三人分の嬌声と秘部を掻き回す水音が響き渡っていた旅館の一室。
今はそれが嘘のように静まりかえり、各々の吐息が僅かに聞こえてくるだけだ。
そんな感じで聴覚に届く刺激は少なくなったが、その一方で嗅覚にはむせ返るような甘い体臭と性臭を感じ、触覚には未だ生々しい感触と体温が伝わってくる。イったばかりで荒い呼吸を繰り返す佳奈子が背中を俺に預けてくれているからだ。
その細く柔らかい身体をしっかり抱き締め、絶頂の余波が落ち着くのを待つ。
ふと思いつき、目の前の頭髪をさわさわと撫でてみた。汗を含んでややしっとりしているが、やっぱり艶やかな髪の触り心地は極上だ。おまけに手を動かすたび髪の毛の芳香がふんだんに漂ってくる。
(女の子って何でこんなにいい匂いなんだろう……)
そう不思議に思いながら髪の毛を撫でるのに没頭するのだった。
少しすると佳奈子の息遣いも落ち着いてきた。三点同時攻めされていたとは言え、クリトリスへの刺激は皮一つ分弱めだったので回復も早い。やがて大きく息を吐いてからこっちに振り返った。
「続けて。……よいしょ」
思わず撫でる手を止めた俺に続きを促す。身体の向きも変え俺と正面から向かい合うと、至近距離からこちらをじっと見つめてくる。
「……」
「……」
佳奈子が何を求めているのか、俺は当然気付いてる。
だが、それを実行するのはやっぱり躊躇してしまうのだ。結果、黙ったまま彼女の髪を撫で続ける事になった。
なんとなく気まずくて誤魔化すように隣を見ると、いつの間にか優と勝也も正面から抱き合っていた。
恐らく催促されたんだろう。俺と同じように勝也も優の頭を撫でている。開いてる手でちゃっかりお尻を撫で回してるのは実に勝也らしい。
そんな愛撫を心地良さげに受け入れていた優と目が合う。
彼女は俺と佳奈子を交互に見やると、にっこり笑ってこう言うのだ。
「陽ちゃんごめんね?わたし我慢できないや。いいよね?」
そして勝也と向かい合うなり、躊躇無くその唇へと吸い付いていた。
「んむ!?」
「「あ」」
不意を突かれた勝也が驚きの吐息を発し、俺と佳奈子も思わず声が出てしまった。
優の手が勝也の後頭部と背中に回されている。顔を引かれてキスが中断されないようにする為だろう。最初にディープキスした時と男女逆の構図だ。
がっちり拘束された勝也は横目でチラチラ俺を見ていた。まるで「違うんだ!」とでも言いたげな表情だ。
そんな二人の唇の間で優の舌がチロチロと動いているのが分かる。未だ唇を閉じたままの勝也に門の開放を催促しているようだった。
初めは慌てていた勝也だったが、やがて観念したように唇を開いた。
それを待ってたとばかりに優の舌が勝也の口内に攻め込むと、後はもう二匹の蛇が交わるように舌と舌が絡み合う。
最後に俺へと送られた勝也の視線には、「すまん」という意思が込められてるように見えるのだった。
ついに、優の唇までが勝也に奪われてしまった。
いや正確には奪われたのは勝也の方だが、優が俺以外の男の唇を知ったという事実は変わらない。
(あぁ……だめだ)
心臓の動悸が激しくなると共に、呼吸が荒くなるのを自覚する。
何度も味わったあの感覚が、過去最大級の規模で俺の胸中に重圧を加えてくる。
予想した通り、優と勝也がキスをする光景は精神的な負荷が凄まじかった。
これ以上二人を見つめていたら嫉妬と喪失感で心が壊れてしまうかもしれない。
こんな辛い光景からはさっさと目を背けなきゃいけない、目を背けるべきだ。
背けるべき、なんだが……。
