第184話
大丈夫ですか!?
起きて下さい!
余りの騒々しさに、目が醒めた。
「ん…んぅ…っ!?」
俺が目を開けると、目の前にヒノアラシとモクロー、ミジュマルが俺を覗き込んでいる。
そして、そのポケモン達の後ろに居るおじさん。
「生きてますか!?」
「はい…大丈夫です…。」
俺がそう答えると、そのおじさんは安心した表情を浮かべた。
「空から落ちてきて驚きましたが…良かった、生きてますね!」
!!
この顔!
このセリフ!!
「ラベン博士!!」
「うわっ!! な、何ですか!? ぼ、僕は確かにラベンですが… 君のような人は見た事有りませんが…。」
そりゃそうだ。
俺が一方的に知っているだけだし。
「あ、そうですよね。 初めまして! 俺はサトシっていいます。 ラベン博士、よろしくお願いします!」
「え? あ、はい。 よろしくお願いします。 所で君の後ろに居るポケモン達は、もしかして君のポケモンですかな?」
ラベン博士の言葉に、俺は慌てて後ろを振り向いた。
そこには、イワークとリングマ、ストライクが折り重なるように倒れていた。
「お前等! 大丈夫か!?」
慌てて駆け寄り、傷薬を吹きかける。
すると、3匹のポケモンは目覚めたようで、俺に気付いた瞬間、飛び掛かって来た。
「ちょっ!? 大丈夫ですか!?」
「アハハハハ! お前等、無事で良かったよ! あ、ラベン博士! 大丈夫ですよ!」
驚いていたラベン博士だったが、俺達の様子を見て、心底安堵した表情を浮かべる。
「君はとてもその子達に愛されているようですね。 良かったです。」
一頻り皆を撫で終わると、俺は3匹のポケモンをボールに収めて、ホルダーに収納する。
「おや… 先程の傷薬といい、そのボールといい… そして、君の格好といい… 君は何処から来たのですか?」
ラベン博士が不思議そうに言う。
そりゃそうだ。
今のヒスイの技術で生み出せない数々だしな。
俺は正直に言う。
「遥か未来から来ました。 この件は御内密に願います。」
「遥か未来から…ですか…。 成る程… 納得しました。 わかりました。 誰にもこの事は言いませんよ。」
ラベン博士はそう口にした。
本気にありがたい事だ。
そして、ラベン博士は自分の事を話していると、唐突にヒノアラシ達が何処かへ駆け出して行った。
「オー! 可愛いポケモン達! どうして逃げたりするのです!? 逃げたポケモン達を追いかけるのです! 待って下さ〜い!!」
ラベン博士はヒノアラシ達を追いかけて行った。
レジェンズアルセウスの世界に紛れ込んでしまったな…。
恐らくあの穏やかな口調のアルセウス様に邂逅しないと、元の時代に戻れないだろうしな。
ラベン博士の下へ行く途中で、落ちていたアルセウスフォンを回収すると、俺の視界が真っ白に染まった。
白い空間に居る俺の背後に近付く気配がする。
「アルセウス様?」
「サトシ、我が分体がすまぬな。」
「何を謝ってるんですか。 大丈夫ですよ。 アレが貴方では無い事は理解しています。 それに貴方には何度も救けられていますからね。 仮に貴方に殺されても本望ですよ。」
「そう言ってくれると助かる。 我が分体も私の作った摂理の下に動いている。 恐らくはサトシの記憶にあるゲーム?と同じように、サトシに捕まえられる事も摂理に従って動いているのだろう。 そのヒスイにて、サトシが成すべき事を成せば、元の時代に帰すじゃろうて。」
「わかりました。 それでしたらお願いが有ります。 俺が消えた、その時間に返して頂けると助かります。 シロナさん達では神のポケモンを3匹も相手取る事も出来ないでしょうから。」
「うむ。 それはわかった。 だが、このヒスイで居た時間はどうにもならんぞ? 仮にサトシがこのヒスイで手こずって10年の歳月を費やしたならば、元の時代に返してもサトシだけ10歳年老いるからな。 努々忘れる事の無いようにな。」
それならそれで仕方の無い事だ。
迷わず首肯する。
「それで構いませんよ。 元の時代、元の時間に返して頂けるのであれば構いません。」
「そうかそうか。 では、サトシよ。 その時代を楽しむが良い。 サトシが何を成すのか、楽しみにしておる。」
そう言ってアルセウス様は立ち去ろうとしたが、何かを思い出したかのように立ち止まった。
