ロボット研究部での仕事もついに今日が最終日になった。
コンテストの締め切りも今日までだが、提出会場は高校のすぐ近くのようでギリギリまで調整ができる。とは言っても制作はボタンが頑張ったおかげで順調に進み、今日の作業は実際に動かして粗が目立つところがあれば手を加えるぐらいものだ。
机の上でドレスを着た女性がバイオリンを弾く。楽曲は誰もが知っているようなクラシック。五分ほど一人で演奏して、最後は綺麗にお辞儀をして動作が止まった。どことなく自慢げな顔をしているのが愛らしい。
「どうでしょう?」
停止した自作ロボットの出来具合をやや心配そうにボタンが伺ってくる。
「かなりスムーズになったな。動きはもう弄らなくても大丈夫だと思う。ただ演奏中のノイズが気になる。多分、胴体の部品がちょっと調子悪い。直そうか」
「はい」
真っすぐに返事をして、ロボットの背中を開き、一つひとつパーツを舐めるようにボタンはチェックし始めた。俺はボタンにアドバイスをしながら彼女の作業の手際を見ていた。
ほんの数日でよくここまで成長したものだ。横で彼女の成長を見ていると、誰かに教えるというのも気持ちが良いものだと気付かされる。
一瞬、そういう教室でも開こうかなと思って、すぐに諦めた。
金掛かりそうだし、生徒を何人も持つのは面倒そうだ。俺には向いてない。
◆
一時間ほどボタンと作業をしていると、手持ち無沙汰解消に部室の工具を片付けていたマキナが不意に俺に言った。
「明日の朝で帰るのよね?」
「そのつもり」
「家に食料あるっけ?」
「……アルラさん」
食料事情を完璧に把握しているであろうアルラに聞くと、はっきりと首を振られた。
「無いです。金欠で今月は買い物の頻度を極端に減らしてます」
俺もマキナもですよね、という顔で互いに見合わせた。
「私が買い物行っとく? ビークルに冷蔵ボックスあるでしょ。忘れないうちに食材買い込んどいたほうがいいわよ」
「そうだな。アルラ、付いて行ってくれ。マキナ一人だと心配だ」
「おつかいもできない子だと思われてる?」
「節約ができない子だと思ってる。どのみち荷物持ちは必要だろ」
「むーん」
子供扱いされてるようでマキナはむくれた。そういうところが子供っぽいし、威厳がない。可愛いポイントではあるけども。
不満なマキナと違って、アルラは「分かりました」と俺の財布を預かりマキナを連れて行った。
「適当に飲み物とおやつも頼む」
部室を出ていく二人にそう付け加えて見送った。無駄遣いしている余裕はないが、頑張っているボタンへの差し入れは必要経費だ。アルラなら上手いことやりくりしてくれるだろう。
二人が買い物に出かけて間もなくすると、ロボットの手直しも無事に終わって、気になるところがなくなった。贔屓目なしに見てもかなりよく出来ていると思う。俺はコンテストに出たことがないためどんな作品が評価を受けるのかは不明だが、外見も綺麗だし動きもいい。ボタンが喜ぶ結果が出ることを切に願う。
ボタンがパソコンでロボットのアピールポイントなんかをまとめている間、暇な俺はぼんやりと窓の外を眺めていた。
数年ぶりの学校は俺が通っていた高校より進んでいて綺麗な場所だったが、それでも懐かしい気持ちを味わえた。高級ホテルにも泊まれたし、遠路はるばる来て正解だった。
……にしても。
シンと静まり返る部室を見回した。気まずいわけでもないが、人数が急に半分になるとどうしても寂しさを感じてしまう。
「改めて考えると凄いな。ずっと一人で活動してたなんて」
「一人というのも中々いいものですよ。気楽に出来ますし。でも、そうですね……皆さんと一緒に過ごしたここ数日を思うと、明日からは寂しくなりますね」