(なんで……だめなのに……)
身体が言う事を聞いてくれない。
唇と舌での性交を続ける二人から、なぜだか目が離せない。
「陽一」
不意に頭を両手で掴まれ、強引にその向きを正面に向けられた。
当然目の前にあるのは佳奈子の顔だ。呆れたようなジト目で俺を見ている。
「気持ちは解るけど、割り切って!そもそも陽一が始めた事でしょ?」
確かに、そうだ。
みんな元々その気があったんだとしても、スワッピングしようと言い出したのは俺だった。
そして、そんな俺の我侭で今までキスはしなかったが、それもその時の流れ次第で……という約束だったのだ。
「それに陽一のここ、すっごく硬い。本当は二人のキス見てドキドキしてるんでしょ?」
そう指摘され改めてチンポに意識を向けると、佳奈子の言う通り、これまでに無くカッチカチだった。綾子さんに射精をお預けにされてる事を加味しても、ここまで硬くなる事はそうそう無い。
(……やっぱり、俺は俺なんだなぁ)
スワッピング行為の中で一番に忌避感を覚えたキスでさえも、実際にその場面を目の当たりにした途端、ちんけな嫉妬心を凌駕する途轍もない興奮を覚えてしまっている。
恐らく優が勝也の唇を強引に奪ったのも、そんな俺の背中を押す為なんだろう。
流石は優だと言うしかない。俺の事をよく解っている。
「私もね、ドキドキしてる……陽一も言ったじゃない、開き直った方が楽しいって。だから、私達も……ね?」
以前佳奈子に対して放った言葉が、ぐるりと一回転して俺に突き刺さる。
まったくもってその通りだ。せっかく優が用意してくれたこの状況を楽しまないでどうする。
それに佳奈子とキスできるのだ。嬉しくないはずがない。
「うん……そうだな。キスしよう、佳奈子」
頬に手を添えそう言うと、彼女はにっこり微笑み返してくれるのだ。
「ん、楽しみましょ」
思春期の男にとって、その笑顔は猛毒だ。
こんなに魅力的な笑顔を向けられたら最後、免疫の無い奴は一発で恋に落ちるだろう。
正直な所、俺もヤバイ。優という恋人がいる身であり、且つ付き合いの長い間柄だからこそ、かろうじて耐える事が出来るのだ。
うっかり本気になる訳にはいかない。佳奈子に対する心の閾値を越えないようあえて彼女から視線を逸らし、隣で情熱的に舌を絡ませる勝也に話しかけた。
「それじゃ勝也、佳奈子の唇、貰うからな」
「ん……ぷはぁ、おう!ぶちゅ~っていっとけいっとけ!」
返事を望んだわけじゃなかったが、唇を離して律儀にそう返してくれた。
心なしかその様子は嬉しそうだ。俺が乗り気になった事で、優とのキスの後ろめたさが無くなったのかもしれない。
その優も勝也と抱き合うままに俺と佳奈子をじっと見つめている。俺達が唇を合わせる瞬間を見届けるつもりなんだろう。
そんな二人に見守られる中、俺は瞳をゆっくり閉じつつ佳奈子に顔を寄せていく。
それを受けて彼女も目をつむり、じっと俺を待ち構える。
視覚を絶った為か、その分息遣いや肌の匂い、体温までもがより鮮明に感じられる気がした。佳奈子の顔がすぐ目の前にあるのが空気を通して伝わってくる。
やがて口先に柔らかい物が触れた。
その感触だけで解る。間違いなく佳奈子の唇だ。狙いを外す事無く、無事に繋がる事ができたようだ。
(あぁ……ついに……)
ついに佳奈子と、小さい頃からの友達であり、勝也の恋人でもある女の子とキスまでしてしまった。強い背徳感と興奮、達成感、そして後ろめたさが胸中を満たす。
それらは物凄い勢いで俺の心をぐちゃぐちゃにするが、しかし後悔という感情だけは欠片も生まれないのだ。
