ようこそエロMODが導入された教室へ 作:さんかく
「お喋りはここまでだ。いくぞ弥彦」
そんな台詞と共に、俺の視線の先で2人の男――Aクラスの葛城康平と戸塚弥彦が、洞窟から離れていく。
俺はその光景を目に焼き付けながら、直ぐ近くで同じ光景を目にしたはずの男へ声を掛けた。
「あれ、どう思う?」
「曖昧な質問だね、ブラックボーイ」
俺からの質問に、自信に満ちた声が――俺の真上から返ってくる。
俺に対して駄目出しのような言葉を放つのは、金髪の偉丈夫――高円寺六助だ。
俺と高円寺は今、Dクラスの皆から離れた場所の、洞窟の手前で姿を隠していた。
俺は大きな樹の下の影に身を潜め、高円寺は――別に体を隠そうとはしていないのだが、樹の枝の上に優雅に腰掛けているため、結果的にその姿は洞窟側からは死角になっている。
そしてその視線の先にいたのが、Aクラスの男2人だった。
彼らの遠くなっていく背中を見送りながら、俺は質問を変えて、頭上の高円寺に問い掛ける。
「じゃあ言い方変えるわ。俺はAクラスのリーダーはハゲじゃない方だと思うけど、お前はどう思った?」
「ふむ」
俺が聞き直した事で、高円寺は少しだけ興味深そうに相槌を打つ。そして直ぐに、森の静寂を破るような喧しい笑い声を上げた。
「はっはっは、少しは私好みの質問に変わったが――依然、私にとって答える必要が無いことに変わりはないね」
「そうか? 回答によってはクラスポイントが増えるけど」
「残念ながら、私はポイントに困っていないからねえ。そして加えて、君の言葉には必要な前提が抜けている。私の回答を言質にしようとするのはナンセンスだよ」
「チッ、なんだよケチくさいな」
「フッ、その言葉は私とは正反対に位置する形容詞だねえ」
高円寺はスタンスを崩す事なく、高慢ちきに返してくる。
俺はそれにこれ見よがしに舌打ちをするが――まあ、実際高円寺の言う通りではあった。これはちょっとした不満のアピールでしかない。
――実のところ、俺は既に高円寺との交渉を終えていた。その結果が出るまで、さしたる時間はかからないだろう。
そもそも、さっきまでなぜ高円寺と2人でいたのかという話になるが。
平田と話した後、俺は議論には参加しなかったが、原作通りの流れで探索チームを組む事になっていた。
そのタイミングで高円寺と交渉をしている最中だった俺は、そのままの流れで2人で探索に出る事にしたのだ。
交渉の内容自体は、極めて単純なもの。
高円寺特有の話の通じなさで時間はかかったが、直ぐに本来の探索に戻ることは出来た。
そしてその後、示し合わせたかのように――というか高円寺の後を着いていけば自然とそうなるが、Aクラスが洞窟のスポットを占有した直後の場面に遭遇した。
これは交渉として会話を行い、高円寺の進行スピードを微妙に調整すれば可能となる。多少早く着いたが、洞窟に人の気配がある事を高円寺が察知し、俺から提案した事で少し待ち――見事、リーダーカードが葛城と戸塚の間で交わされるのを目撃出来たというわけだ。
この調整自体はゲームでも何度も行う事であり、大した事では無い。だがこれで、ゲーム的に言うならフラグを回収出来た。
良い流れだ。
高円寺も満足したのか、木の上で身軽に立ち上がった。
それから彼は何処かへ去ろうとし――そこへ俺は短く声を掛ける。
「じゃ、またな。頼んだぞ」
「フッ、私が気紛れを起こさないとは言えないがねえ」
そんな捨て台詞と共に、高円寺はターザンよろしく木の上を伝って、軽やかに何処かへと跳び去っていく。
あんな事を言っているが、高円寺が一度決めた約束を破る事はないだろう。それは彼の中の美学に反する行為だからだ。
そして先ほどの高円寺の台詞は、明言こそしていないが、俺の問い掛けを肯定するも同然の内容だった。
高円寺は気まぐれで協力的な態度なんて微塵も見せないが、その発言と裏腹に、彼はポイントを必要としてはいる。
俺がそれなりの自信を持って戸塚がリーダーだと考えている事に対して、否定も反対もしなかった事自体が、彼のスタンスを示していると言って良い。
