「あれ?もう帰るのかい?」
パラソルを始めとしたレンタル品を返しに行くと、この三日間で顔見知りになった海の家の従業員にそう聞かれる。
「ええ、ちょっと体調が悪くなっちゃって……」
「そっかぁ、お大事にね」
後ろめたさを隠しながら愛想笑いを浮かべるが、特に怪しまれるでもなく普通に心配されてしまった。
流石に罪悪感が沸いてくるが、セックスしに帰りますと馬鹿正直に言える訳も無い。会釈しつつそそくさとシャワーへ向かう。
そうして潮を洗い流しさっさと着替えた俺と勝也。支度に時間のかかる女子二人を待つ間、この後のエッチについて作戦会議をする。
「俺、旅館に戻る間にアレ聞いてみるよ。優にさ」
「……一緒にするってやつだよな?」
「もちろん」
「そーか。任せたぜ?佳奈子の事もな」
お互いのセックスを見せ合う。
それは普通ならとても同意なんて得られない事だろうが、しかし実現の可能性は決して低くないと俺は踏んでいる。
それは確信、と言える程ではないものの、優も見せ合いに乗り気な雰囲気を感じるのだ。なのでこの帰路で彼女の意思を確認し、OKならばそのまま佳奈子の説得をお願いしたい。
そうして事が全て上手く運べば、その時は四人でとことん見せ合いエッチが出来るわけだ。
(やばいな……緊張してきた)
今更ながらに心臓が早鐘を打つ。その一方期待で再びチンポが膨らむが、海パンほど目立たないので勃つがままにした。
「おまたせー」
「帰りましょっか」
勝也と共に悶々としてる内に二人が戻ってきた。堤防から降りた俺達はそれぞれ恋人の横に寄り添い、行きと同様手を繋いで歩き出す。
程なく勝也が目配せしてきた。そして佳奈子の手を引くと早歩きで先行し、やや不自然ながらも俺達との距離を開けてくれた。
呼応して俺もまた露骨に歩みを緩めるが、優は何も言わずそれに合わせてくれる。
そうして二組の間に十メートル程の距離が出来る。これなら内緒話が前の二人に届く事はないだろう。
胸の鼓動が更に早くなるのを自覚しつつ、一つ深呼吸してから俺は問いかけるのだ。
「……なあ優、ちょっとお願いがあるんだけどさ、いいかな?」
顔を寄せて気持ち小声で話しかける。
「ん?どしたの?」
邪気の無い柔らかな笑みを向けられる。これから話す内容が内容だけに良心がチクリと痛んだ。
「……俺達、部屋に戻ったらエッチするだろ?……で、ちょっとさ、その……せっかくだし、変化をつけてみようと思うんだけど……」
「変化?」
流石に緊張して表現が遠まわしになってしまう。
こんな時、ぐだぐだ考えずスパッと物を言える勝也が羨ましくなる。
(大丈夫だ、言え、受け入れてくれる筈だ…………多分)
俺に向け真っ直ぐ注がれる澄んだ眼差し。
その重圧に抗いながら一度固唾を飲み、再度深呼吸して言葉を紡いだ。
「うん……その、勝也と佳奈子と、見せ合いながら、してみない?」
度々言葉を詰まらせながらも、なんとか伝えたい事を伝えられた。
「……」
対して優は何も答えてはくれない。さりとて絶句や動揺している訳でもない。
恋人からアブノーマルな提案を受けたのに、少しも顔色を変えないのだ。俺に合わせゆっくり歩みを進めながら、じっとこちらを見つめてくる。
その凪いだような穏やかな表情が、返って俺の不安を煽ってくる。
そんなあまりにも長く感じた十数秒ののち、優はようやく言葉を発してくれた。
「二人と一緒にエッチするって事だよね?」
「うん、そうだよ。襖を挟んだりしない。同じ部屋でだよ」
ストレートに聞いてくる優に頷いて返す。
そのまま数秒見つめ合うと、優はまっすぐ前を向く。先を行く二人の背中を見ているようだ。
「……陽ちゃんはさ」
「うん」
「佳奈ちゃんの裸、見たいの?」
再び俺を見つめながらの問いかけ。
ここで目を逸らしたり誤魔化したりはしない。
「……見たい」
はっきりと頷いた。
その答えに対して何か言うでもなく、優は次の質問を投げてくる。
「……じゃあ、わたしの裸をかっちゃんに見られても、いいの?」
目と目を通じ、心の奥深くを探るように見つめてくる。
その柔らかくも鋭い視線から、俺も決して目を逸らさない。
ふと思った。今この瞬間は、俺達四人の関係における分岐点なのかもしれない。
仲のいい二組のカップルで終わらせるか、さらにその先、アブノーマルな世界に踏み込むか。
(……俺は……)
「……いい」
踏み込んだ。
迷うまでも無い。とっくに決めていた事だ。興味と欲望に導かれるまま、エロの道を突き進むのだ。
