「あんた達って、ホモなの?」
「「…………は?」」
思いもよらない問いかけに意図せず二人でハモってしまう。
いきなり何言い出すんだという思いは同じなのだろう。勝也の顔にも混乱っぷりがこれでもかと表れていた。
「なんで?」
としか言いようが無いのだが、その疑問には優が答えてくれた。
「先々週の土曜日にかっちゃんが陽ちゃんちに泊ったでしょ?で、次の日に二人が出かけた後、わたし陽ちゃんの部屋を掃除してたんだ。そしたら……アレが出てきたの」
「アレ?」
正直俺には覚えがない。
いや、もしかして裏モノのAVか!?とも思ったが、あれは秘蔵のエロ本と共に勉強机の引き出しの裏に隠してある。
優と言えどもさすがにそこまではチェックしないだろうし、そもそもアレというのがAVだとしてもホモとの繋がりが分らない。
そんな感じで混乱しながら心当たりに考えを巡らせていると、すぐに佳奈子が答えをくれた。
「コンドームよね。使用済みの」
「……うん」
「あ!」
(……あぁくそ!あれを見られたのか!)
精液を拭ったティッシュと一緒にコンドームもゴミ箱に捨てていた。後でそれらを纏めて処分するつもりだったが、すっかり忘れていた俺だ。
視線を感じ振り返ると勝也に睨まれていた。「なにやってくれちゃってんの!」といった感じだ。視線でもってすまんと謝る。
「数も二つあったのよね?だからさ、あんた達が……その、やったんじゃないのかって……」
流石に佳奈子も顔を赤くして語尾がしぼんでいる。
が、彼女にしては珍しいそんな仕草に見入る余裕は無い俺達だ。
(っていうかやったってお前……)
「ちっげーよ!」
「んな訳ないだろ!」
声を大にして否定する。
そりゃそうだ。告白を成功させた上での脱童貞を夢見る俺達がホモに走るなんて有り得ないのだ。思わずそんな場面が脳裏を過りちょっと気持ちも悪くなってしまう。
「でも、そういう時しか使わないじゃない。コンドームなんて」
信じてくれない佳奈子。優も未だ疑惑の眼差しを向けてくるのがキツい。
だが、ここは何としてでも疑惑を否定しなければならない。すかさず勝也が抗弁を始める。
「着ける練習してたんだって!あれでちょっとコツがいんだよコンドームは!」
「中に……その、精液が入ってたみたいだけど」
さっきからずっと赤い佳奈子の顔が更に羞恥で染まる。
「精液」と言葉に出して照れる様は可愛いけれど、今はそれ所じゃない。
「それはその……着けてたらちょっとムラムラして……オナ……自分でしたんだよ」
慣れ親しんだ間柄とはいえ女子を相手に「オナニー」とは言い辛いので濁したが、それでも恥ずかしいものは恥ずかしい。
もう全員顔が真っ赤だ。だがホモと思われるよりはいい。
「……見られてるのにそういうのできるの?」
優もまた頬を真っ赤にしながらおずおずと聞いてくる。
「できるぜ!ってかどっちが遠くまで飛ばせるかとか最高何回出せるかとか競争するしな!そーゆー遊びだ遊び!」
「そうそう!遊びだよ!普通だよな!」
勝也がぶっちゃける。さも当然ですよと言わんばかりの流れに俺も乗っかっておく。
もちろん普通では無いんだろうが、俺達の間では遊びの延長なのは確かだ。
「ほ、本当に!?」
そんな破れかぶれの勢いが幸いしてか、どうやら嘘ではなさそうだと受け取ってくれたらしい。
だが同時に初めて知る男子の生態に対しカルチャーショックも受けたようだ。二人とも驚きで目を丸く見開いている。
(よし!)
