1 前戯
「あっ! このっ……!」
ソレを露出させた瞬間に感じ取った他の雌の臭い。その残滓を拭い取るべく、彼女は怒りに任せて咥え込んだ。
「ちゅっ! ちゅっ、ちゅっ! んれぇ……んむっ、ん、ちゅうぅ……えれ」
どれだけ急いでいようと、散々教え込まれたコレだけは欠かさず行う。挨拶として、先端へ丹念な口づけを三度。都度、唇を離してはもう一度付ける。愚直に頭部を前後させるのではなく、首と顔の角度を滑らかに変化させ機敏さを失わない、慣れた様子の口づけ。
初めて行った際は躊躇いと羞恥に彩られた顔で一分を費やし、ようやく三回の命令を完遂したのは記憶に新しい。
「ちゅぱっ、ちゅ! ちゅぶるる……んへぁ……」
だが一刻も早くこの雌臭を消し去らねば、この男は更に調子に乗るに違いない。以前まで日毎に別種の雌臭さをぷんぷん漂わせていたこの陰茎はしかし、兼ねてより女の子の匂いや体液がこびり付いている状態を、雌を手中に収めた証だと思っている節があった。
怒りの矛先を極悪の魔羅から節操なしの屑男へと向け直し、精一杯の嫌悪の感情を込めて見上げるように睨め付ける。そして最後の口付けの後、そのまま滑るように竿全体を咥えて唾液を塗し、唇との隙間から這い出てきた舌が海綿体の通る部分を舐め回す。
「ちゅぶ、んえろ、んれんれんれんれ」
最低限の唾液を塗せたと判断すれば一度口を離すが早いか、直ぐさま亀頭と裏筋を重点的に責める。舌だけを高速で出し入れするように前後させると、案の定男は呻き声をあげる。
他の女に手を出した報いだと言わんばかりに、鋭かった眼差しは柔らかさを覗かせ、代わりに口角が釣り上がっていた。
「ちゅうぅ、ぶぶっ! ぶっ……んんうむ、ちゅ〜〜〜〜〜〜れろれろれろれろぉ~~……っぽぉん!」
一通り満足した女は、そろそろ唾液と混ざって浮いてきたであろう乾ききった愛液と精液の塊を残さず吸い取りつつ、一分の隙間も開けずにべったりと密着させた唇でこそぎ取っていく。以前までの彼女であれば、隙間から空気が漏れ出る時の下品な音など決して奏ではしなかっただろう。清らかであった女に吸い込まれていくようにして鳴りを潜めた節操のない性の匂いは、女の初体験以降では初めて嗅ぐものであった。
「今度は、えれえぇ……誰に手を出したんですかぁ……はぁむ、ちゅぷっ、確かに昨日は……んべぁ……お相手できませんでしたけど……んえっ、れろれろれろ……たった一日ですよ……? ちゅぶぅ……どうして……えれ、んえぁあ……それすら我慢できないんですか……ちゅ! まったく……んれぁ……ほんっとさいてー……すんっ、すぅっ……うあ、こっちは雄臭い……」
下校途中、駅までの道を数分逸れたところにある宿の一室。洋袴はそのままに寝台に腰かけた男の帯革と留め具を外し、下着を無理やり捲り下した股座に女は必死に顔を埋めていた。
粗方他の雌の印を取り除きひと先ずは満足したのか。放課後に今日初めて顔を合わせ、一切の言葉を交わさず宿へと連行したまま続いていた苛烈さは落ち着き、途端始まる穏やかな詰問。言葉こそ威迫するような厳しい様相だが、その口調はまるで法悦に浸っているかのような甘さがあった。
というのも、競合相手ではない、自らと同じ雌では決して醸し出すことのできない特有の臭気を嗅ぎ取り、そちらに気を取られている様子。
「あっ、ちゅうっ……ご挨拶もなしに玉嗅ぎしてしまい、失礼いたしました……すんっ、すぅーーっ……くっっさ……雌の匂いに上書きして証拠隠滅しようったって……ちゅこ、ちゅぱっ……そうはいきませんから……んれんれんれんれ、んはむ、んぅ……ちゅう~っ……ぶぷっっ!!」
顔を横に倒し、ここまでの口腔清掃ですっかり聳え立った男の陰茎を搔い潜り向かうは陰嚢。最も雄の臭いが濃い部分に僅かの躊躇も見せず鼻を押し付け、その後慌てたように陰嚢へも唇の判を一つ。挨拶を疎かにした焦燥からか控えめで、されど確かに“性”を浮き彫りにさせる音が部屋に響いた。
「ぇっ、あっ! す、すみませんっ! ちんぽおしゃぶりも許可なかったです! というか、無理やり連れ込んで押し倒すような勢いで…………は、はい、大変失礼いたしました……」
