長瀬楓の甲賀淫法帳 作:浜崎りお子
とある日の夜のこと、甲賀の中忍・長瀬楓は麻帆良の学生寮ではなく都心のベッドタウンを走る一台のリムジンの中にあった。
それは黒塗りの厳重な外観とは裏腹に、精緻な刺繍の施されたソファと意匠豊かな金細工によって彩られた絢爛な内装を持つ動力を持ったスイートルームの様な代物だった。
その最奥の中でシルクのソファに身を委ねる楓は、普段の学生服や戦闘時に用いる忍び服とも違う艶やかな薄手のドレスに身を包んで、静かに微笑を湛えているのだった。
薄っすらと夜化粧を施した表情は洋画から切り出した大人の女性といった風体だが、その長身と豊かな肉体にはピタリと嵌っていて、むしろ中学生という実年齢の方が信じられない嫣然とした雰囲気を纏っていた。
「ぐふふ」
そんな大人の色気を放つ楓のドレスの合わせ目に、無遠慮に突っ込みんで乳房を力任せに握り潰す無骨な腕があった。
「んっ……♥」
柔肌に爪を立てられ、分厚い掌で乳首をすり潰されながらも楓は微笑を絶やさぬまま、逆に甘い吐息と共にふるりと微かな身震いをしてみせた。そんな楓の姿を見て、愛撫とも呼べぬ乱暴な手練を使っていた男は「ほぅ……」と感心した様な、それ以上に満足そうな声を漏らした。
「どうやら、近衛の連中は相当な隠し玉を出してきたようだな。この様な見事な女子を連れてくるとは……堅物ばかりのつまらん奴らと思っておったが、こいつは拾い物だったわい」
そう言って、ぐわっはっはと高笑いをしながら楓を乱暴に抱き寄せたのは、とある派閥の領袖を務める大物政治家。と言っても、その当選は戦後から続く先代先々代が築き上げた重厚極まりない地盤によって祭り上げられたお飾りの三代目で、本人の実力人品は見ての通りでしかなかった。ただ、本人はそんな周囲の評価もどこ吹く風なのか、或いはこれから手籠めにする上等な
◆
そうして暫く走ったリムジンがとあるビルのVIP専用の入り口前に留まると、先に降りた楓は政治家の腕に自身のそれを絡めると、その顔面に自身の豊満な胸元をむにりと押し付けたのだった。
「ぐふっ♪」
あからさまな色仕掛けだったが当の政治家の方はお気に召したらしく、だらしなく表情を緩めると、腰に回していた掌で乳房に負けず劣らず肉感的な楓の尻たぶをぐにぐにと遠慮会釈も無く揉みしだいたのだった。そして、静かに開いた曇りガラスの自動ドアの奥で、楓は意外な人物と鉢合わせしたのだった。
―真名?―
それは、褐色の肌と楓に負けず劣らずの肉体を有する凄腕のスナイパー、龍宮真名の姿だった。対する真名の方も殆ど同時に楓の姿に気が付いたのか、一瞬「お?」という顔になるもすぐに素知らぬ表情になって隣の男にしなだれかかる。どうやら、あちらもこれから似たような状況らしく、隣のやや年若い男性が人に気付かれぬよう、頻りに彼女の太腿を撫で摩っていた。
―忍務か?―
―なんのことでござるかな? そちらはパトロンか何かでござるかな?―
―ああ。私とシたいとの希望でな。一晩共にしただけで倍額を出すというのだから、受けん理由がないだろう?―
そんな二人が読唇術で会話をしていると、先にアテンドの職員が到着したらしい真名達が席を立って、奥のエレベーターへと消えていく。途中、露出の激しい純白のドレスに身を包んだ真名を見て、かなり興味ありげに目で追いかけた隣の政治家だったが、そんな男を見て楓は内心「尻の毛まで毟られるでござろうな」と呟いたのだった。
◆
男が楓と共に案内させたのは当然と言うべきかこのホテルのスイートルームだった。
最上階一面をぶち抜いた一室はそれだけで家が数軒は建ちそうなほどの広さで、その一面には先のリムジンの内装に勝るとも劣らない装飾や調度品が設えてあった。
そんな最上級の一室へと入った瞬間、隣の男が突き飛ばす様にして楓をキングサイズのベッドの上へと押し倒した。