もちろんそれは優と佳奈子を悲しませない範囲で、だが。
「……いいんだぁ……そっかぁ……」
果たして優は少し顎を上げ空を見上げる。そして再度「そっかぁ」と呟いた。
そんな彼女を見ていると、無性に言い訳というか、弁解したくなった。
「いや、バカな事言ってるってのは解るんだけどさ、その、さっきもそうだけど、優の感じてる所を勝也や佳奈子に見られると、凄く興奮するって言うか……」
「……」
「もちろん知らない奴に見られるのは嫌だよ?勝也と佳奈子だからいいんだ。あいつらになら俺の優を見られてもいい……いや違うな、見て欲しいんだ」
繋いだ手を、無意識に握り締めていた。
こんな俺に愛想をつかしてどこかへ行ってしまわないように。
「どう……かな?」
俺より半歩先を歩む優へ問いかけ、恐る恐る反応を伺う。
すると彼女はいたずらっぽい笑みを浮かべながら振り向くのだ。
「うふふ、変態だねぇ陽ちゃん」
「え!?あ……う、うん……そうだな」
ちょっと驚いた。
普段人の悪口なんて決して言わない優だけに、変態だなんて言われるとは思わなかったのだ。
そんな彼女の表情が突如変化した。
「でもね……うふふ、わたしも変態なんだぁ」
「……あ、ああ」
花が咲いたような満面の笑みで俺の手を握り返してくれる。その雰囲気にちょっと気圧されてしまった。
自身を変態だと言う恋人に何と返したらいいか判らない。なので曖昧に頷くだけで続く言葉を待つ。
そして、優は言うのだ。
「……いいよ!佳奈ちゃんたちと一緒にしても」
「ほんとに!?」
歩みを止めて思わず聞き返してしまう。
「うん……わたしもね、かっちゃんと佳奈ちゃんに見られるの好きかもしれない。砂浜で一緒にエッチするの、すっごくドキドキした」
「そうなんだ」
「そう。それに陽ちゃんが佳奈ちゃんのエッチな所見るのも、陽ちゃんのちんちんを佳奈ちゃんに見られるのも、全然嫌じゃないよ?むしろもっと見てあげてって思っちゃうんだ。不思議と焼もちとかは無いんだよねぇ……あ、もちろんかっちゃんのちんちん見るのも好き!」
はにかみながらに言葉を続ける優。その一言一句を脳裏に刻む内に心は歓喜で満たされていた。
(やった……やったっ!)
やっぱり優も俺達の理解者だったのだ。それまで緊張に縛られていた胸の内がフワッと一気に軽くなる。
「はは、似たもの同士だな俺達は……でも、見せたり見られたりするのって何でこんなに興奮するんだろな?」
「それは相手が佳奈ちゃんとかっちゃんだから、だと思うよ。最初にエッチした時さ、隣から佳奈ちゃんの声が聞こえてきたでしょ?それでわたしの声も向こうに聞こえてるって思ったら、すっごくドキドキしたんだよねぇ」
「あれは確かにエロかったなぁ」
「うん。……あとね、陽ちゃんは佳奈ちゃんのエッチな声でも興奮するんだって分かって、でもそれがまたドキドキしちゃうんだよねぇ……ふしぎ」
「あ、あぁ……その、佳奈子の声もエロかったからな」
当てつけじゃないと分かりつつも僅かに焦りが出てしまうが、そんな俺の様子が面白いのかちょっと意地悪な笑みを向けられてしまう。
俄然照れ臭くなったので、誤魔化しついでに件の佳奈子の背中を見ながら初めての夜を振り返る。
思えば、最初のセックスからして俺達は普通じゃなかった。
あの時の興奮が今の今まで尾を引いて、見せ合いながらのセックスを強く望むようになったのだろう。
「あ、それでさ、勝也はすぐにOKしてくれたんだけど、佳奈子はどうかな?いけそうだと思う?」
優の同意を得られ浮かれていたが、まだ問題は半分残っている。恥ずかしがりの佳奈子にも「うん」と言わせなければ意味が無いのだ。
「そうだねぇ……多分、大丈夫だと思う」
「そうなの?嫌がられない?」
大丈夫だと言われても、やっぱり心配になる。
「佳奈ちゃんもわたしと同じだと思うよ?最初に隣同士でした時から、いつかはって考えてたんじゃないかな?じゃなきゃ海で一緒にエッチなんて出来るわけないよ……いくら水着着ててもね」
「そっか!確かにそうだよなぁ」
目から鱗が落ちた気分だ。言われてみれば、佳奈子はおっぱいやマンコを触られる姿どころか、絶頂さえも俺達に見せているのだ。
「恥ずかしがってるけど佳奈ちゃんもエッチは大好きだよ。見られるのもね。だから安心しててよ、旅館に戻ったらお風呂で聞いてみるから」
「ありがと。頼りにしてます」
空いてる手でしっとり濡れた黒髪を撫でる。