「お、そうじゃそうじゃ。 その時代の分体達の事も、私に気にせず配下に加えても良いからな。 事を成した後にまた会おう。」
それだけ言うと、今度こそアルセウス様は立ち去って行った。
そして、俺の視界がヒスイへと戻って来た。
これでシロナさん達の事もほぼ解決した。
俺は俺でこの世界を楽しむか。
ラベン博士の下へ到着すると、ヒノアラシとモクロー、ミジュマルが楽しそうに遊んで居た。
そして、ラベン博士は何度もボールを投げたが、捕まえられなかったらしい。
ラベン博士からトレーナーとしての実力を認められ、代わりに捕まえてくれないかと提案される。
「っと…その前に逃げたあの子達の説明をしますね!」
ラベン博士がモクローを指差す。
「モクローです! 光合成という草の特徴を持ち、鋭い羽を飛ばして戦うようです。」
その次にヒノアラシを指差す。
「あちらにいるのがヒノアラシですね! ヒノアラシの背中の炎は、怒ったり驚くと勢いが増すのです。」
そして最後に水辺で遊んでいるミジュマルを指差す。
「池の側に居るのはミジュマルといいます。 ミジュマルは水上で浮かんで寝たり、お腹の貝のようなモノで戦ったりします。」
ラベン博士は一頻り説明し終えると、モンスターボールを手渡して来た。
「君が既にボールを持っているのは知ってるんですが…此処ではこのボールを使うと良いでしょうね。 さぁ、ポケモン達を捕まえて下さい! 僕には狙った所に投げる才能が有りませんからね。」
ラベン博士は俺にこの時代のモンスターボールを手渡した。
だが、ゲームの時のように大量のボールでは無く、5個だ。
それでもこのボールを所持出来るのは純粋に嬉しい。
このボールを持って帰ったら、シロナさんにも良いお土産になるだろう。
「ありがとうございます! では早速捕まえて来ますね!」
以前はカスミに怒られた、レジェアル仕込みのゲット法を此処でなら誰に憚る事無く使える。
早速一番手前に居るヒノアラシへと視線を向けた。
足音を立てないように、ヒノアラシの背後へと近付く。
ヒノアラシはまだ気付いていないようだ。
すると、ヒノアラシは明後日の方向へ駆け出した。
一瞬気付かれたかと思ったが、そちらに興味が移っただけだ。
大丈夫、まだ焦る時じゃあない。
今一度好機が来るのを手ぐすね引いて待てば良い。
少し間を置くと、ヒノアラシが再度近付いて来た。
だが、今は正面を向けている。
そこで思考を変えて、其処ら辺に転がっている石ころをヒノアラシの背後に放る。
石ころは曲線を描きながら、ヒノアラシの背後へと落ちた。
その音に吃驚して背中の炎の勢いを増したヒノアラシが石ころの方へと振り向いた。
チャンスだ。
俺はヒノアラシの後頭部に向けて、貰ったボールを投擲する。
ヒノアラシは後頭部に衝撃が来て吃驚しているようだが、ヒノアラシの体はボールに吸い込まれていった。
無事に一発で捕まえると、ラベン博士が興奮したように言う。
「オー! 素晴らしいです! 流石のお手並みですね!」
その言葉に気分を良くした俺は、残りのミジュマルとモクローを立て続けに捕まえる事に成功した。
「ありがとうございます! いや〜助かりましたよ! 良いですか? 君に捕まえて貰った3匹のポケモンは、調査の為に村に運ばれて来たばかりで、誰の言う事も聞かないのですよ。 君の落下をわかっていたかのように村を飛び出してしまうし… それにしてもサトシ君! 君のボール捌きには驚きです! 君は此処で何かを成す為に来たようですね。」
そう言って、ラベン博士の表情が引き締まる。
そして語る。
ラベン博士の夢はポケモン図鑑の完成で有る事。
今のモンスターボールは開発されたばかりで、俺のように上手く扱える者が居ない事。
俺の夢とラベン博士の夢が同じで有る事から、協力し合える事。
「どうでしょうか? 助け合うというのは?」
答えは決まっている。
「協力しない手は有りませんよ! 頑張りましょう!」
俺とラベン博士はガッチリと握手した。
「そうと決まれば早速村へ帰りましょう! 君の衣食住の手配もせねばなりませんし… それでは案内致します! 僕達のコトブキ村に!」
楽しみだ。
最後に見たのは、画面越しに見た14年前だ。
実際のコトブキ村がどんな感じなのか、楽しみでワクワクするな。
俺達はコトブキ村へと足を運んだ。
次話も明日の12:00と20:00に投稿します。