いよいよ明日からゴールデンウィークだ。
という事は伊多海旅行の前日でもある訳で、帰宅次第食事と風呂を済ませた俺は旅行用バッグを引っ張り出し、のそのそと準備を進めていた。
外出用の服や肌着をカーペットの上に広げ、さてどれを持っていこうかと考える。
(そういえば、今回の旅行に何が必要とか全然考えてなかったな……)
ここしばらくは優に告白する事ばかりに意識が向いていて、そもそもこの旅行が遊びに行くだけじゃ無いという事実がすっかり頭から抜け落ちていたのだ。いかに自分がテンパっていたかを改めて思い知る。
今からでも勝也に電話して持ってく物を話し合うべきか。と腰を浮かしかけた所で、誰かが階段を登る音が聞こえてきた。その足音が部屋の前で止まると、続いてドアがノックされる。
「陽ちゃーん、入っていいー?」
「いいよー」
返事をするとドアが開けられ、私服姿の優が顔を見せた。
優はこうして俺の様子を見に来る事が度々ある。
大抵は食事を作ったり部屋の掃除をするついでなのだが、休日の午前や午後の中途半端な時間に不意に来訪する事もあった。その理由は解らないが、色々お世話になってる身としてあえて聞こうとも思わなかった。
しかしだ。二年ほど前になるだろうか。優のその抜打ち訪問が原因で悲しい事故が起こった事を思い出す。
◇◆◇◆
それはまだ陽一がオナニーを覚えたばかりの頃だった。
ふとした拍子に湧き上がる性欲に振り回され、その日も彼は休日の午前中からエロ本片手に自慰に耽っていた。
そこに何も知らない優菜がびっくりさせようと抜き足差し足で階段を登り、ノックもせずにドアを開けたのだ。
「ばあ!」
と声を上げ満面の笑みのまま固まる優菜。勃起とエロ本を握り締め、驚愕の表情で優菜へとふり返る陽一。
そのお見合いが十秒ほど続いた後、優菜は何も言わずにそのままドアを閉めた。
途端にドアの向こうでドタバタと物音がして、少し後にしんと静まり返る。
もう一度ドアを開けると陽一は頭まで布団を被り、以降呼んでも揺すってもうんともすんとも言わない。
困った優菜は暫くおろおろした後、「ごめんね」と言い残し中里家を後にしたのだ。
当時の彼女は男子の自慰について全く知識が無かったが、人に言ってはいけない事だと何となく察し、その日は誰にも相談しなかった。
翌日、陽一は学校を休んだ。彼の母が言うには体調が悪いらしい。もちろん優菜にも顔は見せてくれない。
いよいよ本当に困った優菜は一日中悩んだ結果、一連の経緯を佳奈子に相談する事にした。
陽一の秘密を話してしまう事になるが、このまま放っておく事も出来ない。事態が収まった後に誠心誠意謝ろうと決め、一部始終を打ち明けたのだ。
電話越しの佳奈子はふんふん相槌を打ちながら話を聞き、やがて何て事無さげに言ったものだ。『ほっとけばいいわよ』と。
聞けば彼女自身も勝也のそういった場面を何度か目撃した事があるそうだ。
年頃の男の子はそうしなければならなくて、しかしその現場を見られるのはとても恥ずかしいらしい。時間が解決するからそっとしておけとの事だった。
実際、翌日の陽一は普通に登校していたのだ。
優菜に対しても見かけ上は普通に接してきたので、気になりつつも一先ずは安心できた。
話を蒸し返さない方がいいとのアドバイスも受けていたので、行為を見た事や佳奈子に相談した事への謝罪もしなかった。そこについては正直心苦しく思ったが、陽一に恥をかかせない為と割り切る事にしたのだ。
実のところ陽一自身もほぼ同じタイミングで勝也に相談していたりする。
一部始終を聞き終えた勝也は、電話越しに声を張り上げ言うのだ。
『あ~だいじょぶだ!俺も佳奈子に何度も見られてっから心配すんな!言うほど向こうも気にしてねーよ!』