ここが攻め時だと踏んだ。多少強引だろうと一気に畳み掛け、二人の疑念を吹き飛ばさなければならない。
「大体、男に欲情する訳無いだろ!俺が好きなのは優なんだ!解るだろ!?」
相手との距離を詰め、じっと目を見つめる。
「おれだって佳奈子が好きだ!ホモな訳ねーだろ!」
勝也も同じく佳奈子に詰め寄った。
止まってはいけない。押す。ひたすら押す。
「なあ、返事を聞かせてほしい」
「今度はちゃんと答えてくれよな」
更に距離を詰め、文字通り目と鼻の先にある相手の瞳を見つめ続ける。
そうして暫くの間、沈黙が四人の間に居座った。
やがて優と佳奈子は互いにチラと視線を合わせ、改めて俺達と向かい合う。そして……。
「うん……わたしも陽ちゃんが好き」
「私も、勝也が好きよ」
と、二人は頬を染め、はにかみながら応えてくれたのだ。
「よっっっしゃーーー!!!」
感極まって佳奈子に抱きつく勝也。
「優っ!」
俺も堪らず、たった今想いが通じ合った相手を抱きしめる。
「ちょっと!」
「わわっ!」
二人はびっくりしながらも抱擁を受け入れてくれた。
しばらくそのまま、いい匂いのする柔らかな肉体を拘束し続ける。
(やった!やったやった!!)
愛しさと、今なら何だって出来るという万能感、それらをごちゃ混ぜにした圧倒的な歓喜が心の内を満たしていく。
(俺は今、幸せだ!優が好きだ!もっと繋がりたい!)
その熱い気持ちが溢れ出して止まらない。俺は身体を少しだけ離し、恋人になったばかりの相手を見つめながら呟く。
「ゆう……」
少しずつ顔を近付ける。
果たして優は少し顎を上げ、目を閉じてくれた。
それが何のサインなのかは童貞の俺でも流石に分かる。
(よし!キス出来る!)
と歓喜が溢れて来るのはいいのだが、余計な事を考えがちな俺の悪い癖がここで出た。
ふと、初めてのキスで勢い余って歯がぶつかり合う、なんていうマンガの一場面が思い浮かんでしまったのだ。
そうなると気になって仕方がなくなって来る。俺達の初めてがそんなのじゃ台無しだとばかり、顔を前進させつつも慎重に目の前の唇との距離を調整していくのだ。
だがそんな風にもたもたしていたせいだろう、向かいの瞼が一瞬薄く開いたと思うとすぐに再度閉じていた。
(いけないいけない、慎重になりすぎるのもみっともないよな)
即座に反省したのち覚悟を決め、俺も瞼を閉じると暗闇の中で唇を徐々に前進させた。
慎重に距離を測ったお陰だろう。幸い硬いものは全く感じず、やがて柔らかくぷるぷるした感触が確かに唇へと感じられるのだ。
(うわ、柔らかい……それに)
接した肌から相手の体温も伝わってくる気がする。その感覚が妙に生々しく感じ、心臓の鼓動が更に強くなる。
鼻の側面がぴとりと触れ合っているのだが、お互い息を止めてるお陰で鼻息は感じない。だが同時にそろそろ息も続かなくなってきた。
その辺相手も同じなようで、やがてどちらとも無く唇を離していた。その速度のまま顔も少し離すと、至近距離で互いに見つめあう。
(あぁ……やっちゃった)
勢いで致してしまったが急に恥ずかしくなってきた。それを誤魔化すように再び優の身体を抱きしめていた。
ふと横を見ると、今正に勝也と佳奈子も瞼を閉じてキスをしている。
あの勝也が、あの佳奈子が。
いつも一緒にいた幼馴染達がキスを交わすその光景は、かつての無邪気だった二人が遠くへ行ってしまったような、寂しさと切なさを俺に抱かせる。
だが、遠くへ行ってしまったのは俺と優も同じなのだ。
たった今、自分達の関係性は変わった。変えてしまった。俺達も今この時点から、もう無邪気な子供ではいられなくなってしまった。
重なり合う幼馴染達の姿が、そんな切ない実感を感じさせるのだった。
勝也達もキスもそれほど長くは続かなかった。やがて二人の唇がゆっくり離れていくと、俺達四人は互いを見つめ合う。
すると直前に感じていた切なさはふっと消え、代わりに嬉しくも気恥ずかしい気分が沸々と湧いてくるのだ。なのでお互い照れ笑いしつつも、何となく目を逸らしてしまうのだった。
「そろそろ帰るか」