その衝撃で自分がどれだけ男への奉仕に夢中になっていたのかを自覚し我に返った女は、咄嗟に主の機嫌を伺った。気付くのを待っていたのかは定かではないが、男は丁度女が顔を向けた直後に叱責を飛ばした。
「ん……? あっ、いや! 違いますよ! このちんぽにこびりついてカピカピになった愛液の塊はなんなんですか、もう! こんなカリ裏までぎっとぎとにして……絶対今日学校中で話題になってた、可愛いって噂の新入生を食い散らかした跡じゃないですか!?」
徐々に平静を取りもどしたか、当初の怒りの理由を思い出したらしい。しかし唾液が少数の陰毛を口周りに粘着させたまま、彼女はそれに気付きもせずに追及の手を止めない。
「新入生の誰が可愛い、格好いいって話が出回り始めたばかりなんですよ? 最近毎日お精子ぶっこ抜いてた私が相手出来ないからって、手が早すぎですよ! しかも一昨日は金玉空っぽになるまで、七回もお射精させてあげたじゃないですか! なんでもうこんなずっしりパンパンになってるんですか!」
顔を魔羅と横並びになるまで近づけ、陰嚢に下から両手を添えて支え上げるようにしつつ横目で男に指し示す。
「入学して一か月、まだ高校生活に慣れない子もいるなかで、えっちな臭いをプンプンさせながら昼頃に登校してくる美少女新入生だなんて、そりゃ噂にもなりますよ! 流石に生徒会長として見過ごせなかったので、休み時間は生徒会室で過ごしてもらいましたけど、よく見たらブラジャーも付けてませんでしたし、頻りにスカートの丈を気にしてる様だったので、多分ショーツも履いてないんじゃないですかね」
どれだけ毒づいていようと、雄様への奉仕をみっちりと叩き込まれた身体は的確に主を悦ばせつづけた。
男に言われるまでもなくお互いの衣服を一つずつ外していくその手つきはまるで正反対。
簡素で単純な作りの男子制服にも関わらず、襯衣と洋袴を簡易的ではあるが丁寧に畳んで置いていく。
それに対し本来気を使うはずである襞のある裳や整然と着用していた胴衣を、畳まないどころか足蹴にしてもなんら気を配らない。雄への奉仕の時間を寸刻でも多く出来るのであれば、染み一つない美しい肌であろうと爪を突き立て、靴下を捲りあげながら勢いそのまま放り投げる。
「大方先輩があの子をイジめまくって、雌汁で使い物にならなくしたんでしょうけど、ってちょっと……なんでまだちんぽおっきくなるんですか……! 本当でかすぎ……ちゅっ! ちゅ、ちゅぶ、あっっつ! 金玉熱過ぎです! どんだけ精子作ってるのよもう……孕ませてもいい雌が来た途端これとか……ちゅ! ちゅう~……ぶぽんっ! ちゅっ……ちゅう、ちゅ……ちゅ……ちゅっ……」
そうして互いを遮る忌々しい障害を取り除けば、待ち切れない様子を隠しもせず陰茎に頬を擦り付け、繰り返し陰嚢をたぷたぷと持ち上げては落とす。
私は貴方様の所有物です、好きに印を付けてください、とでも言わんばかりの両側を用いた丹念な頬すり。早すぎず遅すぎない最適な律動による玉袋への刺激は、精巣に対してあまりにも丁寧な精子製造の懇願と助力。
加えて自分という雌に対し情欲をお持ち頂くばかりか、行為に応じてくださる慈悲と情けに対する感謝と愛情を奏上すべく、口を用いて言を紡ぎ愛を囁くのではなく、敢えて動きのみに限り幾度も幾度も示す。
種を蒔いた雌のその後の様子まで事細かに伝え、徹底して「雄が上、雌が下」であることを言葉と行動で示し続ける立ち居振る舞いは、男の優越感や征服欲を大いに刺激した。
「れちゅっ……んれろ、ちゅるるっ……ちゅっちゅ、ちゅぱっ……んぇあ? ぁ……はぁ!? じゅるぶぶっ! ぶびびっ! ……ぽぉんっ! ブラとショーツ、持ち去ってたんですか!? そのせいで彼女、今日可哀想なくらい恥ずかしがってましたよ!? は、はやく返してあげてくださ……え? いえ私は邪魔なんてしてませ……いやっ、待ってくださいもしかして、放課後私が話しかけた時下級生の教室に向かってたのは、コレ返すためですか……? 教室でこんなえっちな臭いを撒き散らすピンクの下着を手渡しするつもりだったんですか!? さいってー!! そんなことされたらクラスメイト全員に、私この人と生ハメ交尾しましたよー、って言うようなものじゃないですか!!」
