丸く白いボウル型の皿にサラダが盛られている。千切った葉野菜に半月切りのトマト。その上には絵に描いたような波状のドレッシングがかけられていた。
お皿を持ってフォークでトマトを刺し、自分の口に持っていこうとしたところで体がブルリと震えた。全身を巡るくすぐったさに、俺は思わずお皿を机に戻して背後のアルラに言った。
「あ、アルラ。今、飯食ってるから……」
真後ろから俺を抱き締めるように体を寄せるアルラに震える声で言うと、彼女は手の動きを止めることなく耳元で囁いた。
「昨日はすぐにお休みになったので出来ませんでしたから、今日は早めに済ませておきましょう。朝一で発散すると仕事に集中しやすくなるとのデータもあります」
アナウンサーのような透明感のある声が俺の頭に響く。チラリと机の下を覗くと、白い手がグロテスクに腫れた棒を握って上下していた。美しく清楚な声とは裏腹に手の動きは艶かしくて、膝が震えた。
「気にせず朝食を食べてください。こちらで抜いておきますから」
「気にせずとか、無理だって!」
赤く膨らんだ先端に手のひらを押し当てられて、グリグリと撫でられる。強烈な刺激に体が丸まりそうになるが、うちのアンドロイドは許してくれなかった。
「体に力を入れないでください。脱力して我慢せず、素直に出してください」
朝から一番弱いところを責められているのだ。リラックスするよう言われても無理に決まっている。それに出せと言われてあっさり出してしまうと、情けないような気がして、変なプライドが湧いていた。そのせいで体に力を入れて耐えようとしてしまう。
俺が我慢しているのを悟ったのか、アルラは体を密着させたまま俺の右耳に齧り付いた。
「……んむっ……んぢゅ……ん、れろれろ……」
「や、やめ……っ」
「すいません、マスター。舌も使った方が効率的かと思いまして。……んん、ぢゅるっ! れろぉ……んぢゅう……ちゅるるっ。ん、れろれろれろれろぉ……」
右耳が温かい吐息と這いずってくる舌によって犯される。
「はあ……ん。……んむぅ……」
時々、色っぽく聞こえるアルラの声も入ってくる。立て続けに襲ってくる快感の波に息子がビクビクと跳ねると、アルラが手の動きを速く、大きくした。
「ん、れろぉ……ちゅっ。……そのまま私の手に射精してください。……んんむぅ、ぢゅるるっ。れろれろれろれろ……」
左手で上下されながら、右手で先端を撫でられ、俺はとうとう果てた。
体が痙攣しながら何度も発射する。全てアルラの手の平に吐き出して、女性らしい華奢な手を生々しく汚した。
長い射精の後、ようやく俺の息子が落ち着くとアルラは俺から離れてティッシュで手を拭いた。
「出ましたね。マスターの陰部は綺麗にしておきますから、そのままお食事を続けてください」
そう告げてアルラはティッシュ箱を片手に俺の足元に潜り込んだ。
お食事を続けてと言われてもそんな気分になれず、トマトを喉に通すのにやや時間が掛かった。
初めてアルラに口でされてからあっという間に一週間が経った。あの日以降もタイミングを見計らってはアルラは俺の性処理をこなしていた。俺はまだそんな生活に慣れていなくて毎回後ろ向きな反応を示したが、半ば無理矢理されている。
そんな生活を数日過ごした俺の気持ちはというと、複雑なものだった。男として嬉しい気持ちは確かにある。恋人もいない、風俗にも行ったことがない、そんな寂しい人間にはあまりにも甘美なサプライズ。嬉しくないはずがない。
ただ、急に訪れたピンク生活だからか素直に自分を曝け出せずにいる。正直なところ、もっとアルラと色々な事がしてみたい。
アルラは襲っていいと言っていたが、自分の性欲に従順になるというのも案外難しい。女性の身体を好き勝手使うなんて妄想はすれど、アクションに起こせるほど俺は勇気のある人間じゃなかった。
醜い願望が膨らむだけ膨らんで実現出来ないせいか、アルラに抜いてもらってもモヤモヤとしたものが心の奥で渦巻いている。
そんな自分から目を逸らすため、今日も修理に没頭する。
今回の修理品は膝高ぐらいのゴミ箱だった。銀色のボディに幾つかのセンサーが取り付けられたゴミ箱。専用のリモコンがあって、ボタンを押すとリモコンを押した者の元まで自動で来てくれる機能がある。だが、リモコンのボタンを押しても反応しない。内部パーツの経年劣化か、単純に接触不良でも起こしているのか、取り敢えず解体して中の様子を見た。
一方、アルラは作業場の片付けをしていた。毎日アルラが片付けてくれるものの、俺がすぐに散らかしてしまっていた。趣味で作った物を飾ったり、いつか触ろうと思っていた機械を部屋の片隅に固めたりして、そんな散らばったおもちゃ達をアルラは母親のように何も言わずに整理していた。
だが、流石に気になったのか、もしくは我慢の限界だったのか「マスター」俺に訊ねた。
