収容所へと辿り着いた。
守衛に挨拶をして、中へと入る。
手続きをしてからサカキ達の収容されている檻へと向かう。
「先程から言っているだろう。 私が全ての罪を背負うと。」
「俺も先程から言っているが? サトシの配下にお前等が付いて仕事をすれば良いと。」
サカキとワタルさんが言い合っている声が聞こえる。
やっぱりこうなっていたか。
シルバーの口振りからサカキがロケット団の全ての罪を被ろうとしている事がわかっていた。
「サカキ、久しぶり。 ワタルさんから話は聞いたか?」
「む、サトシか。 私達にお前の配下に付けと言っているようだな。 だが、その前に私以外の生きているロケット団員を無罪放免として欲しい。 彼等、彼女等は悪く無い。 私が命じてそれを忠実に熟しただけだ。 私が全ての責任を取る。」
サカキも強情だな。
「それは無理な話だな。 サカキ、お前達の罪を俺が背負う。 そして、その上で俺の為に働いて欲しい。」
「私達の罪をお前みたいな小僧が? 馬鹿も休み休み言ってくれ。」
「冗談じゃねぇぞ? 俺の野望の為にはお前達の力が必要だ。 サカキ、お前は俺の命の恩人でも有るんだぜ? 俺がお前を救いたいって思うのも悪い事か?」
「悪いとは言わない。 私達の中に巣食った癌がお前のような子供にまで手をかけるのを見過ごせ無かったからな。 だが、そうやって助けた子供が癌を駆逐してくれたのは感謝している。 再三だが、ありがとう。 私達がより多くの罪を犯さずに済んだのはサトシ、お前のお蔭だ。」
サカキが頭を下げると、周囲に居る他のロケット団員も皆、頭を下げて俺にお礼をして来た。
すると、シルバーも口を開く。
「俺からも礼を言う。 ビシャスの糞野郎をお前が潰してくれたお蔭だ。 ありがとう。」
シルバー達まで頭を下げて来た。
困惑しながらワタルさんとゴールドさんに目配せをする。
すると、ワタルさんが口を開いた。
「そうしていても埒が明かないだろう。 サカキよ、お前は、お前達はサトシの下に付く気は無いのか? 既にシルバー、ムサシ、コジロウ、ニャースはサトシの配下に加わる事を選択している。 お前達はどうなんだ?」
「そうなのか? シルバー。」
「あぁ、そうだぞ親父。 親父達もサトシの配下に付かないか? サトシが言うには他の悪の組織が世界を滅ぼす可能性すら有るらしいぞ。 俺達がそれを未然に防ぐ事が出来れば、ロケット団の罪を償う事が出来るんじゃねぇか? なぁ、やろうぜ?」
「サカキ様、私からもお願いします。 私達は世界の破壊を防ぐ為、世界の平和を守る為に活動して来ました。 サトシの配下に付けば私達の願いも果たせます。 サカキ様達も一緒に付きませんか?」
「そうですよ、サカキ様。 悪を貫くのも、考え方によっては善性の行いをする事だって出来ると思います。 回り回って良い行いに転じれば、今までの罪だって償える筈です!」
「ニャーからも頼むのニャ! ニャー等の好きなサカキ様ニャら必ず良い方向への舵取りも出来る筈だニャ!」
シルバー達からの説得にサカキも考え始める。
「そうか…。 ふむ、具体的に何をするつもりだ?」
サカキの問いに俺は答える。
「サカキ達ロケット団の人脈を利用したい。 そしていずれは全国の悪党を潰す事が出来れば尚良い。 手始めに先ずはカントー、ジョウトから悪の組織の完全駆逐。 そして、ホウエン、シンオウでも悪の組織を駆逐する事だ。 例えばその組織に潜入させれば、中から瓦解させる事が可能になるだろう。 そして、その4地方の悪の組織の根絶やしが完了すれば、組織はより強大に、強固となる。 行く行くは全国に波及する事が出来る事が出来れば尚良い。」
