目を覚ますと、見慣れた天井が目に映った。間接照明の柔らかな光に調整された天井灯がじんわりと俺の意識を呼び起こして、ここが自分の家であることを思い出させる。
いつの間にか寝ていたらしい体を起こすと、掛けられた布団が崩れる。
「いっつ……」
ベッドの上であることを自覚した瞬間、頭がズキンと痛んだ。強烈な痛みに顔を顰めるとキッチンからアルラがコップを片手にやって来た。
「大丈夫ですか? 水を飲んでください」
差し出されたコップを受け取りながら、アルラに礼を言う。
「あ、ありがとう……なんで水?」
「散歩の帰りにお酒を飲んで気を失ったんです。覚えてませんか?」
コップに注がれた水を見ながら、頭の中を探る。なんとなく思い出せた。無精髭の男に拳銃の修理を頼まれて、俺はその報酬に酒を一口貰ったんだ。そして酒瓶を傾けて喉に酒を通した瞬間、目の前が真っ暗になった。あの酒は一体なんだったのか。
「あれは数年前に法律で禁止された白ワインです。表示上のアルコール度数は十%程度ですが、特殊なブドウを使っていて、舌に触れるとたちまち度数が数倍から数十倍に跳ね上がるというものです。個人差がありますがマスターとは相性が最悪だったようですね。一瞬で倒れるほどとは」
「なんつーもん飲ませてんだよ、あのおっさん……」
というかそもそも、俺はアルコールに弱いんだった。普段全く飲まないせいでそのことすら忘れていた。これからは俺がアルコールを口にしそうな時はアルラに止めてもらうことにしよう。
水を飲み干した後、俺はベッドから降りて立ち上がる。
「風呂、入る……」
「今からですか? 明日でもいいと思いますが」
心配そうなアルラの声が聞こえるが、頭が上手く回らず返事の言葉が出てこなかった。ふらつきながら壁を頼りに風呂場へ向かう。
脱衣所で上着を脱ごうと自分で裾を引き上げるが、腕が引っ掛かって上手く脱げなかった。後ろからアルラが手伝って上着を脱がせてくれた。そのままあれよあれよという間に俺は全裸にされていて、更にはアルラまでワンピースを脱ぎ始めた。
「なんで脱いでるんだ?」
「私が体を洗います。溺れられても困るので」
「シャワーで溺れることある?」
「今のマスターならあり得ます」
真顔で言われて「そっか」と何故か納得した。
◆
椅子に座った俺の頭をアルラがわしゃわしゃと泡で洗う。散髪以外で誰かに頭を洗われるなんていつ以来だろう。優しすぎない力加減で気持ち良い。自然と瞼を閉じてしまう。
ゆっくりと水を流され泡が緩やかに体を滑り落ちていく。
「次は体を洗います」
アルラはボディソープを垢すりで泡立てて、首、肩、背中、腕と手際良く擦っていく。あっという間に後ろ側が終わってアルラが俺の膝の間でしゃがんだ。
「前、失礼します」
目の前で跪いて、胸板を擦られる。酔いと寝ぼけのせいで気にしていなかったが、改めて見るアルラの身体にゴクリと喉を鳴らしそうになった。彼女が腕を上下させるたび大きな胸が揺れ動く。何度も見てきたし、何度も触った胸だが、シチュエーションが違うとまた新しく見える。
優美な身体。それを上から見下ろせるというのはこの上ない贅沢だった。
必然的に下半身に血が巡る。
「アルラ」
「なんでしょう?」
「胸で洗ってほしい」
「……分かりました」
小言の一つでも言われるかと思ったがアルラは素直に頷いた。そして自分の谷間に泡を落として俺に正面から抱きつく。柔らかな胸がピタリとくっ付けられて全身が包まれるような感覚だった。
そしてそのままアルラは体を上下させて俺の胸板に泡を擦り付ける。
「どうですか? こんな感じであってますか?」
「み、耳元、くすぐったいって……」
アルラの吐息がこそばゆくて身じろぎすると、彼女はここぞとばかり耳を食んできた。
「……はむっ。んじゅ、ぢゅぅ……んちゅ、はぁ……」
わざとらしく音を立てて耳の中を蹂躙してくる。俺は後ろに倒れないようにアルラの背中に腕を回してしがみつきながら、必死に耐えていた。
「んぢゅるっ、ん、んむぅ……ちゅぅ……マスター耳弱いですよね。舐められるとすぐ震える……じゅるるっ、んぁ、ちゅうぅ……」
「あ、アルラ、もう出したい」
俺が情けなくそう言うと彼女はハグを解いた。すでに天井に向かって反り立っている息子を見てアルラは呆れていた。
「さっきまで眠そうだったのに、完全に目が覚めましたね」
そして俺の目をまっすぐに見ながらその先端を咥えた。生暖かい感触にビクビクと膝が震える。
「ん……ぢゅるる、んむぅ……ぢゅううぅ、はあ……じゅるるっ…………んぷっ。……亀頭、爆発しそうですよ」
「もっと舐めてくれ。胸にかけたい」
「おっぱい好きですね……っん、ちゅうぅ……んぢゅっ、ん、ん……」
艶やかな唇と舌で先端を執拗に攻めてくる。更に左手で玉を揉んで、右手で竿を軽くシゴいて、自分のテクニックを惜しげもなく披露してきた。アルラはくびれの部分に舌をグリグリと差し込こむと、冷ややかに目を細めた。
