俺は試合終了後、皆の下へと向かおうと思っていたが、その前にスタッフから声がかかった。
「サトシ選手、チャンピオン達が呼んでいますので、着いて来て下さい。」
父さん達が?
何の用だろうか。
「わかりました。 案内お願いします。」
「ありがとうございます。 では、こちらへ。」
スタッフの案内で通路を進み、階段を登り父さん達の下へと向かう。
扉の前で立ち止まるとスタッフがドアをノックする。
「チャンピオン、サトシ選手を連れて来ました。」
スタッフが言うやいなや扉が開く。
扉の先にはミクリさんが居たようだ。
「やあ、君がサトシ君だね。 どうぞ、いらっしゃい。」
「ありがとうございます、ミクリさん。 失礼します。」
俺がチャンピオン達の居る観覧席へと入ると、父さん、ゴールドさん、シロナさん、ダイゴさんが出迎えてくれた。
「サトシ、先程のバトル見事だった、と言いたい所だが、油断していたな?」
父さんは少しの怒気を滲ませながら言う。
「ごめん、父さん。 途中油断してしまったよ。」
「ワタルさんも間違い無く強者の1人だ。 油断も慢心も絶対にするんじゃあないぞ。 わかったな?」
「うん、次からは相手に油断も慢心もしないよ。」
父さんの忠告に真摯に謝る。
それに父さんは首を縦に振り、皆を紹介し始めた。
「サトシもわかったならもう良い。 じゃあ皆を紹介する。 まずは隣のジョウト地方のチャンピオンで、過去に俺に勝利した事もあるゴールドだ。」
「俺はゴールドだ! お前の親父に勝ったって言っても過去に1度だけだけどな! お前のバトル見てたぜ! 中々良い筋してんじゃねぇか!」
ゴールドさんは帽子を後ろに被り、大人になっても尚、元気一杯といった感じだな。
「ゴールドさん、よろしくお願いします。」
「では次、シンオウチャンピオンにして、考古学者のシロナだ。」
「貴方がレッド君の子供ね? 私はシロナ。 ポケモンの神話を調べている物好きなポケモントレーナーよ。 一応シンオウ地方のチャンピオンもしているわ。 よろしくね。」
シロナさんは金髪ロングの超絶美人だ。
黒のファー付きロングコートを華麗に着こなす絶世の美女だが、片付けが出来ない残念な部分も有る人だったか?
けど、こんな美女も抱いてみたいと切に願う。
「シロナさんですね。 よろしくお願いします。」
「何か
シロナさんからジト目で見られたので、ダイゴさんへと視線を動かす。
ちょっと!? と言われるが無視だ無視。
「ん?良いのか? じゃあ次、この人はホウエンチャンピオンで石マニアのダイゴだ。」
「僕は石コレクター兼ホウエンチャンピオンのツワブキ・ダイゴだよ。 一応デボンコーポレーションの次期社長でも有るけどね。 珍しい石の為なら何処へだって行くよ。 君はジバコイルを持っているんだってね? 鋼ポケモンは良いよ。 本当に素晴らしい。 君も鋼ポケモンを大切にするんだよ? わかったね?」
この人、かなりグイグイ来るな。
若干引きながら話しが終わるのを待つ。
その後も鋼の素晴らしさについて熱く語るも父さんから咳払いされ、ダイゴさんは身を引いた。
俺はドン引きである。
「え〜と…ダイゴさんですね。 よろしくお願いします。」
「この変人は置いといて次に行くぞ、この人はミクリ。 今はホウエン地方のルネシティのジムリーダーだが、次期チャンピオン最有力候補だ。 グリーンとも良い勝負が出来る程強い上、ポケモンコンテストでもかなりの実力者だ。」
「私はホウエン地方のルネジムリーダーのミクリ。 君とそのポケモンは本当に素晴らしいね。 ナナミさんは元気にしているかな? コンテストでは師匠のアダンと共に切磋琢磨した仲だ。 あんな事になってしまって引退となって心配していたんだ。」
次期チャンピオンの最有力候補のミクリさんは非常にエレガントな感じだな。
コンテストプレイヤーでもある為か、ナナミさんを心配しているようなので、今の情報を与えるか。
「ミクリさんですね。 よろしくお願いします。 ナナミさんは今、観客席に居ますよ。 もう立ち直ったので大丈夫です。 後で声掛けに行きますか?」
「うん。 そうさせてもらうよ。 ありがとう。 後で一緒に行こうか。」
「皆はサトシに何か言いたい事は有るか?」
父さんがそう言うと、ゴールドさん達が俺に矢継ぎ早に質問してくるので、それに答えて行く。
