「いいよなー……俺も佳奈子のおっぱい揉みたい」
それは意図せず漏れた何気ない一言のはずだった。
だがそれまで和やかだったこの場の空気を一変させてしまう。
「……!」
はっとした顔で俺を見る佳奈子。
「……」
勝也は乳房に顔を埋めたままだが、その動きはピタリと止まっていた。
「……」
優の表情は変わらない。右手もペースを変えず俺の頭を撫で続けている。
ただ、その瞳の奥で何を想っているのか、今この時は恋人の俺にも分らなかった。
ここに来てようやく、俺は自分の放った言葉の意味を理解する。
仮に俺達がごく普通の二組のカップルだったら、馬鹿な冗談として突っ込みを受けそのまま何事も無く流されただろう。
だが今の四人、互いのセックスを見せ合い、親友の恋人の体液すら味見し合うという異常な関係性となった後では冗談として済まされない。俺の発言は、そのまま俺の要求として伝わってしまった筈だ。
(どうしよう……)
佳奈子のおっぱいを揉みたいというのは本音だったが、いずれそんな機会があったらいいな、程度のつもりだった。
佳奈子の裸を見て、愛液を舐めた。更には精液を浴びせてその味見もさせた。
そんな関係であっても、自分から直接その肌に触れるとなると壁は一段高くなる。佳奈子の忌避感もこれまで以上にあるだろう。
最悪、雰囲気が悪くなってエッチどころじゃなくなってしまうかもしれない。当然そんな事態は避けたいので、当分はセックスを見せ合う程度に留めておくつもりだったのだ。
今ならまだおどけて冗談だと言えば無かった事に出来る気はする。
その一方で、一度口に出してしまったからには引き下がれない。いや、むしろ進めてみたいという気もしてくるのだ。
(どうする……どっちにする?)
無かった事にするか、関係を更に進めるか。
四人が押し黙る空間の中で数瞬激しく葛藤する。
(…………よし)
そして導き出した言葉を、三人に向け放つのだった。
「あり、だと思うか?」
結局、進む事にした。
今の関係を壊したくない、嫌われたくないと言う気持ちと、未知の興奮と快感への好奇心。
天秤が傾いたのは後者だった。それも決断した後で省みると、結構大きな差なのだった。
そもそもエッチの見せ合いを勝也と優に持ち掛けた時点で決めていたのだ。興味と欲望のまま突き進むと。今回は成り行きで更に一歩踏み込んでしまったが、それが無くてもいずれ同じ提案をしていただろう。
今、改めて自覚する。
性的な関係を優との間だけで留めておくのが惜しい。好ましい人達と共に、性の悦びを分かち合いたい、と。
そういう性癖を持って生まれてきたのが、俺という人間なのだ。
開き直った俺の問いかけが放たれた後、みんなの間にはそれぞれ相手の出方を伺うような空気が流れている。
それは一昨日の夜、セックスしようと切り出す前の雰囲気によく似ていた。
「それってさ」
やがて優が最初に口火を切った。両手を俺の頬に添え、まっすぐ目を見て問いかけてくる。
「かっちゃんがわたしのおっぱい触るって事でもあるよね?」
当然そういう事になる。俺が自覚した性癖、この四人に望む関係性ではどちらか一組だけの、一方通行のそれはありえない。
「もちろんそうだ。二人が嫌じゃなかったら、だけどな。……聞かれる前に言うけど、俺は優が勝也におっぱい揉まれる所を見てみたい」
この巨乳が勝也に揉みしだかれる様を想像すると心にガツンとした負担がかかる。
だが、同時に酷く興奮もしてしまうのだ。
「……変態さんだね」
「まぁな」
自分の性癖のために恋人の肌を他の男に触れさせるのだ。