つまり言質は取ったも同然だ。残念だったな高円寺。
猿のように木の上を跳んで去っていく高円寺の背中に手を振りながら、俺は内心で捨て台詞を吐いておいた。
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そんなこんなで仕事を終えた俺は、探索をやめて1人で帰路についていた。
本来とは異なる成果を握り締め、平田に言うべく大手を振って元の場所に戻る――そんな時だ。
ふと、森の中の木々の隙間に、他の生徒の人影を遠目に見かけた。
咄嗟に木の幹に身を隠し、様子を窺う。
数人の男女が、森の中を歩いている。
記憶が正しければ、あれはCクラスの生徒だ。
――池達のように、良い場所の探索をしているのだろうか。
少し気になって、俺は姿を隠したまま彼らをつけてみることにした。
彼らは迷いのない足取りで森の中を進んでいく。脇目を振らず、まっすぐ何処かへ向かっているように見える。
それは、何処か良い場所がないかを探っているというより、どこか目的地があるように見えた。
あまり記憶に無い顔ということは――彼らには申し訳ないが、そこまで優秀なネームドキャラではない。
その推測と、彼らの行動はややそぐわない。誰かから予め指示された方向に歩いている、という方が理解し易いか。
10分程度尾行していると、彼らの足が止まった。
その先を茂みの隙間から覗いてみると、どうやら彼らは少し開けた場所に到着したようだった。
洞窟付近ではあるが、俺がさっきまでいたのとは別の広場だ。特に人気はなく、何もないただの空間。
彼らはそこで何やら話し合う様子を見せた後、きびすを返して元来た方向へ戻り始めた。
――あそこを拠点にするのか?
もしそうなら、今回のCクラスは従来とは異なる動きをする予定という事になる。
彼らの動きの意図について考えてみるが――幾つか案はあるものの、流石にまだ確定は出来ない。
ひとまず俺は、息を潜めて戻ってくる彼らをやり過ごし――完全に歩き去るまで待った。
不審な点は残るが、これ以上深入りしても情報は得られない可能性は高いし――何より、ちょっと時間をかけ過ぎた。
そろそろクラスの元へ戻る事にしよう。
森を抜けて広場に戻った。
が、Dクラスが集まっていた筈のそこには、人の気配は殆どなかった。
どうやら、道草を食って遅れたせいで、既にDクラスは移動をしてしまったらしい。
きっと池達が川のスポットを発見し、そちらへ移動したのだろう。
さて、困った――と、本来ならなるところではあるが、俺は別に困らない。
ゲームの知識でこの島の地形は頭に入っている。ここから拠点があるであろう場所へ歩いていく事は可能だ。
だが、そんな事をする必要も無さそうだ。
俺のような遅れた組を待っていてくれたのか、広場には数人だけ残っていた。
その中の1人は――櫛田だ。
「あ、斉藤くん!」
俺の姿を認めると、櫛田はにこにことしながら手を振ってくる。
共に他の女子も近寄ってきて――気の所為でなければ、そこまで嫌がる様子はなく普通に話し掛けてくる。
「斉藤くん、お帰りー。……あれ?1人?」
「1人。高円寺も居たんだけど、アイツはどっか行ったからな」
「あー……いいよあんなの、ほっとこ」
しらーっとした様子で、高円寺の不在を彼女らは流す。
その様子だと、まだ高円寺の動きは彼女らに伝わっていないらしい。きっとまだ泳ぎはせずに、島の中をぶらついているのだろう。
そんな事より、と彼女らは話の流れを変える。
「実は、もうクラスの皆は場所移動しちゃったんだー」
「ああ、良いところ見つけた感じ?」
「さあ、どうだろ。でも川があったし……良いところ、かも?」
彼女らは顔を見合わせつつ答える。
どうやら一度はメインキャンプの場所には行っているようだ。
さて、彼女らが俺のような遅れて戻ってきた組を待っていたとするなら、その目的は一つだ。
それを示すかのように、そこまで黙っていた櫛田が口を開いた。
「じゃあ、そこまで私が案内するね」
「え? でも櫛田さん、さっき戻ってきたばかりじゃ……私が行くよ?」
他の女子生徒が気を遣ってそう言うが、櫛田はそれを笑顔で押し留める。