暫く質問に返答していると、グリーンさんとカケルさんの入場を知らせるアナウンスが聞こえた。
観客席に戻れなかったか。
残念な気持ちを抱きながらバトルコートへと視線を向ける。
「レッド君のライバル対弟子の試合ね。 どちらが勝つと思う?」
シロナさんの問いかけに俺は答える。
「グリーンさんですかね。 と言うより、決勝戦でグリーンさんと雌雄を決したい気持ちが大きいですが。 父さんのライバルのグリーンさんと戦えば、今の俺と父さんの差が、より鮮明に見えると思いますしね。」
そう言って父さんを見る。
父さんも同意見のようだ。
「僕もグリーンが勝つと思う。 彼は打倒僕を常に意識している。 カケルはまだ僕に憧れているから、まだまだ届かないんじゃないかな。」
「レッドさんがそう言うならそうなんじゃないか? 妥当な所だろ!」
「うん、僕もそう思うかな。 正直な所、2人の本当の実力は知らないんだけどね。 僕のポケモン達と戦った事無いし。 ミクリはどう思う?」
「普通にグリーンでしょう。 私もカケル君の事は知らないけど、グリーンの実力はわかる。 彼は強い。」
「ふふふっ 皆も同意見のようね。 あら、早速カケル君のポケモンが倒されちゃったようね。」
グリーンさんのカイリキーがカケルさんのオムスターを蹴散らす。
盤面を見る限り、ステルスロックすら撒けれずに一撃でヤられたのか。
カケルさんはエビワラーを出すが、グリーンさんはフーディンに交代し、またも一撃で倒す。
この試合で俺との格の違いを教えるつもりか?
決勝戦、覚えてろよ。
カケルさんはメガガルーラで逆転を狙うようだが、グリーンさんはバンギラスで消耗戦を狙う気だ。
すなおこしで砂嵐を出し、ストーンエッジで子ガルーラを吹き飛ばす。
憤怒の形相でガルーラがバンギラスに攻めかかり、激しい打撃戦を行う。
バンギラスが先に倒れるも、即座にドサイドンでガルーラを蹴散らした。
カケルさんは一気に3匹のポケモンをヤられ、グリーンさんは1匹のみと差が出る。
カケルさんもアローラのサンドパンを繰り出すも、ドサイドンを引いて、ウィンディを繰り出す。
カケルさんもウィンディを見るやいなやサンドパンを戻し、ピカチュウを出した。
ウィンディは必ず落としたいのだろう。
ウィンディのしんそくとピカチュウのばちばちアクセルが何条もの軌跡を描きバトルコートでぶつかり合う。
ピカチュウの素早く旋回性能も高い攻撃により、ウィンディも戦闘不能となってしまう。
だが、再度ドサイドンを繰り出す。
カケルさんはピカチュウを戻し、メルメタルを繰り出す。
シロナさん達も面食らった表情でメルメタルを見ているようだ。
特にダイゴさんはメルメタルに御執心のようで、メチャクチャ興奮している。
先程から素晴らしい素晴らしいと煩い。
「カケルはあんなポケモンを持っていたのか。 知らないポケモンだな。」
父さんも他の人達も知らないようだ。
「あれはメルメタル、幻のポケモンだよ。」
そして両者が動き出す。
ドサイドンのじしんを耐えきり、アイアンローラーでドサイドンを逆に一撃で倒してしまった。
物凄い火力だな。
「何故サトシは俺達でも知らないポケモンを知っているんだ?」
父さんが不思議そうな表情で俺に聞く。
「ポケモンの神様に会ってきたからね。 多分ある程度の知識は有しているつもりだよ。」
俺がそう言うと、シロナさんが詰め寄って来る。
「ちょっと! 詳しく聞かせて!!」
物凄く興奮しているな。
良い匂いがする。
「後でお願いします。 もう試合も動いていますよ。」
父さん達も何か言いたげに俺を見ているが、意図的に無視して試合に集中する。
もう既にメルメタルもカイリキーによって倒され、ピカチュウ対カイリキーの試合だ。
手負いのピカチュウとサンドパンの2匹でグリーンさんは倒せないだろうが、グリーンさんの実力を測るには十分だろう。
ピカピカサンダーでカイリキーを攻めるも、手負いのピカチュウは返しのばくれつパンチで沈んだ。
残り1匹のサンドパンもメガリザードンYで消し炭にされ、試合は終わった。
対グリーンさんを想定しながら頭でパーティーを組み込んでいく。
「さぁ、サトシ君。 試合終わったんだから聞かせて貰うわよ?」
シロナさんは試合が終わってすぐに俺の両肩をガッシリと掴み、逃さないとばかりに詰め寄って来た。
周囲に視線を送るも、皆も俺を逃がす気は無いようだ。