「俺もつい最近まで一人で修理屋やってたから何かの拍子にアルラ達が居なくなったらと思うと、怖いよ」
自分で言っててゾワッとした。あまりこういうことは考えないようにしよう。
「ナオさん一人だったんですか?」
「ああ。アルラもマキナも、ほんの数か月前にうちに来た」
「仲がいいのでもっと前からお知り合いなのかと思ってました」
意外そうに目を丸くしてボタンが言う。
傍から見るとそんなに仲良く見えるのだろうか。うちの母親もマキナと俺が付き合ってると勘違いしていたし。自分自身では距離感とか親密度というのは分からないものだ。
「あ、あの……」
そんなたわいもない話をしていると、ソワソワした様子でボタンが俺を見つめてきた。
「ん? なんだ?」
「アルラさんってどこで買ったんですか? アンドロイドって高いじゃないですか。お金に困ってるって話をよく聞くのに、どうやって買ったんだろうって思って」
「買ったわけじゃない。実はアルラはジャンク品でな、身体が上半身しかない状態で捨てられてたんだ。それをうちの常連が拾って仕事の報酬代わりに俺にくれた」
「じゃあ、ナオさんが修理して今のアルラさんになったってことですか?」
「そう」
「そうなんだ……」
何かがスッキリしない顔でボタンは呟く。
「気になることでもある?」
「いえ、何でもありません! 滅相もないです……」
「回答が噛み合ってないぞ。……アンドロイドに興味あるなら直接アルラに話を聞いてみたらいい」
「……その、アンドロイド自体にも興味あるんですけど、使い方というか、なんというか」
「使い方?」
「……ナオさんが”あの”下半身を付けたってことは、やっぱり男の人ってそういうことのためにアンドロイド買うのかなって気になって」
言いづらそうに膝元に目を落としたボタンに、あっと察した。
まさかと思いながら、乾いた口で恐る恐る彼女に聞く。
「……もしかして見た?」
「……はい。この前、夜にお話しようと思って皆さんが使っている部屋の前まで行ったら、中から声が……」
額に冷や汗が流れた。反射的にバッと彼女から顔逸らす。
メイドはああ言っていたが、家主のボタンに許可をもらったわけではないため、責められたら何も言い返せない。力ある両親にこの話が行ったらどうしよう。例の次女に殺されるかも、と背筋が凍る。
いや、それよりも。
普通にこの状況が気まずい。知り合ったばかりの女子高生に自分の情事を――それも三人でのちょっと異質なプレイを見られていたとなると、ボタンの顔を見れない。
頭が上手く働かず、顔を背けたまま固まる俺に、ボタンは震えた声で続けた。
「実際どうなんですか? マキナさんともシてたみたいですけど……アンドロイドと人間って違うんですか?」
「この話はやめよう」
「聞きたいです。将来アンドロイド開発にも関わるかもしれないので」
それまでと一変して芯のある、やけにはっきりとした言葉が聞こえて、俺はゆっくりと隣のボタンに目を戻した。
ボタンは気まずそうに瞳を揺らしていたが、上目遣い気味に俺と目を合わせた。
今思うと、この瞬間には俺もボタンももう、この先に何が起こるか見えていたと思う。
俺はどう答えようか悩んで、飛び跳ねる自分の心臓を煩わしく思いながら、言った。
「……あまり深くは言えないけど、マキナもちょっと特殊だから人間との違いは分からない。普通の人間とはシたことない」
「そ、そうなんですね」
まあまあなカミングアウトのような気もしたが、意外と恥ずかしいとは思わなかった。もっとみっともないところを見られていた以上、自分の経験相手の話はしやすいのかもしれない。
「マキナさんとどういう関係なんですか? アンドロイドでもないのに一緒に住んでいるみたいだし……恋人、とかですか?」