実物を鞄から出し、女に見せた途端中断される奉仕。喧しく騒ぎ立て、あろうことか指図までする雌に対し苛立ちが募る。
たかだか朝まで続く性行為をしただけで気絶し、行為後の奉仕ひとつもまともに出来ない雌への軽い仕置きのようなもの。寧ろ宿代を出してやっただけ感謝されるべき。
最早目の前の雌と昨日の雌、どちらに対し腹を立てているのか判別も儘ならなくなった男は、怒気を隠す様子もなくそういった旨の言葉を女に言い放った。
「たっ、確かにっ……おちんぽ様への礼儀がなってない雌ですけどっ……! 先輩と初めてスる女の子には酷ですよ! とにかく、今日中に返しますよ! えーっと、連絡先交換したよね……今ならまだ電車乗ってないかな……は? また今度? 今日金曜日なんですから今返さないと……代わりって、こんっの……! あっ、いやっ! その、澪ちゃんは絶対ダメです! あの子先輩とのセックスを知ってから、えっぐいディルドで我武者羅にオナニーしまくってるせいで成績落ちてるんです! 私に何度も先輩ともう一度セックスさせてほしいって頼んできてて、絶対ゴムなんて一個も使わずに種付け交尾しまくって妊娠する未来しか見えません……!!」
昨日初めて手籠めにした雌に対して目の前の女は、何度も気絶はすれど処女喪失の行為後、息も絶え絶えになりながら確かな労りを込めた口による奉仕を披露。その後も今日に至るまで“躾”を受け続け、今では言われずとも積極的に性行為の準備に勤しむ最も優秀な雌である。
そんな女が今、下着姿になり口許を陰毛で飾り付け、己の生殖器を涎まみれにしておきながら、失礼な雌のために行為はお預けだという。男からすれば到底許せぬ蛮行であった。
「じゃあほら……んしょっ、私の下着あげますから……! ちん嗅ぎとちんキスだけでクロッチ部分愛液でびしょびしょにしましたしっ、一日中つけてたのでブラには雌の匂い染みついてますっ……! 好きに精液塗れにしてください! これでいいでしょう? ではすぐ戻ってきますから、絶対他の女の子呼んだりしたらだめですよ! もうソックスどこまで飛んでるの……」
先ほど自身が脱ぎ散らかした服を、他者から見られる部分だけ選んで着る。下着は勿論のこと、あとで戻ってきてまた脱ぐのだから肌着も必要ないだろう。
しかし床に散らばった物を今手に取ろうと思えば、男に対して臀部を見せつけるように突き出す格好になってしまうのは必然。男と関係を持つ以前の淑女であれば決してしない、慣れが故の気の緩み。
「んひゃっ! ちょっ! とぉ……んぅ……お尻掴まれると服着れな……あっ! なに入れようとしてるんですか! 五個だけとはいえゴムぁん! このっ……! なんでっ……! やめ……はぁ、んもうっ! ……ゴムあるんですから、んっ、まずはそっち使ってから……ってちょっとおっぱい伸びちゃいますから……もっと優しぃいっっっくっ……! ……ちょ、まじで乳首イクからだっ、めぇえ゛……! ぅぁ゛い゛っっ!! …………っっっくいっくいっくい゛ぃ゛っっっ、ぐぅっっ……! んはぁああっっ!! あ゛っ……! んぇ゛え゛っ、ぅぅ……」
触られただけでは構わず服を着ようとしていた女も、それ以上となると決して許しはしない。後ろから伸びている腰をつかむ手を振り払おうとするも、それを察知した男の腕はまるで絹の手触りを想起させる滑らかさとしなやかさを揮い、女の押しのける腕と入れ替わるようにしてするりと乳房に到達する。変なところで器用さを発揮する男に対し募る苛立ち。
しかし今更胸を好き勝手される程度どうということはない、という女の驕りを嘲笑うかの如く、容易く高められる性感とそれに伴う肢体に現る変化。遅まきながら女という性に許された最大限の力を以て抗うべく男の手首を掴み引きはがしにかかるも、瞬く間に不可逆な所まで昇りつめていた肉体は乳房のみであるにもかかわらず、あっけなく頂きに乗り上げた。