「これは必要な物ですか?」
呼ばれて振り返ると、アルラがジャンク品のタブレット型端末を持ち上げていた。
「ああ。直して使う」
「すでに十台以上、お持ちなのにですか?」
「だって拾ったし……」
「……処分を覚えないと私がいくら片付けても物で溢れかえります。倉庫のキャパシティも限界が見えてきてますよ」
「で、でもタブレットは複数台あってもいいだろ。予備として」
自分でもこんなにタブレットは必要ないと思う。それでも捨てられたくなくて適当に思いついた理由を口にした。そんな俺にアルラはまだ何か言いたげな雰囲気を滲ませながら「そうですか」と呟いた。
「……そろそろ断捨離しないとマズい?」
「ええ」
「そうだよなあ。今週中に要らないものまとめて売りに行くか……」
「と、言いつつ動かなさそうですね」
アルラは期待感のない目で俺を見て、元の作業に戻った。……本当に母親みたいだ。
◆
その夜。また二十二時に差し掛かる頃にベッドへ促されて、布団を被った。パチンと電気が消され、暫くすると暗闇に目が慣れてくる。傍らに立っているアルラの姿がはっきりと見え始めて、どうしてもその気配が気になった。
「毎回言ってるけど寝にくい。ずっとそこにいるのやめてくれ」
「お困りごとがあったらすぐに聞けるよう、常にお側に居た方がいいでしょう。ちゃんと熟睡できているか確認する必要もありますし。……それで、今晩もしましょうか?」
「朝やったからもういい」
「そうですか」
俺が断ると、アルラは淡々と相槌を打つ。それからはパタリと会話が止んだ。
アルラを気にしないよう、彼女に背を向けて横になった。さっさと寝ようと目を瞑る。だが、それから寝よう寝ようしても、どうにも眠れなかった。一度意識してしまうと、彼女の存在がいつまで経っても気になる。
「いま何時?」
背中を向けたまま聞く。
「二十二時二十四分です」
正確な時間がすぐに返ってきた。
布団に入って二十分以上経っている。聞いておいてなんだが、時間を知ると寝ることに焦ってしまって余計に眠れない。
何度か寝返りを打つと見かねた様子のアルラが提案した。
「添い寝でもしましょうか?」
「だから子供じゃないんだって」
そう言って突っぱねる。どうしてここまで子供扱いされているのやら。もしかしてこうやって拗ねれば拗ねるほど、子供っぽく見えるのだろうか。
また、訪れる静寂。自分の呼吸音だけ聞いていると、頭の中で滲むようにアルラの言葉が湧き出した。
添い寝。隣で誰かが一緒に寝てくれる。
その言葉を頭の中で繰り返しているうちに、朝食時の事を思い出した。あの時、アルラは後ろから俺を抱きしめるような形で抜いてくれていた。息子の方に意識がいっていたが、思い返してみると抱きしめられた時の感触や安心感は計り知れないものだった。
アルラに対して願望を燻らせていることもそうだが、俺は自分が思っている以上に人肌を求めているのかもしれない。
「アルラ」
仰向けで天井を見つめながら少しだけ自分に素直になろうと、彼女の名前を呼んだ。
「はい」
俺の呼び掛けにアルラは静かに答えた。
「こっち、来てくれ」
それだけ言うとアルラは掛け布団を軽く捲って、俺の右隣で横になった。
「結局、子供じゃないですか」
「いやただの興味本位というか実際のところ添い寝で眠れるのかなっていう実験的な意味合いの方が大きくて……」
「正直に言っていいですよ」
「……抱きしめてみたい」
「ご自由にどうぞ」
アルラが俺の方を向いて軽く手を広げる。
花に誘われるように自然と抱きつく。人体と遜色ない柔らかさが伝わってくる。温かい体温が俺の体にまで巡ってきて心が安らいだ。
もう少しくっ付きたくなって背中に回した腕に力を入れると、アルラの方から近づいて来た。暗闇の中でも分かる端正な顔にせっかく安らいだ心がドキンと跳ねた。
「マスターはあまり私の身体を弄ったりしませんね。女性の身体に興味がないというわけでもないでしょう。もっと好きにしていただいてもいいのですが」
「……単にヘタレなんだよ」
「女性経験はお有りですか?」
「……」
「なるほど」
「まだ何も言ってない」
「沈黙は肯定と受け取ります」
あっさりと看破された経験人数に羞恥心を隠せなかった。アルラの赤い瞳から目を逸らす。
「再三再四言いますが、私は道具です。何も遠慮や躊躇は要りません。お好きに、どのようにでも使ってください」
そう言ってアルラは俺の手を取る。そしてそのまま自分の胸に当てさせた。豊満な胸に俺の指が沈む。その柔らかさに俺は情けなく動揺した。
「やわっ……」
「どんなことがしたいですか? 乱暴に剥いて暴力的に汚したいですか? それとも母親のように甘やかされたいですか? もしくは恋人のように蕩けるような時間を過ごしたいですか?」