「ううん、いいの。向こうの話し合いも気になるし、早く戻りたいから」
それなら最初から向こうに残っていろよ、と思うが――つまりは"そういうこと"だろう。
櫛田はいつものアイドル然とした笑顔で、俺に向かって「じゃ、行こっ」と声を掛けてくる。
まあ、いいか。俺にとっても好都合かもしれない。
俺は頷いて、他の女子にバイバイと軽く手を振り――先導する櫛田の後をついて行く事にした。
先を歩く櫛田は、広場を離れ、森の中に入っていく。
まだ水の音も何も聞こえないが、この先に川がある――というつもりなんだろうな。
少し歩くだけで、あっという間に周囲が木々に囲まれた。
草葉のざわめき以外しんとした静けさは、普段はなかなか味わえないものだ。
――森に入って数分程度は歩いたか。
周囲には他の生徒の気配どころか、文明のぶの字も感じられない景色が広がっている。
今、この場には俺と櫛田の2人だけ。多少大きな声を出したところで、誰からも気付かれなさそうだ。
俺がそんな感想を持ったところで――頃合いを見計らっていたのか、案の定、前を歩く櫛田から声が掛かった。
「大変な試験が始まっちゃったね」
振り返らないまま、背中越しに世間話のように話し掛けられる。
いつものクラスで見られる櫛田の声だ。
「あー、まあ、女子は特にキツいだろうな」
「うんうん。トイレもあれで、お風呂もないし……みんなピリピリしてるから、なだめるのも一苦労で大変だよー。……斉藤くんも、特に大変だもんね?」
「……俺が特に大変?そりゃこの環境は嫌だけど、特別って事は無いけど」
「えー、そうかなぁ? だって……」
そこで彼女の口調に、微かな、しかし確かな変化が生じた。
甘い声色のまま――その芯に冷たい棘が混じる。
「一之瀬さんと折角付き合い始めたのに、早速敵になっちゃって残念だもんね?」
――なるほど。
俺は無言で足を動かし続ける。
彼女は続ける。
「Bクラスは団結力が強いから、手強いよね。もしDクラスと争うことになったら……斉藤くん、どうするのかなって心配なんだぁ」
彼女の歩くスピードが、少しずつ落ちていく。
それに比例するかのように、声のトーンが一段階低く沈んだ。
「まさか……『Bクラスの味方をする』、なんて言わないよね?」
その言葉と共に、彼女は完全に足を止めた。
俺も数歩後ろで立ち止まる。
森の静寂の中、彼女はゆっくりとこちらを振り返った。
その顔には、さっきまでの愛想の良い笑顔が張り付いている。口角は綺麗に上がり、完璧なクラスのアイドルとしての表情だ。
――が、その瞳だけは、凍てつくように冷たい。
「……ねぇ。私に何も、言う事無いの?」
その低い声は、俺への探りと、そして何より苛立ちを含んでいた。
俺が沈黙を保っていると、彼女は仮面を維持することに疲れたのか、あるいは俺の態度に痺れを切らしたのか――ふっ、と表情を崩した。
そこにあるのは、鬱憤に満ちた"本物"の櫛田桔梗だ。
「何か言ってくれないかな」
「そうは言っても、俺からは何も言うことは無いからな」
俺の言葉に、櫛田は額に青筋を立てる。
「とぼけないで」
「とぼけてないけど」
「……随分と楽しそうじゃない。敵のクラスのリーダー様と、さっきも甲板でイチャイチャして」
櫛田は既に、口調も表情も完全に素が出ている。
棘だらけの言葉を吐きながら、俺を睨みつけてこちらへ近寄ってきた。
「私はアンタの命令通り、あのバカのご機嫌取りをして、クラスの為に身を粉にしてる。なのにアンタは、自分だけ"あがり"?」
「人聞き悪いな。俺も一之瀬の相手で苦労してるよ。人気者は大変だからな」
「ふざけないで」
彼女は、溜め込んでいた毒を吐き出すように、一歩ずつ俺に詰め寄ってくる。
「どれだけしんどいか、分かる?毎日毎日、吐き気のするような彼女ごっこをして……皆の前で、思ってもいない笑顔を貼り付けて……!どれだけ私が――」
と、彼女が激情をぶつけようとしたタイミング。
俺は無言のまま、逆に一息に彼女との距離を詰めた。
「……っ!?」
あまりに唐突な接近に虚をつかれたのか、櫛田は言葉を途切れさせ、目を見開く。