そんな空気を切り替えんとする勝也の一言にみんなが頷き歩き出す。
未だ気恥ずかしさは消えないのだが、自然とそれぞれ恋人同士で手を繋いでいた。
旅館への帰路を行く間、みんな言葉は少なめだ。
だがそれでよかった。照れ臭くはあるが、悪くない雰囲気なのだ。
優とはよく目が合った。お互いにはにかみ合い、気恥ずかしくなっては目を逸らす。その繰り返しだ。
それでも手だけは離れないようしっかりと相手の掌を握り締める。もちろん恋人繋ぎでだ。
少し前を行く二人も似たような雰囲気で、見てるこっちがお腹いっぱいになるような甘酸っぱい空気を醸している。
俺達四人が纏うそんな空気はとても心地良く、いつまでもこんな時間が続けばいいのに、と願わずにはいられない。
だが当然、永遠なんてものは無いのだ。程なくして旅館の前に着いてしまった。
誰の姿も見えない内に二組とも自然と手を離す。人に言えないような仲ではないが、まだ綾子さんや叔父さん夫婦に知られるのは恥ずかしいのだ。
努めて以前の俺達の空気を装いつつ部屋に戻ると荷物を置き、そのままの足で風呂へと向かう。
海の家のシャワーではざっと潮を流しただけなので、食事の前に風呂でしっかり身体を洗いたかった。それに勝也とも二人だけで話がしたい。
湯気で霞む浴場に足を踏み入れた途端、「かぽーん」なんて桶が床を叩く音が響き渡る。
温泉を楽しむ宿泊客の姿も大分増えていた。確かに今はそういう時間だ。
そんな中でそそくさと身体を洗い終わると、勝也と二人連れ立ってなるべく人がいない辺りを選び湯船に浸かる。途端にお互い「ふぃ~~~」なんて深く長いため息が出るのだ。
「やったな」
「ああ」
多くは語らない。
途中、ホモ疑惑をかけられるというトラブルもあったが、なんとか逆転勝利を掴めた。キスまで出来た。言う事無しである。
だが隣の勝也の顔には、満足するにはまだ早いとばかりの強い意志が漲っているのだ。
「今日中にセックスまでいくぞ」
「っ!!……いけるのか!?」
「いける。恋人になりたてでテンション上がってる今ならな。ガンガンいっとこーぜ!……逆に言うと、今日を逃したらしばらく無理かもしれん」
「そういうもんか」
「そーいうもんだ」
確信を込め頷く勝也の雰囲気に押され、なんだか俺もその気になってきた。
せっかく優と恋人になれたのだ。いい流れのまま行ける所まで行っておきたい。
その後ぼそりと「たぶん……」とか呟いてる勝也の言葉は聞かなかった事にする。
「おれ達が手前の部屋使うから、お前らは奥の部屋使ってくれ。ゴムは部屋に戻ったら懐に忍ばせとこーぜ」
お湯に浸かりながらこの後に向けての段取りを決めていく。
お互い期待でチンポが膨らんでしまうが、周りに人もいないので湯船の中で勃つがまま放っておく。
そうして作戦会議を終えた後は、これから活躍するであろうムスコを再度入念に洗う。そして結局治まらないままの勃起を隠しつつ、そそくさと浴場を後にするのだった。
部屋に戻った俺達は早速諸々の準備を始める。
食事を持ってくる前に、まずは布団を人数分用意した。それらを二つの部屋に一組ずつ敷いていく。
いつもは食事が終わってから敷くのだが、「飯食ったらすぐに使いますよ」との意思表示らしい。
かえって警戒させるんじゃないかと思ったが、勝也の目論見通り告白も成功した事だし、今は従っておこうと思った。
次いでそれぞれの部屋の枕元にティッシュ箱を設置し、バスタオルも何枚か用意しておく。
これはセックス教本に書いてあった。初めての場合、女の子の破瓜の血でシーツが汚れる事があるそうで、それを防ぐため身体の下に敷いておくのだ。シーツに血がついてるのを旅館の関係者に見られたら色々まずいだろう。バスタオルならまだ言い訳が効く。
そこまで準備を終えてから調達してきた夕食を座卓の上に並べていく。
各自が座る位置は昨日までとは変えるつもりだ。以前は俺と勝也、優と佳奈子が横並びで、男女向かい合うように座っていた。
それを今日は男同士、女同士で向かい合い、それぞれの恋人に横に座ってもらう形にする。この方が彼女達と距離をつめられるからだ。
