天井に右手を翳す。電球の光を遮るように手を開き、ギュッと拳を握った。アクセサリーとは無縁の生活を送っている俺には、指輪の感触は不慣れなもの。
もう一度パッと開き、握る。
アルラからプレゼントを貰って、二時間はこうして遊んでいた。
そろそろ寝る時間だがソワソワして寝付ける気がしない。傍で佇むアルラもこんなに俺が気にいると思っていなかったのか、落ち着かない様子で俺を見ていた。
ずっと同じ光景を見せられて飽きてきたマキナが、俺の隣に寝転がる。
「いつまでそうしてるのよ。おもちゃ貰った小学生じゃないんだから」
「気持ちはあの頃より弾んでる」
「はーあ。幸せそうで羨ましい限りだわ」
本気で妬んでいるわけではないだろう。呆れた口調の中にも微笑ましいという気持ちが隠しきれていない。
もう少しこの指輪を眺めていたい気分だが、そろそろ寝ないと、明日のマキナの搾取に身体が耐えきれない。俺は名残惜しく思いながら、「アルラ。そろそろ電気……」とアルラに声をかけた。しかし彼女はその場から動かなかった。
「マキナ様」
アルラが名前を呼ぶ。呼ばれた張本人は仰向けであくびをして気の抜けた返事をした。
「なにー?」
「……これを」
アルラがマキナのお腹に小さな白いケースを置いた。
キョトンと疑問符を浮かべたマキナがケースを取り、開ける。
俺も気になって覗いてみると、中には女性用のネックレスが入っていた。
細いチェーンに丸いリングと、小さな青い石のチャームが通されている。リングには蛇が絡まったような妙なレリーフが刻まれていた。
マキナはネックレスを眺めた後、もしかして、とアルラに顔を向ける。
「私に?」
「ええ。付き合いも長くなってきましたし、私の身体をアップデートしてくれたお礼もまだでしたから、マスターのついでに渡しておこうかと」
「もー。素直じゃないなあ。でもありがと!」
やや周りくどい感謝にマキナは破顔して、すぐさまネックレスを自分の首に身につけた。鎖骨辺りでお淑やかに光るリングを撫でながらマキナは静かに打ち明けた。
「正直、自分が神になっても、存在する意味ないなあとか思ってたの。信者もいないんじゃ、やる事ないもの。けど、この力でアルラが少しでも前に進めたなら、私も救われた気がするわ」
アルラは何も言わない。マキナの安心した目を見てほんの小さく笑っただけだった。そんなアルラにマキナも笑って返すと、自分のネックレスについて素朴な疑問を投げかける。
「ところでナオの指輪はプロが作ったのかってぐらい綺麗なのに、なんで私のは模様がグチャっとしてるの?」
「マスター宛てに作った物の失敗作を流用しているので。貴重な素材ですから、捨てるわけにもいかなかったんです」
「……まあ、いいけどさ」
マキナの複雑な心境が痛いほど伝わってきた。相変わらずアルラはマキナに対してだけ当たりが強い。
慰めてと言わんばかりにすり寄ってきたマキナの頭を俺が撫でると、アルラが電気を消して、今日が幕を閉じた。