※この作品はR-18です。

ようこそエロMODが導入された教室へ   作:さんかく

13 / 47
13

 ジェバンニが一晩でやってくれました。

 

 いや、今回の場合は、「龍園が一晩でやってくれました」か。

 いやいや、「須藤が一発やってくれました」かもしれない。

 

 とにかく。

 

 須藤による暴力事件が起きた。

 

 Cクラスの男子と、部活終わりに揉めて、相手を殴ったという話だ。

 はやい。昨日の今日――ではないが、まだあれから数日だぞ。流石、決断力カンスト男。

 まあ、俺としては助かった。主に出費という意味で。

 

 だが、現時点でこの事件はまだ公になっていない。

 

 理由は、須藤が一方的に悪いから――ではない。

 原作と同じように、茶柱先生が状況を確認した際、須藤は「Cクラスの訴えと実際の状況が違う」と主張した。

 そのため、事実確認のための猶予期間として二週間の時間が設けられ、クラスにも事件は告知されていないのだ。

 

 もっとも、これには別の背景がある。

 今の時期は、中間試験が目前に迫る最重要イベント期間だ。

 この事件が公になることで、評価や試験結果への影響が生じる可能性を考慮し、学校側は事件の詳細を一時的に遮断する方針を取った。

 関係者には口外を禁じ、試験終了後に改めて審議するという形だ。だから本来なら一週間の猶予期間のところを二週間に、またクラス間で情報の真偽を探る為に公としたのを隠している。

 つまり、中間試験が終わるまでこの問題は一旦お預けとなる。

 

ーーその学校側の目論見は見事に外された。

 

「ねえ、聞いた? 一年生で暴力事件起こしたやつがいるんだって」

 

 そんな噂が教室内に流れ出したのは、ほんの翌日だった。

 

 真偽不明。ただの噂。

 だが確かなのは、その日は朝から漫然とクラスにその事が広がっていた。それはDクラスに留まらずーーいや、実態を知っているからぶっちゃけると、外のクラスから意図的に拡散されたものだ。

 このただでさえ緊迫した空気、あちらこちらに導火線が撒き散らされているような現状で、この"暴力"という原始的な脅威は充分に起爆剤となり得た。

 

 人は不安な時、時に攻撃的となるものだ。

 そして当然、男子と女子の関係が険悪なDクラスで、その矛先が向かうのは一人しかいない。

 最も粗暴で、最も疑いをかけられやすい男――須藤。

 

「ねえ、須藤。あんたじゃないよね?」

 

 女子の詰問に、須藤が苛立ちを隠せずに声を荒げる。

 

「はあ? 違ぇっつってんだろ!」

 

 須藤は立ち上がって発言した女子に怒鳴るが、その否定の様子すらも女子たちの疑念を強める材料になる。

 

「じゃあ、なんでそんなムキになってんの?」

「逆ギレじゃん。もしかして本当にやったんじゃないの?」

 

 当然こうなる。

 平田や櫛田といった良識派が場を取り持つが、こうした諍いは事あるごとに起こった。

 その度に怒りは蓄積する。

 そして――ついに。

 

「……ああ、そうだよ。やったよ。文句あんのか!」

 

 須藤が認めた。

 

 それ見たことか、と女子達は須藤を詰る。

 対照的に、クラスの現状とその後について頭が回り、冷静にそれを考えてしまった平田や櫛田、そして堀北などは絶句する。

 

 ここ数日、Dクラスは災難続きだった。

 赤点回避のために動いていたのにそれは突然の男女間の分裂でそれどころでなくなり、勉強会もほぼ機能しなくなった。

 そこに来てこれだ。

 暴力事件ーー今までのこの学校の様子を見て、これがクラスに何の損害も与えないなんて、楽観的に考えられるか?