そんな感じで大方の準備は終わった。コンドームも既に懐へ忍ばせてある。後は恋人達を待つばかりだ。
「……遅いな」
「んー」
今日はやけに時間がかかる。そのおかげで余裕を持って準備できたのだが、あまり遅くなると夕飯が冷めてしまいそうだ。
とはいえもう出来る事は他にない。仕方ないのでテレビをつけると、内容が全く頭に入ってこない番組を見つめながらまだかまだかと待ち続けるのだった。
「お待たせー」
「ごめん、遅くなった」
そうして夕方のニュースを十分以上垂れ流した頃、ようやく優と佳奈子が戻って来た。
玄関の襖を開いて湯上りでホコホコな姿を見せるが、既にきっちり敷かれてる二組の布団を見た途端、どちらも真顔に戻っていた。
しかしその不自然さを指摘することなく二人は座卓に近づいてくる。俺達も当然とばかり、その辺に触れはしない。
「佳奈子はここな」
「優はこっち」
座布団を叩いて恋人となった相手を呼び寄せる。二人ともちょっと照れながらも素直に横に座ってくれた。
「そんじゃいただきまーす」
「「「いただきまーす」」」
勝也の音頭で食事を始める。
そうなるだろうと思っていたが、やっぱりみんな露骨に口数が少ない。時折三方向へチラチラ視線をやっては逸らしている。
恐らくこの場にいる誰しもが食事が終わった後の事を考えているんだろう。
俺も当然そうだった。箸を動かしてはいるが、そわそわしながら主に隣の優へと視線をやっては戻してしまう。
料理は美味い筈なのにいまいち味が頭に入ってこない。互いの思惑を測るような緊張感ある空気の中、食器と箸が接触するかちゃかちゃいう音だけがこの空間に響いていた。
そんな微妙な空気を変えようとしたのか、優が俺に声をかけてきた。
「陽ちゃん、はい、あーん」
「え?あ」
おかずを箸で掴み、俺の口元に寄せていた。
「せっかく恋人になったんだしさ、これ、やってみたかったんだぁ」
「あ、ああ。ありがと」
嬉しさ7、照れ3くらいの絶妙な塩梅の笑顔を向けられ拒否なんて出来る訳が無い。
礼を言って口を開け、優の箸にパクついた。
(うん、うまい!)
照れくさいが、しっかりと美味かった。
さっきまでとは違い、確かに味を感じていた。優の気遣いでようやく味覚の機能が戻ってきた気がする。
物欲しげに俺を見る優に皆まで言わせず、今度は俺がおかずを掴んだ箸を差し出した。
「ほら優、あーん」
「あーん」
薄紅色の可憐な唇を大きく開けると、箸につままれたおかずをぱくりと口に入れる優。
もぐもぐと咀嚼して飲み込んだ後に言う。
「おいしー!」
にっこにこだ。満開の笑顔が愛おしい。餌付けしてるみたいでなんだか楽しくなってきた。
そんな感じでイチャイチャする俺達に向けて強い視線を感じる。果たして勝也と佳奈子が箸を止めるままポカンとこちらを見つめていた。
俺と優の視線に気付くと勝也が身体ごと向き直り、恋人になりたての女の子を凝視する。
その圧力に負け、佳奈子は言った。
「……はいはい。あーん」
しょうがないわね、とばかりにおかずを掴んで差し出すと、一転して笑顔になった勝也が待ってましたと大口を開ける。
が、すんでの所で佳奈子がヒョイと箸を引く。結果勝也の口は空振りした。
「おいぃぃぃぃーーー!!!」
魂の叫びを上げる勝也。一同は爆笑した。
「ふふ、お約束よお約束。ほら、あーん」
「あーんっ!」
天丼を警戒してか今度は逃さんとばかりに食らい付く。
そんな事しなくても佳奈子は微動だにしなかったんだが、とにかく差し出されたおかずを口にする事は出来た。勝也はあまり噛まずに飲み込み、満足げに言う。
「んまーい!」
絵に描いたような満面の笑顔に釣られ、それぞれの表情にも笑顔が浮かぶのだった。
そうしてその後は食べさせたり食べさせられたりしながら、みんなでいちゃいちゃと食事を続けた。
さっきまでの張り詰めた空気が嘘みたいに和気藹々としている。楽しい雰囲気に変えてくれた優に心の中で感謝した。
だがそれでも料理が粗方片付くとみんな口数が少なくなる。気まずいと言う程ではないんだが、それぞれがこの後の事を強く意識してるのが解ってしまう。