「んふぅ~~……んもうっ……! 一度でも生でし始めたらっ、その後はずっと種付け交尾に持ち込む気でしょう……! んふっ、ふぅ……もうあの日みたいにはさせませんからね!! いいですか? そもそも先輩がまだパパにならずに済んでるのは、私たち生徒会のおかげなんですからね? ひゃっ、んぅ……うちが備品として先輩専用のコンドームとベッドまで用意してあげたから、まだボテ腹退学する女子生徒がいない訳でぁむ……ぇぁっ、チン毛ついてたの……? ぅ、色んな種類の、お手軽まんこが……ちょ、顔近いぃ……毎日、先輩の近くを歩いていられるのは、えぅっ、あ……私の、おかげ、んんぅ……なんですからね……ぁっ、ちゅうう……んむぅ、ちゅぶぅ、んれぇあ……」
波が過ぎ去れば、負けじと険しい顔で再開。人差し指をひとつ立てた右手を突きつけつつも、しかして左手は魔羅の鬱憤と退屈を擦り宥める。
もはや性行為は日常の一部になっている様子。ならばそれはそれでいいかと支配欲を満たしつつも、話が長くなりそうであることを察知したため女の腰に手を回し徐々に力を籠め抱き寄せる。
そして頤を人差し指で支え親指の先で口周りを拭った後、確かな強制力をもって摘み顔を上向かせる。今になって何が付着していたのかを察した女は、か細い声と共に顔を赤らめ下を向こうとするも、雄の膂力には敵わず無理やり目線を合わせられる。構わず強気に叱り続けようとするが、男の意図が理解できたのか語勢は徐々に弱まり、瞼を細め、僅かに目を逸らしながら何度も口を引き結ぶ。
そんな雌なりの精一杯の抵抗も空しく説教は中断。口を塞がれ腕を回され、部屋どころか抱擁からですら決して抜け出せなくなったであろうことは明らか。
「ちゅぷっ、ちゅ、ちゅる……んへあぁ……ちゅぷ、ちゅう……ちゅ……ずるるっ、じゅる、んれあ……あもっ……んふー……ちゅぴっ、ちゅう……んんぅ~……」
いつしかゆっくりと女の踵は浮き上がり、男の首に両腕が回された。鷲掴みにされ幾度となく捏ね繰り回される臀部は、腰に回った腕がなくとも限界まで持ち上がり、太ももを液が伝う様をひけらかしてすらいた。
「んべあぁ、はぁむ、んふぅ……あれぁ……ちゅる、ちゅぶ……ちゅうぅ……」
たっぷりと三分程の口づけを交わし、しがみつく力が強まってきたところで男は女の限界を察する。糸を引く唾液にも構わず彼女の足を見やれば、小刻みに震えていた。上体を倒しつつ肩と膝の裏に手を回し寝台まで運ぶ。あまりの早業に、接吻への名残惜しさも押し流され気付けば横たえられていた女は、かろうじて思い出すことが出来た。
「あ、あの……今月はもうゴム五個しかないので、一発一発雑に射精してはダメですよ……? お精子ぐつぐつに煮込んでから、思いっきり注ぎ込む感じで……それを五回もやれば、金玉も空っぽになりますよね……?」
男はおざなりに返事をして避妊具を準備。瞬く間に装着すると、敢えて確認を投げかけながら十全となった剛直で蜜壺をもてあそぶ。
「え……? あっ、あぁ! 下着の返却で……ですねっ……! ……えっと、まぁ、別に……後で、というか……まだ返事も来てないので……とりあえず一回だけ先輩に付き合ってあげてからでも大丈夫なので……あの、おまんこに擦り付けて焦らすのやめて……それ本当辛いんですからね……ふーっ、ふーっ……あっ、おちんぽ来たっ……」
水平になるまで思いっきり開脚し、顔の横で後ろ手に敷布をぎゅうっと掴む。ご主人様へ肉壺を貢ぐ際の、雌として基本的な態勢だ。頭のみ持ち上げ、自身の股に狙いを定める凶悪な魔羅を見つめると、次第に呼吸は大きく荒くなった。
すると不意に話しかけられ意味が分からず困惑するも、そこでようやく先の話題を思い出した。とはいえこの状況で中断を申し入れても、目の前の下劣な男が無理やりにでも行為に及ぶのは想像に難くない。であれば一度だけでも軽やかにしてあげて、可能な限りの速さで返しに行き、戻る。
あまり深くも考えずこれしかないと判断。