そんな感慨に浸っていると、やがて佳奈子の唇が動き出す。触れただけじゃ物足りないとばかりにはむはむと俺の下唇を挟みだした。もちろん俺もそれに応えて彼女の上唇を挟み込む。
ぷにぷにと柔らかい唇を存分に味わう。魅惑的なその感触に加え、佳奈子の鼻息が俺の上唇に当たり、くすぐったくも気持ちいい。
これだけでも十分な刺激なんだが、俺も彼女もそれだけで満足出来る訳が無い。どちらとも無く唇を開け舌を前進させていた。
「んっ!」
「んむ……」
そして二人の中間地点で舌と舌が接触する。予想はしてたがやっぱり強いその刺激に二人分の吐息が漏れ出した。
だが、どちらも舌を引っ込めたりはしない。むしろより強く結びつくよう相手の舌に自身の舌を絡ませるのだ。
二匹の軟体動物が絡み合うようなその感触は、当然凄まじいほどに気持ちがいい。
もっと感じたいとばかりに全神経を舌に集中し、無心に粘膜同士を擦り合う。
そんな感じで舌を激しく絡めていると、涎が口から零れそうになってくる。それに気付くとお互いすかさず舐め取って喉の奥に送り込むのだ。
優もそうだが、佳奈子の唾液も甘く感じる。もちろん錯覚なんだろうが、甘美なそれをもっと味わいたくて彼女の口内を舌で蹂躙して回る。
だが、思ったように集まらない。じれったくなった俺は素直にお願いする事にした。
「佳奈子、ツバもっと舐めたい。くれないか?」
「……ん、ちょっとまってて。ん~」
半ば断られるのを前提で言うだけ言ってみたんだが、予想に反して佳奈子は素直に頷いてくれた。
口を閉じてもにゅもにゅと頬を動かすと、「ん」と唇を突き出す。受け取れという事だろう。
もちろん有難く頂戴する。その可愛い唇を俺のもので覆うと、途端に開かれた口から暖かい液体が流れ込んでくる。その流入が止まるまで舌で掻き入れた後、唇を離してゆっくりと味わい、少しずつ嚥下していった。
「ん……ありがと、佳奈子のツバ、凄くうまい」
自分の唾液を飲まれる事に嫌悪感は沸かないようだ。はっきり感想を言うと、羞恥と興奮の入り混じった表情で頷いてくれた。
「私も……いい?」
むしろ瞳に期待を込めてリクエストしてくれるのだ。
俺は歓喜を表向き隠しつつ頷いて返す。
「もちろん。……ん……んん」
期待に応えようと口内の唾液をありったけ掻き集める。やがてもらった分と同じくらいの量が集まると、合図してから目の前の唇に吸い付いた。
待ち構えていた佳奈子の唇が開くと、舌を水路代わりにして唾液を流し込む。そうして渡せるだけ渡し終えると唇を離し、目の前で俺の唾液が吟味される様を観察するのだ。
佳奈子は赤く染まる頬を何度か動かすと、やがて細い喉をこくりこくりと鳴らし始めた。
その間の彼女の表情は愛撫でも受けてるかのような蕩けっぷりだ。
「はぁ……おいしい、かも」
やがて俺の唾液を飲み干した口でそう言ってくれる。
と、なんだか無性にキスしたくなり、奪うように唇を重ねた。すぐさま舌を捻じ込むと、佳奈子も即座に応えて俺の舌に絡みついてくれるのだ。
そんな俺達の一連の痴態を、隣の二人が興奮の面持ちで凝視していた。
しかも、ただ見てるだけじゃない。二人ともいつの間にか自分の股間に手をやり蠢かせていた。
要するに、オナニーしているのだ。
勝也はともかく、人前でするのを渋っていた優でさえも忘我の表情を浮かべながら指を動かしている。
ただ、その指の仕草は綾子さんほど大胆なものではなく、控えめにマンコを擦る程度に見える。情欲に負けて始めてしまったが、全力で出来るほど吹っ切れてはいないのかもしれない。
