※この作品はR-18です。

ようこそエロMODが導入された教室へ   作:さんかく

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 あれから数日が過ぎた。

 俺は自室のベッドに腰掛け、数日前の出来事を想起する。

 

(まじで危なかった)

 

 完全な俺のミスだった。

 あと少し俺の到着が遅れていれば。

 あの男が俺の指示を守ろうとせず、そしてあと僅かでも我慢ができていなければ。

 そして何より、一之瀬と佐倉が、それぞれ必死に時間を稼いでいなければ。

 どちらか、あるいは二人とも、取り返しのつかない陵辱を受け、同時に今回の作戦は全てが水泡に帰していただろう。

 

 いや、最悪のケースは更にある。

 男が完全に望み通りに事を犯せばいいが、少しでもミスがあればーー脅しなんて機能せず、問答無用で警察沙汰になる可能性は高い。

 俺が関与出来ずにそうなれば、俺という第三者の協力者がいたことは露見しただろう。俺個人が特定されずとも、俺の計画にとっては大きな痛手だ。

 今回はそうはならなかったが、これは奇跡的な結末に過ぎない。

 

 というかそもそも、俺は既に計画は完全に頓挫したと諦めていた。

 男はやり過ぎた。

 当然、通報しなければ場が収まらない。そう判断し、俺自身もそのつもりで動いていた。

 

 が、何故か一之瀬がそれを止めたことで、佐倉の事情が加味されて有耶無耶となった。

 そこに関しては、一之瀬の聡明さと善性が俺の想定を遥かに上回っていた事が、嬉しい誤算となった。

 佐倉はともかく、一之瀬は内心では間違いなくあいつを警察に突き出してやりたかったはずなのに。

 

 そして付け加えると、証拠となるカメラを破壊出来たのも意外であった。

 佐倉だけならまだしも、一之瀬は証拠として確保すべきだと止めてくると読んでいたのだが。

 

 だがあの時、二人の視線はむしろそれを望んでいるように見えた。それを見て試しに聞いてみたら、すんなりと受け入れられた、というのが正しい。

 そして無事にあの悪夢の写真達は闇に葬られ――ることはなく、当然ダミーのSDカードとすり替えて壊したので、全てのデータは今も俺の手元にある。ああしてカメラとカードを破壊するデモンストレーションを見せるのは既定路線だからな。

 

 最終的な結末としては。

 男は、俺からの脅迫と写真という証拠によって、首輪をつけられた上で解放された。その上で、"協力者"としての俺に対しては、言う通りにしたことで良い思いができて、また指示通りに弁明し佐倉を脅したことでぎりぎりで解放されたと認識した。今後も指示に従ってくれることだろう。

 佐倉に関しても、秘密を知った上で助けたという結果が残った。

 

 こうして佐倉と男へそれぞれ楔を打ち込み、それぞれの弱みとなるデータを俺だけが手に入れた。

 加えて言えば、俺自身の設置したカメラの録画もある。脅しの道具として、俺個人が特定される事なく活用する事は可能だ。

 結果だけ見ると、予定通りの完璧な結果となった。

 

 一之瀬についても、直後はかなりぼんやりとしてらしくなかったから多少様子を見てから帰したが…まあ、今のところは大丈夫そうだ。佐倉も含めて、過度なトラウマで再起不能ーーなんて様子では無い。

 つまり万事快調、丸く収まった。

 

――なんて思えるわけはないが。

 失敗は失敗。

 これで安心していたら、また同じ轍を踏むだけだ。反省しないと。

 これからもある程度の期待値でギャンブルはしていくつもりだが、自分で調整できるところは確実にちゃんとやろう。

 

 

 

 そういえば。

 

 こうして大失敗を喫した訳だが、失敗をしたのはどうやら俺だけではないらしかった。

 今、うちのクラスにはとある噂が流れてきている。

 

 それは、Aクラスで派閥争いが起きた、という噂だ。

 二つの派閥のリーダー同士が勝負をし、片方が負けたとのこと。

 負けた者の名は、坂柳有栖。

 

 何故そんな噂が広まっているのか。

 デマだろそれ。

 

 そう思ったが、どうやら情報の確度は割と高いらしかった。

 学校主導の『公認決闘制度』を利用し、教師立ち会いのもとで勝負が行われたため、内々の話にも関わらずここまで広まっているらしい。

 

 そうか、公認決闘制度か。

 なるほどね。はいはい。

 

 いや、なにそれ。

 知らないんだけど、何その制度。

 

 試しに平田に聞いてみたが、彼も知らないらしい。平田から茶柱先生に聞いたりもしたらしいが、知らないと返されたと。

 

 ふむ。なるほどね。

 

 

---

 

 

「ということで、Aクラスで何があったか教えてください」

 

 放課後、俺は職員室で、茶柱先生に単刀直入に切り出した。

 それを聞いた先生は、意外そうに片方の眉を上げる。

 

「まさかお前が直接聞きに来るとはな」

「俺、意外と真面目なんですよ」

 

 そう言うと、茶柱先生はフンと鼻で笑う。

 

「それはこちらも驚いているところだ。今のところのお前は、あのクラスでは上から数えた方が早いくらいの優等生っぷりだからな」

 

 なんか評価低いな俺。

 まあ、先生は俺の素行に関する経歴も知っている。そりゃそうなるか。

 茶柱先生の様子は置いておいて、質問する。

 

「じゃあその優等生っぷりに免じて教えてください」

「それはできん。クラス内の出来事を、部外者のお前には教えられない」

 

 即答だった。

 なら、と俺は質問を変える。

 