「いや……仕事仲間?」
「仕事仲間……」
俺の言葉を繰り返して反芻しているのか、ボタンは自分の指をモジモジと絡めた。
そこまで取り乱しもせず掘り下げてきた彼女に、俺は勝手な憶測が浮かんで静かに尋ねる。
「興味あるの?」
「何がですか?」
「そういう事に。わざわざ聞いてくるって積極的なタイプに見えるけど」
「っ……!」
それまで少し赤かった程度のボタンの顔が一気に真っ赤に染まる。ビクッと身体を震わせて、スカートを挟み込むようにキュッと太ももを閉じる反応に、邪な心がくすぐられた。
ボタンがチラリと俺の目を見て、すぐに逸らしてを何度も繰り返す。
ジッと彼女の回答を待っていると、静寂な空間でも聞き逃してしまいそうなほど小さな声が聞こえた。
「か、彼氏、とか、いたことなくて……でもその、ちょっと……」
ボタンの指先が俺の手の甲に触れた。
今にも泣きそうな目で「そこから先は察してください」と訴えてくる。
キュートアグレッション的な衝動が湧き上がる。
可愛すぎて虐めたくなる感覚。
自分のモノにしたくなる支配欲。
そこからは考えるより先に身体が動いていた。彼女の手を握って、寝かせるように床に押し倒した。
なるべく優しく倒したが、ボタンは驚いていて怯えた目をしていた。両手を恋人繋ぎにして握ると、覚悟を決めたように目を瞑った。
「学校なので、キスまでで……」
「分かってる」
大嘘。全くキスで止める気はなかった。
上から覆い被さったままそっと口付ける。ピクッとボタンの手が動く。
「んっ……ん、ふ……っ」
くすぐったそうな声が鼓膜を揺する。
彼女の反応がもっと見たくなった。一回、二回、三回と角度を変えながら唇を啄む。
「キス、初めてだった?」
「は、はい」
「まだできる?」
ボタンはコクコクと首を縦に振る。緊張した面持ちで期待しているのが愛おしい。
「舌、出して」
「大人のキス、するんですか?」
「興味ない?」
「……動かし方とか、わかんないです」
「俺がやるから大丈夫。口開けて」
ゴクリと喉を大きく鳴らすと、ボタンは軽く口を開けて、小さく舌を出した。
控えめに顔を出す彼女の舌に、俺も舌を出して重ねる。唇を大きく動かして貪るように口内を味わうと、ボタンの足がモゾモゾと動き出した。
「んっ、んっ、ぁ……んむっ、あ……っん、ふぁ……」
艶っぽくなる吐息にこっちの温度も上がってくる。接吻を交わしながら太ももをそっと撫でた。
「き、キスまでって……!」
「ちゃんとキスしてる」
「じゃあなんで触るんですかっ」
ボタンを無視してスカートの中に手を滑り込ませた。ショーツ越しに割れ目をなぞると、ボタンが自分の口に手を当てて声を抑えながら必死に俺を止めようとした。
「あっ! ん、待ってくださいっ……んんっ……本当に、学校はマズイです……はっ……あっ。…………お、お家じゃダメですか?」
「大丈夫。帰ってからもするから」
「そういうことじゃな…………あ」
どうしても止めたがるボタンの手を取って、俺の股間を触らせた。ズボン越しでも熱くなっているのが伝わったようで、ボタンは固まった。
我慢できない俺の欲をようやく理解した彼女に「チャック。下ろしてくれる?」と言うと、ゆっくりと俺のズボンのチャックを下ろしてくれた。そして細い指先を下着の前開きに誘導させて、竿を取り出させる。
「あ、うっ……男の人の……」
もう硬くなっている俺の息子にボタンは釘付けになっていた。怯えたようにも興味津々なようにもとれる表情で、ボタンは竿を握る。
「硬い……熱い……」
「スカート。捲るぞ」
「…………」
「ダメだったらダメって言ってくれ」
我ながら意地が悪いと思う。押しに弱く、行為に興味を持っているボタンがNOと言わないことは分かりきっていたのに、わざわざ聞くなんて。