「れろぉ……見えますか? カリのところ、汚れてますよ。……れろれろ……んちゅうぅ……普段から綺麗にしないと」
一つ残らず汚れが舐め取られて、綺麗な口の中に仕舞われていく。目の前で行われる一連の行為に背徳感が込み上げてくる。
「イキそっ」
「ぢゅるる……っんちゅ、ちゅ、ん、れろれろれろ……どうぞ。イッてください。マスターの大好きなおっぱいに……乳首にびゅって出してください」
口から息子を離すとアルラは右手の動きを早くした。そして自分の胸に先端を向けさせて、胸で全てを受け止めた。
白濁液がアルラの谷間に飛ばされる。どろりと重力に沿って落ちていくのを見ながら、アルラはいつも通り冷静に分析した。
「今日も健康的な量です」
「アルラ」
「はい」
「次はお尻」
「……まだやるんですか?」
「全然物足りない」
酔っているからか気持ちが昂ったままだった。俺が萎えた息子をアルラの乳首に押し当てて次をせがむと、アルラは少し悩んだ末「分かりました」と口で咥えてお掃除ついでに勃たせてくれた。
「お尻には興味がなかったのではないのですか?」
「最初に見た時はパーツ単体だったから不気味に見えただけで、実際にはめちゃくちゃ好きだ」
「本当に欲張りですね。おっぱいもお尻も好きだなんて……」
引き気味の反応をされながら、俺はアルラのお尻に息子を挟んで擦り付ける。アルラは壁に寄りかかりながら鼻息の荒い俺の顔を振り返り気味に眺めていた。
冷たい目にゾクッときて、お尻に息子を押し当てながら彼女の唇を奪う。
「ん……ぢゅぅ……ん、ちゅぅ……ちゅ、ちゅっ。マスターの方からこんなキスされるのは初めてです」
「割と自分の願望曝け出してたつもりだけど、そんなことなかったのかもな。まだまだ足りない……舌出して」
「お好きな時に、お好きなようにしてください。……じゅる、んむっ、む、ぢゅるるるっ……ん、は……ちゅるるるっ」
バックの体勢でアルラの唾液を味わいながら、突き出された尻の圧迫感を感じていた。これ以上ない女体の甘さに、夢中になる羞恥心もどこかへ消えて一心不乱に体を動かす。
胸とはまた違う感触を脳に目一杯刻み込んで、二発目を吐き出した。尾骶骨辺りに飛び散った液をアルラは自分の指で掬い取って味を確かめ、「味も問題ないですね」と言った。
はしゃぎすぎて疲れ気味の俺は「ふー」と息を吐いてアルラから離れた。
「マスター、すみません」
唐突にアルラが謝った。
「なんの謝罪?」
「私には性器がないので、マスターを完全には満足させられないのです」
「そんなことない。今でも十分、気持ちいいし楽しい。夢みたいだ」
「だと、いいのですが……」
何がそんなに引っ掛かるのか、アルラは浮かない表情でどこか遠い目をする。彼女のそんな顔を見たくなくて、俺は腰を突き出した。
「もっかい掃除して」
「口で掃除するたび勃たたれると、永遠に終わりません」
「さすがに疲れたし、今日はもう勃たないって」
「どうですかね」
懐疑的な目で見てくるアルラだったが、本当にもう終わるつもりだった。体が濡れていて寒くなってきたし、もう夜中だ。早く上がって寝ないと生活のリズムを崩す。
そう伝えてみたものの、アルラの目つきは変わらなかった。
結局、まんまと俺の息子は元気になって最後に胸でしてもらった。
◆
しっとりと濡れた黒髪にドライヤーの温風を当てて丁寧に乾かしていく。水滴を飛ばせるよう、左手でアルラの後ろ髪を持ち上げるとほのかに甘い香りがした。
正面の鏡を見ると、椅子に座って大人しく髪を乾かされているアルラと鏡越しに目が合った。
「何故、マスターが私の髪を乾かすのでしょう?」
「髪綺麗だからやってみたかったんだ。やっぱ長い髪っていいよな。触り心地がいい」
「役割が逆です。私がマスターの髪を乾かします」
「もう酔いは覚めたしやらせてくれよ。所有者に愛でられるのも道具の仕事だぞ」
俺の言葉にアルラは面食らったのか、目を丸くした後、視線を自分の膝下に落として黙った。
以前から分かっていたことだが、アルラは道具の役割というものにこだわりが強い。それが彼女の矜持なら特に言うこともないが、アルラの言葉の節々からはネガティブな印象を受けた。捨てられる前の事も含めてアルラのことをもっと知りたいが、今はただ俺の考えを話すだけにした。
「アルラはただ所有者に尽くすのが道具だって思ってるのかもしれないけど、それだけが道具の存在意義じゃないと思うんだよな。現に俺は今、アルラに触れてるだけで楽しい。可愛がられるのも大事な役割なんだよ」
アルラは返事もせず俯いたままで静かに目を瞑った。
その表情から彼女が何を思っているのか、今の俺には読み取れない。
ただ彼女が抱えてるものが多少軽くなってくれたらと願って、濡羽色の髪を撫でた。