その言葉にグッと心が楽になった。オナニーを異性に目撃されるという最悪な事態を何度も体験し、尚且つそれを乗り越えた勝也。そんな彼に尊敬とより一層の友情を感じてしまう。
話を蒸し返さないで全て無かった事として振るまえとアドバイスも貰ったが、優菜と対面した時にポーカーフェイスを作れるかが少し不安だった。
そして翌朝、決死の覚悟を決め優菜と顔を合わせた陽一だったが、果たして彼女は何も聞かずに普段通り接してくれた。
朝の挨拶をする時は多少どもってしまったが、そんなぎこちない陽一を目にしても、彼女はいつもの微笑みを崩さなかった。崩さないでいてくれた。気を使われているなぁと申し訳なくなったが、あれこれ聞かれないのは有難い。出来た幼馴染に心の中で大いに感謝したのだった。
以来、二人の間であの時の事は無かった事になっている。
だが同じ悲劇を繰り返さない為、以降の優菜は必ずノックをするようになったし、陽一も彼女が来そうな時間帯にはオナニーをしないようにしているのであった。
◇◆◇◆
その優が部屋の中を確認するよう覗き込み、続けてするりと足を踏み入れドアを閉めた。
床に散らばる服と旅行用バッグを見て何をしてたのか察したらしい。
「明日の準備してたんだね。わたしも手伝うよ」
「ほんと!?助かるよ!今始めた所なんだけど何が必要とか全然考えてなくてさ」
心底ホッとした。俺だけで準備しても忘れ物をしそうだし、断る理由は全く無い。
もしかしたら優も俺のこんな体たらくを予感して来てくれたのかもしれない。何を都合のいい事を……なんて思われそうだが、一条優菜とはそんな女の子なのだ。
露骨に安堵する俺に微笑みを返しながらすぐ隣に腰を下ろす優。床一面へ乱雑に置かれた服を一つ一つ手に取り吟味していく。
そうして身体を動かす度にふわりといい匂いが漂って来た。
(あ、シャンプー変えたんだな)
そんな変化が解る自分はちょっと変態っぽいなと思ってしまう。
だが漂って来る甘い匂いは癖になるような中毒性があるのだ。罪悪感を抱きながらも気付かれないようこっそり吸い込み、その芳香を堪能する。益々変態みたいだと思いつつも止めることができなかった。
「外出用の服と、お仕事用の動きやすい服も持ってこうね。あとは……」
今日の優は半袖のサマーセーターを着ている。その布地が豊かな胸に押し上げられ見事な膨らみを形成していた。
気のせいか、最近の優は胸の大きさが強調される服を好んで着ているように思える。それを間近で拝めるのは嬉しいんだが、俺以外の男共にも魅惑の巨乳を視姦されてると思うと心穏やかではいられなくなる。
「向こうで洗濯もするだろうし、男の子ならパンツは三枚もあればいいのかな?……ん~でも念のためにもう一枚持ってこっか」
この胸を、服の下の魅惑のおっぱいを、告白が成功すれば自分の好きに出来るかもしれない。そう考えると目が離せなくなってしまう。
その柔らかさと肌触りを想像し、自然と両手の指がワキワキ動いていた。
この膨らみは一体どんな感触なんだろうか、そんな妄想ばかりが頭に浮かぶのだ。
(えーっと……)
俺が触った事のあるおっぱいを思い出す。もちろん母さんのだけなんだが、小さい頃の記憶にあるその感触を思い出し妄想の中の優のおっぱいに適用してみた。
が、興奮どころかするっと熱が冷めてしまう。そりゃそうだ。近親者はだめだ。
「陽ちゃん、これとこれと、これでいいかな?」
優のおっぱいに余計なノイズを混ぜてはいけない。ありのまま、素材の味そのままでなければいけない。
(あぁ、しゃぶりつきたい……)
じっと胸を見続けていた。
床に並べた服を取ったり戻したりするたび、そのたわわな胸が布地を押し上げ形を変えている。
「陽ちゃん!聞いてる?」
「っ!!」
不意に、彼女にしては強い調子の声が浴びせられた。
そこでようやく顔を覗きこまれてるのに気づき、慌てて目を合わせる。
(やっちまった!)