こうなれば寧ろ催促するのは女である。しかしお粗末な射精で避妊具を一つ消費してしまうのは下策。搾り取るために全力を出すことを決め、男も応え行為に及ぼうとしたその時。
突如鳴り響く電子音。
高ぶった緊張と興奮は気勢を削がれ、僅かな不快と苛立ちが募る。自身の端末が発信源であることを理解した女は首と目の動きだけで液晶画面に目を通す。
『ありがとうございます! 生徒会室でよろしいでしょうか?』
誰からの連絡であるかなど言うまでもない。
無論女に覆いかぶさっている男にも見えている。上体を這うように落とし女の耳に口を近づけると、嗜虐心を湛えた笑みで、邪気を乗せた問いを囁いた。
「ふぐうううぅぅ……う゛う゛ぅ゛う゛……」
顔を自身の肩にうずめるようにして呻き声が漏れ出る。
好機と見た男の、畳みかけるような低語の連続。ここまで傲岸な態度を貫いていたことを利用し、敢えての甘えるような懇願も交える。
何度もかぶりを振り男の猫撫で声から逃れようとするも、左右交互に受け皿を差し出してしまうのみ。
男の策略と分かっていながらも素直に反応を示してしまう己の身体。こそばゆさを超え、耳朶の震えを通して走る背筋への電流に、女は忌々しさすら覚えた。
「ふんんっ! ん゛ん゛んぅ! んーん゛っ! んぅっ! んんっ!」
首を限界まで前に倒し、二人の下半身を頭の動きだけで指し示す。これ以上はないと思えていた脚の可動部の悲鳴は、男の囁き声に意識を向けている女の耳には一切届かない。
更に脚を開き腰を浮かし、幾度も叩きつけるように男の下腹部に蜜と共に擦り付けるも、得られたのは望みのモノではなく男の指のみ。そしてそのまま蜜を掻き出し始めた男の微笑は崩れ、遂には歯を剝き出しにした獣のソレを表出させる。
「う゛ぅ゛ぅ゛う゛う゛!! ん゛う゛ーーーー!! ん゛んっ、んっ!」
望みのモノが得られない不満をぶつけようと懸命に訴えかけるも、気付かない振りを続ける男の手により、抗議のための体力と気力は蜜と共に易々と掻き出されていく。
いつしか女の意図の下にあった腰の動きはその支配下を脱し、雌の本能のみを動力とした小刻みで素早い動きに変わっていた。ここにきて己の悪手を悟った女はしかし、下腹部と耳から伝わる甘酸っぱい電流によって判断力、思考力、注意力やその他を大きく阻害され、男に舐め取られることによってようやく食いしばった口の端から唾液が垂れていたことを自覚する有様。
「ふんーっ! ふむっ、ぐっ……ふっ、ふっ……あっ、んぅ……んべーっ……んぅ?……んぇっ、えあー…………、んぇ……? ぁ……! ふ、ふんっっっ!!」
剰え、その際男が顔を近づけた理由を何と勘違いしてか、目を瞑り舌を無防備に差し出す始末。手中の雌のなんと愚かで愛くるしい姿か。思わず忍耐の堰を切ってしまおうかという甘言が男の脳内を巡るも、眼下の女への愛しさに免じて女の表情を楽しむのみとした。数秒の後、女の勘違いを正すため頬へ触れさす唇を一つ。
今にも溢れそうに潤み目蕩む女も、数拍遅れて意図を理解しますます頬を朱に染める。思考も欲望も、理性と本能問わず男に捕らわれた哀れな雌に出来る限りの創意工夫を以て行為の催促、または雄の欲望を促進しようと奮闘するも叶わない。
儘ならない現状に対して、そして何より、慈しみに溢れるあの笑みを向けられるだけで、男の狼藉を全て許容してしまいそうな自らの“女”としての容易さ。
燃えるような羞恥と憤怒、それによって吐き出されるは音ではない、最早言語として成立していない唸り声。だが確と、当初創りだされた言葉本来の役割である「意思の疎通」という任は果たしていた。
だが男はそれを理解したうえでなお悦を隠そうともせず哂い、小さな小さな、官能的な声で行為の可否を問う。
「うぐぅぅふぅううううぎっぃ゛ぃ゛い゛いい……! まっ! ……ま゛だっ……! 返事、ぎでないのでぇ……いっかい……いっかいっ、だけ……! あっ……」
連絡の主の誤算。日中信頼に足ると判断した生徒会長が返答時には既に、女ではなく雌になっていた。受信端末の持ち主が人ではなく、性に溺れる獣であったなどと、知る由もなかった。