互いの距離は、ほぼ身体同士が触れ合う程度。俺の顔は彼女の顔のすぐそばにあり、互いの吐息がかかるほどの至近距離。
櫛田の蜜のような甘い体臭と、今日一日試験のために動き回った後の汗の匂いが混じり合い、俺の鼻腔に届いてくる。
目の前の、突然の事に硬直した櫛田の顔――その瞳を覗き込み、俺は酷薄な笑みを浮かべた。
「笑顔はどうした?」
「……っ」
気圧されたのか、櫛田は先程までの剣幕を霧散させる。
しかし彼女は何とか声を絞り出し、睨み返してきた。
「あ、アンタに……作る必要ないでしょ、そんなの」
「そうだな」
俺は笑いながら短く肯定し――そのまま彼女の肩を強く押した。
タタッ、と彼女が後退りし、その背中が後ろに生えていた太い幹にぶつかる。
鈍い音が響き、櫛田の逃げ場がなくなった。
「ちょっ、な――んむっ!?」
櫛田が驚いたように声を上げ――その唇を、俺は自身の唇で強引に塞いだ。
驚愕でくぐもった声を上げるが、俺の舌が口の中に遠慮なく捩じ込まれ、それは言葉にはならない。
「ふっ、んむ、ちゅ…ふーっ!?」
ぴちゃ、ぴちゃ、と淫らな水音が森の静寂に響き、櫛田は熱い息を口と鼻から漏らす。
それを顔全体で感じながら、俺は更に奥まで舌を入れ、逃げ回る櫛田の舌を絡め取った。
「んーーっ! んっ、ふぅ…!」
櫛田は必死に両手で俺の胸を押し、引き離そうとする。
だが、その両手首を俺は片手で纏めて頭上へ押し付け、完全に封じ込めた。
更に、ガクガクと震えている櫛田の両脚、その股の間に俺の右足を強引に割り込ませる。
脚が閉じられないように固定し、そして――俺の膝を、彼女の股間にぐりぐりと押し付けた。
「ひゃぅっ!?」
櫛田の身体が、大きくビクッと震えた。その拍子に口元が一瞬離れ、可愛らしい悲鳴が上がる。
俺は直ぐに口を塞ぎなおし、膝を股に当て、厚手のジャージと下着越しに大まかに擦り上げる。
それだけで、開発され尽くした櫛田の身体は面白いように反応した。
腰が砕け、膝の刺激を避けるどころか、無意識に擦り寄せるような動きを見せる。
それを少し続け――自身の膝が、ジャージの布越しに僅かに湿り出したのを感じた。
そこで俺は、膝の動きと櫛田へ行っていた接吻を止める。
「――ぷはっ!?」
解放された櫛田は、俺の顔に思い切り息が掛かるのも気にせず、肩を上下させて大きく呼吸をする。
その口元から漂う甘い蜜のような匂いを感じながら、俺は彼女に一方的に告げた。
「勘違いしてるようだけど、俺とお前の立場は対等じゃない」
櫛田は顔を真っ赤に上気させ、首筋とそこから覗く鎖骨に汗を垂らしながら、キッとこちらを睨みつけてくる。
その瞳にあるのは、屈辱と怒りと、そして隠しきれない劣情だ。
俺は変わらず馬鹿にしたような酷薄な笑みで――敢えて彼女のプライドを傷付けるように言い放つ。
「まあ、こんな雑に押されただけで股を濡らすような奴が、何か出来るとも思えないけどな」
「なっ……!?」
櫛田はそれを聞いて、今度は別の意味で顔を朱に染め上げた。
そんな彼女の下半身――俺が膝を押し当てていた股には、先程までは無かった暗い染みが出来ていた。
それは俺の膝を濡らしたものと同じ、彼女の愛液だ。
その事実を櫛田も自分の目で確認し、無意味にも俺の目から隠すように手で股を押さえる。
そして恥ずかしさと怒りに頭を染め上げ、彼女は何かを言い返そうと口を開いた。
しかし、それが音になることはない。
俺が再び彼女の股に、押さえている彼女の手の上から、膝を強く押し当てたからだ。
「う"っ……!」
喉の奥から漏れた唸り声と共に、言葉が途切れる。
「まあ、抵抗したけりゃしてもいいよ。何したところで、屋上の時と同じく、自分の首を絞めるだけだと思うけどな」
「――っな、んむ"」
俺の煽るような言葉に、再度言い返そうと開いた櫛田の口を、俺は再び自分の口で塞ぐ。
舌を深く絡め、櫛田がビクビクと身体を震わせたところで――俺は、おもむろに彼女の上半身のジャージの下、その裾から両手を潜り込ませた。
「んっ!? んーーっ!!」