どんな欲望も受け入れるという天使か悪魔か分からない囁きで、理性が剥がされていく。
本能のままに、直感的に、アルラの問いに答えた。
「全部したい」
「欲張りですね」
相変わらずピクリとも表情を変えなかったが、声色はどこか笑っていたように聞こえた。
◆
「ぢゅっ……ん、ちゅ……ん、ふぅ……ぢゅうぅ……れぉ……んむぅ……」
小さな部屋に唾液とリップ音が響く。仰向けの俺の上からアルラが覆い被さって熱烈に舌を絡ませていた。アルラの長い舌が口内を犯してくる。何とか応えようとこっちも舌を絡ませにいくが、甘く蕩けるようなキスに一方的にされるがままだった。
「んむぅ……ちゅ、ん……じゅるるっ……ん、ん、ちゅぅ……。どうですか。お望みの恋人キスは。んちゅうぅ……」
感想を求めてくるのに喋らせる気がない密着具合だった。返答の代わりにアルラの首に回した腕に少し力を入れると、「気に入ってもらえたようですね」とアルラは目を細めた。
そんな口同士でのやり取りが何分も続いて、俺の息子ははち切れそうになっていた。ようやく唇を離してくれたアルラがズボン越しに俺のを撫でる。
「今までで一番硬くなってます。要望はありますか?」
「胸で……パイズリしてほしい」
「分かりました」
アルラはコクンと頷くと、青いワンピースを脱いで瑞々しいボディを露わにした。
出るところは出て、引っ込むところは引っ込んだ理想的なフォルム。桃色に色付く乳頭がピンと張っていた。
修理する際に見たとはいえ、その身体を堪能する目的で見ると、頭が沸騰しそうになる。
「見た目はこのままでいいですか?」
「変えられるのか?」
「髪色ぐらいなら」
「……銀髪とか、出来る?」
試しに言ってみると、一瞬でアルラの黒髪が銀色に染まった。月光のような美しい銀髪。黒髪の時よりも幻想的で現実離れした美しさだ。
今からこの絶世の美女が何でも受け入れてくれる。そう思うと居ても立っても居られなくて、アルラと入れ替わるように彼女を押し倒した。
ベッドに広がる銀髪。ジッと赤い目が俺を見つめていた。
自分の服も下着も全て脱ぎ捨てて、アルラに赤黒い竿を見せつける。するとアルラも自分の胸を持ち上げて俺に見せつけてきた。
その豊満な山の間に勢いよく挿し込む。
「ギュッとしますから、好きに動いてください」
アルラが胸を両手で抑えて圧迫感を増してくる。ふわふわに包まれる感覚に腰が抜けそうになるのを堪えながら、快楽だけを求めて腰を振った。
前後に行き来する息子の先がアルラの顔に近づくたび、透明な汁がドクドクと溢れ出した。するとアルラが上目遣いで俺の顔を見ながらその先端を舐めた。
「れろっ、んちゅるる……ん、ふっ……れろ」
「それ、エロすぎっ……」
「ちゅっ、んちゅぅ……カウパー吸われるの好きなんですね。……じゅるるるるっ! どれだけ吸っても溢れてきますよ」
「も、もっと品のない感じで頼む」
「……おちんぽ汁、しょっぱくて美味しいです。もっと飲ませてください」
要求通りにセリフまで変えてくれた。自分の欲求が一気に満たされたような気がして身体が悦ぶ感覚を覚えた。下劣なのを自覚して一瞬自己嫌悪に陥ったものの、そんなものは快楽にかき消されてひたすら腰を振った。
「……っ」
「もうイキそうですか? いいですよ、出したいように出してください……んちゅ、ちゅぱっ。……んちゅるるるっ……れろれろ……。マスターのおしっこザーメン、私のおっぱいでお射精してください……ぢゅううううっ!」
アルラが最後に先端を咥えて強く吸い上げた。俺は我慢の限界を迎えてアルラの口に一気に吐き出す。力強く息子が脈打ちながら、何度もアルラの口内を汚した。
息子の躍動が治ったところでゆっくりと引き抜く。そしてアルラの頬を撫でると察しの良い彼女は「あー……」と口を開けた。健康的な口腔内に白く濁った液体が塗りたくられている。舌の上には水溜りも出来ていた。
たっぷりと俺の成果を見せつけた後、アルラはゴクリと喉を鳴らして飲み込んだ。
「健康的な量です。味も問題ないですね」
冷静に分析するアルラに苦笑いを溢すと、彼女はキョトンと首を傾げた。
「何か?」
「ブレないなと思って。これだけの事やっても嫌な顔ひとつせず、俺の生活改善だけ考えてくれてるんだな」
「それが仕事ですから。ですが……」
「うん?」
「下品な言い回しを頼むのは流石に引きました」
「おおう……」
思い返すと死にたくなる。直接アルラに言われると、なおさら恥ずかしい。
俺がアルラから降りて頭を抱えていると、アルラはティッシュで汚れた胸や口周りを拭きながら追撃するように言った。
「マスターの精液、美味しかったです。また飲ませてください」
微塵も思ってなさそうなトーンでそんなセリフを吐くアルラ。
俺はまた我慢出来なくなって、彼女を押し倒した。