 そしてそれがクラスポイントの減少であった場合、仮に中間試験を頑張って良い点を取ったとして、それが無に帰すのではないか。

 

 そうした懸念は、怒号と混乱に包まれる教室に、騒ぎを聞きつけた茶柱先生がやってきたことで答えが得られることになった。

 

「……緘口令を敷いたはずだが?」

 

 教室の空気が凍りつく。

 先生の口から語られた事で、暴力事件の存在が確定した。

 

 そして、先生の口から“暴力事件”の存在が正式に語られた。

 本来であれば、まだ伏せておく予定だった情報。それが、ここで初めて全員に明かされる。

 

ーー須藤がCクラスの男子数名と揉め、須藤が男子の一人を殴って怪我を負わせたこと。

 

ーーCクラス側は須藤が殴りかかってきたと主張し、須藤はあちらから仕掛けてきたと反論しており、食い違っているため審議の為中間試験終了から一週間後まで猶予期間を設けること。

 

ーー須藤に罪があった場合、一定期間の停学およびクラスポイントの減点の処分が下ること。

 

 視界の端で平田が頭を抱える。

 彼の懸念の通り、女子達から反論が上がった。

 

「試験による加点が……須藤のせいで無駄になるかもしれないってこと!?」

「ふざけないでよ……」

 

 女子たちの怒りは一気に爆発し、空気はさらに悪化する。

 教室は、誰もが息苦しさを覚えるような、重たい沈黙と怒りに満ちていた。

 

 

ーーいい。

 “狙い通り”の状態。

 

 これは、ゲームで得た知識をもとに、俺が龍園に対して指示ーー助言を与えた結果だ。

 

 中間試験を控えたタイミングで事件が発生した場合、学校が緘口令を敷いて猶予期間を延ばす事は事前に確認出来ていた。

 だから龍園に、そもそも事件について担任へ訴えるより先に、掲示板に匿名で一年生の暴力事件の噂を流すよう指示した。

 

 今のCクラスのアドバンテージ。

 それは間違いなく、この学年で最も早期に中間試験の過去問の存在を知ったことだ。

 つまりCクラスのみが、本来試験対策に費やすはずだった時間を別の事に向ける余裕を手に入れた。

 

 だから龍園は各動きを可能な限り早く行ったはずだ。

 例年と比較して異例な早さで"女を買う"という存在を学年全体へ広め、全体を一時混乱に突き落とした。それだけで各クラスの首脳陣の頭を悩ませ、クラス間の団結を弱め、勉強へ集中出来ない土壌を作った。

 

 そして今度はピンポイントでDクラスを潰す策。

 この暴力事件の有力な点は、Dクラスの肉体担当ーーCクラスにおける山田アルベルトのような存在を、排除出来る可能性がある事だ。

 その為には、当然ながら混乱は試験より前に起こさなくてはいけない。だから龍園にとって、この事件は可能な限り早期に公にし、出来るだけ試験前に処理に手間取らせる方がいいのだ。

 

 だから、俺からの命令と言えるような指示に龍園は乗った。

 ただし――

 

 掲示板にその情報が流れたのは、学校が緘口令を敷いた“後”だった。

 

 つまり、龍園は俺のことをまだ完全には信頼していなかったということだ。

 もっとも、それも問題はない。むしろ好都合と言ってもいい。

 

 掲示板に書き込まれた内容は、Cクラスの誰かが緘口令を破ったという“証拠”にもなる。それが実際にCクラスに不利になる事は無いだろうが、龍園は間違いなく"自分が後手に回った"事を理解している。

 同時に、俺の指示は本来Cクラスにとってよりプラスとなる働きをしていた事を理解しているだろう。

 そして、俺の“未来予測”の精度も身をもって知った筈だ。

 

 ……俺が上級生ではないかと疑い始めているかもしれないな。

 まあ、それはそれでいいか。

 

 ともかく、これで暴力事件は正式に公になった。

 

 先日の男女分断に続いて、この暴力事件。

 Dクラスの内部連携は、何もしなければもう二度と戻らないだろう。

 

 ――亀裂は、確実に。深く、広く、拡がっていく。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。