直接服の下、無防備なお腹に俺の掌が触れ、彼女が驚愕に身をよじる。
しかしそんな抵抗は意に介さず、俺の特技の一つであるスリで鍛えた類稀な指先の器用さが、肌着の下の汗ばんだ肌を素早く撫で辿っていく。
櫛田が身体を更にびくつかせるのを尻目に、俺は目当てのものを探し――胸元の硬い布地に触れた。
フロントホックか。
やや予想を外されながらも、俺は指先で金具を探り、一瞬でそれを外した。
弾けるように胸が解放される。
「――!?」
更にそこから、俺は両手を櫛田のそれぞれの脇へと持って行った。
1日の活動と先程の刺激により、櫛田の両脇にはそれなりに汗が溜まっていた。それをそのまま握るように、両手で彼女の身体を挟み込み――そのまま腕を上に持ち上げる。
櫛田は驚いて暴れようとするが、それより俺の動きの方が早い。
俺は唇を離し、彼女の脇を抱えたまま、その腕を頭の方へと一気に引き抜くように持ち上げた。
――ずるん、と。
面白いように、櫛田が着ていたジャージと肌着――そして今しがた金具を外されたブラジャーが、一塊となって彼女の上半身からすっぽ抜けた。
「……え?」
そこに残るのは、俺の両手にある彼女の脱け殻と。
ぽかんと、何が起きたのか分かっていない表情で、バンザイをしたまま上半身を完全に丸出しにした櫛田の姿だけだった。
櫛田はしばらくの間ぽかんとしていたが、やがて呆然と自分の身体を見下ろした。
そしてぺたぺたと自身の肌に触れ――そこにあるはずの布の感触がないことに気づく。
「……っ!?」
ようやく状況を理解した彼女は、弾かれたようにその場にしゃがみ込んだ。
慌てて身体の前面、豊かな胸を両腕で隠しながら、獣に怯える小動物のように必死に辺りを確認する。
「――なっ…!?」
「誰もいねーよ。お前がそうしたんだろ」
俺が呆れたように言うと、櫛田は顔を真っ赤に染め上げながら口をパクパクとさせた。
あまりの怒りと困惑、そして焦りで、言葉が形になっていない。
俺は改めて周囲を見回した。
木々が生い茂り、視界の遮られたこの場所。これが川に続く正規のルートから外れているのは明白だ。櫛田は敢えて、俺と素で話すために――誰にもバレる心配無く俺に詰め寄るために、人気のないこの場所を選んで連れてきたのだ。
さっきまで取り繕わずに俺と会話していたのが、その何よりの証左だ。
それは逆説的に、俺にとっても他の目を気にすることなく動けるという意味でもある。
謂わばこれは櫛田の自業自得だ。
それに、百歩譲って仮にここを見られたところで、"交際"契約の為に俺を庇う発言をしないといけない都合上、失うものは櫛田の方が多い。
実際、今櫛田が大声を上げ、俺がそれを防いで服を着せる前に逃げ出すなりすれば、俺の立場を危ういものにする事は出来る。
だがその場合、櫛田の過去のみならず痴態の数々を持つ俺からの反撃を櫛田は覚悟しないといけない。
――俺が即退学になり得る状況、或いはそれに準ずる状況を作れれば、その限りではないが。
が、どちらにせよ、さっきまでのような声を荒げる余裕が失われ――何よりその為の準備が出来ていない今の櫛田には、土台無理な話だ。
櫛田は震える声で、俺に文句を言ってきた。
「な、何してんの…!? こ、こんな…ふざけ…っ!」
「お前が暑そうにしてたから、手伝ってやっただけだけど」
「は、早く返してよっ…!」
焦った顔で懇願してくる櫛田。
俺は勿体つけるように、手のひらの上にある彼女の脱け殻を弄んだ。
さっきまで着ていたばかりのジャージは、まだ彼女の体温が残っていて生温い。肌着にはうっすらと汗が滲み、そして一番上にあるブラジャーは――
俺はそこで布地の感触を確かめるのを中断し、しゃがみこんでいる櫛田に近づいた。
「っ、な、なに…」
俺の影が落ち、恐る恐るこちらを見上げてくる櫛田。
俺は無言のまま、胸を隠している彼女の片腕を掴んだ。
「やめっ…!」
意図を察したのか、彼女は必死に抵抗しようとする。だが、体勢の悪さと絶対的な筋力差の前には無意味だ。
彼女の腕は強引に頭上へと持ち上げられ、隠されていた片方の乳房がぽろりと露わになり、重力に従ってまろび出る。