ボタンは視線を泳がせて、プイッとそっぽを向いた後、「……優しくしてください」とだけ言って全てを俺に委ねた。
俺は頷いて返して、彼女のスカートに手を掛ける。大きく捲ると水色のシンプルなショーツに股間部が隠されていた。
ボタンの腰を浮かせてショーツを完全に脱がせると薄く毛が生えた恥部が現れた。アルラもマキナも生えていないから、女性の毛が生えたソレを生で見たのは初めてだった。
いつもと違う見た目に血が騒ぐ。
早速、割れ目に先端を当て、優しく沈めるように中へと押し進める。
「はっ……んぅ……き、来てる……」
恥ずかしくて見れないのかボタンはずっと横を向いていた。
少しずつ挿れながら彼女の反応を見ていたが、特に痛がる様子もなく奥まで到達した。
初めてを失った証拠として少量の血が流れていた。
「痛くないか?」
「少しジンジンするくらいです。本当にセックスしちゃった……」
「動くぞ」
「はい……あっ、ん、あ、あっ」
仰向けで転がるボタンを見下ろしながら、ゆっくり中を往復する。
小さな嬌声を上げるボタンの顎を持って俺に顔を向けさせた。するとボタンは咄嗟に両手で顔を隠した。
「み、見ないでください……んんっ!」
「可愛いから見たい。それに顔向けてくれないとキスできない」
「うぅ……」
観念して手をどかし、ボタンはキスをせがんだ。また覆い被さって唇を合わせる。もう一度深いキスをしながら、腰を動かすと嬌声が段々甘く蕩けたものになってくる。
「んむっ、ちゅぅ……ん、んっむ、あっ♡ ちゅっ♡ ふっ、ああ……♡」
「声、艶っぽいな。気持ちいい?」
「わかんないですっ! んっ! んぢゅむぅ……むっ、んっ、はあ……♡」
なるべく優しく奥を叩くとボタンの目が蕩けてきて、彼女の方から舌を絡ませるようになった。
初めてとは思えないほど感じている姿に俺の動きも速くなってくる。締まりの良い身体を存分に楽しみながらボタンと共に溶けていく。
心の奥深くまで密着するように一つになって、お互い快楽を噛み締めていた。
「あ、あんっ♡ んぐっ、んちゅるっ、んむぅ……ぢゅっ、んあっ! そこグリグリされると……やあっ♡」
反応の良かった部分を執拗に攻める。
涙目を浮かべて快がるボタンにボルテージは上がり続ける。込み上がってきて余裕がなくなり、どんどん激しくなっていく俺にボタンは何かを感じ取ったようでブルブルと首を横に振った。
「な、中はマズイです! 赤ちゃん出来ちゃうっ。あっ、あぐっ♡」
「ハボタン、可愛い。孕んでくれ」
「あうっ……」
「孕めっ」
「き、きちゃうっ! い、あっ♡ んんんっ〜〜〜♡♡♡」
最大限まで溜め込んでボタンに放出した。ボタンも同時に達してビクビクと痙攣している。
お互い抱きしめ合いながら余韻に浸った。
「はあ……はあ……♡ 中に出されちゃった……♡」
「最後痛くなかったか? 結構、強く突いたけど」
「ちょっとだけ痛かったです、けど……ゾクってしました」
えへへ、といつもの可愛らしい笑顔を見せるボタンにもう一回、キスをした。
◆
情事を終えて乱れた服を着直すと、ちょうどアルラ達が帰ってきた。
「ただいまー」
レジ袋を手にぶら下げたマキナが我が家同然といった顔で部室に入る。その後ろからアルラも両手に大量の購入品を引っ提げて入ってきた。
熱が冷め、冷静になった俺達がどこかよそよそしい空気のまま「おかえり」「おかえりなさい」と言うと。
「なんかヤッた?」
「セックスしましたね?」
一瞬で二人に看破された。
顔が真っ赤になったボタンが俯いてしまって、隠すこともできず、大人しく白状した。
多分、帰ったら罰としてこの二人に搾り取られるだろう。身体が持ちそうにない。