俺は酷い奴だ。どうしようもない変態だ。その自覚だけは誤魔化さずに持つと決めていた。
「かっちゃんはわたしのおっぱい触りたい?」
「触りたい!超触りたい!」
「ふふ……そうだよね」
即答だった。
そんなエッチな問いかけに勝也が首を横に振る訳がない。佳奈子の乳房からバッと顔を上げ、優の巨乳へ食らいつかんばかりに凝視している。
その胸元に刺さるような視線に満足げな笑みを返し、優は頷いた。
「……いいよ。かっちゃんにおっぱい触らせてあげる」
「優!」
「おぉお!」
「いいの優菜?」
喜色に浮かぶ男二人をよそに、佳奈子が冷静に問い質す。
優が許可を出して取り乱すかと思ったが、そんなそぶりは欠片も見せず真顔でじっと見つめ合っていた。
「うん。一緒にエッチするってなった時点で、遅かれ早かれこうなると思ってたから……佳奈ちゃんもそうじゃない?」
「……そうね」
それは恐らくこの四人全員が思っていた事なんだろう。
これだけ距離が近い俺達だ。見せ合うだけで済む筈が無かったと言える。
「じゃあ、佳奈ちゃんはどうする?陽ちゃんにおっぱい触らせてあげる?」
「佳奈子、頼むよ。おっぱい触らせてほしい」
俺は身体を起こして正座する。佳奈子の目を見て、しっかりとお願いした。
「勝也、いいのよね?」
「ああ、いいぜ!揉ませてやってくれ!」
「……はぁ、しょうがないわね、いいわ。触らせてあげる」
勝也をちらと見てから、やれやれといった感じでそう応えてくれた。
「よしっ!」
「やったな!陽一!」
「ふふ、佳奈ちゃん、しょうがないとか言って、ほんとは触って欲しいんだよね?」
「な!?ちょっと優菜!」
「わたしはかっちゃんに触ってほしいよ?楽しみー」
その台詞は本音のようだ。瞳は既に欲情を灯し、これから触れ合う相手の勝也をじっと見据えている。
「優菜……あなたエッチ過ぎよ……」
(ホントだよ……優はエッチ過ぎる)
だが俺はそんなエッチな優が愛おしくて仕方がなかった。これから俺以外の男にその肌を許すとしてもだ。
いや、だからこそ愛おしいのかもしれない。
「エッチだよ。でも、エッチになった方が楽しいよ?佳奈ちゃんもエッチになろ?」
「うぅ……なれって言われても……」
「佳奈子、前にも言ったけどさ、おれ達なら佳奈子がどんな事言ってもからかったり引いたりしないぜ。それは絶対だ」
喜色から一転、勝也は真面目な顔で佳奈子を諭す。俺もそれに加勢する。
「優の言う通り開き直って素直になった方が絶対楽しいと思うよ。エッチが気持ちいいだけじゃなくて楽しいって最高だと思わない?」
お互いに気持ちよくて楽しいエッチをする。それはセックスを覚えて以来の俺の目標だ。性的な行為に対してはやや遠慮がちな佳奈子にももっと楽しんで欲しかった。
そうして三方向から攻め立てられた佳奈子は、ついに音を上げる。
「……あーもう分かったわよ!開き直ればいいんでしょ開き直れば!そうよ!私も陽一におっぱい触って欲しいわよ!」
「うんうん。ちゃんと言えたね」
ニコニコな優と対照的に佳奈子はプンスカしている。
だが、これも彼女なりの照れ隠しなんだろう。もちろんそれを指摘したりはしない。
「嬉しいよ。ありがとな佳奈子」
「もう!感謝しなさいよね!」
「もちろん」
「へへ、佳奈子が素直になって俺も嬉しいぞ」
いい子いい子と頭を撫でてくる相手をジト目で見て言う。
「勝也、からかったら酷いからね?」
「んな事しねーって!信じてくれよ恋人を」
再びキリっと真面目な顔でキスをする。佳奈子もそれで一先ず納得してくれたようだった。
「陽ちゃん、ちょっといい?」