「あっ、そ、そんないきなり」
「なんじゃ。まさか予想していなかった訳でもあるまい?」
「せ、せめてシャワーを」
「いらん。どうせこれからしこたま汚れるのだ。早いか遅いかの違いでしかあるまい?」
そう言いながら男は楓の上に飛び乗ると、恐れと共に微かに開かれた楓の唇にむしゃぶりついてじゅるじゅると内の唾液を啜り貪っていく。同時に流し込まれた男のそれは喫煙者特有のえぐ味と悪臭で顔を背けたくなるほどだったが、そんなことをおくびにも出さず男の唾を美味そうに飲み干すと、もっととせがむように男の首に両腕を回して、夢中で男の舌を貪り返したのだった。
そんな楓の反応に気を良くしたのか、男は楓のスカートを捲り上げ、そして露になったものを見てふと手を止めたのだった。
「不調法で申し訳ございませぬ」
そう言って視線を伏せた楓の下腹部を覆っていたのは、ワインレッドのドレスに映える黒一色の締め込み褌だった。
まさか、この上等な女の下着が褌だとは思わなかったのか、一瞬ポカンとした禿男だったがすぐににたりと笑うと「いや、良いマニアックさだ。気に入ったわい」と笑ってからしっとりと湿り気を帯びて薄っすらと湯気を立ち昇らせる楓の股間にむしゃぶりついたのだった。
ジュッ……ジュッ……という褌越しの口淫が続いて、その都度にビクッと身を震わせながら「あっ♥ あんっ♥」と喘ぎ声を上げる楓。
「はぁっ……♥ はぁっ……♥」
「ふぅ……」
そうして、全身に薄っすらと汗をかきながら褌一丁で息も絶え絶えになる楓を見下ろしながら、いつの間にか全裸となっていた男は心底満足そうな表情で口元を拭ったのだった。
「まさか、これほどとはのう。これならば相手が務まるやもしれん」
「へ……?」
絶頂のしすぎでまだ気もそぞろといった風の楓の前で、男がヒュッー!と口笛を吹く。すると、奥の部屋からグルルルルという決して人の物ではありえない唸り声と共に、のそりと何かが現れたのだった。
それは、一頭の犬だった。それも、狼どころか羆を思わせる巨大な体躯を持つ。そんな巨大な見るからに凶暴な雄犬が剥き出しの牙の隙間からボタボタと唾液を滴らせ、のっしのっしとこちらへ近付いて来るのだった。
「ヒッ!?」
思わずと言った風にベッドの上で縮みこまる楓の姿に、男は心底愉快そうにニタつくと、実に満足げに隣に立った巨犬の漆黒の毛並みを撫でたのだった。
「紹介しよう。わしの愛犬、シンディーちゃんだ。普段はこの部屋の警備とわしの護衛も担当している」
「ご、護衛って……だ、大丈夫なのですか? その、噛みつかれたりとか」
「ぐわっはっは! なんだそんなことを考えておったのか? 無論、そんな心配なぞありはせんわ。何せ、シンディーちゃんはこの世でわしの次に賢いのだからな」
「ねー、シンディーちゃん♪」と似合わぬ口ぶりで目尻を落とす男に、楓はおずおずと頷く。だが、そこであるものを見た楓はピタリとその動きを止めた。はっきりとベッドの上で固まる楓の姿に、男は「くくく、気付いたようじゃな」と笑った。
楓の視線の先にあったのはシンディーと呼ばれた巨大な暴犬。その股間でドクッドクッと脈打つ巨大な血色のペニスだった。
「シンディーちゃんはわしと同じで肉感的な女が大好物なのだ。丁度、お前さんのようにな」
「ヒッ!?」
それの意味することを理解した楓は必死になってその場から逃げを打つ。けれど、腰が抜けてしまったのかへこへことベッドの上で四つん這いになって逃げる様は、むしろ盛りの付いた雌犬が交合に及ぼうとする雄に自らの尻を曝し誘っている様にしか見えなかった。
男の隣にいる
「あ、ああ……」
これから行われる
「何せシンディーちゃんのペニスはわしと同じで特大サイズだ。固くなれば却って傷を負うことになる」
