ようこそエロMODが導入された教室へ 作:さんかく
次の日。
朝の教室はやっぱり騒がしかった。
クラスメイトたちは10万ポイントの存在に浮かれ、豪勢な買い物や遊びの予定を立てている。
「今日カラオケ行こうぜ!」
「俺、ゲーム買うわ! ずっと欲しかったやつあるんだよな!」
「お前ら、ポイント使いすぎるなよ~」
そんな会話が飛び交っている。楽しそうだ。俺も混ざりたい。だが俺はクラスとはほぼ関わり合いを持たない不良のイメージを保つ必要がある。俺はクールに机についた。
というかそもそも俺にポイントの余裕なんてない。使い道はすでに決まっている。
なんせこれから、俺は数多の女子生徒を買い上げる為の金策に移らなければならないのだ。
---
授業初日、大半は勉強方針等の説明だけで、まともな授業は次回からのようだった。須藤あたりは既にしっかり眠りこけてクラスポイントの低下に精を出している。あいつの周りに悪臭ガスでもばら撒いて眠れなくしてやろうかな。
それはともかく授業はつつがなく終了した。途中で平田から声をかけられるというイベントはあったが、それには乗らずにすげなく断る。普通のプレイなら平田やその他女子との接点を作れる良イベなのだが、今回は必要が無い。
授業が終了次第、俺はすぐに教室を出た。
そしてまずは電気屋へむかう。
特に関係無いが、佐倉のストーカーが店員として入り込んでいた場所だ。本当に関係無いが。
今回電気屋へやって来たのは、ゲームで得た知識を元に選別した小型の監視カメラを購入する為だ。
「これ、アプリと連携できるやつですよね?」
「はい、出来ますよ。スマホでリアルタイムに映像を確認できますし、保存も可能です」
「じゃあ、これで」
念の為店員から説明を聞き、最低限の性能を持ちつつも費用を抑えたモデルを購入した。コイツにはしばらくお世話になる事となる。今後の相棒だ。
次に、服屋と雑貨屋へ向かった。
買うのは短髪の男用カツラと、顔がある程度隠れるサイズのフード付きのパーカーだ。そして簡単な化粧セットだ。
察しの通り、これらは変装用のアイテムとなる。俺は普段が飾り紐付きの長髪にピアスと奇抜な格好をしているだけに、どちらも外して短い髪型のカツラで誤魔化すだけで暗がりだとかなり変装として機能する。クラスメイトなどにしっかり顔を見られると話は違うが、そうでないーー例えば学年が違う相手などであればほぼほぼ俺という事は分からないはずだ。
さらに極め付けに化粧をしておけば、そもそも男だということも誤魔化せるようになる。この斉藤景というキャラクターの外見をこのように設定した理由の一つがそれだ。女のような整った外見というのは、この世界では大変有用な個性となる。
他にも細々とした必要な諸々を買い、最終的に全て合わせて数万ポイントが飛んだ。
全財産が10万ポイントで、来月から定期収入が無いことを踏まえるとかなり大きな出費である。しかし、これは必要経費だ。
後は夜を待とう。
---
日が落ち始めた頃、俺は寮を出た。
目的は、監視カメラの死角エリアの確認だ。
すでにあるMODの知識に加え、昨日の巡回で他にも生まれていた監視カメラの死角エリアにある程度の目星をつけていた。それらの内、余裕をもって回れる数箇所を今日は張り込むことにする。
一つ目のエリアに着いた。夕暮れで人通りは少ないのもそうだが、薄暗い路地裏で人の目が通りにくく、監視カメラどころかそもそもの人気が全く無い。日中でも普段から人の出入りは少ないだろう。
足音を立てないように中に入り、エリア内に誰もいない事を確認する。そして地面や植物の不自然な乱れはないか、更にプラスチックの破片や私物の落とし物などがないかを確認した。
これは、詰まるところ情事が行われていた痕跡がないかの調査だ。
そもそも今まさに事が行われていればアタリ、そしてそれが行われやすいエリアでもアタリ。
残念ながらこのエリアはどちらもハズレのようだった。
それからいくつかの死角エリアを確認したが、明らかな痕跡がある場所はなかった。
ただ、強いて言えば一つだけ気になる場所はあった。壁の汚れに、指で触ったような跡が微かに残っている。 普通なら気にしないレベルのものだが、これ以上に痕跡らしいものが無いので仕方がない。
「ここにするか」
俺は慎重に買ったばかりの監視カメラを設置した。近くの地面に転がっていたブロックに紛れ込ませ、その上に枯葉をかけて自然な形で風景に溶け込ませる。