それじゃいよいよ、と思った所で優が両手を差し出したので、その手を引いて起こしてやる。
俺の隣に寄り添い座った優は、みんなに向けて話し始めた。
「丁度いい機会だからさ、どこまでするか決めておかないかな?」
「どこまでって、エッチをだよな?」
「うん。わたしとかっちゃんと、佳奈ちゃんと陽ちゃんとで」
「「「……」」」
確かに、それはハッキリさせておいた方がいいだろう。
冗談では済まない重要な話だと誰もが認識し、再び四人で車座になった。
再び場に緊張感が戻る。各々三方向に視線を飛ばすが、今回は沈黙が破られるのは早かった。
「「俺は、」」
男二人の声が重なる。目が合った勝也は頷き、先を譲ってくれた。
「俺は、佳奈子とセックスまでしたい」
しっかりと相手の目を見ながら言いきった。
恐らくそう言われる事は予想していたんだろう。顔を赤らめているが、取り乱してはいない。目を逸らさずじっとこちらを見つめている。
「おれもだ。優菜とセックスしたい。だけど……」
同じく真っ直ぐ優を見ていた勝也だが、続く言葉は俺に向けられた。
「なあ陽一、チンポ入れるのだけは後回しにしねーか?」
意外な申し出だった。俺は目で続きを促す。
「まずは自分のチンポで佳奈子をイカせてやりてぇ。陽一が入れるのはそれからって事でどーだ?もちろんおれが優菜に入れんのも陽一が優菜をちゃんとイカせた後だ」
その言葉の意味をよく噛み締め、納得した後に頷く。
「……そう……だな。うん、その通りだ。まずは自分のチンポでイカせないとな」
勝也の言う通りだと思った。自分の恋人をチンポで満足させられない内から他の女の子に入れるのは違うと思った。
「そーいう訳だ。チンポ入れんのだけは自分の彼女をイカせた後、それ以外は全部やりてぇしやってほしい。クンニもフェラチオもな」
「……キスは?」
佳奈子からの質問に俺は硬直する。キスの事はストンと頭からこぼれ落ちていた。
「……キスかぁ」
「ん?だめか?」
勝也が意外そうな顔で俺を見た。
優のおっぱいに触れられるのも、勝也のチンポをしゃぶるのも、そして二人がセックスする事さえ望んでいるのに、なぜか素直に「いいぞ」とは言えない俺だった。
何故かと言えば、優と勝也がキスする所を想像した途端心に掛かる負荷が興奮を上回ってしまうのだ。
同様に俺が佳奈子とキスをする場面を想像しても罪悪感が強く湧き出てしまう。佳奈子の可愛い唇に吸い付きたいという欲求はあるのに、だ。
「……一旦、保留にしないか?」
「まぁ、お前がそー言うならいーけど」
煮え切らない思いを抱きつつも、先送りする事で一先ず目を逸らす。
勝也はそんな俺を追求するでもなく素直に同意してくれた。……正直助かる。
「おれらはこんな感じだ。そっちはどーだ?」
優と佳奈子に水を向ける。二人は顔を見合わせると、やはり優から口を開いた。
「わたしは全部オッケーだよ」
「全部って、全部?……ほんとに?」
「うん。ちんちん舐めるのも、あそこ舐められるのも、入れられるのも……キスも、やってみたい」
「キスも」と言葉にすると同時に、自身の唇に触れる。勝也に向けられるその仕草は、表情の妖艶さと相まってとても艶かしくいやらしい。
「私も、同じ。陽一のおちんちん舐めたいし、舐めらたい。おちんちん入れるのも、興味ある。キスも……していいよ」
開き直るというのは本当だった。佳奈子はこうしてしっかり自分の気持ちを伝えてくれた。その視線は強い熱を伴って俺のチンポに注がれている。
「もちろん二人がちんちん入れるのは後がいいって言うならそれでいいよ」
「そうね。そこは尊重するわ。……ただ、キスはねぇ」