告白すると決めてから優の事をかなり意識していたが、それもここ最近では表向き挙動不審にはならない程度に慣れたはずだった。
だが、胸が強調される服を着て傍にいられると否が応でも目線がそこに行ってしまう。恋人になった先の可能性を想像してしまうのだ。
「あ、いや、聞いてる。それでいいんじゃないか?」
明らかに嘘と分かる言い方になってしまった。
視線も露骨に胸から外し、あちらこちらを泳いでいる。もちろん何を見ていたのかバレバレだ。
……そう。バレてるはずなんだが、しかし優は怒りや嫌悪の感情を見せはしなかった。
「……そんなに気になる?」
そう言って、両手で掬うように自身のおっぱいを持ち上げるのだ。
上目遣いで頬を染めながらそんな事するもんだから、俺は堪らなくなって再度全力で目を逸らしてしまう。
「あ、うん、いや……うん……」
最早自分でも何が言いたいのか分からないくらいテンパってしまう。
と同時に気持ち悪がられないかと心配になったが、そんな俺の内心をよそに優はいつも以上のニコニコ顔だ。
「うふふ!陽ちゃん、水着楽しみにしててね」
「え?あぁ……そういえば佳奈子と買いに行ったんだっけ?どんなの買ったの?」
努めて冷静を意識し聞き返す俺に、優はいたずらっぽい笑みと共に見つめてきた。
「ふふふふ……ひみつ~。見てのお楽しみだよっ」
再び胸を持ち上げつつそんな事言うもんだから困ってしまう。
童貞ゆえにどんな反応を返せばいいか判らないので、金魚のように口をパクパクさせ唸るしかない。
そんな俺を、優は只々楽しそうに見つめているのだった。
その後も優と二人で旅行の準備を進めた。
今度は余所見せず手を動かそうと気合を入れる俺だったが、そう意気込んでいても無意識の内に視線がふらりと胸に吸い込まれてしまう。
いかんいかんとすぐに優から目を離し手を動かすが、それでもいつの間にか視線が胸元に戻っているのだ。
それも一回二回じゃない。同じ事を何度も繰り返すのを自覚してるが、どうにも雄の本能には逆らえない。
そんな俺より当然優のほうが効率よく動いてくれている。もちろん俺の露骨な視線にも気付いてる筈だが、それを指摘したり、手が進まない俺を咎める事も無く、テキパキと準備を進めてくれていた。自分だけが一方的に働いてるのに何故か嬉しそうだったりするのも不思議だ。
そして何より気になったのは、優の動きがいつもよりオーバーリアクションに見える事だ。
俺の視線に気付いて以降、身体を動かす毎にふるりと揺れる胸をえらく強調している気がするのだ。それこそ「もっと見て」と言わんばかりに、だ。
はたしてそれは俺の自意識過剰なのだろうか。
そうじゃ無いと言うのなら、俺にどうして欲しいのか。
内心酷く混乱しながらも、やっぱり優のおっぱいから目が離せない俺なのだった。
そうこうしている内に旅行の準備もほぼ終わる。なるべくコンパクトに纏めたつもりだが、それでも旅行用バッグがパンパンになってしまった。六日間も泊り込むのだからそれも仕方ないだろう。
「よし、準備かんりょー」
ぽんぽんとバッグを叩いて優が言う。自分の物ではないのに嬉しそうだ。
「なんかごめんな。ほとんどやってもらっちゃって」
結局俺は優の胸を眺める仕事しかしなかった。我ながらいいご身分だと思う。
「ううん、いいんだよ。それより明日は寝坊しないようにね?」
「もちろん」
その後は二人でTVゲームで遊んだが、優はずっと上機嫌なままだった。今もフンフンと鼻歌を歌いながらコントローラーを握っている。
彼女はゲーム好きだがあまり上手くは無く、キャラクターを操作する度に身体ごと動いたりするタイプだ。
そんな様もまた可愛いくて、見つめていると無性に抱き締めたくなるのだが、当然そこ迄の度胸は無い俺だ。
そんなスキンシップが自然と出来る関係になれるのを内心強く願いつつも、表向きだけは普段通りの自分を必死に装うのだった。
夜遅くなる前に優は自宅へと戻っていった。
となれば当然、それまで悶々と蓄積し続けたムラムラを解消せんとオナニーに耽る俺。AV女優の巨乳を優のそれに見立て、激しくチンポを扱き、精液をぶち撒けていく。
この間のAV鑑賞会以来、もうすっかりテーブルの上に射精するのが定番になっていた。
勝也もあれから何度かAVを視聴しに来訪し、そのたび二人してつるりと硬質な板の上へと白濁を飛び散らせている。もちろん事後はしっかり水拭きするのだが、そのうち本当に匂いが取れなくなるかもしれない。
結局その日は都合七回射精して勝也の最高記録に並んでしまった。
それでも出そうと思えばまだまだ射精できそうな気配を感じ、ちょっと自分の性欲が怖くなってくるのだった。