そう言って、絶望したままの楓の頤をついっと持ち上げると、己の欲望のまま無造作に唇を重ねた。
「まさか、前の女どもの様に、一生子の産めん身体になりたくはあるまい?」
「……」
そして続けられた言葉に、楓がとうとう強張っていた身体の力を抜いたのを確かめて、男は「いい子だ」と嗤ったのだった。
「やれ!!!」
そして告げられた宣告に、アオンッ!と吠えて応える狂犬。体格差に任せてとてもまともな性器では収まりきらないペニスを根元の瘤まで捻じ込むと、そのままグポングポンと一切の躊躇も容赦も無く出し入れする。
「ぐ、お、おおっ!?!?」
挿入の都度に、ボゴリと妊婦な膨張を見せる楓の胎。そして繰り返される出産の激痛に、楓は白目を剥いてベッドへと崩れ落ちる。しかし、交合を始めた猛獣にそんな雌を慮る意志などあるわけがなく、純白のベッドにうずもれた楓の臀部を容赦なく巨大なペニスで抉っていく。
「反応が無くなって来たな。どれ、こいつで一つ楽にしてやるか」
巨大な猛犬にオナホールの様に使われていた楓の横顔を踏み潰しながら、その表情を確かめた男が楓と猛犬の結合部へと向かう。そうして、直後にぬるりと体内へと侵入してきた感触に、野犬から犯され続ける楓は僅かに両目を細めた。
―媚薬でござるか……―
肛門から伝わるじんじんと火照る様な感覚に、楓はあたりを付ける。忍びとしての修行であらゆる毒薬や媚薬に耐性をつけている楓には効かないが、これまでの経験上、おそらくは一滴でも一般人なら気が狂うほどの強壮薬だろう。
「どうだ?」
「……ぉ」
「ふむ?」
「おっ♥ おお゛ぅ♥ おっほぉぅ!?!?♥♥♥♥」
「くかかかか! どうやら覿面なようだな!!!!」
猛犬によって胎という胎を犯され、女という女を破壊されていた楓の放った野獣の様な下品で野太い喘ぎ声に、男は満足そうに喝采を放つ。そうして一心不乱に尻を振りだす楓を見て「最早聞こえておらんな」と嘲りながら、己の分身を扱いて視姦に勤しみ始める男は、最早ただの雌犬となって交合をくり返す楓がごく理性的に、この交合を楽しんでいるとはついぞ気付かなかったのだった。
◆
空が黒に染まり外から流れ込む夜光が僅かに乏しくなったころ、楓はパチリと両目を開いた。最初に視界に入ったのは、あの後薬効と獣姦で完全に壊れていた演技をする自分を好き勝手におもちゃにしていた男の寝顔だった。自身を抱くでっぷりとした男の贅肉と、背中に感じるもこもことした毛皮の感触から、案外寝心地は悪くなかった。そんな一人と一匹の間から這い出た楓は自身の尻穴とおまんこに刺さっていた二本のペニスをずるりと引き抜くと、「んっ……♥」と小さく呻いて胎に力を込めた。すると、自身の
それは、小さな丸薬状のカプセルで、楓がそれを手に取ると中から小さな端子の付いた機械が現れた。その端子を持って音もたてずに奥の部屋へと忍び込むと、男の仕事用と思われるパソコンが備え付けられていたのだった。
楓がそのパソコンに端子を差し込むと、すぐさま端子の端にあったライトが点滅を始め、ものの数分で沈黙する。その機械を再びカプセルにしまい込むと、丸薬状になったそれをまたコクリと呑み込んで、楓は再びベッドへと戻る。深く寝入った二匹の獣は僅かも目を覚ます様子を見せず、再び間に挟まった楓を取り合うように、柔らかく豊満な楓の肉体に抱き着いてきたのだった。
先の交合で、楓はとある“術”を使用していた。
それは事前に自らの陰部と肛門に特殊な丸薬を仕込んでおくというもので、この丸薬はある一定の温度になると外皮を失い、中に封じられていた薬液が漏れだすという仕組みをしていた。常日頃から平静をコントロールできるよう訓練をしている楓は体温も概ね一定に保たれている。そのため、性交前と性交中でこの一定の温度を跨ぐことで、仕込んでおいた丸薬を狙ったタイミングで溶け出させることができるのだった。これぞ、甲賀淫法・鳥兜の術。鍛え上げられた楓の淫術は見事にこの度の忍務で炸裂したのだった。