白く熟れた大きな果実が現れ――そして、その先端。
本来なら桜色の突起があるはずの場所には、ベージュ色の絆創膏が貼られていた。
先程の俺の刺激のせいか、あるいは外気に晒されたせいか――絆創膏の中心は、内側からの圧力によってテントのように押し上げられ、中のものが硬く立ち上がっているのがありありと見て取れる。
「普段、こんなん付けてんのかお前」
「〜〜〜ッ!?」
櫛田はそれを見られたくなかったのか、羞恥で耳まで真っ赤に染める。
俺はそんな彼女の頭の上に、無言でジャージと肌着をファサリと落とした。
「えっ…」
視界を覆った布を反射的に掴んだ櫛田は、それが脱がされたばかりのジャージだと気がつき――俺の気が変わらない内にと思ったのか、大慌てで着込もうとした。
――そして直ぐに、致命的に不足するものに気づいて声を上げる。
「ちょっ、ブ、ブラも返して!」
「……」
そう、俺が櫛田に渡したのは彼女のジャージの上着と肌着だけ。脱がしたばかりのブラジャーは、まだ俺の手元にある。
俺は手元に残った彼女のブラジャーを、指先でぷらぷらと揺らしてみせた。
「嫌だ」
「は、はぁ!? なん――」
「反抗した罰?試験中はそれで過ごしな」
俺の宣告に、櫛田は唖然とした表情でこちらを見てくる。「嘘でしょ」と言わんばかりだ。
今の彼女の身体にとってノーブラで過ごすことがどれほどの苦行かは、彼女自身が一番よく分かっている。
それを表すかのように、櫛田は直ぐに我に帰り、ぶんぶんと勢いよく首を振った。
「そ、そんなの無理!いいから返して…!」
「うるさいな。その絆創膏も剥がしてやってもいいんだけど」
俺がそう脅すと、櫛田の顔からサーッと血の気が引いた。
胸に張られた絆創膏――その用途は考えるまでもなく明白だ。
今の彼女の乳首は、服の繊維が擦れるだけで電流のような快楽が走り、まともな思考ができなくなるほどに開発されきっている。この絆創膏という最後の防壁がなければ、日常生活すら成り立たないのだ。
櫛田は唇を噛み締め、屈辱に震えながら顔を俯かせた。
そしてこれ以上抵抗して絆創膏まで奪われるリスクを考慮したのか――諦めたように、手元にある肌着とジャージだけをのろのろと着込み始めた。
俺は彼女が着替えに集中している隙に、手に持っていたブラジャーを丸め、その辺の草むらの中へと放り込んでおく。
そして1分程度経ち。
服を着て立ち上がった櫛田は、顔を屈辱と羞恥に染め上げ、胸元で腕を組みながら涙目で俺を睨みつけてきた。
だがその胸元は、以前よりも心なしか頼りなく、ジャージの生地が直接肌の形を拾ってしまっている。
組まれた両腕に圧迫された胸は、むにゅんも形を変えてより存在を強調してしまっていた。
「じゃ、案内してくれよ」
「…………ッ」
俺が言うと、彼女は殺気に近い視線を向けながらも、無言で歩き出した。
その方向は俺の記憶の中の地図とも一致している。
ようやくきちんと案内してくれる気になったらしい。
そこからは、櫛田は無言で前を歩いて行く。
こちらを一度も振り向かず、極端にゆっくりとしたペースで歩を進めていた。
それは俺に対する怒りの表現でもあり――彼女の髪の隙間から覗く耳が赤みを帯びている事からは、真の理由も透けて見えた。
おそらく、ゆっくりと身体を揺らさないように歩かなければ、支えを失ったその大きな胸が揺れてしまうのだろう。
そしてそれだけで、絆創膏しか防護するものが無くなった彼女の敏感なそれ――先ほどの刺激でぷくりと膨らんでしまっていた櫛田の乳頭は、ジャージの裏地との摩擦に晒され、甘い痺れを彼女の脳に送ってしまうに違いない。
何とも不自由で、可愛らしい身体だ。
俺は歩きながら、木々の隙間から覗く青空を見上げた。
いい天気だ。
さっきまでは暑いばかりで鬱陶しいと思っていた日差しだが――今は素直に、心地よいとすら思える。
それはひとえに、俺の機嫌が上向いたからだろう。
明日からは、ちょっとくらい積極的に動いてもいいかもしれないな。
ようやく退屈な試験にもハリが出てきそうだ。
俺は少しだけ、この試験が楽しみになってきていた。