「何故そのような事を? 悪の組織の根絶やしになど、一時的になら可能かもしれないが、恒久的に悪の組織の設立を防ぐ事が出来ると思うのか? それに、ホウエンやシンオウの組織を何故壊滅させたいのだ?」
サカキがそう質問して来るので、俺は答える。
「だからこそのアンタ等、ロケット団の力を必要としているんだよ。 俺の見立てじゃ、アンタ等ロケット団の組織力は他地方の悪の組織と比肩する、もしくは上回ると思っている。 なら、そのノウハウを逆に正義へと、いや仁義へと転換すりゃ良い。 他地方の悪の組織をも喰らってしまえば、世界の終焉が来なくて済む。」
俺の言葉にサカキが目を白黒させる。
「世界の終焉? 何の事だ?」
「アンタも持っているミュウツー。 尋常じゃない力を持つと思わないか? そのミュウツーに比肩、或いは凌駕するような伝説のポケモンを、他の地方の悪の組織が利用しようと考えるのは当然の事じゃねぇか? アンタもミュウツーを野望の為に捕らえて、父さんにぶつけたんだろう? 今の俺や父さんでもサシでミュウツーを倒せるなんて思えねぇ。 ミュウツー1匹に、手持ちのポケモンを何匹か使わないと倒せる気がしねぇ。 そんなポケモンを悪の組織が捕らえて、悪用したら世界が滅びを迎えるなんて事も十分考えられるぞ。 例えばだが、ホウエンのアクア団とマグマ団は超古代ポケモンのカイオーガとグラードンを手中に収めて、海を、陸地を広げようとしているらしい。 海を広げたら、世界に住める場所が限られて来るから、殆どの人、ポケモンは死ぬだろうよ。 陸地を広げてしまえば、尚の事ヤバい。 生物は皆、水がねぇと生きていけないからな。 少なくなった水を求めて人もポケモンも争い、同じく死んでいくだろう。 世界の終焉を迎えるには十分だろう?」
サカキ達は、驚愕の表情で俺を見る。
伝説と謳われるポケモンがそれ程の力を有しているのかと。
「そんな超常の力を持つポケモンが居るというのか!? グラードンにカイオーガか…。 そんな情報を何処から仕入れた?」
サカキからの問いかけにゴールドさんが話したそうにしているが、手で制する。
「此処から話す内容は他言無用だけど良いか?」
「構わない。 私は口が固いからな。」
そこで俺はサカキに話す。
アルセウス様からポケモンの知識を授けられた事、アルセウス様から波導の力を授けられた事を。
「そうだったのか… だからあの時、不思議な力で私とレッドを回復出来たのか… 成る程な。 確かにその通りで有るならば、世界の破滅は私も望んでいない。 私から協力を申し出たいくらいだ。 お前達! お前達もそれで良いか!?」
『了解しました!』
サカキの問いかけに、此処に居る全ての団員が肯定の返事をした。
これでサカキ達も、俺の部下となる事が決定した。
「具体的に何をすれば良いか、教えて欲しい。」
サカキがそう聞くも、先にやる事があるだろう。
「ワタルさん、サカキ達は俺がしっかり纏め上げるので、そろそろ檻から出して貰えませんか? このままだと何も出来ませんよ。」
俺の言葉にワタルさんも頷く。
「あぁ、わかった。 だが、本当に良いのか? いざとなれば俺達もサポートするが、サトシ君1人でサカキ達を纏められるのか?」
ワタルさんがそう聞くも、答えは決まっている。
「やれるかやれないかじゃなく、やるしか無いんですよ。 ワタルさんも調べて貰えばわかる筈です。 サカキ、檻から出たら、至急アクア団とマグマ団に接触してくれ。 俺の言っていた事と、実際の情報を精査するんだ。」
