン!と乾いた銃声が響き渡り向こうを歩いていた歩兵はバタりと地面に倒れる。
慌てて私と友も発砲する。
幸い敵は分隊と小規模であった。
無我夢中に発砲する私たち無論初めての実戦で弾幕を張るので手一杯だった。
突如私の顔に生暖かい液体が付着し隣を見ると肩から血を流している友が私にもたれ掛かる。
「艦長!友が被弾しました!」
私は小銃を地面に起き負傷箇所を見る。
肩をかすめて骨は無事だったものの肉がえぐれていた。
雑嚢から止血剤とモルヒネを打ち彼を寝かせた。
しばらくして艦長の方を見ると敵を制圧したようで歓喜の声を上げていた。
「やったぞ…」
そして亡骸に近寄り一人一人銃剣で刺突した。
遠目からでも赤い液体が飛び散るのを見て慌てて止める。
「もう死んでます!」
「知ったことか…こいつらは…」
取り押さえる私を振り払い再び息絶えた敵兵士を突き続ける。
私は急いで無線を取り出し救助ヘリを要請した。
ものの数分でヘリが到着し乗り込む。
「戦争犯罪で訴えるか?こいつらは宣戦布告もしなかったのに…」
身体中血塗れで目は虚ろになって笑ってる。
基地に戻って友を病院に搬送する。
艦長も私も強制的に精神科を受診することになり。
私は問題無かったが艦長は重度のPTSDと判断され名誉除隊の手続きがされた。
とはいえ国連軍が優勢な今戦後に除隊、私も友も原隊復帰となるそうだ。
部屋が少ないという理由で私たち3人は同じ部屋で入院となった。
4章…自殺念慮
入院して何日経過したかわからない・・・しかし事実的な戦闘行為が終了し翌日条約が結ばれる…艦長からそう聞き私は喜び浮かれていたしかし友はどことなく不機嫌で常に不敵な笑みを浮かべていた。
「艦長のPTSDも回復に向かっているそうですね」
「あぁ…なんだ心配してくれてるのか?」
そう言ってはタバコを吸ってケラケラ笑ってる。
病室なのに…
「冥さん…」
友はガリガリな腕で擦り寄ってくる。
「どうした?」
「…」
そのまま抱き着いて目を閉じる。
はぁー…私達も除隊した方が良さそうだな。
窓を見ると小鳥たちが巣の中で戯れていた…平和になったのか…
精神病患者と仲間と引替えに。
さてもう寝ようか…私は抱きつく友をベッドに寝かせて冷蔵庫にあるウヰスキーを飲み干した。
喉の焼ける感覚がやけに気持がいい。
その状態でベッドに入り眠りに着く。
カチャ…カチャ…深夜静寂な病室に時計とは違う無機質な音で目が覚める。
体を起こし立ち上がる…音の方は友のベッドのようでうっすらライトが光ってる。
恐る恐る忍び寄りつい何をやってるか聞いた。
ベッドに座った彼は振り向く…そこには20式小銃と弾倉がだき抱えられ弾を込めている。
「友…実弾じゃぁないよな?」
震える声で聞く。
「5.56mmNATO弾…もちろん完全被甲弾(フルメタル・ジャケット)…」
不気味な笑みを浮かべ弾倉を差し込みゆっくりと立ち上がる。
「立ーて銃!」
「控えー銃!」
「担えー銃!」
「控えー銃!」
「立ーて銃!」
「捧げー銃!」
急に大声で執銃動作をする。
そして槓杆を引いた。
「発砲準備よし…」
「友…」
「私は、天皇陛下及び我が国の平和と独立を守る皇軍軍人たる使命を自覚し、帝国憲法及び法令を遵守し、一致団結、厳正な規律を保持し、常に徳操を養い、人格を尊重し、心身を鍛え、技能を磨き、政治的活動に関与せず、強い責任感をもつて専心職務の遂行に当たり、事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえることを誓います!」
私の言葉を掻き消すかのように軍人の服務宣誓を叫ぶ。
「うるさい…友…ついに狂ったか!」
艦長も耐え兼ねて起き上がりこちらに来る。
「馬鹿な事はすんな…ほらそれをよこせ…」
「…」
「よこせ!…それともこの私を殺すか!?」
沈黙を貫く友を怒鳴る。
「ほら殺せ!」
そして…パン!銃声と共に艦長は倒れる。
辺りに血を飛び散らせそれが血溜まりを作る。
「…」
絶句する私に銃口を向ける。
「冥…さん…また来世で」
そして銃口を口に咥える。
「やめ…」
反応する間もなく引き金が引かれた。
壁に脳みそが飛び散り純白なシーツは深紅に染まる。
「…」
2人の死を確認して…引き込まれるように友の亡骸から小銃を取り口に咥える。
鉄の味と臭いに顔を顰め発砲した。
終章…終戰
翌朝…血溜まりと3人の死体を見て軍医は言葉を失う。
「…除隊させておけば」
検死に来た警察と憲兵はその凄惨さか袋に嘔吐した。
凄惨な現場に窓から陽光が刺す。
乾きかけの血溜まりは反射してキラキラと光る。
酷くも美しい現場から軍医は立ち去ってあとは軍の特殊清掃班に引き継いだ。
終戦後の朝鮮半島には南は引き続き日本領土となり北は日英韓三国連合軍で統治することとなった。
日本政府はこの戦争を通じ、ますますミサイル防衛や前線基地への施設投資の重要性を認識した。しかし世論は依然として反戦無抵抗論者が多くなかなか大胆な行動に踏み出せずにいた…むしろ鎮海警備府の解体運動と軍縮活動が活発になり国内で少数デモが起こり、国力が低下していった。
「宮嶋…」
「なんだ?斎苑」
呉潜水艦隊にて・・・S(セーラー)バースでタバコを吸う二人の男。
「冥のやつ…死んだらしいぞ…」
「……自殺か………まぁ外野が兎や角言うもんじゃないな…悲しいけどあいつにとって生き地獄から開放されたんだ…」
酷く淀んだ海面を見てただタバコを吸い続けた。