この映像は、リアルタイムで俺のスマホに送られる。
定期的にスマホを確認し、人が現れないかを確認しよう。
後は定期的に各死角エリアを怪しまれない程度に巡り、事が行われている現場に遭遇するのを祈るだけだ。
---
「お」
深夜、空気が冷え込み始めた頃。
俺は静かに、死角エリアの一つに近づいていた。
そこで、物音――小さく、だが確実に人の気配を察知する。
(来たか)
1時間ほど前にも死角エリアに男女を認めたが、それはただの青姦好きな変態だった。今度こそアタリだと祈る。
こちらの気配を悟られないよう慎重に身を潜め、視線を向ける。
男一人、女一人。
行為中だ。
どちらも二年生、男はBクラスの生徒で、女はDクラスの生徒。
ゲームの知識がある俺には、二人の正体がすぐに分かる。
男は特に問題ない。所詮はそこそこ上位のクラスに属するが、特別目立つ存在でもない生徒。軽薄そうな外見で、事実可もなく不可もない性能のキャラクターだったはずだ。
問題は女の方。
少々地味な印象で、決して万人受けするような美人には見えない。だがそれは、化粧をほぼせず髪型も雑であり、ツリ目気味で目に隈もあり、全体的にダウナーな雰囲気を纏っているのが大きく印象に関与している。顔立ちは悪くない、むしろ磨けば光るタイプだ。
行為についても、決して積極的ではない。
淡々と、嫌そうにしながらもどこか割り切っている印象があり、事務的に処理を行なっている。
完璧だ。
俺は彼女がアタリだと確信した。
俺が探していたのは、こうした場で取引を行っている女子生徒。
それも、自発的に金を稼ぐために動いているが、自分がそうしたことをしていると周囲には絶対に知られたくない存在だ。
こういう女は、監視カメラの死角エリアを利用することが多い。
ホテル代を浮かし、通行人や警備員にバレるリスクよりも少しでも得られるポイントを優先する者。
それでいて男の部屋には入りたがらず、自分の「活動」がバレるリスクは下げようとする者。
そしてDクラスのような、ポイントに困窮している者。
更に欲を言えば、他の男から「売り」を言い寄られる事は少ないが、女から誘えば買ってくれる男は居そうな外見レベル。
俺が探していたのはこうした条件に当てはまる生徒だった。ビンゴ。大当たりだ。
俺は息を殺しながら、行為が終わるのを待った。
やがて、男が先に立ち去る。
その数分後、女がコソコソと出てきた。
今なお死角エリアの範囲内である事を確認し、俺は静かに彼女に話しかけた。
「よう」
「ひっ……」
まさかこのタイミングで声を掛けられるとは思っていなかったのだろう。女は肩を震わせ、驚きと共に怯える表情を見せた。
今の俺は、短髪のカツラを被り、フードを深く被っている。特にこのような暗がりでは普段の俺とはまるで違う人間に見える筈だ。だが、こんなところでフードで顔がよく見えないやつなんて不審者以外の何にも見えないだろう。
実際のところ俺は新入生で彼女は先輩なのだが、こんな入学2日目でこんな場所に慣れた様子でやってくる男が後輩だとは全く思いもよらないだろう。知らない同級生か先輩か、どちらかだと考えているはずだ。
彼女は当然身構えたがーーやがて何かを悟ったように顔色を変えた。そして俺へ向ける表情を恐怖一色から微かに侮蔑を混ぜたものへと変える。
「……あなたもやりたいんですか?」
その言葉に、俺は静かに頷いた。
どうやら先輩は俺を彼女の先輩か何かと判断したらしい。まあ妥当だな。
彼女は小さく息を吐き、表情を和らげることなく、淡々とした口調で条件を述べる。
「値段は3万ポイント。使うのは手と口だけで一発限り。場所はここ。やったことは絶対に他言無用。それでいいならやってもいいですけど」
俺は頷く。
先輩はそんな俺をジト目で確認し、僅かに逡巡した後口を開いた。
「……誰かから、私のこと聞いたんですか?」
俺は首を振る。
彼女はじっと俺を見つめ、ほんのわずかに目を細める。警戒している。当然だ。
どの程度の頻度か分からないが、自分がこうした行為をしている事を周囲に拡散でもされていないか心配しているのだろう。
だが、だからこそ「他言無用」という条件で俺に身体を売ってくれる。きっと今も彼女は服の下で会話を録音しているのだろう。
俺からの3万ポイントの送金が確認されると、彼女は静かに息を吐き、そして素っ気なく言った。
「……じゃ、こっち来てください」
彼女は俺に手招きをする。
取引成立。この世界に来て初めてのお楽しみの時間だ。