だが、控えめでもオナニーしてるのは事実なのだ。
佳奈子もそれに気付いたらしく、キスしながらも目を丸くして優を見ていた。
「すっげぇエロい……優菜……」
「うん、かっちゃんもわたしの飲んで」
唾液を乞われる事は解っていたんだろう。優が口をもごもごと動かしてから唇を寄せると、勝也がすかさず吸い付いていた。
今度は俺と佳奈子が唇の繋がりを解く。優と勝也が唾液の受け渡しをする瞬間を見逃す訳にはいかないからだ。二人して、お互いの恋人が行う痴態を固唾を呑んで見守るのだった。
勝也がどの程度の量の唾液を受け取ったのか、それは残念ながら外野からは解らない。
が、優から流し込まれた物を口中で掻き回し味わってるのは解る。その事実はどうあがいてもエロいのだ。
攻守を逆転して勝也から唾液を受け取る優を見ながらチンポを掴み、上下に扱き出す。
身体の中まで勝也に染められた優は最高すぎるオカズだ。このまま射精するつもりは無いが、七合目くらいの快感を維持するペースで手を動かし続けた。
堪らなくなったのは俺だけじゃない。佳奈子もまた、恋人が自分以外の女の子と唾液の交換をする様を魅入られたように見つめている。興奮に呑まれたのか、その息遣いが荒くなりつつあった。
そんな彼女の右手がおヘソの下あたりでもぞもぞ蠢いている。もちろんそこが性感帯な訳ではなく、性器まで手をやるのを躊躇しているんだろう。優は一歩踏み越える事が出来たが、やっぱり人前でのオナニーはハードルが高いようだ。
「佳奈子、一緒にしよう?ほら」
そのハードルを乗り越える手助けにと、勃起を扱く様を見せて誘う。
声掛けされた佳奈子は上下に擦られるチンポをじっと見つめ、やっぱり葛藤するように右手を震わせるのだ。
俺の呟きを聞いていたのか、キスを切り上げた勝也が再び竿を握り締め、見せ付けるように扱き出す。
優もすぐに同調し、照れた様子を見せつつも股間に手をやり指を動かし始める。
同時に佳奈子へ真っ直ぐ向ける瞳には「みんなでやれば怖くないよ」という気持ちがしっかり込められてるのが解る。心なしか、マンコを擦る指先もさっきより大胆に動いてるように見えるのだ。
そんな俺達三人の圧に負けたのか、はたまた欲情に素直になったのか、あるいはその両方か。段々と佳奈子の右手が股間の方へ降りていく。
それを応援するように、自らの性器を擦り続ける俺達。
やがて佳奈子の右手は陰毛の茂みを掻き分けて性器へと到達し、クリトリス周辺を遠慮がちに擦り始めた。
みんなに見守られながらオナニーする彼女が羞恥と興奮に塗れているのが良く分る。より一層荒くなる息遣いが何ともエロい。
そんな佳奈子のオナニーをオカズに、俺も勝也も、そして優までもが手を動かす速度を速めている。
それを受けて佳奈子も更に激しく……と、全員が全員に影響を与え合い、俺達四人はどんどん高みを目指して昇り詰めて行くのだ。
興奮も快感も最早止めようがない。このまま全員一緒に絶頂できたらどんなに気持ちいいだろう。
(もう、いいかな?射精はしないように言われてたけど、そろそろ限界だ。勝也もこのまま出すっぽいし、俺も本気で扱こう。このままいけば一分もしないでイケそうだ…………よし、もうすぐ、カウントダウン、十、九、)
「ちょ!ストップ!すとーーーーーっぷ!!!」
焦ったようにそう叫び、爆乳を揺らしながら俺達四人の間に分け入る綾子さん。
射精までもう少し、という所で、再び存在を忘れていた彼女に待ったを掛けられたのだった。