「なら、『公認決闘制度』とは何か、教えてください」

「聞かれたことを全て答えるのが教育だとでも思っているのか?」

 

 何聞いても断るじゃん。

 けどまあ、なるほどね。

 つまりこういうことか。答えられないこと含めて、これはそういう制度なのだろう。

 

 俺が少し唸って考えていると、茶柱先生がじっとこちらを見ているのが分かった。

 追い出す様子はない。探っているのだ。俺の意図と――性能を。

 まあ、別に教師である彼女に対して取り繕う必要はない。じっくり考えた後、再度問いかけた。

 

「教育と関係ないことなら、答えてもいいって事ですよね」

「別に私は答えるとは言っていないがな」

 

 いいね。その返しは、俺が知っているパターンだ。

 制度的には答えられるが、タダで答えるつもりがない時の回答パターン。

 

「一万ポイントで」

 

 俺がそう提案すると、茶柱先生は「ほう」と感心したように頷いた。

 

「いいだろう。その範囲内で答えてやる」

 

 通ったな。

 俺は質問する。

 

「その決闘で勝ったのは葛城らしいですけど、得をしたのはどっちですか?」

 

 その瞬間、茶柱先生の顔が驚愕に染まった。

 そしてーー心底呆れたように、あるいは警戒するように言った。

 

「…お前、やっぱり危険なやつだな」

「ひどいな」

「ひどくない、当然の評価だ」

 

 その言葉自体が酷い言い分だ。

 が、俺の事はどうあれ、先生は観念したように答えた。

 

「――坂柳だ」

 

ーーまあ、そうだよな。

 それを聞いて納得する。そうだと思った。

 

 公認決闘制度とやらは知らないが、このタイミングで葛城からそんな行動を起こす可能性は低い。

 十中八九、坂柳の策だ。

 

 坂柳から仕掛けておいて、彼女が負ける?

 まあ、無いな。何か狙いがあってそうしたと見る方が、よっぽど理解出来る。

 

 俺がうんうんと納得しながら次の質問を考え始めたところで、先生は「これで質問は終わりだ」と告げた。

 

「え、もうですか?」

「お前の質問には、それだけの価値があったと私が判断した」

 

 先生はそう言って質問を打ち切る。

 俺はそれに不平を漏らす。

 

「いや、一万ポイントですよ? 『坂柳だ』の六文字で一万? 一文字あたり約千六百六十六ポイントじゃないですか」

 

 俺が文句を垂れると、先生は鼻で笑った。

 

「その理屈なら、普段のお前たちの言葉にはあまりにも価値が無いだけだろう」

 

 あーいえばこー言うな、この女教師。

 まあ……いいか。

 大体の予測は立ったし。

 

 仕方なく俺は諦め、ポイントを茶柱先生に送信しーー最後に口を開く。

 

「じゃあ最後にこれだけ。答えに相当するポイントは払いますので」

 

 茶柱先生は、言ってみろ、と顎で促す。

 俺は尋ねた。

 

「その制度、作ったのは学校ですか?」

 

 少し黙って、茶柱先生はため息をついた。

 

「…その鋭さをもっとまともなことに使えばいいものを」

「そうしてますけど」

「今は、な」

 

 呆れたように俺を見ながら、彼女は答えた。

 

「答えはノーだ。代金は要らん。この回答にその価値はない」

 

 俺は礼を言って職員室を出た。

 

 なんとなく、状況は掴めたな。

 公認決闘制度。

 多分これは、割と名前通りのものなのだろう。

 教師が立ち会いのもと、何かを賭けて勝負を行う。そしてあの仰々しさからは、おそらく何か条件があるのだろう。クラスのどうこうという発言から予想してみるとーークラスに関わるような勝負に限る、といった条件とかだろうか。

 

 そして重要なのは、これは原作にない制度だということ。

 そうなると考えられるのは――過去、莫大なポイントを保有した生徒が、学校に要求して作らせた制度だという可能性だ。

 

 これは、通常プレイ時でも時折見られる挙動だった。

 主人公の過去設定によって、過去の学生の情報に影響が及びーー存在しなかった設定や制度が生える事がある。

 

 特に、この世界ーーそもそも"このMODがいつから存在している"のか、俺は知らない。

 稼ごうと思えば、魅力にもよるが、女子ならいくらでも稼げるこの環境。

 過去に、制度をポイントで追加出来るような富豪が出現するのはあり得ない話ではない。

 そして逆に致命的なポイント不足に悩まされ、それを補填する為の制度が必要になったとしても、不思議ではない。

 

 こうした推測から、更に制度についての予測は進められる。

 生徒が作ったということはーーそこには何らかの旨味があるはずだ。学校側が用意した公平なものとは異なり、どこか歪な欲望が介在している。

 

 決闘制度。つまり何かしら勝負を行なって、その上で学校側が関与をして生徒の得になる制度。

 勝負の立ち合い、取り立て、そういった面もあるだろうがーーそれはやりようによっては既存の制度で可能。つまりそれは本質ではない。

 生徒間の調整では不可能な権力、あるいは学校からしか貰えない何か。

 そうだな、例えばーー学校側から賭け金が追加される、とかか。

 

 

 さて。

 坂柳は葛城とどういう取引をし、負けたにもかかわらず、どうやって得をしたのだろうか。

 

 今の俺に、その全貌を知る術はない。

 が、彼女が既に何かしらの動きを見せている事は確か。

 どのようにこれから動くのか、大変見ものである。

 

 まあ、とは言え近々彼女を待ち受ける結末は決めている。

ーー地獄だ。

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