「そうだよね。我慢できなくなっちゃうと思うなぁ」
「んじゃあ、そん時の流れで決めよーぜ。おれも優菜とキスしてぇし。それでいいか?陽一」
「……わかった。俺も佳奈子とキスしたいのは同じだしな」
「うふふ、じゃあその時次第だね」
「でも、変な話よね。エッチは良くてキスは躊躇うとか……私達をおちんちんで、その、イカせたいって言うのも、そこまで気にする事無いと思うんだけど。男の子の方がロマンチストなのかしらね?」
「そんな所もいいと思うよ。わたし、きゅんってしちゃった」
「うん。私もちょっと可愛いと思った。ふふふ」
女子二人から向けられる視線が生暖かい。俺達は照れ臭くなって思わず目を逸らしてしまった。
そんな様子もまた微笑ましいんだろう、彼女らの口角が更に上がっている。
「そ、それじゃあ優菜、おっぱい触らせてくれよ!」
「そうだな!俺も佳奈子のおっぱい触る!っと、その前に」
照れ隠しで強引に流れを変えんとする勝也に続こうとしたが、その前にやっておくべき事があると気付く。俺は濡れタオルを二つ手に取ると、片方を投げて渡した。
「勝也、ほれ」
「あっと、そーだな。佳奈子、おっぱい拭くぞ」
「優もね」
散々しゃぶり尽くしたので、優の乳房は俺の唾液でべとべとだ。
このおっぱいを勝也に託すにしても、その前に自分の後始末はちゃんとしておくのが礼儀だと思ったのだ。
俺達は真剣な目つきで手を動かす。大切な恋人の自慢のおっぱいが、これから初めて他の男に触られるのだ。
その特別な瞬間を汚さないよう、自分が触る前よりも美しく仕上げるつもりで丁寧に拭いていく。
そんなある種の歪んだ拘りを持つ俺達だが、そこもまた可愛いと言いたげに微笑を湛える優と佳奈子なのだった。
「よし、綺麗になった」
「こっちも終わったぞ」
一仕事終えた感を出しつつ、俺達はタオルを放り投げると親友の恋人の前に座る。
部屋の空気は再び一変した。新たな一線を越える事への緊張と興奮が各々からひしひしと伝わって来る。
全員、なぜか正座していた。その上で対面の相手とは膝同士がくっ付きそうな距離だ。
俺の目の前では佳奈子の形のいい乳房が呼吸の度に上下している。乳首はピンと存在を主張し、乳輪は既にぷっくりと膨らんでいた。
今からこの美乳を好きにできるのだ。その興奮はチンポが如実に物語っている。亀頭と竿はパンパンに張り詰め、鈴口には我慢汁の雫が浮かんで今にも零れ落ちそうだ。優との初体験にも比肩する緊張と昂ぶりで心臓が早鐘を打っていた。
「どーする?順番で触るか?それとも同時か?」
勝也が鼻息荒く聞いてくる。
早く佳奈子のおっぱいに触りたいのは確かだが、優が勝也に触られてる所をじっくり見たくもある。
どうしたものかと考えてると、優が提案してくれた。
「じゃあ、せーので一緒に触る?」
「いいぜ」
「わかった」
「私もそれでいいわ」
誰からも否は出ない。そうと決まれば全員改めて姿勢を正し、正面の相手と向かい合う。
もっとも俺と勝也の視線は相手の目でなくおっぱいに向いていた。これから初めて手を触れる魅惑の双丘に釘付けだった。
そんな俺達は両手を乳房の数センチ前に待機させ、ゴーサインを待つ。
ふと佳奈子と目が合った。頬は赤く染まり、俺を見つめるその瞳は緊張と興奮と期待を込めて潤んでいる。
一線を越えるその瞬間をまだかまだかと待ちわびてると、お互い理解し合う。
「佳奈ちゃん、いい?」
呼ばれた佳奈子は顔を見合わせ互いに頷き合う。
準備は整った。
「いくよ?……せーの、はい!」
待ちわびていたその合図で、俺達四人はまた一つラインを越えるのだった。