楓がなぜこのような回りくどい手に出たのかといえば、それには多少の事情があった。
元々、目の前の政治家は派閥や息のかかった官僚といった同じ穴の狢達の表看板という立場であった。それが、派閥を解体されて己のブレーンを失えば、容易く本性が露見する。こうして“無能な味方”となり、数多の失点を重ねてもらいたいというのが依頼主である近衛家からの要求だった。そのためには、目の前の男の奥に居る派閥という巨大な組織にそれと悟られてはならなかったのだった。
今回の依頼で下調べを済ませた楓は、男がこうして連れてきた女を自らの愛犬と共に“壊す”のを趣味としていることを知った。この愛犬が中々に厄介で、微細な異変や僅かな臭いにもすぐに気付くらしく、下手をすれば同じベッドで寝ている主人よりも数段賢い可能性すらあるとみられた。そして、もし色仕掛けに出た場合、十中八九この愛犬が立ち会うこととなり、生中な偽装ではまず間違いなく敵の寝首を掻くより先に、自分の喉笛が噛み千切られるのが目に見えていた。
ゆえに楓は“鳥兜の術”を用いた。いかな鋭い嗅覚を持つ犬といえど、己の胎内であれば識別は不可能。初めに纏っていた露出の多いドレスも、いわばこの本命を隠すための見せ札だった。
―万事、上手くいったでござるな―
そして、無事に忍務の山場を越えた楓は、自身を蹂躙していた雄の間に挟まって、のんびりと目を閉じる。そうして、数分もすると、三人分のすーすーという寝息だけが天上の一室で微かに響いたのだった。
◆
「おや?」
「お?」
あくる日の朝、起床した議員と別れた楓は偶然にも昨晩と同じロビーで同級生の真名と再会したのだった。彼女の方も既に相手とは別れた後らしく、上質なポシェットを片手にホテルの外へと爪先を向けている。
特段言葉を交わすことはなかったが、態々別々に帰路につくほどでもないと思い、二人は示し合わせたように並んでホテルを後にする。
「どうだった?」
やがて、件のホテルが見えなくなったところで、真名の方が徐に口を開いた。何がとも誰がともついてはいないが、凡そ決まりきった質問に、楓は「まあ、上々でござるな」と返した。
「真名の方はどうだったのでござるか?」
「自分が満足するためだけに腰を振る下手くそだったからな。途中から適当に喘ぐふりをして、さっさと搾り取ってやった。そっちはどうだったんだ?」
「多少はマシだったでござるが、媚薬や獣姦といった小道具に頼り過ぎだった気もするでござるなあ」
「つまり、お互いハズレか……」
そう呟いた真名が「それなら」とコツコツとヒールを鳴らしていた足を止める。
「寮に戻る前に一発どうだ? どうせ、まだ朝食には時間があるだろ?」
そう言って彼女が指差したのは昨日とは大分グレードが落ちる一軒のホテル。ピンク色だったライトアップが朝焼けに塗られた西洋の城を思わせるそれは分かりやすく
「お互い不完全燃焼な訳だしな」
「で、ござるな」
そんな真名の提案に、楓も小さく頷く。そうして合意が成った二人はすぐさまチェックインを済ませると、丸いタターンベッドの置かれた一室を選んで入室する。
「さて、始めるか」
「あいあい」
そして、すぐに全裸になると、丸いベッドに乗り、共に足を開いて互いの女陰同士を重ね合わせる。
ずりゅっ……にゅちゅっ……
互いの陰唇と陰核か擦れ合い、程なく二人の女子学生の喘ぎ声が響き始める。その動きは中学生同士とは思えないほどに雑で、息の合わないものだった。
本当に、互いに一時の快楽を得て、不完全燃焼だった性欲を解消するためだけの唯々独善的な行為。互いの身体を使った自慰は半刻ほど続いたのだった。