「あ、それとね、佳奈ちゃんの事、うんと褒めてあげてね?おっぱいがわたしより小さい事、結構気にしてるみたいだから……」
「いや小さいったって、佳奈子も平均よりは大きいのにな」
「そうなんだけどね……色々あるんだよ」
当人としては平均など関係無く気になる物は気になるのかもしれない。俺だってチンポの長さで勝也に対しコンプレックスがあるのだ。その気持ちは分かる気がする。
ならば優の助言に従い沢山褒めてあげるのみだ。女の子相手は褒めるのが基本だと教本にも書いてあった。基本を疎かにしてはいけない。
何にしても俄然やる気が漲ってきた。優のおかげで全ていい方向に転がりそうだ。
そんな彼女に報いる為にも頑張ろうと決意する。当面はエッチで優を満足させるのが目標だ。
『おーい!置いてくぞー?』
立ち止まって話していた俺達に勝也が声を投げ掛けてきた。
気付けば大分距離が開いてしまった。俺と優は小走りで前を行く二人に追いつく。
そんなタイミングで旅館の方から見覚えのある自動車が一台向かってきた。そのまますれ違う事無く俺達四人に寄せて停止する。
「あれー!?もう帰ってきたの~!?」
ウィンドウから顔を出したのは綾子さんだった。これから買い出しか送迎にでも行くんだろう。
「ええ、ちょっと体調が悪くなって……大した事は無いんですが」
「あらら、じゃあ明日まで安静にしないとね」
海の家の従業員さん同様、全く疑う事無く気遣いを見せつつ段々と目線が下へと下りていき……はたと止まった。
「あら……あら?あらら~~~?」
途端、声色と表情にニヤニヤ成分が強くなる。
お陰で俺達は思い出せた。恋人同士手を繋いだままだった事を。
反射的に全員素早く手を離す。
「あらいいのよ~遠慮しなくても!じゃあお邪魔虫は行くわねーお大事に~~!」
かくして満面の笑みを浮かべつつ、そのまま車を走らせる綾子さんなのだった。
「あっちゃー……」
「やっちまったな」
「ま、バレちゃったものはしょうがないわよ」
「内緒にしとくのもなんだしね」
女子二人はポジティブだ。綾子さんに随分懐いてたし、元々帰る前にでも報告するつもりだったのかもしれない。
「そっか……じゃあいっか」
ならばと手を繋ぎ直す。
そもそも綾子さんは他人の秘密をわざわざ周りに言いふらすような人じゃない。知られた所でちょっと照れ臭いだけなのだ。
代わりに後で色々聞かれるかもしれないが、まぁそれはそれでいい。優の言う通り俺達の姉貴分である人に内緒にしとくのもなんなのだ。気にするのを止め、旅館への道を歩き出すのだった。
そうして旅館裏口から一旦部屋に戻って荷物を置くと、まずは潮をきちんと落とそうという事で浴場へと向かう。各々そわそわしつつ少々遠い道のりを歩き、男女分かれた暖簾の前まで到着した。
「勝也、ここしっかり洗っときなさいよ?」
「へへっ、まかせとけって!」
周りに誰もいないと見るや、ズボンの上からこっそりチンポを撫でる佳奈子。
そんな大胆な真似ができるようになった彼女だが、この後優から持ち掛けられる話を聞いたらどんな顔をするだろう。
その優も暖簾をくぐる直前に意味あり気な目配せをしてきたので、佳奈子の事を宜しくとの意思を込め頷き返す。
後は全て彼女ら次第、信じて任せるのみなのだ。
という諸々をさっそく勝也に報告したい所だが、まずは身体を洗って落ち着いてからだ。
いつも通り、特にチンポを念入りに洗ってから湯船に浸かる。
「「ふぅぃぃ~~~~……」」
(……さてと)
「喜べ勝也。優はオーケーしてくれた」
「そうかっ!!!」
満面の喜色を浮かべた勝也がにじり寄るが、それを手で制して続ける。
「でな、佳奈子の説得も引き受けてくれた。脈アリだから安心しとけだってさ」
「お、おぉ……」
勝也は震えている。チンポも水面下であっという間に直立していた。もちろん俺も同様だ。
「そっかぁ……佳奈子のおっぱいもマンコも、もうすぐお前に見られんだなぁ」
なんて感慨深そうにつぶやく。
「優のおっぱいとマンコも、お前に全部見られる訳だ」
その場面を想像して今から酷く興奮してしまう。これは念仏を唱えた所で勃起は萎えそうもない。
「よっしゃ!もう一回チンポ洗ってから出るか!」
長湯をしてる場合じゃないと湯船から立ち上がる勝也。俺もそれに続き、二人揃って言う事聞かない息子を再度入念に洗い流す。
そうして散々洗ってもやっぱり勃ちっぱなしのモノを手荷物でガードしつつ、コソコソと浴場を後にするのだった。