「わかった。 請け負おう。 お前達! やるぞ!」
『はっ!』
ゲームだったらカントーとホウエンの年数はそんなに経って無かった気がする。
先にホウエンの悪事を潰した方が良いだろう。
それにカガリとイズミも気になる。
どちらも抱きたい女性達だしな。
取り敢えずはアオギリ率いるアクア団とマツブサ率いるマグマ団を何とかしないといけない。
「サカキ、アクア団のボス、アオギリとマグマ団のボス、マツブサにはコネクション有るか?」
「あぁ、取引した事が有るからな。 どちらも陸に、海に深い執着を見せていたが、伝説のポケモンまで利用するとまでは思わなかった。 団員達を奴等の組織に潜入させ、野望を阻止してみせる。 最悪は私も出張るつもりだ。 超古代ポケモンも私のミュウツー相手に楽に勝てなどしないだろう。」
物わかりが早いな。
流石、カントー、ジョウトを股にかけるロケット団の首領なだけは有る。
「頼んだぞ。 カントー、ジョウトには他に悪の組織は無いのか?」
聞きたかった事をこの機に聞いてみる。
「私達の他は精々が半グレ集団くらいだろうな。 叩くか?」
「あぁ、そうしてくれると助かる。 半グレだと軽視し、放置して強大化されても困るし、無用な犯罪行為をさせて被害者を出したくない。」
「わかった。 人選はこちらでしておく。 団員の中から欲しい人材は居るか?」
「じゃあムサシ達とドミノ、マトリっていう団員、ヤマト、コサンジ?とかいう団員は居るか?」
「ん? コサブロウか? 居るぞ。 呼んでくる。」
サカキが行って、暫くするとドミノとマトリ、ヤマト、コサブロウを引き連れて来た。
「マトリは私の秘書をしている。 地頭が良いので、サトシの第二の頭として使えるぞ。 ドミノ、ヤマト、コサブロウも非情に優秀だ。 サトシの手足として使ってくれて構わない。 勿論、ムサシ、コジロウ、ニャースもな。 では、そろそろ私達はホウエンへと向かう。 吉報を待っていろ。 シルバー! お前も一緒にホウエンに行くぞ。」
「あぁ、親父との初の仕事だ。 親父以上に実績を積むつもりだ。 俺よりヌルい仕事すんなよ?」
サカキは皆の紹介を手短かに済ませ、シルバー達を引き連れ、ホウエンへと早速向かって行った。
俺は残されたムサシ、コジロウ、ニャース、ドミノ、マトリ、ヤマト、コサブロウへと視線を向ける。
皆、決意を瞳に宿してこちらを見返して来る。
「皆にはこれから俺の直轄として働いて貰いたい。マトリは皆の纏めと指示・伝達、及び俺の補佐をして欲しい。」
「はい、わかりました。」
「ムサシ、コジロウ、ニャース、ドミノ達はジョウトへ向かい、半グレ共を潰し回って欲しい。 出来るか?」
『お任せ下さい!』
「ヤマト、コサブロウは此処カントーの半グレを担当してくれ。 出来るな?」
『お任せを!』
皆の良い返事を聞いて、俺は深く頷く。
「早速手中に収めたようだな。 素直に感心するぞ。」
「何かサトシを見てると歳下に感じねぇんだよな〜。 歳上が指示を飛ばしているみてぇだ!」
ワタルさんとゴールドさんがそう俺に言ってくる。
「そんな事無いですよ。 まだまだ始めたばかり。 これからですね。 ゴールドさんの場合はゴールドさん自身が子供みたいなものでは?」
「かぁ〜! 言うねぇ〜!」
俺の軽い煽りに笑いながらそう返す。
「よし、じゃあもう此処には用は無い。 帰るぞ。」
ワタルさんがそう言ってから踵を返す。
俺達ももう此処に居続ける必要も無いので帰る事にした。