やがて食事も終わってしまった。そそくさと食器を返しに行き、申し合わせずとも各々が歯を磨いてトイレも済ませた。
いよいよだ。まずはテレビを消し、全員また座卓の前の定位置に座る。
一呼吸ついてから勝也が佳奈子に向き直り、背筋を正して言った。
「……もう分ってると思うが、佳奈子、おまえを抱きたい」
(ストレートに行ったな。俺もそれで行こう)
「俺もだ。優が欲しい」
言ってからちょっと臭かったかなと思ったが、今この瞬間に気の利いた言い回しを捻り出す余裕は無い。
心臓をバクバクさせながら彼女らの返答を待つ。先に口を開いたのは佳奈子だった。
「……まぁそうだと思ったけどね。色々準備してるみたいだし」
揃えて敷かれてる二組の布団を見ながら言う。
「陽ちゃんも……そんなにしたいの?」
不安でも期待でもない。心の内を覗くような上目遣いでの問い掛けだ。
そこに俺は、確かな意思を込め頷き返した。
「ああ、したい。優とセックスしたいんだ」
セックスという具体的な言葉に、女子二人が揃って息を呑む。
また少しの間沈黙が続いた。俺と勝也は彼女らを急かす事無く、じっと返答を待った。
俺にはその沈黙がものすごく長く感じたが、実際は一分も経ってなかっただろう。
やがて優と佳奈子は互いに頷き合い、ほぼ同時に口を開く。
「いいよ」「いいわよ」
顔を真っ赤にしながらも、目を逸らさず応えてくれた。
瞬間、俺達はどうにも堪らなくなって彼女らに抱きついた。告白の返事をもらった時の焼き直しみたいだ。
「っしゃっ!」
「ゆうっ!」
「ちょ、ちょっとまって!まだよ、一旦離して!」
「陽ちゃん、おちついて!」
佳奈子が勝也の背中を叩き、優も不安げに俺を見上げている。
そんな表情が俺の沸き立った脳みそを冷やしてくれた。
(まてまて、落ち着け、急いては事をなんちゃらだ。クールになるんだ)
「ごめん」
「わりぃ」
慌てて彼女らを解放した。優が「どーどー」と、肩を叩いてくれている。
「……あのね」
俺達が落ち着いたのを見てから佳奈子が話し出す。
「解ってると思うけど、私達初めてだから、優しくして。嫌だって言った事はやらないって約束できる?」
俺と勝也の目を見て諭すように話す佳奈子。なんだか大人に叱られてるみたいだ。
「「はい」」
当然約束する。俺達だって嫌がる相手に無理やりどうこうしたくはない。
揃って頷くのを確かめてから佳奈子は続けた。
「それからちゃんと避妊して。どうせ持ってきてるんでしょ?コンドーム」
「あるぜ!」
「ああ」
避妊具の包装が連結された束を懐から取り出す。
それを見て優は顔を赤くし、佳奈子は呆れたような声で言った。
「準備いいわね……でもあるならいいわ。で、場所はどうするの?二部屋に分かれるのよね?」
「一緒はさすがに恥ずかしすぎるもんね」
優のその言葉を受け、四人揃って同じ部屋でセックスする光景が脳裏をよぎった。
瞬間、強烈な興奮が身体を貫きぞくりと身震いする。思いがけない思考と身体の反応がなんだか怖くなってきた。
(そんなの流石にアブノーマルすぎるだろ……考えちゃダメだ)
そう自分に言い聞かせつつ、目の前の可愛い恋人を眺める事で心を落ち着かせた。
「こっちの部屋がおれと佳奈子、奥が陽一と優菜でどうだ?」
その提案に女子二人は互いを見て頷きあう。
「じゃあそれで。あとは……優菜、何かある?」
「ん~、特に無いかな。あ、陽ちゃん……優しくしてね?」
「任せとけ!」
ちょっと見栄を貼ったが、自信なさげにして不安にさせるよりはいいだろう。
「それじゃあ、そろそろ始めるか?」
「あ、その前にこの机、端に寄せるの手伝ってくれ」
確かにこのままだと邪魔だろう。
重厚な木作りの座卓はなかなかに重い。それぞれが四隅を持ちながら端に寄せ、勝也と加奈子の布団を部屋の真ん中に移動した。これでようやく準備完了だ。
「……それじゃ、俺達行くよ」
優の手を引きつつ親友達に言う。
「ああ、後でな」
そう返す勝也と寄り添う加奈子の視線を受けつつ、部屋を移動する。
境の襖を閉める時、勝也がこちらに向けサムズアップした。俺も同じくそれに返す。
グッドラック。